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スプリンクラー設備は地震にどこまで耐える必要があるのか|配管とヘッドの耐震ガイドラインを解説

スプリンクラー設備は地震にどこまで耐える必要があるのか

東日本大震災や熊本地震では、スプリンクラー設備が地震の揺れで壊れたという被害が他の消防用設備等よりも多く報告されました。
スプリンクラーは火災を自動で感知して放水する設備なので、地震で壊れたまま気づかずにいると、いざというときに機能しません。
消防庁は平成30年、こうした被害事例を踏まえ、配管やヘッドにどんな耐震措置が望ましいかを整理したガイドラインを示しました。
この記事では、ガイドラインが求める耐震性能の考え方と、防火管理者が明日から確認できることをわかりやすく解説します。

地震のニュースでスプリンクラーが壊れたって聞いて心配になったんです。うちの建物、大丈夫かなと。

消防庁が平成30年に耐震ガイドラインを出しています。まずはどんな内容か一緒に見てみましょう。

うちは既存の建物なんですが、それでも関係あるんでしょうか。

新築が主な対象ですが、既存の建物にも関わる指導事項があります。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 東日本大震災や熊本地震でスプリンクラー設備の被害が他の消防用設備等より多く報告されたことを踏まえ、消防庁が平成30年5月に耐震ガイドラインを策定しました。
  • 対象になるのは、スプリンクラー設備の配管・ヘッドと、パッケージ型自動消火設備Ⅰ型の放出導管です。
  • 求められる耐震性能は、震度5強程度で損傷が生じないこと、震度6強〜7で重大な損傷が生じないことという2段階です。
  • ガイドラインに基づく措置は原則として新築の防火対象物が対象で、既存の建物は大規模改修等の機会に検討することが望ましいとされています。
  • 措置の実施状況にかかわらず、誤放水時の停止方法などを訓練や点検で確認しておくことが求められています。

スプリンクラー設備の耐震対策の流れを示す図解(対象設備の確認・求める耐震性能・新築時の明記・既存建物での訓練点検の4ステップ)

スプリンクラー設備の耐震ガイドラインはなぜ作られたのか

地震の揺れで配管の継手が外れ水が漏れているスプリンクラー配管と、それを見上げる作業員
スプリンクラー設備は、火災を自動で感知して放水するという性質上、地震で機能を失うと被害が大きくなります。
消防庁はこの点に着目し、過去の大地震の被害事例を踏まえてガイドラインを取りまとめました。
平成23年東北地方太平洋沖地震や平成28年熊本地震等の過去に発生した大規模地震において、地震の揺れにより消防用設備等の被害が報告されていることを踏まえ、消防庁では、これらの地震時における被害事例を調査するとともに、大規模地震に対応した消防用設備等のあり方について検討を行ってきたところです。(略)スプリンクラー設備(消防法施行令第12条第2項第3号の2に定める特定施設水道連結型スプリンクラー設備を除く。以下同じ。)は、過去に発生した地震における被害が他の消防用設備等と比較して多く、また、火災を自動で感知して、放水する設備であるため、地震により適切に機能しなかった場合に火災予防上の影響が大きいと考えられる。(スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドラインの策定について 平成30年5月11日 消防予第361号 消防庁予防課長)
揺れに弱い設備だからこそ、専用の基準が必要になりました。
スプリンクラー設備は熱や煙を感知すると自動で放水しますが、配管が地震で破断すると、この機能そのものが働かなくなります。
東日本大震災や熊本地震では、実際にスプリンクラー配管の破損や誤作動といった被害が報告されました。
消防庁はこうした被害事例を調査し、平成30年に耐震措置のガイドラインとしてまとめて示しています。
この通知は、消防法施行規則第12条第1項第9号が求める「地震による震動等に耐えるための有効な措置」の一例を示したものです。

自動で放水する設備だからこそ、地震で壊れると怖いんですね。

そうなんです。
次はガイドラインがどの設備を対象にしているかを見てみましょう。

ガイドラインはどの設備のどの部分が対象になるのか

スプリンクラーヘッドと配管に青いチェックマーク、水道の給水管につながる小さな装置に赤い禁止マークが付いた対比図
ガイドラインが対象にしているのは、建物にあるすべてのスプリンクラー関連設備ではありません。
対象となる設備と、対象になる配管の範囲がそれぞれ決まっています。
本ガイドラインは、地震時において求められるスプリンクラー設備の耐震性能を整理し、特に被害の発生が懸念される箇所を対象に有効な耐震措置をとりまとめた。また、消防法施行令第29条の4に基づき、スプリンクラー設備と同等以上の防火安全性能を有することから、一部の防火対象物においては、スプリンクラー設備に代えて「パッケージ型自動消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件」(平成16年消防庁告示第13号)第2第1号に規定するⅠ型(以下「パッケージ型自動消火設備Ⅰ型」という。)の設置が認められている。(略)本ガイドラインは、スプリンクラー設備の配管(加圧送水装置に接続する吸水管を除く。以下同じ。)及びスプリンクラーヘッド並びにパッケージ型自動消火設備Ⅰ型の放出導管(消火薬剤を消火薬剤貯蔵容器等から放出口へ導く管をいう。以下同じ。)を適用範囲とする。(スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドラインの策定について 平成30年5月11日 消防予第361号)
対象は配管・ヘッド・放出導管の3点です。
ガイドラインの対象は、スプリンクラー設備の配管とスプリンクラーヘッド、そしてパッケージ型自動消火設備Ⅰ型の放出導管です。
ただし、加圧送水装置に接続する吸水管や、水道の給水管を利用する特定施設水道連結型スプリンクラー設備は対象から除かれています。
パッケージ型自動消火設備Ⅰ型は、消防法施行令第29条の4に基づき、一部の防火対象物でスプリンクラー設備の代わりに設置が認められている設備です。
まずは自分の建物にどちらの設備が入っているか、設計図書や点検報告書で確認することが出発点になります。

うちはスプリンクラーだけです。パッケージ型というのは聞いたことがないですね。

小規模な建物で採用されることがある設備です。
次は、地震にどこまで耐えることが求められているのかを見ていきましょう。

地震に耐える性能はどのように示されているのか

小さく揺れる建物のスプリンクラー配管と、大きく揺れる建物の同じ配管を並べて比較する図
ガイドラインが示す耐震性能は、建築基準法の考え方を参考にした2段階になっています。
どちらの地震動でも設備の機能を保てることを目標にしています。
スプリンクラー設備及びパッケージ型自動消火設備Ⅰ型は、地震時において、建築物の構造体等が健全な状態である場合に、これらの設備の機能が維持されることを目標とし、建築基準法に基づき求められる耐震基準の考え方を参考に、次のとおり耐震性能を求めることとする。(1) 建築物の存在期間中に数度遭遇することを考慮すべき稀に発生する地震動(気象庁震度階級:震度5強程度)に対して、損傷が生ずるおそれがないこと。(2) 建築物の存在期間中に1度は遭遇することを考慮すべき極めて稀に発生する地震動(気象庁震度階級:震度6強〜7)に対して、重大な損傷が生ずるおそれがないこと。(スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドラインの策定について 平成30年5月11日 消防予第361号)
求められるのは「損傷なし」と「機能維持」の2段階です。
震度5強程度の地震では損傷が生じないこと、震度6強〜7という非常に大きな地震では重大な損傷が生じないことが、それぞれ目標とされています。
この考え方は、建築基準法が建物本体に求める耐震基準の考え方を参考にしたものです。
建物の構造体そのものが健全であることが前提になっている点にも注意が必要です。
つまり建物本体が無事でも、配管の固定方法次第でスプリンクラーだけが壊れることがあり得るということです。

建物が無事でも配管だけ壊れることがあるんですね。

はい、だからこそ配管の固定方法がガイドラインの中心になっています。
次は見落としやすいポイントを確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

スプリンクラーの制御弁をチェックリストで確認する人物、弁には青いチェックマーク
ガイドラインに沿った工事をしていれば安心、というわけではありません。
通知にはもうひとつ、見落とされがちな指導事項が書かれています。
ガイドラインに基づく措置が実施されているか否かにかかわらず、万が一、スプリンクラー設備等が地震により損傷した場合に備え、消防訓練や消防用設備等の定期点検時等の機会を捉え、定期的に、誤放水時の停止方法やスプリンクラー設備等が機能しない場合の対策等を確認、計画するよう指導することが望ましいこと。(スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドラインの策定について 平成30年5月11日 消防予第361号)
工事の有無にかかわらず、備えが求められています。
この指導事項は、ガイドラインどおりの耐震措置を実施しているかどうかにかかわらず、地震で設備が壊れた場合に備えることを求めています。
具体的には、誤って放水してしまったときの止め方や、設備が機能しない場合にどう対応するかを、消防訓練や定期点検の機会に確認しておくことです。
「新しい設備だから対策済み」と考えて、この確認を省略してしまうのが典型的な見落としです。
また、ガイドラインに基づく措置は原則として新築の防火対象物が対象で、既存の建物は大規模改修等の機会に検討するとされている点も見落としやすいところです。

耐震工事をしていない既存の建物は、対策のしようがないということですか。

工事をしなくても、誤放水の止め方を訓練で確認しておくだけで備えになります。
最後に、明日からの確認手順を整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

設計図面を手にした人物と共同住宅の建物、その横に立つ消防署の建物
ここまでの内容を踏まえて、明日から確認できることを整理します。
新築か既存かで、確認するポイントが少し変わります。
消防同意の事前相談時等のできる限り早い時期に、建築物の設計者を通じて、ガイドラインに基づく措置を講ずるように指導を行うことが望ましいこと。なお、ガイドラインに基づく措置が講じられる場合は、例えば、特記仕様書等に「スプリンクラー設備については、総務省消防庁が作成した『スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドライン』に基づき施工すること。」と明記させることが考えられること。(スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドラインの策定について 平成30年5月11日 消防予第361号)
新築なら、設計段階での明記が確認の起点です。
新築の場合は、設計者に特記仕様書へガイドラインに基づく施工を明記してもらえているかを、できるだけ早い段階で確認します。
既存の建物では、大規模改修の機会にガイドラインに基づく措置を検討できないか、施工業者や設計者に相談します。
工事の予定がない場合でも、消防訓練や定期点検の際に、誤放水時の停止方法とスプリンクラーが機能しない場合の対応を確認し、記録しておきます。
判断に迷う点があれば、所轄の消防署に相談すると確実です。

新築か改修かで確認先が変わるということがよく分かりました。

まずは設計図書や点検記録を見るところから始めてみてください。
これでよくある質問を確認しましょう。

よくある質問

Qスプリンクラー設備は必ず耐震工事をしなければならないのですか?
Aガイドラインは、消防法施行規則第12条第1項第9号が求める「地震による震動等に耐えるための有効な措置」の一例として示された技術的な指針で、原則として新築の防火対象物を対象としています。既存の建物への一律の遡及適用を義務付けるものではありませんが、大規模改修の機会に措置を講じることが望ましいとされています。
Qパッケージ型自動消火設備もガイドラインの対象になりますか?
A対象になります。パッケージ型自動消火設備Ⅰ型は消防法施行令第29条の4に基づきスプリンクラー設備の代わりに設置が認められている設備で、その放出導管もガイドラインの適用範囲に含まれています。
Q特定施設水道連結型スプリンクラー設備もガイドラインの対象になりますか?
A対象外です。消防法施行令第12条第2項第3号の2に定める特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、ガイドラインの適用範囲から除かれています。
Q既存の建物では何から確認すればよいのですか?
Aまずは大規模改修の予定があるかを確認し、予定があれば設計者や施工業者にガイドラインに基づく措置を相談します。工事の予定がなくても、消防訓練や定期点検の機会に誤放水時の停止方法を確認しておくことが実務上の備えになります。

まとめ

東日本大震災や熊本地震でスプリンクラー設備の被害が他の消防用設備等より多く報告されたことを踏まえ、消防庁が平成30年5月に耐震ガイドラインを策定しました。
対象になるのは、スプリンクラー設備の配管・ヘッドと、パッケージ型自動消火設備Ⅰ型の放出導管です。
加圧送水装置に接続する吸水管と、特定施設水道連結型スプリンクラー設備は対象から除かれます。
求められる耐震性能は、震度5強程度で損傷なし、震度6強〜7で重大な損傷なしという2段階です。
ガイドラインに基づく措置は原則として新築の防火対象物が対象です。
既存の建物は、大規模改修等の機会に措置を検討することが望ましいとされています。
措置の実施状況にかかわらず、誤放水時の停止方法などを訓練や点検で確認しておくことが求められています。

スプリンクラーが地震に弱いという理由がよく分かりました。
今度、うちの点検記録を確認して、誤放水の止め方も訓練で確認してみます。

はい。
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参考・出典

  • スプリンクラー設備等の耐震措置に関するガイドラインの策定について(平成30年5月11日 消防予第361号 消防庁予防課長)
  • 消防法施行規則第12条第1項第9号(昭和36年自治省令第6号)
  • 消防法施行令第29条の4・第12条第2項第3号の2(昭和36年政令第37号)
  • 「パッケージ型自動消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件」(平成16年消防庁告示第13号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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