loader image
株式会社防災屋

自家発電設備の負荷運転

消防法第17条の3の3〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告〕

1.自家発電設備の点検

消防法に基づく点検が必要な自家発電設備

消防用設備である屋内消火栓やスプリンクラーなどの 非常電源として附置されている自家発電設備は、消防用設備の一部の扱いとなり、自動火災報知設備や消火器、誘導灯などと同じように消防法に基づく点検が必要 となります。

非常電源として自家発電設備が附置されていることが多い消防用設備の一例を以下に示します。

  • 屋内消火栓設備
  • スプリンクラー消火設備
  • 水噴霧消火設備
  • 泡消火設備
  • 不活性ガス消火設備
  • ハロゲン化合物消火設備
  • 粉末消火設備
  • 屋外消火栓設備

2.自家発電設備とは?

(1)自家発電とは

「自家発電」とは、電気の消費者が発電設備を用いて自ら発電を行うことを指し、「自家発電設備」は、その設備を指します。自家発電設備によって発電した電気は、自家消費に充てる(売電せずに自身で消費する)のが一般的です。
自家発電設備は、設置目的や用途によって「常用自家発電設備」と「非常用自家発電設備」に区別されます。

(2)常用自家発電設備

常用自家発電設備とは、電力会社からの電力供給の有無に関わらず、常に稼働状態にある自家発電設備です。種類としては太陽光発電、ガス発電(燃料電池システム)、風力発電などがあります。

(3)非常用自家発電設備

非常用自家発電設備とは、停電などによって電力会社からの電力供給が途絶えた際に、予備電源として稼働させる自家発電設備のことです。非常時に、防災設備や保安設備に電気を供給する目的で設置されます。

3.消防法における自家発電設備の位置付け

自家発電設備に係る消防法の項目

消防法第17条により、用途や規模等に応じて消防用設備等を一定の基準に従って設置することが義務付けられています。自家発電設備に関わる項目は以下のとおりです。

• 火災時に常用電源が停止した場合においても消防用設備等が正常に稼働するように、消防用設備等に非常電源を附置すること。(消防法施行令第11条第3項第2号ロ(7)他)

• 非常電源の種類には、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備、燃料電池設備があり、延べ面積1000㎡以上の特定防火対象物にあっては、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備を設置すること。(消防法施行規則第12条第4号他)

消防用設備の非常電源の位置付け

自家発電設備そのものは消防用設備ではありませんが、 屋内消火栓やスプリンクラーなどの消防用設備に非常電源として設置されているもの は、消防用設備の扱いとなります。

下の図で示すとおり、消防用設備の非常電源は自家発電設備の中でも、非常用発電設備であり、防災用発電設備であるという位置付けになっています。

4.自家発電設備の負荷運転

自家発電設備の負荷運転の概要

自家発電設備の負荷運転(通称、負荷試験)は、消防法に基づき1年に1度の総合点検時に実施することが義務付けられています。

負荷運転では、定格出力の30%以上の負荷で一定時間連続運転を行い、発電機の実際の動作環境に近い運転性能を確認します。負荷運転の時間は特に定められていませんが、一般的には15~30分程度行われます。

自家発電設備の負荷運転の実施方法は「実負荷運転」と「疑似負荷運転」の2種類あります。

参考:自家発電設備_点検報告書

実負荷運転

自家発電設備の実負荷運転とは、防火対象物に設置されている消防用設備等の実負荷に対して自家発電設備から電力を供給し、運転状況を確認する方法です。

実負荷運転の特徴として、防火対象物によっては、商用電源を停電させなければ実負荷による負荷運転が実施できない場合があることが挙げられます。

また、自家発電設備の定格出力に対して、実負荷の容量が少なく、点検要領に規定される定格出力の30%以上の負荷が確保できない場合があります。

疑似負荷運転

自家発電設備の疑似負荷運転とは、疑似負荷試験機を使用し、疑似負荷となる試験機に対して自家発電設備から電力を供給し、運転状況を確認する方法です。

疑似負荷運転の特徴として、実負荷運転とは違い防火対象物に設置されている消防用設備等に対して電力を供給せずに済むため、無停電による負荷運転が可能となります。

一方、疑似負荷試験機の手配や監視要員の配置等が必要であるため、必要以上にコストがかかることや、防火対象物の規模や自家発電設備が設置されている場所によっては電気ケーブルの敷設工事等が困難な場合があるといった懸念点が挙げられます。

実負荷運転と疑似負荷運転どちらが良いか

「実負荷運転」、「疑似負荷運転」ともにメリット・デメリットがあり、どちらの実施方法が良いかはケースバイケースになります。

また、消防用設備等の点検要領上で『擬似負荷・実負荷等により、定格回転速度及び定格出力の30%以上の負荷で必要な時間連続運転を行い確認する。』と謳われていることから、以前までは“30%以上の負荷で” という条件により、実質的には擬似負荷を用いた点検しかできない、という状態でした。

しかし、528号通知が出たことにより、消防用設備点検時に “実負荷” による負荷運転が可能となりました。

よって、これまでは実質的には「疑似負荷運転」しか選択肢が無かったことが改善され、状況に応じて「実負荷運転」または「疑似負荷運転」を選択できるようになりました。

5.自家発電設備の負荷運転に係る点検方法の法令改正

平成30年6月に自家発電設備の負荷運転に係る点検基準について、大きく4点の改正が行われました。

  1. 負荷運転に代えて行うことができる点検方法として、内部観察等を追加
  2. 負荷運転及び内部観察等の点検周期を6年に1回に延長
  3. 原動機にガスタービンを用いる自家発電設備の負荷運転は不要
  4. 換気性能点検は負荷運転時ではなく、無負荷運転時等に実施するように変更

ここで注目すべきポイントは②の負荷運転及び内部観察等の点検周期が6年に1回に延長されたことです。改正前は、自家発電設備の負荷運転を毎年行う必要がありましたが、「予防的な保全策」を実施していれば、負荷運転又は内部観察等を6年に1回行えばよいこととなりました。

予防的な保全策とは

これまでは、自家発電設備の負荷運転を毎年行う必要がありましたが、「予防的な保全策」を実施していれば、負荷運転又は内部観察等を6年に1回行えばよいこととなりました。
予防的な保全策は不具合を予防する保全策で、実施内容については、点検要領第24の別添2「運転性能の維持に係る予防的な保全策」に記載されています。

実施内容は以下のとおりです。

確認すべき項目

(1)自家発電設備に予熱栓が設けられている場合

予熱栓の発熱部に断線、変形、絶縁不良等がないこと。

(2)自家発電設備に点火栓が設けられている場合

ア 電極の異常な消耗がないこと。

イ プラグギャップ値が製造者の指定値範囲内であること。

ウ 異常なカーボンの付着がないこと。

(3)自家発電設備に冷却水ヒータが設けられている場合

ア 冷却水ヒータケース外周又は近傍の配管等に触れ、

  その他の部位より温度が高いことを確認すること。

イ テスタにて冷却水ヒータの断線等の有無を確認すること。

(4)自家発電設備に潤滑油プライミングポンプが設けられている場合

潤滑油プライミングポンプが正常に作動していることを確認すること。

交換すべき部品

(1)潤滑油

(2)冷却水

(3)燃料フィルター

(4)潤滑油フィルター

(5)ファン駆動用Vベルト

(6)冷却水用等のゴムホース

(7)燃料、冷却水、潤滑油、給気、排気系統や外箱等に用いられるシール材

(8)始動用の蓄電池

予防的な保全策の実際の運用について

予防的な保全策で求められる確認項目及び交換すべき部品は多岐に渡ります。
予防的な保全策を講じることで、負荷運転及び内部観察等の点検周期が6年に1回に延長されるとはいえ、そのために毎年の消防法に基づく点検よりも多く手間をかけていては元も子もありません。
実際のところ、 予防的な保全策を講じるより、毎年の消防法に基づく点検を行った方が経済的なケースが多い です。
点検周期が6年に1回に延長させるため、予防的な保全策を講じるかどうかは、状況に応じて判断していく必要があります。

自家用発電設備専門技術者にお任せ下さい

消防用設備の非常電源として附置された自家発電設備は、毎年の点検が必要です。

また、その点検内容も法改正をうけ、「予防的な保全策」を講じることで負荷運転の点検を6年に1回に延長することが可能になりました。

しかし、予防的な保全策を講じるには多くの手間を要し、実際には毎年の消防法に基づく点検を行ったほうが経済的であるケースが多く見受けられます。

㈱防災屋では経験豊富な消防設備士が多数在籍しており、状況に応じて適切な点検を実施することが可能です。お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

自家発
1.自家発電設備の点検 消防法に基づく点検が必要な自家発電設備 消防用設備である屋内消火栓やスプリンクラーなどのとなります。 非常電源として自家発電設備が附置されていることが多い消防用設備の一例を以下に示します。 2.自...