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自動火災報知設備の誤報は受信機を替えずに減らせるのか|蓄積付加装置の機能と工事の要件を解説

自動火災報知設備の誤報は受信機を替えずに減らせるのか

火事ではないのにベルが鳴り、そのたびに現場へ走らされている建物があります。
こうした非火災報が続くと、本当に火災が起きたときにも身体が動かなくなります。
消防庁は昭和60年の消防予第134号で、既にある受信機へ後から付けられる蓄積付加装置という選択肢を示しました。
この記事では、受信機を丸ごと替えずに誤報を減らす仕組みと、取付工事に必要な資格を解説します。

うちの自動火災報知設備が月に何度も鳴ってしまい、そのたびに全館を走り回っています。
設備が古いのだから受信機ごと替えるしかないと言われました。

受信機ごと替える前に、後から付ける装置で収まる場合があります。
まず誤報がどう扱われてきたのかから見ていきましょう。

後から付けられるものがあるのですか。

蓄積付加装置といって、昭和60年の通知で示された機器です。
順に中身を確認していきましょう。

この記事の結論
  • 非火災報の対策は既にある受信機にも後から講じることができます。(昭和60年 消防予第134号)
  • 蓄積付加装置は受信機が検出した火災信号を確定するまでためておく装置です。(同通知 第1)
  • 蓄積できる時間は5秒を超え60秒以内と決められています。(同通知 第1・受信機に係る技術上の規格を定める省令第8条第7号)
  • 発信機が押されたときは蓄積機能が自動的に解除され待たされません。(同通知 第1)
  • 取付工事は甲種消防設備士でなければ行えません。(同通知 第2・消防法第17条の5)

自動火災報知設備の非火災報対策と蓄積付加装置の流れをまとめた図解

自動火災報知設備の誤報はなぜ通知が出るまでになったのか

壁の受信機と戸惑う人と出場した消防車
誤報は建物側の困りごとであると同時に、消防機関の出場を空振りにする問題でもありました。
消防庁は感知器の側と受信機の側の両方から対策を積み重ねてきています。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進について(通知)(昭和60年12月4日 消防予第134号) 自動火災報知設備の非火災報対策については、非火災報防止機能を備えた感知器、中継器及び受信機の開発に伴う(略)省令(略)の一部改正並びに感知器の特性に適応した適正箇所への感知器の設置指導により、新たに設置する自動火災報知設備についての措置を講じてきたところであり、また、既設の自動火災報知設備の非火災報対策についても、既設機器の非火災報防止機能を備えた機器への交換、感知器の特性に適応した適正箇所への設置等の指導によりその推進を図つてきたところである。(略)このたび、比較的容易に行える改善方策として、下記第1に示す受信機が検出した火災信号を蓄積することにより非火災報の防止を図ることができる機能を受信機に付加する装置(以下「蓄積付加装置」という。)が造られることとなり、今後は、既設の受信機についても、比較的容易に非火災報対策を講ずることができることとなつた。
対策は新しい建物から先に進みました。
非火災報を防ぐ機能を備えた感知器と中継器と受信機が開発され、規格を定める省令と消防法施行規則が改正されたことで、新たに設置する設備には対策が組み込まれるようになりました。
一方で、すでに動いている受信機はその流れから取り残されます。
機器の交換や感知器の付け替えが指導されてきましたが、どちらも費用と工期がかかる話です。
この通知は、受信機そのものを替えずに後から付けられる装置という三つ目の道を示したものだといえます。
翌年の昭和61年1月17日 消防予第7号は、非火災報の割合が高いために消防機関の出場が空振りになる不都合が全国的に生じていたと書いていて、この通知が置かれた背景がわかります。

新しい建物だけの話ではなかったのですね。

既にある受信機へ後から手を入れる方法が示されています。
次はどの受信機に付けられるのかを見ましょう。

蓄積付加装置はどの受信機に取り付けられるのか

受信機とそこから伸びるケーブルにつながる小さな後付けの装置
どの受信機にも一律に付けられるわけではありません。
通知は取り付けの対象を条件付きで書いています。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進について(通知)(昭和60年12月4日 消防予第134号) 第2 留意事項 2 現在設置されている自動火災報知設備の受信機であつて、蓄積付加装置を取り付けることにより非火災報防止機能を備えることが可能なもので、かつ、その必要があると認められるものについては、その機能の改善について指導することが望ましいこと。
付けられる受信機は限られます。
通知は「取り付けることにより非火災報防止機能を備えることが可能なもの」という書き方をしていて、機種を問わず付くとはしていません。
そのため蓄積付加装置には、見やすい箇所に蓄積付加装置適応受信機の型式番号を表示することが求められています。
ほかに型式番号と製造年及び製造番号と製造業者名、そして公称蓄積時間も表示事項に挙げられています。
受信機の内部に取り付ける場合は、その受信機の見やすい箇所に表示することができるとされています。
自分の建物で確かめるときは、受信機に貼られた銘板の型式番号と製造業者名を写真に撮っておくところから始めると話が早く進みます。

受信機の型式番号というものを見たことがありませんでした。

扉の内側や側面の銘板に印刷されていることが多い項目です。
次はその装置に求められる機能を見ていきましょう。

通知は蓄積付加装置にどんな機能を求めているのか

天井の感知器と砂時計と壁に付いた地区音響装置
通知の第1には、装置に求められる機能が五つと表示の定めが並んでいます。
誤報を減らすことと、火災の覚知を遅らせないことの線引きが読み取れます。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進について(通知)(昭和60年12月4日 消防予第134号) 第1 蓄積付加装置の機能等 1 受信機が検出した火災信号を火災信号として確定するまでの間、当該信号を蓄積し、かつ、火災信号としての確定の判断機能を有するものであること。 2 火災信号を蓄積できる時間は5秒を超え60秒以内であること。 3 受信機からの火災信号を検出した後、火災信号として確定するまでの間は、地区音響装置が作動しないよう受信機との間に機能的に連けいがとられているものであること。 4 発信機からの火災信号を検出したときは、蓄積機能を自動的に解除できるものであること。 5 受信機からの火災信号を検出したときは、当該信号の検出を自動的に表示できるものであること。
受信機に係る技術上の規格を定める省令第八条第七号 蓄積式受信機にあつては、蓄積時間は五秒を超え六十秒以内とし、発信機からの火災信号を検出したときは蓄積機能を自動的に解除すること。
ためられる時間には上限があります。
蓄積時間は5秒を超え60秒以内とされていて、それより長く信号を保留することはできません。
火災信号として確定するまでの間は、地区音響装置が作動しないよう受信機との間に機能的な連けいが取られています。
一方で発信機から信号が来たときは、蓄積機能が自動的に解除されます。
人が異常を見つけて押したものを、あらためて見きわめる理由がないからです。
現行の受信機に係る技術上の規格を定める省令第8条第7号も蓄積式受信機について同じ内容を定めていて、通知が示した線は今の規格にそのまま残っています。

つまり人が押したときは待たされないということですね。

そのとおりです。
蓄積はあくまで感知器の信号を見きわめるためのものです。

蓄積時間の重ねがけで見落としやすいのはどこか

感知器と受信機の間に砂時計が一つの構成と二つ重なった構成の比較
蓄積のしくみは感知器にも中継器にも受信機にもあります。
重ねるとそのぶん覚知が遅れるので、規則が合計時間に上限を置いています。
消防法施行規則第二十四条第七号 蓄積型の感知器又は蓄積式の中継器若しくは受信機を設ける場合は、一の警戒区域ごとに、次に定めるところによること。 イ 感知器の公称蓄積時間並びに中継器及び受信機に設定された蓄積時間の最大時間の合計時間が六十秒を超えないこと。 ロ 蓄積式の中継器又は受信機を設ける場合で煙感知器以外の感知器を設けるときは、中継器及び受信機に設定された蓄積時間の最大時間の合計時間が二十秒を超えないこと。 同条第八号 一の警戒区域に蓄積型の感知器又は蓄積式中継器を設ける場合は、受信機は、当該警戒区域において二信号式の機能を有しないものであること。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進について(通知)(昭和60年12月4日 消防予第134号) 第2 留意事項 3 蓄積付加装置の取付工事は、甲種消防設備士でなければ行えないものであるが、この工事を行う場合は、当該自動火災報知設備について精通した知識を有する者が行うことが必要であるので、当該受信機の製造業者に関係する甲種消防設備士に行わせること。 4 蓄積付加装置のうち受信機外部に取り付けるものは、受信機の直近に設置させること。
落とし穴は合計時間のほうです。
すでに蓄積型の感知器が付いている警戒区域に蓄積付加装置を足すと、合計60秒という上限を超えてしまうことがあります。
煙感知器以外の感知器を使っている区域では、中継器と受信機の合計が20秒までにさらに絞られます。
また蓄積型の感知器や蓄積式中継器がある警戒区域では、受信機にその区域の二信号式の機能を持たせることができません。
工事の側にも条件があり、取付工事は甲種消防設備士でなければ行えないうえ、通知はさらに受信機の製造業者に関係する甲種消防設備士に行わせることを求めています。
受信機の外に付けるものは受信機の直近に設置させることとされているので、離れた場所に箱だけ増えている状態は通知の求めから外れていることになります。

業者さんに任せきりでしたが、付ける相手にもそこまで条件があるのですね。

設備の図面と受信機の銘板を先に手元へそろえておいてください。
最後に明日からの確認の順番を整理します。

明日からなにを確認すればよいのか

点検票を持つ人と壁の受信機と工具箱
やることは大がかりではありません。
受信機のまわりで拾える情報から順に集めていきます。
消防法第十七条の五 消防設備士免状の交付を受けていない者は、次に掲げる消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事(設置に係るものに限る。)又は整備のうち、政令で定めるものを行つてはならない。 消防法施行令第三十六条の二第一項 法第十七条の五の政令で定める消防用設備等(略)の設置に係る工事は、次に掲げる消防用設備等(略)の設置に係る工事とする。(略) 九 自動火災報知設備
順番は三つです。
はじめに受信機の銘板を写真に撮り、型式番号と製造業者名と製造年を控えます。
次に誤報の記録を残します。
日時と警戒区域に加えて、そのとき建物で何をしていたか(工事・清掃・調理・雨漏り)まで書いておくと、感知器の位置の問題なのか受信機の側の問題なのかを切り分けやすくなります。
そのうえで甲種第4類の消防設備士に相談します。
自動火災報知設備の設置に係る工事は消防法第17条の5と消防法施行令第36条の2第1項第9号で消防設備士の業務とされていて、建物側が自分で装置を取り付けることはできません

今日から誤報のメモを残すところを始めます。

その記録がそろっていれば原因の切り分けが早くなります。
最後によくある質問を確認しておきましょう。

よくある質問

Q蓄積付加装置を付ければ誤報はなくなりますか?
A通知はこの装置を非火災報の防止を図ることができる機能を受信機に付加する装置と説明しています。信号が続くかどうかで見きわめる仕組みなので、感知器の位置や周囲の環境そのものに原因がある場合は、感知器の設置場所の見直しとあわせて考えることになります。
Qためている間に本当の火災が広がってしまわないのですか?
A蓄積できる時間は5秒を超え60秒以内と決められていて、それより長く保留することはできません。人が発信機を押したときは蓄積機能が自動的に解除されるので、火災を見つけた人の操作が待たされることもありません。
Q蓄積型の感知器がすでに付いている区域にも足せますか?
A消防法施行規則第24条第7号は、感知器の公称蓄積時間と中継器および受信機に設定された蓄積時間の合計が60秒を超えないことを求めています。すでに蓄積型の感知器がある警戒区域では、合計時間が上限に収まるかどうかの確認が先になります。
Q取付工事は建物の電気担当者が行ってもよいですか?
A通知は取付工事を甲種消防設備士でなければ行えないものとしたうえで、その受信機の製造業者に関係する甲種消防設備士に行わせることを求めています。自動火災報知設備の設置に係る工事は消防法施行令第36条の2第1項第9号で消防設備士の業務とされています。

まとめ

非火災報の対策は既にある受信機にも後から講じることができます。
蓄積付加装置は火災信号を確定するまでためておく装置です。
蓄積できる時間は5秒を超え60秒以内と決められています。
確定するまでの間は地区音響装置が作動しないよう連けいが取られます。
発信機から信号が来たときは蓄積機能が自動的に解除されます。
蓄積型の感知器がある区域では合計60秒の上限に注意します。
取付工事は甲種消防設備士でなければ行えません。

受信機の写真を撮って、誤報の記録用紙を今日から警備室に置いてきます。

それが今日いちばん効く一手です。
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参考・出典

  • 自動火災報知設備の非火災報対策の推進について(通知)(昭和60年12月4日 消防予第134号 消防庁予防救急課長・改正 平成25年3月 消防予第123号)
  • 遠隔移報警備に係る非火災報対策の推進について(通知)(昭和61年1月17日 消防予第7号 消防庁予防救急課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の5・第17条の6
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第36条の2第1項第9号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第6号から第8号まで・第33条の3
  • 受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第19号)第8条第7号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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