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【違い】防火管理者と防災管理者の違いは?選任基準と役割を解説【消防法】

今回は「防火管理者」と「防災管理者」の違いについて書いてみます。

なぎさ
なぎさ

㈱防災屋で働く女性消防設備士のなぎさです。

アパレル業からこの仕事へ転職しました。

消防法の原文を参照すると、以下のような文言で説明されています。

  • 防火管理者‥‥‥防火に関する講習会の過程を修了した者など一定の資格を有し、かつ、防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行できる地位を有する者で、管理権原者から防火上の管理を行う物として選任された者をいう。

 

  • 防災管理者‥‥‥防災に関する講習会の過程を修了した者など一定の資格を有し、かつ、防火管理者が必要な防火対象物(以下、防災管理対象物という)において防災管理上必要な業務を適切に遂行できる地位を有する者で、管理権原者から防災上の管理を行う者として選任された者をいう。
消防法

これだけでは、同じような文言で「防火管理者」と「防災管理者」で結局、何が違うのか理解できない人も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、同じように違いを理解できなかった者として少しでも分かりやすいよう3つの項目別にまとめてみようと思います。

少しでも、???となったことがある人に見ていただけたら嬉しいです。
なぎさ
なぎさ

下記の3点についてまとめていきます。

  1. 建物規模による選任基準の違い
  2. 国家資格と講習の違い
  3. 役割・実施する業務内容の違い

当記事を読めば、きっと「防火管理者」と「防災管理者」の違いが分かるはずです。

 

①建物規模による選任基準の違い

まず「防火管理者」と「防災管理者」の ❝建物規模による選任基準の違い❞  についてみていきましょう。

防火管理者が必要な防火対象物と資格
 防火管理者が必要な防火対象物 

防火管理者が必要な建物では、建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要です。

※①~③は消防法第8条、⑥~⑨は火災予防条例第55条の3に基づきます。

※上記の①~③は、次の用途・規模により、甲種防火管理者又は乙種防火管理者の資格が必要です。④~⑨は甲種防火管理者の資格が必要です。

※東京消防庁HPより引用

 

 

 

☆防災管理者

※東京消防庁HPより引用

 

表を見ても分かるように、防災管理者が必要な建物の方が圧倒的に規模が大きいです。

防災管理者が必要かの目安として、百貨店や大型ショッピングセンターをイメージするといいと教わりました。それと同等以上であれば防災管理者が必要、小さければ必要ないと判断することができます。

また、それぞれの用途などが表と照らし合わせてもどこに該当するか分からない時は所轄の消防署へ問い合わせても教えてくれます。

ただし、防火or防災を明確に相手に伝えないと話が嚙み合わないことがありますので気を付けましょう。
なぎさ
なぎさ

 

 

②国家資格と講習の違い

国家資格とは、国が定めた基準に基づいて認定される資格です。これには、特定の職業や業務を行うために必要な知識や技能を証明するための試験が含まれます。国家資格を取得するためには、通常、試験に合格する必要があります。

講習は、特定の技能や知識を習得するための教育プログラムです。講習を受けることで、特定の業務を行うための基本的な知識や技能を身につけることができます。講習には、特別教育や技能講習などがあり、これらは特定の危険性や有害性を伴う業務を行う際に必要となります。

 

☆防火管理者の資格

防火管理者に必要な法的な資格を取得する方法の一つが、「防火管理者講習」の受講です(令第3条)。防火管理者の資格には甲種と乙種の2種類があり、管理する防火対象物の用途や規模によって甲種防火対象物に区分されていることに対応しています。

 

・甲種防火管理講習(2日間の講習概ね10時間)

↳講習修了者は、用途、規模、収容人員に関係なく、全ての防火対象物で防火管理者になれる講習です。

・乙種防火管理講習(概ね5時間の講習)

↳講習修了者は、小規模な防火対象物や大規模な防火対象物の中での収容人員の少ないテナントの防火管理者になれる講習です。

※大阪市HPより引用

※大阪市HPより引用

 

防火管理者になる人の大半は防火管理新規講習を受講した人です。

また、それ以外でも実務経験や免状で防火管理者になることも可能です。

しかし、どのような実務経験や免状が必要なのかはあまり知られていません。消防職員の人ですらそれを知らない人が。。。。。

わたしも実際に何度も「その免状では防火管理者になれませんよ!」と消防職員の方から言われた経験があります。公的機関の方から、「なれませんよ」と言われるとダメなのかと思ってしまいますよね。そんなことないのです。消防職員の方でも知らない人が想像以上に多いのです、本当に。そういう方に出くわしたら、まずはグッと怒りを抑え深呼吸をし丁寧に教えてあげてください。「防火管理者の要件を満たしているんですよ。調べてみて下さい」と。

なぎさ
なぎさ
それでも消防署から『無理だ』と言われたこともありますが、防火管理者の代行は問題ないので根気よく伝えてください!

 

 

☆防災管理者の資格

防災管理者は、管理的又は監督的な地位にあり、かつ、火災その他の災害から被害を軽減するために必要な知識を有する次の法的資格が必要です。(令第47条、規則第51条の5)

※大阪市HPより引用

 

・防災管理新規講習(概ね4時間30分)

↳防災管理の資格が得られます

・防火・防災管理新規講習(概ね12時間)

↳甲種防火管理者新規講習と防災管理新規講習を合わせて実施する講習です。甲種防火管理と防災管理の資格が得られます

防災管理者として必要な学識経験は、防火管理者とほとんど同じ内容となっています。

 

 

③役割・実施する業務内容の違い

防火管理者は、主に火災に対する予防と対応を担当します。具体的な業務内容は以下の通りです。

防火管理者の役割

・消防計画の作成

・消防計画に基づく消火、通報、避難の訓練の実施

・消防用設備等の点検及び整備

・火気の使用又は取り扱いに関する監督

・避難又は防火上必要な構造、設備の維持管理

・収容人員の管理

・その他の防火管理上必要な業務

防火管理者は、自らの建物に応じた消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届出なければなりません。また、消防計画に基づいた消火、通報及び避難訓練の実施、設備や施設の点検及び整備、下記の使用等に関する監督、避難又は防火管理上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければなりません。

その他に、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて管理権原者に指示を求めて、誠実に職務を行い、設備や施設の点検及び整備又は火気の使用等に関する監督を行うときは、火元責任者や防火管理業務に従事する者に対して必要な支持を与えなければなりません。(令第3条の2)

と、ありますが簡単にまとめると

①消防計画を建物の環境に合わせて正しく作る

②消防計画に基づいた、消火・通報・避難の訓練を行う

③建物の消防用設備の点検・整備をする

↳消火栓のホースは正しく戻されているか?自動火災報知設備の電池が切れていないか?放送設備の電源がOFFにされていないか?等の確認

④火気の使用・取り扱いに関する監督

↳ガス栓は閉められているか?火がついているのに人が離れていないか?等

⑤避難又は防火上必要な構造、設備の維持

↳防火戸を什器などで塞いでいないか?避難口に鍵をかけていないか?等

⑥建物に人を入れ過ぎていないかの確認

↳火災時に円滑な避難を確保できるか?

⑦放火の心配がある物品の放置がされていないか

↳その他、防犯カメラなどで不審者対策や施錠がきちんとされているかの確認

 

・・・となります。

建物を火災から守る為に何をすればいいかを考え、マニュアルを作成し・実践に移すことが役割です。決して難しくはありません。

 

 

☆防災管理者の役割

防災管理者は、地震及び毒性物質の発散その他の総務省令で定める原因により生ずる特殊な災害の予防と対応を担当します。具体的な業務内容は以下の通りです:

・防災管理に係る消防計画の作成

・防災管理に係る消防計画に基づく避難訓練の実施

・その他防災管理上必要な業務

 

防災管理者はとは、「災害危険はどのような建築物等にも常に存在する」ということを前提に、災害による被害を最小限に食い止めることを目的として、日常業務と災害発生時の対応を消防計画に定め、万一に備えておくことです。

自らが働いている建築物や財産・生命の安全を確保するには、「自分たちの職場は自分たちで守る」という自主防火・防災管理の原則のもとに、防災管理の重要性を認識して管理権原者・防災管理者を中心に、従業員のなどの防災意識を高め、組織的・一般的な防災管理体制を構築することが大切です。

防災管理者は、災害時に備えて計画を立て、訓練を実施し、設備を管理することで、建物やその利用者の安全を守る重要な役割を担っています。

簡単にまとめると、大規模物件で地震や災害が発生した場合にお客様・従業員を安全に避難させるための計画を立て、従業員へ伝え訓練を実施しなければならないということです。

 

後の訓練の周期にも関することですが、災害が起きた時に個々がどのような役割で動くかを明確に記載しておくことで、他の従業員達にも分かりやすく伝えることが出来ます。

防火・防災管理者が作成する消防計画を基に皆が行動することになりますので、災害時いかに被害を最小限にするかを考えることが必要になります。

 

訓練の周期にも違いがあります。

☆防火管理

・消火訓練:特定防火対象物は年に2回以上実施することが義務付けられています。特に、消火器や消火栓の使用方法を学ぶ訓練が含まれます

・避難訓練:特定防火対象物は同じく年に2回以上実施する必要があります。避難経路の確認や避難器具の使用方法を訓練します

・通報訓練:適宜実施を推奨

 

☆防災管理 

・防災訓練(避難訓練):年に1回以上実施することが義務付けられています。地震や洪水などの自然災害を想定した訓練が含まれます

 

防火は年2回・防災は年1回。

イメージすると分かりやすいですが、火災は日本全国日々どこかで発生しているので、訓練の回数が必然と多くなります。

しかし最近は地震も多発しているので、自主的に増やしてみてはいかがでしょうか?

 

余談ですが、私は前職アパレル勤務で某百貨店に勤務していましたが毎週必ず、地震や火災の避難訓練がありました。当時は恥ずかしさもあり、あまり乗り気でありませんでしたが今思うと凄いことだなと改めて感じます。お客様は勿論、従業員のこともしっかりと考えてくれていたのだと今になって理解することができます。

東日本大震災発生時の、仙台市にある老舗百貨店”藤崎”の話は有名ではないでしょうか。

当時、お客様・従業員含め約4,500人が建物の中にいる状態でしたが負傷者を1人も出すことなく、速やかに避難誘導に成功しています。

これは、日頃からテナント従業員含め全員が危機意識を高く持ち、訓練に励んでいたからこそ成し遂げられたことなのです。百貨店勤務時に実際の映像を勉強として何度か見せてもらいましたが、従業員一人一人の的確な行動で取り乱すお客様もおらず素晴らしいなと思ったことを鮮明に憶えています。

訓練は自身の命を守ることにも繋がります。訓練で実践できなければ、ほんとうに災害が起きた時行動することは出来ません。

今一度、訓練の重要さを皆さんが中心となって伝えていきましょう。

 

以上、下記3つの項目でまとめてみました。

  1. 建物規模による選任基準の違い
  2. 国家資格と講習の違い
  3. 役割・実施する業務内容の違い

 

なぎさ
なぎさ
少しでも、皆さんの”?”が取れていたら幸いです。

災害時に、被害を最小限に抑え従業員・お客様・自分の身を守る為にはどうしたらいいかを考え・まとめ・伝え・行動に移すことが防火・防災管理者の大切な任務です。

社会の中でとても重要な役割を果たしているのです。

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