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防災管理の対象になる災害は地震だけなのか|毒性物質や生物剤の発散による特殊な災害の範囲を解説

防災管理の対象は地震だけではない特殊な災害とは何かと題した記事のアイキャッチ画像

防災管理という言葉から真っ先に思い浮かぶのは、地震への備えではないでしょうか。
ところが消防法施行令は、防災管理が対象とする災害として地震のほかにもう一つの類型を挙げています。
それが毒性物質の発散などによって生じる特殊な災害で、消防計画にも独立した号として書くよう定められています。
自分の建物の消防計画にその号が立っているかどうかを条文から確かめておきましょう。

防災管理の消防計画は、地震対策さえ書いておけばよいと思っていました。

実はもう一つ対象になる災害があるんです。
令の条文から順番に確認していきましょう。

地震のほかにも対象になる災害があるということですか。
うちは普通の事務所ビルなので関係ない気もします。

用途で線が引かれているわけではありません。
まずは令第45条が何を挙げているかを見てください。

この記事の結論
  • 防災管理の対象になる災害は、消防法施行令第45条により地震と特殊な災害の2つと定められている
  • 特殊な災害の原因は消防法施行規則第51条の3が定めており、毒性物質・生物剤・毒素・放射性物質などが挙げられている
  • 発散や放出が起きたときだけでなく、そのおそれがある事故も原因に含まれる
  • 消防計画に書く事項は規則第51条の8第1項第3号にあり、中身は通報連絡と避難誘導が柱になる
  • 地震の号がイからヘまでの6項目あるのに対し、特殊な災害の号はイとロの2項目しかない

防災管理の対象になる災害が消防法施行令第45条の地震と特殊な災害の2つに分かれ特殊な災害の原因と消防計画の記載事項までを示した図解

防災管理の対象になる災害には何があるのか

オフィスビルと地割れした地面と密閉されたドラム缶が並ぶ様子
防災管理の話に入る前に、そもそも何の災害に備える制度なのかを確認します。
対象は消防法本体ではなく、政令のほうで具体的に決められています。
消防法施行令第四十五条 法第三十六条第一項の火災以外の災害で政令で定めるもの及び同項において読み替えて準用する法第八条の二の二第一項の火災以外の災害で政令で定めるものは、次に掲げる災害とする。
一 地震
二 毒性物質の発散その他の総務省令で定める原因により生ずる特殊な災害
対象になる災害は2つです。
消防法第36条第1項は、火災以外の災害で政令で定めるものによる被害の軽減のために、第8条から第8条の2の3までの規定を防災管理対象物へ準用すると定めています。
その政令で定めるものを受けているのが令第45条で、第一号の地震と、第二号の特殊な災害が並んでいます。
防災管理といえば地震というイメージが強いのは、第一号のほうが全ての防災管理対象物に共通して関わるためです。
まずは自分の建物の消防計画を開き、地震以外の災害を扱った項目があるかどうかを見てみてください。

条文には地震と並べて、もう一つの災害が書かれているんですね。

そうです。
次はその特殊な災害の中身を規則で確かめましょう。

特殊な災害とはどんな原因で生じる災害なのか

実験台の上に密閉されたドラム缶とフラスコと遮蔽容器が離して置かれ隣に金属製のキャビネットが立つ様子
令第45条第二号は総務省令で定める原因と書いているだけで、具体的な中身は書いていません。
その原因は施行規則のほうに列挙されています。
消防法施行規則第五十一条の三 令第四十五条第二号の総務省令で定める原因は、毒性物質(化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成七年法律第六十五号)第二条第一項に規定する毒性物質をいう。)若しくはこれと同等の毒性を有する物質の発散、生物剤(細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律(昭和五十七年法律第六十一号)第二条第一項に規定する生物剤をいう。)若しくは毒素(同条第二項に規定する毒素をいう。)の発散、放射性物質若しくは放射線の異常な水準の放出又はこれらの発散若しくは放出のおそれがある事故とする。
原因は条文で具体的に挙げられています。
毒性物質は化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律の定義を借りており、これと同等の毒性を持つ物質の発散も同じ扱いになります。
生物剤と毒素も、それぞれ細菌兵器や毒素兵器に関する条約等の実施に関する法律の定義を引いて特定されています。
さらに放射性物質や放射線の異常な水準の放出が加わり、最後にこれらのおそれがある事故までが原因として並べられています。
実際に物質が出てしまった場面だけを想定していると、この最後の一句を読み落とすことになるので注意してください。

化学工場でなくても、こういう事故は考えておく必要があるということですか。

条文は建物の用途で対象を絞ってはいません。
次は消防計画に何を書くのかを見ていきましょう。

特殊な災害について消防計画に何を定めるのか

机の上に開いたバインダーと電話機が置かれ隣の出入口の床に大きな矢印の誘導表示がある様子
対象になる災害がわかったら、次は消防計画への書き方です。
規則は災害の種類ごとに号を分けて記載事項を定めています。
消防法施行規則第五十一条の八第一項第三号 令第四十五条第二号に掲げる災害による被害の軽減に関する事項として次に掲げる事項
イ 令第四十五条第二号に掲げる災害発生時における通報連絡及び避難誘導に関すること。
ロ イに掲げるもののほか、建築物その他の工作物における令第四十五条第二号に掲げる災害による被害の軽減に関し必要な事項
書く柱は通報連絡と避難誘導です。
イが具体的に名指ししているのはこの2つで、ロがそれ以外に必要な事項を受け止める作りになっています。
同じ規則の第二号は地震について定めた号で、被害想定・自主検査・設備の点検整備・家具の転倒防止・応急措置と、イからヘまで6項目が並びます。
第三号がイとロの2項目にとどまっているのは、条文が名指ししている中身が在館者を導くことと関係機関へ知らせることだからです。
自分の消防計画に、地震の項目とは別に通報連絡と避難誘導を定めた項目があるかを確認してみてください。

地震の項目とは別に、通報と避難誘導だけの項目を立てるということですね。

そのとおりです。
号が分かれているので、まとめて書くと片方が抜けやすくなります。

特殊な災害の対策で実務が取り違えやすいのはどこか

長机の左端に分厚い書類の束が積まれ右端に薄い紙が一枚だけ置かれ後ろに人が立つ様子
記載事項が少ない号ほど、書いたつもりで空欄のまま残りがちです。
柱書の書き方も合わせて読んでおく必要があります。
消防法施行規則第五十一条の八第一項 防災管理者は、令第四十八条第一項の規定により、建築物その他の工作物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況等に応じ、おおむね次に掲げる事項について、当該建築物その他の工作物の管理について権原を有する者の指示を受けて防災管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。(略)
第三号だけを外してよいとは書かれていません。
柱書は第一号から第三号までをひとまとめに受けており、用途によって第三号を省いてよいという但し書きは置かれていません。
また第二号のような細かい項目が無いぶん、第三号は関係機関へ通報し避難誘導を行うという一行で終わらせてしまいやすい部分でもあります。
もう一つ見落としやすいのが規則第51条の3の末尾で、おそれがある事故の段階から原因に含まれている点です。
通報先と避難誘導の担当者が地震の場合と同じでよいのかを一度確かめておくと、書面が実態に近づきます。

一行で済ませていた項目に、思ったより意味があったんですね。

号が分かれている以上、別の想定として書く必要があります。
最後に確認の手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

バインダーを開いて立つ人と電話機の載った机と壁に掛かった館内図の板
条文の並びがつかめたら、あとは手元の書類と突き合わせるだけです。
訓練の回数についても規則に定めがあります。
消防法施行規則第五十一条の八第三項 防災管理者は、令第四十八条第二項の避難訓練を年一回以上実施しなければならない
確認は消防計画の目次から始めます。
まず届け出ている防災管理に係る消防計画を開き、第三号にあたる項目が地震の項目と別に立っているかを見ます。
次に、その項目に通報連絡の相手と避難誘導の担当が具体的に書かれているかを読み返します。
避難訓練は規則第51条の8第3項により年1回以上と定められており、災害の種別で回数を分けてはいません。
訓練の想定をそろえて終わりにするのではなく、通報と誘導の手順が特殊な災害でも動くかを一度確かめておくと、計画の見直しがしやすくなります。

消防計画の目次を見れば、抜けているかどうかはすぐわかりますね。

はい。
まずは第三号の項目があるかどうかから確認してみてください。

よくある質問

Q特殊な災害の原因は消防法施行規則第51条の3に挙げられたものだけですか?
A条文は毒性物質やこれと同等の毒性を有する物質の発散、生物剤と毒素の発散、放射性物質または放射線の異常な水準の放出、そしてこれらのおそれがある事故を原因として挙げています。個別の事象がこれに当たるかどうかの判断は所轄消防署にご確認ください。
Q地震の項目と特殊な災害の項目は、まとめて書いてはいけませんか?
A消防法施行規則第51条の8第1項は、地震を第二号、令第45条第二号の災害を第三号として別の号に分けています。まとめ方について定めた規定は置かれていませんが、号が分かれている以上、どちらの内容も読み取れる形にしておくのが安全です。
Q特殊な災害を想定した訓練を別に行う義務はありますか?
A消防法施行規則第51条の8第3項が定めているのは避難訓練を年1回以上という回数で、災害の種別ごとに回数を分けてはいません。想定をどう組むかは消防計画の内容によりますので、所轄消防署にご確認ください。
Q防災管理対象物でなくても、この特殊な災害の規定は関わりますか?
A令第45条は消防法第36条第1項を受けた規定で、同項の対象は令第46条により令第4条の2の4の防火対象物とされています。防災管理対象物に当たらない建物には、この記載事項の定めは及びません。

まとめ

消防法第36条第1項の火災以外の災害で政令で定めるものは、消防法施行令第45条が地震と特殊な災害の2つを挙げている
特殊な災害の原因は消防法施行規則第51条の3にあり、毒性物質とこれと同等の毒性を有する物質の発散が最初に置かれている
生物剤と毒素の発散、放射性物質や放射線の異常な水準の放出も同じ条文に並んでいる
発散や放出のおそれがある事故も原因に含まれるので、実際に出てしまった場面だけを想定しない
消防計画の記載事項は規則第51条の8第1項第3号にあり、イが通報連絡及び避難誘導を名指ししている
地震の第二号がイからヘまでの6項目なのに対し、第三号はイとロの2項目にとどまる
避難訓練は規則第51条の8第3項により年1回以上で、災害の種別ごとの回数は定められていない

対象になる災害が2つあることも、書く項目が分かれていることも整理できました。

まずは消防計画の第三号の項目を開いてみてください。
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参考・出典

  • 消防法第36条第1項
  • 消防法施行令第45条
  • 消防法施行令第46条
  • 消防法施行令第48条第1項・第2項
  • 消防法施行規則第51条の3
  • 消防法施行規則第51条の8第1項・第3項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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