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避難経路を建物の利用者にどう知らせるのか|消防計画に定める避難施設の案内を解説

避難経路を建物の利用者にどう知らせるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

建物の避難経路は、そこで毎日働いている人だけでなく、はじめて訪れた人にも伝わっていなければ意味がありません。
消防計画に定める事項をたどると、避難施設の維持管理と並んで「その案内」という言葉が置かれています。
廊下に物を置かないことは広く知られていますが、案内のほうは後回しになりがちです。
この記事では、消防計画に定める避難施設の案内が何を指し、どの建物が対象になり、書いたあとに何を確かめればよいのかを解説します。

消防計画に避難施設のことは書いてあるんですが、案内という言葉まで意識していませんでした。

維持管理と案内は同じ号の中に並んで書かれています。
片方だけでは条文を満たしたことになりません。

物を置かないように見回るだけでは足りないということですか。

そのとおりです。
条文の並びから順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 消防計画には避難施設の維持管理と並んで「その案内」に関することを定めなければなりません。(消防法施行規則第3条第1項第1号ニ)
  • 条文が名前を出しているのは避難通路・避難口・安全区画・防煙区画で、末尾は「その他の避難施設」と閉じられています。
  • 対象になるのは防火管理者を定めなければならない防火対象物で、収容人員10人以上・30人以上・50人以上の三段階で線が引かれています。(消防法施行令第1条の2第3項第1号)
  • 物件の放置を防ぐ側の義務は消防法第8条の2の4という別の条文が受け持っています。
  • 消防計画に従って業務が行われていないと認められたときは、管理権原者に必要な措置を講ずべきことが命じられることがあります。(消防法第8条第4項)

消防計画に定める避難施設の案内の要点をまとめた図解

消防計画の避難施設の案内とは何を指すのか

壁に取り付けた案内板の前で来館者に避難経路を説明する従業員
消防計画に定める事項は、消防法施行規則が号ごとに列挙しています。
そのなかで避難施設の話が出てくるのは一か所だけです。
消防法施行規則第三条第一項第一号ニ 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること
避難施設は維持管理と案内の二つで一組です。
条文は「維持管理」と「その案内」をひとつの号のなかに並べて置いています。
物を置かない、鍵をかけないという維持管理を徹底しても、それだけではこの号の半分にしか手が届いていません。
そこに案内、つまり避難施設がどこにあるのかを人に伝える取組みが加わって、はじめて号の全体になります。
まずは手元の消防計画を開き、案内に関する記載があるかどうかを確かめてみてください。

うちの消防計画を思い返すと、維持管理の話しか書いていない気がします。

よくあることです。
次はこの号がどの建物に及ぶのかを見ていきましょう。

どの建物の消防計画に書かなければならないのか

規模の異なる三棟の建物とその前に立つ人数の違う人の集まり
この号は、消防計画を作らなければならない建物すべてに掛かります。
その入口は防火管理者の選任が必要になる建物の範囲です。
消防法施行令第一条の二第三項第一号(抜粋) イ 別表第一(六)項ロ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が十人以上のもの ロ 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ(略)に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が三十人以上のもの ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの
対象は防火管理者を定めなければならない防火対象物です。
自力で避難することが難しい人が利用する(6)項ロなどは収容人員10人以上、劇場や飲食店のような特定用途は30人以上、事務所や倉庫などは50人以上が線引きになります。
ここでいう収容人員は、条文が出入し、勤務し、又は居住する者の数と定義しており、従業員だけを数える言葉ではありません。
建物の規模を測る物差しの段階からその建物に出入りする人が数に入っている、という点は案内を考えるときの手がかりになります。
自分の建物がどの段階に当たるかは、防火管理者の選任届を出したときの区分を見返せば確認できます。

収容人員には来館されるお客様も入っているんですね。

条文の定義がそうなっています。
次は案内する避難施設の範囲を確認しましょう。

案内すべき避難施設はどこまで含むのか

扉と階段をつなぐ廊下と天井から下がる区画用の垂れ壁を切り出した建物の断面
避難施設という言葉は、消防法令のなかで二か所に例示があります。
消防計画に定める事項の側と、物件の放置を禁じる側です。
消防法第八条の二の四(抜粋) 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
条文は二か所で別々の言葉を並べています。
消防計画側の規則第3条第1項第1号ニは避難通路・避難口・安全区画・防煙区画を挙げ、「その他の避難施設」で閉じています。
物件の放置を禁じる消防法第8条の2の4は廊下・階段・避難口を挙げ、「その他の避難上必要な施設」で閉じています。
どちらも例示のあとに「その他の」が続く書き方なので、名前が挙がっている四つや三つだけに限られるわけではありません。
案内の範囲を組み立てるときは、まず条文が名前を出している施設から手をつけると漏れが出にくくなります。

避難口だけは両方の条文に出てくるんですね。

そこが両方の義務が重なる場所です。
次は書いたまま実行しなかった場合の話に進みます。

消防計画に書いたまま実行しないとどうなるのか

開いた消防計画の綴りと何も掲げられていない壁を前に立つ立入検査の担当者
消防計画は作って届け出れば終わりという書類ではありません。
条文は、計画どおりに行われていない状態そのものを命令の要件にしています。
消防法第八条第四項 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
命令を受けるのは防火管理者ではなく管理権原者です。
条文が求めているのは法令の規定又は消防計画に従つて業務が行われていることであり、書面が存在することではありません。
案内について立派な記載を置いておきながら、実際には何も行われていないという状態は、この要件にそのまま当てはまります。
この命令に違反した場合の罰則は、消防法第41条第1項第2号に一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金と定められています。
命令の名宛人は管理権原者なので、防火管理者は実施の状況を権原者へ上げておく必要があります。

書いてあるのにやっていないほうが、かえって立場が悪くなるということですか。

条文は計画に従っているかどうかを見ています。
最後に確認の手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を持って案内板と押し棒の付いた扉を順に見て回る防火管理者
最後に、避難施設の案内をどう点検すればよいのかを整理します。
条文は防火管理者の動き方まで定めています。
消防法施行令第三条の二第二項 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について(略)避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。 同条第三項 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
まずは消防計画を開いて案内の記載を読み直します。
第一に、自分の消防計画に避難施設の案内に関する記載があるかどうかを確かめます。
第二に、書いてある内容が今の建物の使い方と合っているかを、実際に歩いて突き合わせます。
第三に、直す必要があれば管理権原者の指示を受けて消防計画を改め、所轄の消防署へ届出をします。
規則第3条第1項は消防計画を変更するときも同じ届出が必要だと定めているので、直して終わりにしないよう気をつけてください。

読み直して、歩いて確かめて、必要なら届出まで進めるということですね。

その順番で十分です。
次によくある質問を確認しましょう。

よくある質問

Q避難経路図を掲げることまで条文で決まっているのですか?
A規則第3条第1項第1号ニが求めているのは、避難施設の維持管理及びその案内に関することを消防計画に定めることです。掲示物の様式まではこの条文に定めがないため、建物の実情に合わせて管理権原者の指示を受けて決めることになります。
Q案内は従業員に伝えておけば足りますか?
A条文は伝える相手を限定していません。対象となる建物を決める収容人員が出入し、勤務し、又は居住する者の数と定義されている点も踏まえて、消防計画のなかで相手と方法を決めておくとよいでしょう。
Q工事中の建物でも同じ書き方になりますか?
A同じではありません。仮使用の認定を受けていない新築工事中の建築物などは規則第3条第1項第2号ロに従い、避難経路の維持管理及びその案内に関することを定めます。
Q案内が行われていないと罰則を受けることがありますか?
A消防法第8条第4項により管理権原者へ必要な措置が命じられることがあり、その命令に違反した場合は消防法第41条第1項第2号の罰則の対象になります。

まとめ

消防計画には避難施設の維持管理と並んで「その案内」に関することを定めなければなりません。
根拠は消防法施行規則第3条第1項第1号ニで、維持管理と案内はひとつの号に並んでいます。
対象は防火管理者を定めなければならない防火対象物で、収容人員10人以上・30人以上・50人以上の三段階で線が引かれています。
条文が名前を出しているのは避難通路・避難口・安全区画・防煙区画で、末尾は「その他の避難施設」と閉じられています。
物件の放置を禁じる義務は消防法第8条の2の4という別の条文が受け持っています。
消防計画に従って業務が行われていないときは、管理権原者に必要な措置を講ずべきことが命じられることがあります。
消防計画を変更したときも所轄の消防長または消防署長への届出が必要です。

案内という言葉にこれだけの意味があるとは思いませんでした。

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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条・第8条の2の4・第41条第1項第2号
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項・第3条の2
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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