建物を長く使っていれば、外壁の張替えや内部の作り替えの工事が必ず回ってきます。
そのとき気になるのが、古いままの消防用設備等を今の基準に直すよう言われないかという点です。
消防法にはそのための線引きがあり、政令が工事の部位と割合で切っています。
この記事では改修工事のうちどこからが大規模の修繕と模様替えに当たるのかを解説します。
外壁の改修を予定しているのですが、消防用設備等も今の基準に入れ替えになるのでしょうか。
工事の中身によります。
政令は壁の過半という一点だけを大規模の修繕と模様替えの線に置いています。
屋根や階段をやり替える工事は関係ないということですか。
建築基準法では大規模の修繕になりますが、消防法の政令はそこまで広げていません。
ただし用途によっては工事と無関係に今の基準が当たります。
- すでに建っている建物の消防用設備等は原則として工事前の基準のままでよいとされています。(消防法第17条の2の5第1項)
- その例外の一つが政令で定める増築と改築と大規模の修繕若しくは模様替えです。(消防法第17条の2の5第2項第2号)
- 政令が定める大規模の修繕と模様替えは主要構造部である壁について行う過半の修繕又は模様替えだけです。(消防法施行令第34条の3)
- 建築基準法は主要構造部の一種以上を大規模の修繕としているので、消防法の側が狭く切られています。(建築基準法第2条第14号)
- 特定防火対象物と政令が挙げる設備は工事の有無にかかわらず今の基準が適用されます。(消防法施行令第34条・第34条の4)
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目次
改修工事で消防用設備等の基準が変わるのはどんなときか

その原則と例外は同じ条文の中に並んでいます。
同条第2項第2号 工事の着手が(略)規定の施行又は適用の後である政令で定める増築、改築又は大規模の修繕若しくは模様替えに係る同条第1項の防火対象物における消防用設備等
基準が改正されても、その時点で建っている建物の消防用設備等には従前の規定が適用され、これを実務では既存不遡及と呼びます。
ところが第2項は、この据え置きが効かない場合を号で並べており、その第2号が工事に関する例外です。
つまり基準の改正後に一定の工事に着手すると、据え置きが外れて現行の基準に合わせることになります。
どの工事が対象かは条文本体には書かれておらず政令に投げられているので、次はその政令を開きます。
据え置きが外れるのは工事に着手した時点なのですね。
条文は工事の着手を基準にしています。
まずは着手予定日と工事の範囲を一枚にまとめておいてください。
大規模の修繕と模様替えはどこまでを指すのか

その一文に条件が二つ入っています。
一つ目は部位の条件で、対象は主要構造部である壁に限られます。
二つ目は分量の条件で、その壁について過半の修繕又は模様替えを行うことが要ります。
どちらか片方だけでは足りず、壁を触っていても過半に届かなければこの条には当たりません。
だから改修の計画が動き出したら、まず工事範囲図に色を塗って壁の面積が半分を超えるかどうかを見ておくと話が早く進みます。
壁を触っていても半分に届かなければ対象外なのですね。
条文はそう読めます。
ただし過半の数え方は工事の内容で見立てが変わるので、範囲図を持って所轄消防署に当ててください。
柱や階段をやり替えても消防法では大規模の修繕にならないのか

借りてきた先の建築基準法を開くと範囲がはっきりします。
同条第14号 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
同条第15号 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
建築基準法は一種以上としているので、柱でも床でもはりでも屋根でも階段でも、過半をやり替えれば大規模の修繕になります。
これに対して消防法施行令第34条の3は壁としか書いておらず、他の五つを含んでいません。
つまり建築確認の側では大規模の修繕として扱われる工事でも、消防用設備等の据え置きは外れないという場面が起こります。
逆に言えば、確認申請が要るかどうかだけを見て消防法の判断を済ませてはいけません。
建築の担当者と消防の担当者で答えが食い違うことがあるわけですね。
拾っている部位が違うので当然そうなります。
設計事務所には壁の工事量がわかる図面を別に出してもらってください。
実務で見落としやすいのはどこか

最初から外れている側を先に押さえます。
一 簡易消火用具
二 不活性ガス消火設備(略)
三 自動火災報知設備(別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項から(十七)項までに掲げる防火対象物に設けるものに限る。)
四 ガス漏れ火災警報設備(略)
五 漏電火災警報器
六 非常警報器具及び非常警報設備
七 誘導灯及び誘導標識
八 (略)
法第17条の2の5第1項は括弧書きで消火器と避難器具を据え置きの対象から外しており、残りをこの令第34条が受けています。
さらに同条第2項第4号は、百貨店や旅館や病院や地下街などの特定防火対象物を据え置きの例外に挙げており、その範囲は消防法施行令第34条の4が定めています。
飲食店や物販店や福祉施設のように特定防火対象物に当たる建物は工事をしていなくても常に現行の基準で見られるので、大規模の修繕かどうかを気にする場面は事務所や工場や倉庫や共同住宅といった非特定防火対象物に絞られます。
なお増築と改築は別の条で切られており、床面積の合計が1,000平方メートル以上か延べ面積の2分の1以上かで判断します。
うちは飲食店が入っているので、そもそも据え置きが効かない側なのですね。
その可能性が高いので、まず用途の判定から確かめてください。
点検結果報告書の表紙にある用途の欄が手がかりになります。
明日からなにを確かめればよいのか

増築や改築を含む計画なら、こちらの条文も並べて見ます。
一 工事の着手が基準時以後である増築又は改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が千平方メートル以上となることとなるもの
二 前号に掲げるもののほか、工事の着手が基準時以後である増築又は改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の二分の一以上となることとなるもの
はじめに自分の建物が特定防火対象物かどうかを確かめ、そうであれば据え置きの議論は要らず現行の基準で計画します。
非特定防火対象物であれば、工事範囲図を出して壁の工事が過半に及ぶかを見て、あわせて増築や改築の床面積が上の二つの数字に届くかを計算します。
そのうえで着手予定日と工事範囲図と現況の点検結果報告書を持って所轄消防署に事前相談してください。
着工してから話をすると設備の追加が工程に乗らないので、設計の段階で当てておくのが結局いちばん早く済みます。
用途を先に見てから工事範囲図を当てればよいわけですね。
その順番なら迷いません。
今日は点検結果報告書の用途の欄を開くところまで進めてみてください。
よくある質問
まとめ
壁の過半という一点で見ればよいとわかりました。
さっそく工事範囲図を取り寄せてみます。
用途と工事範囲図の二つがそろえば判断できます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第17条第1項/第17条の2の5第1項及び第2項/第17条の3第1項及び第2項
- 消防法施行令第34条(適用が除外されない消防用設備等)
- 消防法施行令第34条の2(増築及び改築の範囲)
- 消防法施行令第34条の3(大規模の修繕及び模様替えの範囲)
- 消防法施行令第34条の4(適用が除外されない防火対象物の範囲)
- 消防法施行令別表第一
- 建築基準法第2条第5号・第14号・第15号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





