体育館で発表会を開きたい、講堂で展示会をやりたいという相談は防火管理者のもとによく来ます。
ふだんは運動や集会に使っている建物でも、その日だけ客席を並べれば劇場等と同じ扱いになります。
この切り替えを起こしているのは消防法ではなく、市町村の火災予防条例に置かれた準用の条文です。
一日だけの催しでも客席と通路の基準はそのまま働きます。
うちの体育館で来月に発表会を開くことになりました。
ふだんの用途のままなので特別なことは要らないと思っています。
そこが落とし穴で、客席を並べた日だけ別の条文が働きます。
火災予防条例に準用という条が置かれているためです。
消防法の条文を探しても体育館の客席の話は見当たりませんでした。
どこを開けば書いてあるのでしょうか。
探す場所は市町村の条例の避難管理の章です。
まずその準用の条文から順に見ていきましょう。
- 体育館や講堂を一時的に劇場等や展示場やディスコ等の用途に供する場合は避難管理の規定が準用される
- 根拠は消防法でも消防法施行令でもなく市町村の火災予防条例に置かれた準用の条である
- 準用されるのは客席の構造と定員と避難口の施錠禁止と非常時の照明と音響の停止までを含む
- ライブハウスと同じ扱いになる日は特殊照明と音響をすみやかに止めて明るさを保つ義務が関係者にかかる
- 一方で飲食店やキヤバレー等の避難通路の条は準用の対象から外れている
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目次
体育館や講堂を一日だけ別の用途に使うと決まりは変わるのか

市町村の火災予防条例には、避難管理の章の最後に次の一条が置かれています。
消防法の全文を機械で数えると客席も避難通路も定員も一度も出てきません。
消防法施行令に出てくる客席は客席誘導灯の照度の規定だけで、消防法施行規則に出てくる避難通路も消防計画に定める維持管理の項目名としてだけです。
つまり客席の並べ方や通路の幅を数字で縛っているのは市町村の条例だけであり、その条例が使い方の変わる日を準用という形で拾っています。
まずは自分の市町村の火災予防条例を開き、避難管理の章の末尾に準用の条があるかを確かめてください。
建物の用途ではなく使い方で決まるというのは意外でした。
条文がわざわざ一時的にと書いているのがその証拠です。
次はどんな使い方が対象になるのかを見ます。
どんな使い方が準用の対象になるのか

その用途を示す語は、同じ条例の別の条で定義されています。
舞台と客席を組んで発表会や講演会を開けば劇場等の用途に供したことになります。
パネルや展示台を並べて作品展や物産展を開けば展示場の用途に供したことになります。
音響と照明を持ち込んでライブを開けばディスコ等の用途に供したことになり、この語は条例の中でディスコ、ライブハウスその他これらに類するものと定義されています。
条文の主語が体育館、講堂その他の防火対象物となっている点も見落とせず、会議室でも倉庫でも工場の一角でも、使い方が右の用途に当たれば同じように準用されます。
社員食堂を一日だけ会場にするのも同じということですね。
条文は建物の種類を限定していません。
次は準用されると何が求められるのかを見ます。
準用されるとなにを守らなければならないのか

なかでも会場運営に直結し、かつ見落とされやすいのが次の一条です。
暗転した会場で警報が鳴っても、音響が流れたままでは放送も指示も届かず、照明が客席を照らさなければ通路も見えません。
これに加えて、劇場等の用途に供する日はいすの固定やいす背の80センチメートル以上といった客席の構造の条と、定員を超えて客を入れず満員札を掲げる条が準用されます。
展示場の用途に供する日は売場又は展示場の床面積が150平方メートル以上で主要避難通路が、600平方メートル以上で補助避難通路が求められる条が準用されます。
避難口の管理と防火設備の管理の条も準用されるので、通路と避難口はふだんの日とまったく同じ基準で見られます。
つまり音響を止める担当者を先に決めておけばよいのですね。
そのとおりです。
音響卓の担当者と客席の照明の担当者を当日の名簿に書いておいてください。
実務で見落としやすいのはどこか

条文の側にも見落としがあり、逃げ道になる一条が準用の中に含まれています。
いすを床に固定するといった条をそのまま読むと、折りたたみいすを並べる催しは成り立たないように見えますが、この特例が同じ準用の対象に入っているため、事前に消防長または消防署長の判断を仰ぐ道が残されています。
逆に、キヤバレー等及び飲食店の避難通路を定める条は準用する条の並びから外れており、会場に飲食の席を設けてもその条が自動的にかかるわけではありません。
また準用は届出とは別の話で、劇場等以外の建築物その他の工作物における演劇や映画その他の催物の開催には別に届出の条が置かれています。
条番号は市町村ごとに動くので、条例(例)の番号をそのまま自分の市町村に当てはめないでください。
いすの固定は無理だとあきらめる前に相談すればよかったのですね。
相談の材料になるのが会場図です。
いすの配置と通路と避難口を描いて持っていってください。
明日からなにを確認すればよいのか

最初に見るのは、条文が名指ししている避難口の状態です。
いすの配置と通路の幅と避難口の位置を一枚の図にし、通路が避難口まで途切れずにつながっているかを線でたどってください。
次に、当日その避難口が本当に開くかを実際に押して確かめ、かぎを掛ける運用が残っていないかを催しの主催者にも確認します。
そのうえで、音響と照明を止める担当者と、客席の明るさを戻す手順を当日の体制表に書き込みます。
最後に、その図と体制表を持って所轄消防署に相談し、届出が必要かどうかと特例の判断を同時に確かめておけば当日が楽になります。
会場図なら今日のうちに描けそうです。
その一枚があれば相談も一度で済みます。
催しのたびに使い回せる形で残しておいてください。
よくある質問
まとめ
明日は条例を開いて避難管理の章に準用の条があるか探してみます。
見つけた条番号を会場図に書き添えておくと相談が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官)第1条
- 火災予防条例(例)第23条第1項第1号・第2号
- 火災予防条例(例)第35条・第36条・第36条の2
- 火災予防条例(例)第37条・第37条の2
- 火災予防条例(例)第38条・第39条・第40条・第41条
- 火災予防条例(例)第42条
- 火災予防条例(例)第45条第3号
- 火災予防条例(例)第49条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条・第22条第4項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条第2項第3号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





