BLOG

非火災報が続くからと自動火災報知設備の電源を切ってよいのか|ベル機能表示装置と維持義務を解説

非火災報が続いても自動火災報知設備の電源は切れないことを示すホテル廊下の受信機のアイキャッチ

自動火災報知設備のベルが理由もなく鳴る日が続くと、現場では電源を落としたくなります。
ところがその一手で、建物は火災を知らせる手段を丸ごと失います。
昭和61年の消防庁の通知は、まさにその行為を止めるために出されました。
そして装置を付けても電源を切ってよいことにはならないと念を押しています。

誤報が続くので受信機のスイッチを切ってしまう日があります。

それは消防法が求める維持から外れた状態です。
まさにその行為を止めるための通知があります。

切ったことは誰にも分からないと思っていました。

その分からなさこそが危険だと通知は見ていました。
だから機能の状態を第三者に見せる方策が示されたのです。

この記事の結論
  • 非火災報が続くことを理由に自動火災報知設備の電源を切って機能を止める例があったため、昭和61年に消防予第41号の通知が出された
  • 示されたのは地区音響装置が鳴る状態にあるかどうかを第三者が見て分かるようにする装置で、通知はこれをベル機能表示装置と呼んでいる
  • 表示は文字か絵文字を点灯させる方式とし、電源は受信機から供給して予備電源までは求めていない
  • 取付工事は受信機の工事を伴うため甲種消防設備士でなければ行えず、その根拠は今も消防法施行令第36条の2第1項第9号にある
  • 通知は最後に機能停止の表示をもって電源の遮断が認められるものではないとくぎを刺している

自動火災報知設備の電源遮断の防止を非火災報が続く場面から電源を切る行為とベル機能表示装置と鳴る状態の確認まで4つの段階で示した図解

自動火災報知設備の電源を切る行為はなぜ通知が出るまでになったのか

ホテルの建物のそばで壁のベルが鳴らないまま屋根から煙が上がっている様子
この通知は、宿泊施設の火災を受けて出された一連の指導の続きにあたります。
まず前段として、防火安全対策の徹底を求める次長通達が出ていました。
自動火災報知設備の電源遮断による設備機能の停止の防止対策について(通知)(昭和61年4月2日 消防予第41号) 去る2月14日、熱川温泉ホテル大東館火災の発生を踏まえ「旅館・ホテル等に対する防火安全対策の徹底について」(昭和61年2月14日付け消防予第12号 消防庁次長通達)を通知し、特に、同通達中において、自動火災報知設備については、非火災報の発生等を理由にして当該設備の電源のスイッチを遮断し、その機能を停止している場合があることにかんがみ、かかることが行われないようその徹底について指導方お願いしたところである。
問題は誤報そのものではありません。
通知が正面から取り上げているのは、誤報に困った関係者が電源のスイッチを遮断して設備の機能を止めてしまう、という現場の対処のほうです。
電源を切れば確かに音は止まりますが、同時に本物の火災を知らせる働きも止まります。
しかも切ったことは外から見えないので、危険な状態がそのまま何日も続いてしまいます。
自分の建物で音を止める操作が習慣になっていないか、まずは思い当たるところから振り返ってみてください。

音を止めるつもりが設備ごと止めていたのですね。

そこが通知の出発点です。
次はどんな建物に向けて示されたのかを見ていきましょう。

ベル機能表示装置はどんな建物に向けて示されたのか

フロントに人が立つホテルの建物と小さな事務所ビルが並び宿泊施設が対象として示されている様子
通知は各都道府県の消防主管部長にあてたもので、直接の名指しは宿泊施設です。
そして義務ではなく自主的な推進を求める書きぶりになっています。
自動火災報知設備の電源遮断による設備機能の停止の防止対策について(通知)(昭和61年4月2日 消防予第41号) ついては、過去における火災事故例にかんがみ、特に、旅館・ホテル等の宿泊施設については、その関係者が自主的にこれらの対策を推進することが望まれるところであるので、ベル機能表示装置の設置については下記第2の事項を留意のうえ、また、その他の伝達方策の確立については上記の趣旨にのつとり、その推進について指導するようお願いする。
装置そのものは任意の対策です。
ベル機能表示装置を付けなさいという法令上の義務があるわけではなく、通知は自主的に推進することが望まれると書いています。
一方で、電源を切って機能を止めてはならないという原則のほうは宿泊施設に限りません。
消防用設備等を設置し、そのうえで維持することは、防火対象物の関係者に課された義務だからです。
消防法第十七条第一項 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない
条文が維持まで求めている以上、動かない状態で置いておくことは設置していないのと変わりません。
装置を入れるかどうかは自主判断でも、電源を入れておくことは自主判断の外にあります。

装置は任意でも、切らないことは義務なのですね。

そこを混ぜないことが大切です。
では装置の中身を見ていきましょう。

ベル機能表示装置には何が求められているのか

受信機の盤からケーブルが伸びて二つのランプが並ぶ壁付けの表示装置につながっている様子
通知は第1で装置の機能を示しています。
見るべきは地区音響装置に電気が通っているかどうかの一点です。
自動火災報知設備の電源遮断による設備機能の停止の防止対策について(通知)(昭和61年4月2日 消防予第41号) 第1 ベル機能表示装置の機能等 1 ベル機能表示装置は、ベル回路への通電状態に応じ、ベル機能が正常に作動し得る状況にあること及びベル機能が停止している状況にあることをそれぞれ表示できるものであること。(略)3 ベル機能表示装置の電源は、受信機から供給されていること。この場合において、ベル機能表示装置のための予備電源の確保は必要としないこと。4 自動火災報知設備にベル機能表示装置を付加設置する場合は、ベル機能表示装置の故障、当該装置と受信機との間の配線の短絡等により、受信機の機能に障害を与えないようヒューズを設ける等必要な措置が講じられていること。
設計の軸は分かりやすさです。
表示事項は第三者が容易に理解できる文字か絵文字とされ、通知は例として通電されているときを機能正常、通電されていないときを機能停止と表す書き方を挙げています。
その文字や絵文字は点灯によって表示できるものとされ、点灯色は機能正常なら緑色、機能停止なら赤色とすることなどが考えられると示されました。
大きさと明るさも第三者が十分確認できることが条件で、要するに専門知識のない人が通りがかりに読めることを狙っています。
付ける場所を検討するときは、まず宿泊客や利用者の動線から見えるかどうかで候補を絞ってください。

緑と赤なら宿泊客にも一目で伝わりますね。

それが通知の狙いです。
ただしここから先に落とし穴があります。

表示装置を付ければ電源を切ってよいことになるのか

二つのランプが並ぶ表示装置の横で受信機のレバーが切られた位置に倒され赤い禁止の印が付いている様子
ここが通知でいちばん誤解されやすいところです。
表示できるようになったことと、切ってよいことは別だと第2で明言されています。
自動火災報知設備の電源遮断による設備機能の停止の防止対策について(通知)(昭和61年4月2日 消防予第41号) 第2 留意事項 (略)2 ベル機能表示装置の取付工事は、受信機の工事を伴うものであるので、甲種消防設備士でなければ行えないものであること。(略)4 ベル機能表示装置によるベル機能状況の表示は、ベル機能の状況を第三者の監視のもとに置く趣旨のものであり、ベル機能の停止の表示をもつて自動火災報知設備の電源の遮断が認められるものでないこと
装置は免罪符ではありません。
表示の目的はあくまで機能の状態を第三者の監視のもとに置くことで、停止と表示できるからといって停止が許されるわけではないと通知は書き切っています。
もうひとつ見落とされやすいのが工事の資格で、この装置は受信機に手を入れるため誰でも取り付けられるわけではありません。
自動火災報知設備の設置に係る工事は消防法施行令第36条の2第1項第9号で消防設備士の業務とされ、その区分は消防法施行規則第33条の3により甲種第4類です。
見積りを取るときは、施工する会社に甲種第4類の消防設備士がいるかを先に確かめておくと後戻りがありません。

付けたら切ってよいと考えるのは逆だったのですね。

通知はそこをはっきり否定しています。
最後に今の受信機で何を見ればよいかを整理しましょう。

明日から自分の建物で何を確かめればよいのか

点検表を持った人と受信機の盤と壁のベルが並び鳴る状態かを確かめている様子
通知が出たあと、受信機の規格そのものにも同じ考え方が取り込まれました。
今の受信機は、切りっぱなしを盤の前面で気づかせる作りになっています。
受信機に係る技術上の規格を定める省令第三条 (略)十四 主電源を監視する装置を受信機の前面に設けること。(略)十七 定位置に自動的に復旧しないスイッチを設けるものにあつては、当該スイッチが定位置にないとき、音響装置又は点滅する注意灯が作動すること。
盤の前面がいちばんの点検表です。
主電源を監視する装置は受信機の前面にあり、スイッチが定位置に戻っていなければ注意灯か音で知らせる仕組みになっています。
さらに地区音響装置の鳴動を停止するスイッチを持つ受信機については、停止したままでも火災信号を受ければ一定時間以内に自動的に鳴動状態へ戻る機能が同じ省令の第18号で求められています。
消防法施行規則第24条第2号ハも、特定一階段等防火対象物などについて同じ内容を設置の基準として置いています。
明日はまず受信機の前面に立ち、注意灯が点いていないか、主電源の表示が正常かを見てから、うるさい原因のほうを消防設備士に相談してください。

盤の前面を見るだけなら今日からできますね。

そこが出発点で十分です。
切らずに直すという順番だけ覚えておいてください。

よくある質問

Qベル機能表示装置は今も設置が義務づけられているのですか?
A通知は旅館やホテル等の関係者が自主的に推進することが望まれると書いており、設置そのものを義務づける書き方はしていません。義務として動かないままにできないのは自動火災報知設備の本体のほうです。
Q主電源を切らずに地区音響装置だけを止めるのなら問題ないのですか?
A通知はベル機能が停止している状況そのものを表示させて第三者の監視のもとに置く趣旨だと述べており、止めた状態を良しとしていません。地区音響装置の鳴動を停止するスイッチを持つ受信機には、停止したままでも火災信号を受ければ自動的に鳴動状態へ戻る機能が省令で求められています。
Q表示装置の取付けは電気工事の会社に頼んでもよいのですか?
A通知は受信機の工事を伴うため甲種消防設備士でなければ行えないとしています。加えて、当該受信機の製造業者に関係する甲種消防設備士に行わせることとされたい、とまで書かれています。
Q表示装置には非常電源を用意しなければならないのですか?
A通知は電源を受信機から供給することとし、表示装置のための予備電源の確保は必要としないと明記しています。ただし装置の故障や配線の短絡が受信機に影響しないよう、ヒューズを設ける等の措置は求められています。

まとめ

昭和61年4月2日の消防予第41号は、非火災報を理由に自動火災報知設備の電源を切る行為を止めるために出された通知である
ベル機能表示装置はベル回路への通電状態を第三者に見せるための装置で、鳴る状態か止まっている状態かをそれぞれ表示する
表示は文字か絵文字を点灯させる方式とし、通知は機能正常を緑色、機能停止を赤色とする例を挙げている
電源は受信機から供給し予備電源は不要だが、故障や短絡が受信機に及ばないようヒューズを設ける等の措置が要る
取付工事は受信機の工事を伴うため甲種消防設備士の仕事で、区分は消防法施行規則第33条の3により甲種第4類にあたる
機能停止の表示ができることをもって電源の遮断が認められるものではないと通知は明言している
今の受信機は主電源を監視する装置を前面に持ち、スイッチが定位置にないときは音響装置か点滅する注意灯が作動することが省令で求められている

電源を切るという選択肢は最初から無かったのだと分かりました。

まずは受信機の前面を見るところから始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 自動火災報知設備の電源遮断による設備機能の停止の防止対策について(通知)(昭和61年4月2日 消防予第41号)
  • 旅館・ホテル等に対する防火安全対策の徹底について(昭和61年2月14日 消防予第12号)
  • 消防法第17条第1項・第17条の4・第17条の5・第17条の6
  • 消防法施行令第36条の2第1項第9号
  • 消防法施行規則第24条第2号・第5号
  • 消防法施行規則第33条の3
  • 受信機に係る技術上の規格を定める省令第3条第14号・第17号・第18号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
非火災報が続いても自動火災報知設備の電源は切れないことを示すホテル廊下の受信機のアイキャッチ
自動火災報知設備のベルが理由もなく鳴る日が続くと、現場では電源を落としたくなります。 ところがその一手で、建物は火災を知らせる手段を丸ごと失います。 昭和61年の消防庁の通知は、まさにその行為を止めるために出されました。...