テナントごとに防火管理者を置いている建物でも建物全体をまとめる人を別に定めなければならないことがあります。
それが統括防火管理者で定めていないことが分かると消防長又は消防署長から命令が出ます。
この選任命令には防火管理者の場合と違って直接の罰則が置かれていません。
この記事では統括防火管理者を定めていないときに消防が出す命令とその先の手続を条文の順に解説します。
テナントごとに防火管理者を置いている建物です。
建物全体をまとめる人も要ると言われました。
管理権原が分かれた一定の建物では統括防火管理者を定める義務があります。
定めていないと消防から命令が出ます。
その命令に従わなかったら罰則があるのでしょうか。
消防法の罰則にはこの命令の違反を処罰する規定が置かれていません。
ただし放置すると使用停止命令まで進みます。
- 管理について権原が分かれた一定の防火対象物では統括防火管理者を協議して定めなければなりません。(消防法第8条の2第1項)
- 定められていないと認める場合は権原を有する者に対して定めるべきことを命じられます。(消防法第8条の2第5項)
- 業務が法令や全体の消防計画に従って行われていないときは必要な措置を命じられます。(消防法第8条の2第6項)
- 命令をした場合は標識の設置などにより公示されます。(消防法第8条の2第7項が準用する第5条第3項)
- 放置すると使用停止命令に進みそこからは重い罰則が定められています。(消防法第5条の2第1項第1号及び第39条の2の2第1項)
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目次
統括防火管理者を定めなければならないのはどんな建物か

根拠は消防法第8条の2第1項です。
高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。略)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(略)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(略)を協議して定め(略)当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
高さ31mを超える高層建築物のほか 政令で定める防火対象物が対象になります。
消防法施行令第3条の3は (6)項ロ及び(16)項イのうち地階を除く階数が3以上で収容人員が10人以上のものを第1号に挙げています。
第2号は (1)項から(4)項まで(5)項イ(6)項イ・ハ・ニ(9)項イ及び(16)項イで地階を除く階数が3以上かつ収容人員が30人以上のもの 第3号は(16)項ロで地階を除く階数が5以上かつ収容人員が50人以上のもの 第4号は(16の3)項です。
自分の建物がどれに当たるかは 用途と階数と収容人員の3つを並べて確かめてください。
用途だけでは決まらないのですね。
階数と収容人員がそろって初めて対象になります。
まず建物の用途区分を書き出してみてください。
定めていないと消防はなにを命じるのか

根拠は消防法第8条の2第5項です。
消防長又は消防署長は、第一項の防火対象物について統括防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により統括防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
統括防火管理者に選ばれた人ではなく 管理について権原を有する者が名宛人になります。
条文は権原を有する者と定めるだけで人数を限っていないので 権原が分かれた建物では宛名の数も一つとは限りません。
定めたあとは第8条の2第4項により遅滞なく所轄消防長又は消防署長へ届け出る必要があり 解任したときも同じです。
命令の書面を受け取ったら まず宛名が誰になっているかを確かめてください。
選ばれた本人が命令を受けるのだと思っていました。
条文が名宛人としているのは権原を有する者です。
賃貸借の契約書で自分の権原の範囲を確かめておいてください。
業務が消防計画どおりでないときはなにを命じるのか

中身が伴っていないときの命令が消防法第8条の2第6項です。
消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物の全体について統括防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
消防法施行令第4条の2第1項は 統括防火管理者が建物全体についての消防計画を作成し所轄消防長又は消防署長へ届け出なければならないと定めています。
同条第2項は その計画に基づいて消火と通報と避難の訓練の実施や廊下と階段と避難口の管理を行わなければならないとしています。
さらに消防法第8条の2第3項は 各テナントの防火管理者が作成する消防計画は全体についての消防計画に適合するものでなければならないと定めています。
全体の計画に書いた訓練の実施時期や避難経路が 各テナントの計画と食い違っていないかを見直してください。
全体の計画と各テナントの計画がばらばらだと指摘されるのですね。
条文が適合を求めているのはそこです。
訓練の日程だけでも先に一本化しておくと食い違いが減ります。
命令に従わなかったときはどうなるのか

処罰ではなく次の命令へ進む形になっています。
消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について次のいずれかに該当する場合には、権原を有する関係者に対し、当該防火対象物の使用の禁止、停止又は制限を命ずることができる。
一 前条第一項、次条第一項、第八条第三項若しくは第四項、第八条の二第五項若しくは第六項(略)の規定により必要な措置が命ぜられたにもかかわらず、その措置が履行されず、履行されても十分でなく(略)引き続き、火災の予防に危険であると認める場合(略)
防火管理者の場合は 第8条第3項の命令に違反した者が第42条第1項第1号に 第8条第4項の命令に違反した者が第41条第1項第2号に並んでいます。
これに対して統括防火管理者についての第8条の2第5項と第6項は これらの号にも第44条にも出てきません。
そのかわり第5条の2第1項第1号は先行する命令として第8条の2第5項と第6項を挙げており 使用停止命令へ進む道が用意されています。
使用停止命令に違反すると第39条の2の2第1項により3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金となり 第45条第1号で法人には1億円以下の罰金刑が科されます。
また第8条の2第7項は第5条第3項及び第4項を準用しているので 命令が出たことは標識の設置などにより公示されます。
すぐ罰金にならないから軽いという話ではないのですね。
むしろ建物が使えなくなる方が事業には重く響きます。
命令の期限が書かれていたら日付を先に押さえてください。
明日からなにを確認すればよいのか

確かめる先は届出の控えと全体の消防計画です。
第一項の権原を有する者は、同項の規定により統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
統括防火管理者を定めた届出の控えが手元にあるか 交代や解任のあとに出し直しているかを確かめます。
つぎに建物全体についての消防計画が作成され所轄消防長又は消防署長へ届け出てあるかを見ます。
そのうえで各テナントの消防計画を並べて 全体の計画と食い違う箇所に印を付けていきます。
権原が分かれた建物では協議の場そのものが無いことも多いので 年に一度は関係者が集まる日を決めておいてください。
まず届出の控えがあるかどうかを見ればよいのですね。
控えが見つからなければそこから立て直せば済みます。
先に管理会社へ写しの有無を聞いてみてください。
よくある質問
まとめ
届出の控えと全体の消防計画をそろえて見比べます。
各テナントの計画とのずれも洗い出します。
計画をそろえておけば命令を受ける前に手を打てます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第5条第3項及び第4項
- 消防法第5条の2第1項第1号
- 消防法第8条第2項から第4項まで
- 消防法第8条の2
- 消防法第36条第1項
- 消防法第39条の2の2第1項
- 消防法第41条第1項第2号
- 消防法第42条第1項第1号
- 消防法第44条第8号
- 消防法第45条第1号
- 消防法施行令第3条の3
- 消防法施行令第4条の2
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





