BLOG

防災管理の消防計画に地震の被害想定はどこまで書くのか|震度6強を目安にする理由と評価する8項目を解説

地震の被害想定は消防計画にどこまで書くのか

防災管理の消防計画には、地震が起きたら何がどうなるかを先に書く欄があります。
ところが条文は想定しろとしか書いていないので、どこまで見込めばよいのかが分かりません。
震度をいくつに置くのか、何を評価するのか、対策までを同じ欄に書くのかで手が止まります。
そこを埋めているのが消防庁のガイドラインです

消防計画に被害の想定という欄があるのですが、うちは大きな地震が来たら大変ですとしか書けていません。
これで通るものなのでしょうか。

その一行だと、あとに続く対策が何も決まりません。
消防庁は想定する地震の大きさも、評価する相手も示しています。

示されていたのですね。
何を見て決めればよいのか教えてください。

先に地震の規模を決め、そのうえで建物を項目ごとに見ていくという順番です。
手順が決まっているので、埋めていけば形になります。

この記事の結論
  • 被害の想定と対策は同じ号に一続きで置かれています
  • 根拠は消防法施行規則第51条の8第1項第2号イです
  • 消防庁のガイドラインは共通の目安として震度6強程度の地震を挙げています
  • 被害は建物から人までの8項目に分けて評価します
  • 避難経路は一つ以上が使えなくなる前提で組み立てます

地震の被害想定は地震の規模と建物の状況を見てから八つの項目で評価し消防計画に記載する流れを示した図解

防災管理の消防計画でいう被害の想定とは何を指すのか

高層ビルの横に担当者が立ち空欄が横に並んだ大きなボードが置かれているイラスト
防災管理者が作る消防計画は、地震の被害を軽くするための事項を号ごとに並べています。
その固まりの先頭に置かれているのが、被害の想定です。
消防法施行規則第51条の8第1項 防災管理者は、令第48条第1項の規定により、建築物その他の工作物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況等に応じ、おおむね次に掲げる事項について(略)防災管理に係る消防計画を作成し(略)届け出なければならない。(略) 二 令第45条第一号に掲げる災害(以下この号において「地震」という。)による被害の軽減に関する事項として次に掲げる事項  イ 地震発生時における建築物その他の工作物及び建築物その他の工作物に存する者等の被害の想定並びに当該想定される被害に対する対策に関すること。
想定と対策が一続きになっています
条文は被害の想定で切れておらず、当該想定される被害に対する対策までを同じイの中に置いています。
想定する相手も二つあり、建築物その他の工作物そのものと、そこに存する者等が並べて書かれています。
つまり地震で建物のどこが壊れて誰が困るのかを先に描き、その絵に合わせてロ以下の号を組み立てるという順番です。
まずは自分の消防計画を開いて、地震の固まりの先頭に想定を書いた欄があるかどうかを確かめてください。

想定を書いて終わりではなく、対策まで同じ欄の話だったのですね。
うちの計画は想定の一行しかありません。

そこが埋まらないと訓練も資機材も根拠を失います。
まずは想定する地震の大きさから決めていきましょう。

どのくらいの規模の地震を想定すればよいのか

地震計と揺れの輪が描かれた地面に高層ビルが建ちその右に止まったエレベーターの塔があるイラスト
施行規則は想定せよと書いているだけで、震度までは決めていません。
その空白を埋めているのが消防庁のガイドラインです。
大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン(平成31年 総務省消防庁)第1の5 消防計画の作成上想定すべき地震の規模としては、当該防火対象物における最大規模のものを想定する必要がある。本ガイドラインにおいては、共通的に少なくともおおむね震度6強程度の地震は考慮することとし、さらに地域防災計画における想定地震災害の規模や、建築基準法の耐震設計の考え方における「存在期間中に遭遇する可能性がある最大級の地震規模」等も併せて考慮の上、適切な強さの地震を想定することとする。また、震度6弱程度の地震が短時間に複数回発生する想定も効果的であると考えられる。
共通の下限が震度6強程度です
ガイドラインはまずその建物における最大規模を想定せよと言い、共通の目安として震度6強程度を置いています。
そのうえで市町村の地域防災計画に具体的な想定地震があるなら、そちらも併せて考慮することとされています。
建築基準法の耐震設計が置いている「存在期間中に遭遇する可能性がある最大級の地震規模」も判断材料に挙げられています。
自分の建物が建つ市町村の想定を一度調べ、震度6強程度とどちらが大きいかを見比べておいてください。

市の想定のほうが大きければ、そちらに合わせるということですね。
ハザードの資料を取り寄せてみます。

その資料は消防計画の根拠としてそのまま使えます。
規模が決まったら、次は何を評価するのかに進みます。

想定した被害はどんな項目に分けて評価するのか

一つの台の上に建物と空調機と階段とスプリンクラーヘッドと棚と受水槽と分電盤と担当者が横一列に並んでいるイラスト
被害を漠然と思い浮かべるだけでは、対策の行に落ちません。
ガイドラインは評価する相手を項目に切り分けています。
大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン(平成31年 総務省消防庁)別冊1 2 防火対象物における被害の想定 上記規模の地震に伴い、当該防火対象物において発生することが想定される被害について、耐震措置の状況や過去の実例等を踏まえ、防火・防災上の観点から評価する。(略) (1)建築構造等の基本被害 (2)建築設備等被害 (3)避難施設等被害 (4)消防用設備等被害 (5)収容物等被害 (6)ライフライン等被害 (7)火災等の発生 (8)人的被害
建物から人までの8項目に分けて見ます
骨組みだけでなく、空調や配管といった建築設備、廊下や階段などの避難施設、消防用設備等が別々に並んでいます。
棚や什器などの収容物、電気や水道といったライフラインまで入り、最後に火災の発生と人的被害が置かれています。
どれも過去の実例と自分の建物の耐震措置の状況を突き合わせて評価するという作りです。
想定欄がひとかたまりの文章になっているなら、この並びに合わせて行を割るところから始めてください。

つまり項目の数だけ行を作って埋めていけばよいのですね。
これなら何を書けばよいか迷いません。

行が分かれていれば所轄消防署とも話が早くなります。
ただし埋め方を間違えやすい項目があるので、そこを見ておきましょう。

被害の想定で実務が見落としやすいのはどこか

二つの廊下が並び右側が倒れたキャビネットと箱でふさがれて赤い禁止マークが付いているイラスト
想定を甘く書いても、その場では誰にも咎められません。
ガイドラインは甘くなりやすい箇所を先回りして押さえています。
大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン(平成31年 総務省消防庁)別冊1 2(3)避難施設等被害 ウ 避難経路のうち1以上は使用に障害が発生することを想定する。 同2(6)ライフライン等被害 ア 基本的にライフラインは利用できないものとして想定する。 イ 代替措置がなされている場合(非常電源の設置、貯水槽の確保、無線通信手段の確保等)にその影響が軽減されるものと想定する。
全部使える前提で書かないことです
避難経路は一つ以上が使えなくなるものとして想定するよう求められており、全経路が生きている図で組んではいけません。
電気も水道も電話もまず止まるところから考え、非常電源や貯水槽があって初めて影響が軽くなるという順序になっています。
新耐震基準に適合していれば建築構造等の大きな被害は考慮しなくてよいとされていますが、これは骨組みの話であって、収容物や設備まで免れるという意味ではありません。
想定した規模に届かない地震でも長周期地震動でエレベーターが多数停止する可能性が挙げられているので、その一手も忘れずに入れてください。

うちの計画はどの階段も使える前提で書いてありました。
これは直さないといけませんね。

そこを直すと避難誘導の手順まで書き換わります。
最後に、明日から何を開けばよいのかを並べておきます。

明日からなにを確認すればよいのか

書類と巻いた図面が置かれた台の横に担当者が立ち非常用発電機と受水槽が並んでいるイラスト
やることは多くありません。
ガイドラインが示す順番どおりに開いていけば、抜けている行が見えてきます。
大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン(平成31年 総務省消防庁)第1の5 <消防計画作成の一般的な手順> (1)防火対象物の状況の調査・分析 防火対象物の利用形態、建物形態、設備等の状況を調査し、特徴等を分析する(略) (2)被害態様の評価 具体的な災害の発生を想定し、その被害態様の全体像(略)を評価する(略) (3)防火・防災安全上の目標設定 当該防火対象物における防火・防災安全上の目標を設定する。基本的な目標は、まず第一に利用者の人命・身体安全の確保であり、その後は二次災害の防止となる。
調べる順番は建物が先で被害が後です
最初に用途と階層と在館者の人数と設備の状況を書き出し、そのうえで被害の全体像を評価するという流れになっています。
評価が終わったら、人命の確保を第一に置いた目標を決め、そこから資機材や要員の数が決まっていきます。
消防計画の想定欄に建物の調査結果が一つも書かれていないなら、そこが最初に埋めるべき空白です。
書き直した消防計画は変更の届出が必要になるので、所轄消防署へ出すところまでを一続きの作業として予定に入れてください。

建物の調査から始めればよかったのですね。
届出まで含めて段取りを組んでみます。

その段取りが組めれば、想定は自然と具体的になります。
迷った箇所は所轄消防署に相談しながら進めてください。

よくある質問

Q被害の想定は必ず震度6強で行わなければなりませんか?
Aガイドラインが求めているのはその建物における最大規模の想定で、震度6強程度は共通的に考慮する目安として置かれています。地域防災計画の想定地震災害の規模がそれより大きければ、そちらも併せて考慮したうえで適切な強さを決めることとされています。市町村の資料を確認してから決めてください。
Q毒性物質の発散等による災害についても被害の想定を作るのですか?
A施行規則第51条の8第1項第3号は通報連絡及び避難誘導に関することを求めていますが、被害の想定という号は置かれていません。ガイドラインも、こうした災害は特殊性や人為的な要素が大きく個別に態様を想定することは困難であるとして、地震等の災害への対応を想定した計画を応用して活用できる範囲で対応することで足りるとしています。
Q新耐震基準の建物なら被害の想定は簡単に済ませてよいですか?
Aガイドラインが考慮しなくてよいとしているのは、建築構造等と避難施設の大きな被害に限られます。建築設備や消防用設備等、収容物やライフラインは別の項目として並んでおり、そちらは耐震措置の状況や過去の実例に基づいて評価することとされています。構造が新しいことと想定を省けることは別の話です。
Q被害の想定はガイドラインの手法で行わなければなりませんか?
Aガイドラインは簡便のために標準的な付与条件を示したうえで、合理性が客観的に認められるものである場合には異なる手法で評価することができるとしています。ただし対策を要する被害程度を過小評価しないよう、一定の合理性が確保された客観的な手法によることが必要とされています。独自の手法を採るときは根拠を残してください。

まとめ

被害の想定と対策は同じ号に一続きで置かれています
根拠は施行規則第51条の8第1項第2号イです
想定するのは建物とそこに存する者等の両方です
共通の目安は震度6強程度で市町村の想定も併せて見ます
評価する項目は建築構造から人的被害までの8項目です
避難経路は一つ以上が使えなくなる前提で組み立てます
ライフラインは利用できないものとして想定します

想定の欄をどう埋めればよいのかがはっきりしました。
まずは建物の調査から手を付けます。

そこが動けば消防計画の残りの行も自然につながります。
消防計画の見直しや届出でお困りでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第36条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第46条・第48条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8・第51条の3
  • 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
地震の被害想定は消防計画にどこまで書くのか
防災管理の消防計画には、地震が起きたら何がどうなるかを先に書く欄があります。 ところが条文は想定しろとしか書いていないので、どこまで見込めばよいのかが分かりません。 震度をいくつに置くのか、何を評価するのか、対策までを同...