認知症高齢者グループホームのような小規模な施設では、原則としてスプリンクラー設備の設置が求められる一方、一定の要件を満たせば設置を要しないとされる仕組みがあることをご存じでしょうか。
平成26年、消防庁はこの要件のうち消防庁長官が定めることとされていた「入居者等の避難に要する時間の算定方法」を告示にまとめ、運用上の留意事項を通知しました。
算定方法や確保すべき避難時間の基準を見落とすと、免除できるはずの施設で不要な工事を検討してしまう、あるいは基準を満たさないまま免除扱いにしてしまうおそれがあります。
この記事では、避難時間の算定方法と確保すべき避難時間の基準、実務で見落としやすい点をわかりやすく解説します。
うちのグループホーム、延べ面積が小さいのでスプリンクラーは付けなくていいと聞いたんですが、それって本当ですか。
一定の要件を満たせば、避難時間の算定によって設置を要しないとされる場合があります。
まずは、なぜこの告示が出されたのかを見てみましょう。
面積で決まるだけじゃなくて、時間まで計算しないといけないんですね。
はい、決まった計算式があります。
通知の中身を順番に確認していきましょう。
- 平成26年、消防法施行令・施行規則の改正でスプリンクラー設備の設置を要しない構造の要件の一部(入居者等の避難に要する時間の算定方法等)が消防庁長官に委任され、これを定める告示(平成26年消防庁告示第4号)の運用上の留意事項を通知したのが今回の消防予第110号です。
- 対象になるのは、令別表第一(6)項イ(1)及び(2)並びにロに掲げる施設のうち、入居者等の利用に供する居室が避難階のみに存し、延べ面積が100平方メートル未満のものに限られます。
- 避難時間は「避難を開始するまでの時間」と「屋外までの避難を終了するまでの時間」を合算して算定し、後者は介助者の移動速度(階段上り分速54メートル・階段下り分速72メートル・階段以外分速120メートル)を使って計算します。
- 確保すべき避難時間の基準は、壁・天井の内装仕上げなどの条件によって3分から5分の間で変わります。
- 算定した避難時間が確保すべき避難時間の基準を超えなければ、その施設はスプリンクラー設備の設置を要しない構造として扱われます。
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目次
なぜ入居者等の避難時間を計算する告示が出されたのか

その中で、なお設置を要しないとされる要件の中身を確認しましょう。
消防法施行令・施行規則の改正により、スプリンクラー設備の設置を要しない構造の要件の一部が消防庁長官に委任され、避難時間算定方法等告示(平成26年消防庁告示第4号)として具体化されました。
背景には、小規模な高齢者福祉施設等で入居者等の避難の困難さを踏まえてスプリンクラーの設置基準が強化されてきた経緯があり、面積や構造の条件だけでは測れない安全性を避難時間で確かめる仕組みが必要になったと考えられます。
今回の通知は、この告示の内容と運用上の留意事項をまとめたものです。
まずは、この告示がどんな施設のどの部分を対象にしているのかを見ていきましょう。
この告示、面積だけじゃなくて時間まで計算しないといけないのは何か理由があるんでしょうか。
避難に時間がかかる入居者等の安全を、面積だけでなく実際の避難時間で確かめる仕組みだからです。
次は対象になる施設を確認しましょう。
どんな施設のどの部分が対象になるのか

対象になる範囲を、規則の条文で確認しましょう。
具体的には令別表第一(6)項イ(1)(2)並びにロに掲げる施設(老人短期入所施設、有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム等)が対象です。
複数階にわたって居室がある施設や、延べ面積が100平方メートル以上の施設はこの規定の対象にならず、別の区画による構造(規則第12条の2第1項)などで対応する必要があります。
自分の施設がこの範囲に当たるかどうかは、延べ面積と居室の配置をまず確認することから始まります。
次は、実際にどうやって避難時間を計算するのかを見ていきましょう。
うちの施設は平屋で延べ面積も小さいので、対象になるかもしれません。
それなら次の計算方法が関係してきます。
避難時間の算定方法を確認しましょう。
避難時間はどうやって計算するのか

告示が定める計算式を確認しましょう。
避難を開始するまでの時間は、延べ面積の平方根を30で除した値という単純な式で求められます。
屋外までの避難を終了するまでの時間は、介助者が居室に到達する時間・介助用具の準備時間・入居者等を屋外まで介助する時間の3つを合算し、移動時間の計算には階段上り分速54メートル・階段下り分速72メートル・階段以外分速120メートルという区分された速度を使います。
介助用具が必要な入居者等の数は、2人に満たない場合でも2人として計算する決まりになっています。
次は、この計算をするときに実務で見落としやすい点を確認しましょう。
移動速度が階段の上りと下りで違うのは知りませんでした。
はい、そこが今回の落とし穴のひとつです。
次に見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

特に見落としやすい2つを確認しましょう。
壁・天井の仕上げが難燃材料であること、または居室の床面積と天井高から求める式に当てはまることのいずれかを満たせば4分、両方満たせば5分、どちらも満たさなければ3分という基準になります。
もう一つの見落としやすい点は、介助用具が必要な入居者等の数で、実際の人数が1人であっても2人分の準備時間として計算しなければならないことです。
「うちは小規模だから時間もかからないはず」という思い込みで内装や人数の条件を確認しないまま算定すると、実際の基準を満たしていない可能性があります。
次は、明日から確認すべき手順を整理しましょう。
内装の仕上げまで避難時間の基準に関係してくるとは思いませんでした。
はい、そこを見落とすと算定結果が変わってしまいます。
最後に、確認する手順を整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。
該当する場合は、避難を開始するまでの時間と屋外までの避難を終了するまでの時間を合算し、確保すべき避難時間の基準(3分から5分)を超えないかを算定します。
算定には各居室からの避難経路上の移動距離や内装の仕上げなど図面上の情報が必要になるため、消防設備士や所轄消防署に相談しながら進めると確実です。
基準を超える場合は、スプリンクラー設備の設置や別の区画基準(規則第12条の2第1項)を検討する必要があります。
平成27年4月1日から施行されている基準なので、既存の施設もこの機会に一度確認しておくとよいでしょう。
今度、自分の施設の延べ面積と居室の配置を確認してみます。
それが確実な第一歩です。
これでよくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
避難時間の算定は思っていたより奥が深いですね。
今度、自分の施設の延べ面積と居室配置を確認したうえで、算定が必要か相談してみます。
はい。
避難時間の算定や設備基準の確認でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 入居者等の避難に要する時間の算定方法等を定める件等の公布について(平成26年3月28日 消防予第110号 消防庁予防課長)
- 入居者等の避難に要する時間の算定方法等を定める件(平成26年消防庁告示第4号)
- 消防法施行令第12条第1項第1号・消防法施行規則第12条の2第2項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





