大きなビルの統括防災管理者を任されると、避難訓練や消防計画まで一人で決めて回さなければならないと思い込んでしまうことがあります。
実際には、統括防災管理者の判断だけで進めてよい場面と、必要に応じて管理権原者(オーナー)に指示を求めなければならない場面が、条文であらかじめ分かれています。
この境目を取り違えると、あとから「そんな判断は任せていない」と指摘されて、計画そのものが揺らぐこともあります。
統括防災管理者に課された「誠実にその職務を遂行する」という義務の中身を、条文で確認しておきましょう。
うちのビルで統括防災管理者を任されたんですが、避難訓練や消防計画のことは全部自分で決めていいんでしょうか。
実は、全部を一人で決めていいわけではないんです。
条文で指示を求める場面がはっきり分かれていますよ。
指示を求めるって、具体的にどんな場面なんですか。
オーナーに毎回相談するのも現実的じゃない気がして。
毎回ではありません。
判断に迷う場面や権原者の利害に関わる場面が対象なので、順番に見ていきましょう。
- 統括防災管理者は、建物全体の消防計画作成・避難訓練の実施・避難上必要な施設の管理まで担う
- その業務を行うときは、必要に応じて管理権原者の指示を求め、誠実に職務を遂行する義務がある
- 個別の防災管理者にも同じ構成の条文があるが、範囲は自分の管理権原者の建物内に限られる
- 指示を求めずに独断で進めると、あとから認識のずれが表面化しやすい
- 相談した場面と内容を記録に残すことが、いちばん現実的な備えになる
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目次
統括防災管理者はどこまでの業務を担うのか

条文が挙げる業務の範囲を、まず確認しておきましょう。
第2項 統括防災管理者は、前項の消防計画に基づいて、避難の訓練の実施、当該防災管理対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防災管理対象物の全体についての防災管理上必要な業務を行わなければならない。
条文が挙げる業務には、避難訓練の実施のほか、廊下・階段・避難口といった避難上必要な施設の管理まで含まれています。
これは自分の管理権原者が持つ範囲だけでなく、建物全体に及ぶ業務です。
避難施設の管理を設備担当の仕事だと切り離して考えていると、統括防災管理者としての責務から漏れてしまいます。
まずはこの業務の広さを正しく認識することが出発点になります。
避難訓練だけじゃなくて、階段や避難口の管理まで統括防災管理者の仕事なんですね。
そうです。
範囲が自分の建物だけでなく全体に広がる点が、個別の防災管理者との大きな違いです。
どんな場面で管理権原者の指示を求める必要があるのか

条文の言葉に手がかりがあります。
つまり毎回の相談を義務付けているわけではなく、判断が管理権原者の利害や建物全体の方針に関わる場面が対象になります。
同じ条文構成は個別の防災管理者にも第48条第3項として置かれていますが、こちらは自分の管理権原者が持つ建物の範囲に限られます。
統括防災管理者は建物全体を任される分、指示を求める相手が複数の権原者にわたることもあります。
判断に迷うかどうかは、統括防災管理者側の感覚だけでなく、権原者側の理解とも揃えておく必要があります。
指示を求める場面って、結局どうやって見極めればいいんですか。
「必要に応じて」としか書かれていないので、自分だけで判断が難しいと感じたときは早めに相談する、が現実的な線引きです。
誠実に職務を遂行するとはどんな意味か

個別の防災管理者の条文と並べてみると、意味がはっきりします。
この一文の役目は、指示を求めるかどうかの判断を権原者に丸投げすることではなく、指示を受けたあとの実行段階でも誠実さを保つことを求めている点にあります。
つまり相談して終わりではなく、相談した内容と違う運用を黙って続けたり、自分の都合で計画をねじ曲げたりすることは、この義務に反します。
統括防災管理者・防災管理者のどちらも、この一文は選任される者に共通してかかる姿勢の規定です。
資格や講習の有無とは別に、日々の対応の誠実さそのものが問われていると理解しておきましょう。
誠実にって、指示を求めた後の話でもあるんですね。
はい。
相談して終わりではなく、その後の運用まで誠実に続けることが条文の求めるところです。
統括防災管理者と管理権原者の考えが分かれたらどうなるのか

統括防災管理者という立場そのものの成り立ちに答えがあります。
第8条の2第1項(略) 権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから統括防火管理者を協議して定め(略)、防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
同条第4項 権原を有する者は、統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
第36条第1項は、第8条の2の「防火管理者」を「防災管理者」に、「統括防火管理者」を「統括防災管理者」に読み替えて準用しており、選任するのも解任するのも管理権原者と定められています。
指示を求めずに独断で計画を進めても、その場ですぐに止められる仕組みはありませんが、認識のずれが積み重なれば、選び直しという形で表面化することがあります。
条文上、対立そのものを裁く仕組みは用意されていません。だからこそ日々の相談と記録が予防策になります。
「任されている」ことと「独断で決めてよい」ことは同じではないと理解しておくのが安全です。
指示を求めずに進めてしまったら、何かペナルティがあるんですか。
条文に直接の罰則はありません。
ただ管理権原者はいつでも統括防災管理者を選び直せる立場にあるので、そこが実務上のリスクになります。
明日からなにをすればよいのか

消防計画そのものの作り方に、すでに手がかりがあります。
つまり指示を求めるタイミングを別途探す必要はなく、消防計画の作成や見直しの場そのものが指示を求める機会になります。
統括防災管理者であれば、建物全体の消防計画を見直すたびに、権原が分かれている場合は関係する権原者全員の意向を確認しておくと安全です。
相談した日付とやり取りの内容を記録に残すことが、あとから「指示していない」と言われる事態を防ぎます。
まずは今ある消防計画を開き、権原者の指示をどう反映したかがわかる記載になっているかを確認してください。
消防計画を作るときの指示のやり取りを、記録として残しておけばいいんですね。
そうです。
次の見直しのタイミングで、まず今の消防計画の記載を確認してみてください。
よくある質問
まとめ
指示を求める場面と誠実義務の意味がわかって、自分の役割の範囲がはっきりしました。
まずは今の消防計画を見直すところから始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第36条第1項
- 消防法第8条の2第1項・第4項
- 消防法施行令第48条第3項
- 消防法施行令第48条の3第1項・第2項・第3項
- 消防法施行規則第51条の8
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





