自動火災報知設備を後から入れようとすると天井や壁を開けて配線を通す工事が要ります。
テナントが入ったままの建物では工事の日程も費用も簡単には決まりません。
そこで信号を電波でやり取りする無線式自動火災報知設備が使えるようになりました。
消防庁はこの設備の運用について留意事項を示す通知を出しています。
入居中のビルで感知器を増やすことになったんですが配線工事の話で止まっています。
天井を開けずに済む方法はないんでしょうか。
火災が発生した旨の信号を電波で送る無線式の自動火災報知設備が認められています。
配線をやめてよいという意味ではないので条件を順に見ていきましょう。
電波が届かなかったら火事に気づけないということですよね。
そこはどうやって確かめるんですか。
そこが通知のいちばんの中身で確認手法が3つ示されています。
建物が届出と検査の対象かどうかでどれを使うかが変わります。
- 無線式自動火災報知設備は感知器から受信機までの全部または一部を電波にした設備です
- 設置の基準は従来どおりで そのうえで確実に信号を発信または受信できる位置を選びます
- 電波が届くかどうかの確認手法は3つ示されています
- 受信機で電圧の下限値を確認できる場合に限り感知器の電源に一次電池を使えます
- 無線局の免許も無線従事者の資格も要りませんが認証を受けた無線設備だけを使います
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目次
配線を引かずに自動火災報知設備を入れてよいのか

その配線の代わりに電波を使う設備を消防庁が正面から認め 運用の留意事項を通知で示しています。
第1 無線式自動火災報知設備に関する事項
無線式自動火災報知設備は、構成する感知器、中継器、地区音響装置、発信機(以下「無線式感知器等」という。)及び受信機間のすべて又は一部において、火災が発生した旨の信号を無線により発信し、又は受信するものが該当するものであり、次により円滑な運用を図られたいこと。
すべてを無線にすることもできますし 一部だけを無線にすることもできる という書き方になっています。
たとえば感知器と受信機の間だけを電波にして 受信機から先は従来どおり配線でつなぐ形も含まれます。
この通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言として出されたものです。
つまり各消防本部が同じ考え方で審査できるように 国が判断のものさしをそろえた文書だと考えてください。
なお無線でやり取りする場合の技術上の基準は消防法施行規則第24条第1号の2に置かれています。
全部を無線にしなくてもいいんですね。
うちは受信機まわりの配線は生きているので一部だけ電波にできそうです。
その組み合わせがまさに通知の想定する形です。
まずは今の設備のどこまで配線が使えるかを図面で押さえておいてください。
どの機器まで無線にしてよいのか

そのうえで設置の基準そのものは変わらない という念押しが置かれています。
無線式自動火災報知設備の設置に関しては、無線式感知器等及び受信機ごとに、従来どおりの設置基準に従って設置し、その上で無線式の場合には、確実に信号を発信又は受信できる位置を選定して設置する必要があること。
無線にできるのは感知器と中継器と地区音響装置と発信機 そして受信機の間のやり取りです。
このうち感知器から発信機までの4つを通知はまとめて無線式感知器等と呼んでいます。
たとえば感知器を天井のどこに何個付けるかという話は 有線と同じ基準で決まります。
そのうえで「電波が確実に届く位置か」という条件が上乗せされる という順番です。
基準どおりの位置に付けたのに電波が届かないなら 位置を選び直すか機器の構成を変えることになります。
個数や位置の基準はそのままで電波が届く位置という条件が足されるということですか。
そのとおりで引き算ではなく足し算です。
見積りを取るときは中継器を何台入れる案なのかも一緒に聞いておくとよいです。
電波が確実に届くことはどうやって確かめるのか

通知はその確認手法を並べたうえで どの建物でどれを使うかまで書き分けています。
無線式自動火災報知設備の設置に際し、送受信間で信号の授受が確保されているかどうかを確認する手法としては、下の3つがある。
(1) 消防用設備等試験結果報告書及び実地の検査
(2) 消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第4条の規定に基づく立入検査等
(3) 回線設計(机上で電波状態の良否を判断する手法であり、無線方式の設計時に送受信間で信号の授受をある所定の条件で確保できるかを確認するもの)
法第17条の3の2に規定する消防用設備等の設置に関する届出及び検査が必要となる防火対象物の場合にあっては(1)により、その他の防火対象物の場合にあっては(2)により確認すること。
設置届と検査が要る建物なら 試験結果報告書と実地の検査で見ます。
それ以外の建物なら 立入検査などの機会に確認する という整理です。
3つ目の回線設計は現場で測るのではなく机の上で電波状態の良否を判断する手法です。
通知は 無線機器の間の距離が長い場合や構造壁がある場合など 工事着手の届出のように事前に判断する必要があるときに使えるとしています。
自分の建物がどちらに当たるかは 設置届の要否をたどれば分かります。
コンクリートの壁を挟む区画があるので不安だったんですが回線設計で先に見てもらえるんですね。
工事に入る前に判断できるのが回線設計の強みです。
着工の届出を出す前に机上の判断結果を見せてもらってください。
無線局の免許や無線従事者の資格は要るのか

通知は別紙でこの点をはっきりさせています。
なお、無線式感知器等及び無線式の受信機が改正規格省令等及び地区音響装置の基準の一部を改正する件(平成20年消防庁告示第26号。以下「改正音響告示」という。)の規定を満たすことで、小電力セキュリティシステム無線局となり、無線局の開設に伴う免許又は登録及び無線従事者等の資格を要しないものとなること。
(略)
エ 電波法令に基づき総務大臣の登録を受けた登録証明機関による技術基準適合証明又は工事設計認証(以下「認証等」という。)を受けた無線設備だけを使用するものであること。
無線式自動火災報知設備は小電力セキュリティシステムの無線局として扱われるためです。
その代わりに条件が付いていて 使ってよいのは認証等を受けた無線設備だけです。
通知は 認証等を受けた無線設備には所定のマークが表示されることになると書いています。
そして個別検定や認定の際に そのマークの表示の有無も併せて確認されるとしています。
建物側としては 無線局の手続を心配するより 入れる機器がマーク付きかどうかを見るほうが実務に近いということです。
つまり総務省への届出を私たちが出すわけではないんですね。
見るのは機器のマークということですか。
はい その理解で実務は回ります。
納品時に認証等の表示がある機器かどうかを写真で残しておくと後で困りません。
明日から電池とアンテナで何を確認すればよいのか

通知はこの2つをはっきり書き分けています。
自動火災報知設備の電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとることとされているところ、受信機において無線式感知器等が有効に作動できる電圧の下限値となった旨を確認することができる場合は一次電池を電源とすることができること。この場合において、一次電池を電源とする無線式感知器等が有効に作動できる電圧の下限値となった場合には、当該無線式感知器等を交換するか、又は、電池を交換すること。
無線式感知器等は、空中線(アンテナ)を有し、アンテナの向きにより電波状態が変化するため、特に容易に手が触れる位置に無線式感知器等が存する場合にあっては、適正に維持管理することが必要となること。
電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとること。ただし、感知器等の電源に電池を用いる場合において、当該電池の電圧が感知器等を有効に作動できる電圧の下限値となつた旨を受信機において確認するための措置が講じられているときは、この限りでない。
電池を使えるのは下限値になったことを受信機で確認できる場合に限られます。
逆に言えば その表示が出たら感知器か電池を交換する という運用まで含めて認められた仕組みです。
アンテナのほうは向きで電波の状態が変わるので 手が触れる位置にある機器はとくに気をつけます。
棚や掲示物を機器の近くまで寄せると 届いていた電波が届かなくなることがあります。
明日の見回りでは 受信機の表示に異常が出ていないかと 感知器のまわりに物を寄せていないかの2点を見ておきましょう。
倉庫のラックを買い足す予定なんですが感知器のそばに寄せないほうがよさそうですね。
レイアウトを変えるときこそ声をかけてほしい場面です。
模様替えの図面ができた時点で点検業者に見てもらう段取りにしておきましょう。
よくある質問
まとめ
配線を諦めていた区画にも手が届きそうです。
まずは回線設計を含めた提案をもらってみます。
その一歩で工事の見通しがぐっと立てやすくなります。
迷われたら㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 無線式自動火災報知設備及び特定小規模施設用自動火災報知設備の運用について(平成21年3月23日 消防予第119号)
- 消防法施行規則第24条第1号の2・第3号イ・第4号ニ
- 消防法第4条(立入検査)・第17条の3の2(設置の届出及び検査)・第17条の14(工事着手の届出)
- 消防組織法第37条(助言)
- 電波法施行規則第6条第4項第3号(小電力セキュリティシステムの無線局)・無線設備規則第49条の17
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





