今回は立入検査の内容から検査が終わった後の対応まで解説していきます。
その前に消防の用語について、おさらいしていきます。
立入検査 | 消防職員が火災予防のため建物に立ち入って、消防で管理されている台帳の内容と建物の現状を照らし合わせ、届出されてた内容から変更されていないか、適切に維持管理されているかなどの検査を行います。 消防関係者では「立入」「査察」と言われます。 |
消防点検 | 消防設備士(業者)が建物関係者の依頼により、消防用設備点検を行うことです。消防用設備点検を略して消防点検と言われ、一般的には消防点検という呼び方が定着しています。 消防関係者では「設備点検」「点検」と言われます。 |
消防検査 | 消防職員が建物に新しく設置した、または、改修した消防用設備が消防法令に適合しているか検査を行うことです。消防設備士は補佐的に立会することが多くあります。消防関係者では「完了検査」「消検(しょうけん)」と言われます。 |
お客様に消防点検のお知らせをすると『消防の人が来て点検(立入検査)していったから、今回は消防点検せんでもええわ!』と消防点検を二重で実施しているように勘違いされることがあります。
しかし消防署の点検は「立入検査」であり、詳しく話をうかがうと立入検査後に発行される ”立入検査結果通知書” が届いています。
立入検査結果通知書を放置すること自体が違反の対象となることもありますが、重大な消防法令違反が記載されている場合は処分がくだされることもありますので注意が必要です。
一般のお客様だけでなく、建築関係の業者様にも消防の立入検査・消防点検・消防検査の3つを混同している方がいます。
言葉の違いで大きく意味が変わるため、しっかり違いを理解しておきましょう!
目次
1.立入検査とは?内容や頻度について
■立入検査
立入検査とは、消防署職員が管轄区域内の防火対象物に立ち入って検査及び建物関係者に質問することです。
所轄消防署によって管理方法は違いますが、管轄区域内を2~4年程度で一周するように周っています。
立入検査は事前通知がある場合がほとんどですが法令上は事前通知を行う必要がないため、抜き打ちで来訪及び実施することもありえます。
抜き打ちの可能性が高いケースとしては、事前に連絡が繋がらない、消防法令違反の可能性があり実態を把握するため、などがあります。
立入検査の連絡は、原則として建物の所有者(多くの場合、管理権原者)宛に届きます。
あるいは主たる用途となっている管理者宛に届く場合もあります。
※事実上管理者のような立ち位置のテナント宛に声がかかることもあります。
■立入検査マニュアル
以下では総務省消防庁より公開されている立入検査マニュアルを参考にして解説しています。
もちろん実際の立入検査では、立入検査マニュアルに基づき検査が行われます。
建物の用途によって重要視するポイントが違うため、立入検査マニュアル”第3 用途等別の立入検査の留意事項”に詳細が記載してあります。
その中でも、原則どの用途においても検査される3つの項目があります。
- 消防設備の維持管理についての検査
- 防火管理、防災管理についての検査
- 火気の使用または取扱いに関する検査
①消防設備の維持管理についての検査
日頃から消防設備が正しく点検されているか、また、その設備及び防火設備の使用・作動ができる状態かについて検査します。
基本的には外観上の点検や設備の周りの状況を確認し、例えば設備の前に物品が放置されている場合はその場で撤去を指導されることもあります。
建物関係者は消防設備維持台帳の提出を求められることもあります。
明らかに不備事項と思われる状態や過去の記録、直近の点検報告書の内容については重点的に確認され、不備事項が確認される場合には是正計画や再度立入検査を求められます。
②防火管理、防災管理についての検査
主に防火対象物点検や防災管理点検の内容にあたる部分の視点で検査が行われます。
特に避難経路や防炎物品の使用状況の確認が行われます。
例えば、避難経路や避難出口に物品が放置されており速やかに避難できない状態では、過去の凄惨な事例が思い出されます。
また防炎物品に着目するのは炎の燃え広がり方に差が出るからです。
特に命に直結する部分でありますので、消防職員は目を光らせて確認していることでしょう。
③火気の使用または取扱いに関する検査
主に火災予防条例の範囲の点検が行われます。
例えば飲食店で油まみれのグリスフィルターに火が燃え移った場合、初期消火で対応できないことは容易に予想できます。
また工場ではシンナーや塗料など危険物となる商品を扱っていることが多く、指定数量を思いがけず超えていることが多々あります。
火気や危険物という火事に直結する内容の検査のため、消防職員も方に力をいれて検査しています。
これらの検査が行われた後、消防法令違反が確認された場合には、『立入検査結果通知書』が数日から2週間程度で管理権原者宛に届きます。
この『立入検査結果通知書の内容は消防法令違反となり改善を求められますので、『是正計画書』という形で消防に今後の改善計画について報告します。
2.是正計画書
■立入検査結果通知書
前述の通り、立入検査が行われた後には立入検査結果通知書が管理権原者宛に届きます。
法令違反がある場合は書面にてその内容の通知が届きます。
立入検査結果通知書に記載の消防法令違反を放置すると行政指導から行政処分となり罰則が発生する場合があります。
特に重大な不備事項を抱えている物件では、公示の対象となる場合や立入検査が頻繁に実施される場合もあります。
また消防法違反の状態で火災が発生した場合の責任の大きさは計り知れません。
■是正計画書
是正計画書の提出期間として消防から指定をうけることが多いため、早めに是正計画を立て消防に報告する必要があります。
消防に是正計画書を提出することで【改善の意思あり!】とみなされる効果もあります。
※是正計画書は、地域によって、改善(計画)報告書、改修等報告書、改善計画(結果)書、など様々な呼び名があります。
※ここでは是正計画書としています。
■是正計画書の書き方
立入検査結果通知書には、具体的な改善を求める指摘事項が記載されています。
その内容に合わせた適切な改善方法と予定期間について記載します。
・改善措置の内容や方法(例.新しい消火器と取替する、防災屋に見積を依頼する、など)
・改善予定の期日(例.〇〇月△△日までに実施予定など)
我々消防のプロは日常的に不備事項に対するご相談をいただきます。
改善のアドバイスから消防への対応まで何なりとご相談ください。
まとめ
- 立入検査、消防点検、消防検査の少しの言葉の違いで全く内容の異なる事柄となるため、正確に理解しておく必要があります。
- 立入検査とは、消防署職員が管轄区域内の防火対象物に立ち入って検査及び建物関係者に質問することです。
- 立入検査の内容については、立入検査マニュアルに基づいて実施されています。
- 消防法令違反が確認された場合には『立入検査結果通知書』が届くため、適切な改善措置を計画して是正計画書を消防署に提出する必要があります。