複数のテナントや事業者が入る建物では、各区画の防火管理者とは別に統括防火管理者が建物全体の消防計画を作ります。
この全体の消防計画は、各区画の消防計画を集めてまとめただけのものではなく、書き方そのものが消防法施行規則で定められた独立した書類です。
委託業務の有無や訓練の実施方法など、書かなければならない事項は条文で決まっています。
何を書けば足りるかは、条文の号を一つずつ確認するしかありません。
うちのビルは何社もテナントが入っているんですが、統括防火管理者の消防計画って何を書けばいいんでしょうか。
それは消防法施行規則第4条に書き方が決まっています。
各区画の消防計画とは別の書類です。
うちは警備業務を一部委託しているので、それも関係あるか気になります。
業務委託の有無によって書く内容が変わります。
順番に見ていきましょう。
- 統括防火管理に係る全体の消防計画は消防法施行規則第4条第1項により各区画の消防計画とは別に作成し届け出る書類です
- 定めるべき事項は権原の範囲・委託業務の内容・訓練の実施・避難施設の維持管理・消火通報避難誘導・消防隊への情報提供・その他の7項目です
- 業務の一部を委託している場合は、受託者の氏名及び住所と業務の範囲及び方法まで書く必要があります
- 全体の消防計画は各区画の防火管理者が作る個別の消防計画の代わりにはなりません
- 建物が強化地域や推進地域に所在する場合は、全体の消防計画にも地震対策の事項を追加しなければなりません
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目次
統括防火管理者はなぜ全体の消防計画を別に作るのか

それとは別に、統括防火管理者は建物全体をまとめた消防計画を作らなければなりません。
条文が「当該防火対象物の全体についての防火管理に係る消防計画」と書いているとおり、対象は建物全体です。
各区画の防火管理者は自分の区画の消防計画を作りますが、それを集めてまとめても全体の消防計画にはなりません。
統括防火管理者は、この全体の消防計画に基づいて、消火・通報・避難の訓練の実施や、廊下・階段・避難口などの維持管理といった業務も行います。
何を書けばよいかの具体的な中身は、消防法施行規則第4条に定められています。
各区画の消防計画をまとめて出せばいいと思っていました。
それだと全体の消防計画にはなりません。
別の書類として作る必要があります。
どの防火対象物の全体計画が対象になるのか

管理権原が分かれているかどうかが最初の分かれ目です。
条文がいう「権原が分かれている」とは、所有者・管理者・占有者が複数に分かれ、それぞれが別々に防火管理の権原を持っている状態を指します。
高層建築物や地下街のほか、複合用途の建物など対象になる用途と規模は消防法施行令で個別に定められています。
一つの会社が建物全体を所有・使用している場合は、そもそも権原が分かれていないため統括防火管理者も全体の消防計画も不要です。
まず自分の建物が「権原が分かれている」建物に当たるかどうかを確認してください。
うちはオーナーが違うテナントが何社も入っているので、対象になりそうです。
権原が分かれていれば対象です。
次に書くべき中身を確認しましょう。
消防計画に定めなければならない7つの事項とは何か

このうち委託に関する事項は、業務の一部を委託している建物だけに関係します。
一号は権原の範囲そのものの確認、二号は業務の一部を委託している場合の受託者の氏名及び住所と業務の範囲及び方法、三号から六号は訓練・避難施設の維持管理・消火通報避難誘導・消防隊への対応という実務の中身です。
二号は「委託されている防火対象物にあつては」という条件付きなので、業務を委託していない建物では書く必要がありません。
七号は個別の建物の事情に応じた補足事項を書く受け皿です。
自分の建物にどの号が当てはまるかを一つずつ照合しながら書いてください。
うちは警備業務を一部委託しているんですが、それも書かないといけないんですね。
二号に当たるので必要です。
受託者の氏名及び住所と業務範囲を明記してください。
見落としやすい落とし穴はどこにあるのか

条文の作りを誤解しやすい点が二つあります。
統括防火管理者が全体の消防計画を作っても、各区画の防火管理者は自分の区画の消防計画を別途作成する義務を負ったままです。
もう一つの見落としは地震対策です。建物が南海トラフ地震などの推進地域や強化地域に所在する場合、全体の消防計画にも津波避難や防災訓練といった地震対策の事項を追加しなければなりません。
各区画の消防計画で地震対策を書いていても、それだけでは全体の消防計画側の義務を満たしたことになりません。
自分の建物がどの特別措置法の地域に指定されているかを、全体計画の作成時にも確認してください。
全体の消防計画さえ作れば、各テナントの計画は不要になると思っていました。
両方とも必要です。
全体計画は個別計画の代わりにはなりません。
明日から何を確認すればよいのか

書いて終わりではなく、届出まで行って初めて義務を果たしたことになります。
まず管理権原者の範囲を洗い出し、業務の一部を委託している場合は受託者の氏名及び住所と業務範囲を整理します。
訓練の実施方法、避難施設の維持管理、消火通報避難誘導、消防隊への情報提供の各事項をまとめ、建物が推進地域や強化地域にあれば地震対策の事項も追加します。
できあがった全体の消防計画は、管理権原者の確認を受けたうえで所轄消防長又は消防署長に届け出てください。
内容を変更したときも同じ届出が必要になる点を、あらかじめ担当者間で共有しておいてください。
作って終わりではなく、届出までが一連の作業なんですね。
そのとおりです。
変更のたびに届出が必要なことも覚えておいてください。
よくある質問
まとめ
全体の消防計画に何を書けばいいか、条文の号ごとに整理できました。
権原の範囲を確認し、届出まで進めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条の2第1項
- 消防法施行令第4条の2第1項
- 消防法施行規則第4条
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





