消防計画に何を書くかを並べた条文には、設備や訓練にまじって人数の話が一行だけ入っています。
座席がいくつあるか、ベッドがいくつあるかを数えて、その数を超えないように運ぶという地味な仕事です。
ところが火災で逃げ遅れが出るかどうかは、この数字が守られていたかどうかで大きく変わります。
収容人員の管理は消防法が防火管理者の業務として名指しした仕事です。
消防計画の様式に定員を書く欄があるのですが、正直なところ埋め方がわかりません。
そこは定員の遵守その他収容人員の適正化に関することという条文の項目にあたります。
今日はその中身をほどいていきます。
うちは福祉施設なので座席というものがありません。
それでも人数の欄は関係あるのでしょうか。
むしろ関係が深い建物です。
自力で逃げにくい方が入る施設は10人という小さな数字で防火管理者の義務が始まります。
- 消防法第8条第1項は防火管理者に行わせる業務として収容人員の管理を条文の中で名指ししている
- 消防計画に書く項目としては消防法施行規則第3条第1項第1号ヘの定員の遵守その他収容人員の適正化に関することがこれにあたる
- 定員そのものの決め方は条文に無く、手がかりになるのは同規則第1条の3の収容人員の算定方法で、用途ごとに数え方が決まっている
- 宿泊室はベッドの数や床面積、病院は病床の数、老人ホーム等は従業者の数と要保護者の数の合算で数える
- 自力で避難することが難しい方が入る(6)項ロの施設は収容人員が10人で防火管理者が必要になり、しかも延べ面積を問わず甲種の扱いになる
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目次
消防計画の収容人員の適正化とはなにを指すのか

ところが人数を管理せよという一行が、法律そのものの中に置かれています。
訓練や点検と横並びで並んでいるので、後回しにしてよい付け足しではありません。
同じ言い回しは消防法施行令第3条の2第2項にもあり、こちらは防火管理者の責務として同じ業務を並べています。
つまり管理権原者が行わせる側から見ても、防火管理者が行う側から見ても、収容人員の管理は外せない仕事として置かれています。
まずは自分の消防計画に人数の欄があるかどうかを開いて確かめてみてください。
設備の話だけだと思っていました。
人数まで法律に書かれているとは知りませんでした。
逃げる人の数が読めなければ避難の計画も立ちません。
次はどの建物が対象になるかを見ていきましょう。
どの建物の消防計画に定めなければならないのか

人数の項目が置かれているのは、出来上がって使われている側の一覧です。
ニ 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。
ホ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。
ヘ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること。
店舗でも病院でも共同住宅でも、防火管理者を置く建物であれば同じ一覧が適用されます。
一方で新築の工事中の建築物や建造中の旅客船については、同項第2号が別の一覧を用意しています。
そちらはホの項目で第1号のイ及びトからヌまでを引いてくる作りになっており、ヘは引かれていません。
工事中の計画で人数の欄が見当たらなくても書き漏らしではないので、そこは条文どおりに割り切って構いません。
使い始めた建物なら用途にかかわらず書く欄がある、ということですね。
そのとおりです。
では肝心の定員をどう決めるかに進みます。
定員はどうやって決めればよいのか

手がかりになるのが、防火管理者の要否を決めるときに使う収容人員の算定方法です。
イに掲げるもの 次に掲げる数を合算して算定する。
一 医師、歯科医師、助産師、薬剤師、看護師その他の従業者の数
二 病室内にある病床の数
三 待合室の床面積の合計を三平方メートルで除して得た数
ロ及びハに掲げるもの 従業者の数と、老人、乳児、幼児、身体障害者、知的障害者その他の要保護者の数とを合算して算定する。
劇場ならいす席の数、旅館なら宿泊室のベッドの数というように、条文が用途ごとに別の物差しを置いています。
就寝を伴う施設ではその物差しが病床の数や要保護者の数そのものになり、部屋の広さではなく実際に寝ている人の数で決まります。
この算定方法は本来は防火管理者を置くかどうかを判定するための物差しですが、部屋ごとの定員を決めるときの根拠としてもそのまま使えます。
補助ベッドを常時出している部屋があるなら、その分も含めて数え直しておいてください。
つまり要否の判定に使った数字を部屋ごとにばらして使えばよいのですね。
その組み立てで説明がつきます。
次は数字の重みがまるで変わる建物の話です。
病院や福祉施設ではなにが変わるのか

条文はその違いを、防火管理者を置く入口の数字で表しています。
店舗や病院などの(6)項イは30人、事務所や倉庫などは50人が入口ですが、(6)項ロだけは10人から義務が始まります。
しかも小さなグループホームが入った雑居ビルのように、(16)項イや(16の2)項に(6)項ロの部分があれば、建物全体がこの10人の基準で見られます。
さらに消防法施行令第3条第1項は乙種でよい建物を第1号ロ及びハに限っているため、第1号イに置かれた(6)項ロは延べ面積にかかわらず甲種の資格が要ります。
収容人員の数え方も従業者の数と老人や乳児などの要保護者の数を合算する形なので、入所者が1人増えれば数字がそのまま動きます。
テナントに小さな福祉施設が入っただけでビル全体の基準が変わるのですか。
条文の括弧書きがそう読めます。
入居の話が出た段階で収容人員を数え直すのが安全です。
明日からなにを確かめればよいのか

動いたときに計画も動かすところまでが、この項目の仕事になります。
まず部屋ごとに座席やベッドを数え、施行規則第1条の3の算定方法と突き合わせて今の定員を確かめます。
次にその数を利用者と職員に見える場所へ掲示し、超えそうな日は入場や受入れを止める段取りまで決めておきます。
そのうえで消防計画のヘの欄に、誰がいつ人数を確認するのかを具体的に書き込みます。
増床や間取りの変更で数字が動いたときは変更の届出まで進むので、計画の日付も合わせて更新しておいてください。
数えて掲示して計画に書く、という順番で進めればよいのですね。
その順番で問題ありません。
数え直した記録を残しておくと立入検査でも説明が早くなります。
よくある質問
まとめ
空欄のままだった人数の欄を、今日のうちに埋めてみます。
まずは部屋ごとの数え直しから始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条第1項・第2項・第3項・第4項
- 消防法第41条第1項第2号
- 消防法施行令第1条の2第3項・第4項
- 消防法施行令第3条第1項
- 消防法施行令第3条の2第2項
- 消防法施行規則第1条の3
- 消防法施行規則第3条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





