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地震のときの館内放送は何を伝えるのか|放送文例の備えと聴覚障害者や外国人への情報伝達を解説

地震のときの館内放送は何を伝えるのかを示すアイキャッチ

地震で揺れが収まったあと、館内へ最初に届くのは館内放送です。
その場で言葉を探しているうちに、在館者は勝手に動き出してしまいます。
ところが消防法にも施行令にも施行規則にも放送文例という言葉は出てきません。
消防庁のガイドラインが放送文例をあらかじめ作っておくよう示しています

放送設備は防災センターに入っています。
地震のときは何と言えばよいのか決まっていません。

設備があっても言葉が無ければ止まります。
だから文例を先に作っておくよう示されています。

耳の聞こえない方や外国からのお客様も入ります。
放送だけでは届かない人がいますよね。

そこも書く項目として挙がっています。
聴覚障害者や外国人への情報伝達方法を記載する、という書き方です。

この記事の結論
  • 館内放送の受け皿は消防法施行規則第51条の8第1項第二号ホの通報連絡と避難誘導です
  • 放送文例という言葉は消防法にも施行令にも施行規則にも出てきません
  • 多数の在館者が収容される建物では様々な想定による放送文例を先に作っておきます
  • 放送は簡潔にして2度繰り返し発信者を名乗りエレベーターを使わせません
  • 聴覚障害者や外国人への情報伝達方法も消防計画に記載する項目です

地震のときの館内放送で文例を用意し同じ内容を繰り返し光と表示で伝え従業員に熟知させる流れを並べた図解

地震のときの館内放送は消防計画のどこに書くのか

防災センターの操作卓に向かう担当者と各階の天井に付いたスピーカーを並べたイラスト
まず、館内放送が消防計画のどの項目に入るのかを確かめます。
条文には放送という言葉が無いので、少し遠回りに見えます。
消防法施行規則第51条の8第1項第二号ホ 地震発生時における通報連絡、避難誘導、救出、救護その他の地震による被害の軽減のための応急措置に関すること。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊4 個別事項の解説 避難誘導 ○避難に関する指示、命令の伝達は、非常放送を使用して行う。また、各地区隊においては携帯用拡声器等を活用する。
受け皿は通報連絡と避難誘導です
省令が並べているのは応急措置の種類までで、その中身をどう伝えるかは書かれていません。
実際に消防法と施行令と施行規則の全文を検索しても、放送文例という語は1件も出てきません。
指示や命令の伝達に非常放送を使うと明記しているのは、条文ではなくガイドラインの側です。
自分の消防計画を開くときは、条文の見出しではなく避難誘導の活動要領の欄を探してください。

条文を探しても放送の話が出てこなかったわけですね。
避難誘導の欄を見ればよいのですか。

そこが伝達の手順を書く場所です。
放送は避難誘導を動かすための手段として扱われています。

放送文例をあらかじめ作っておくのはどんな建物か

多数の在館者が集まる広いフロアと文例をまとめた書類を机に置いた様子を並べたイラスト
次に、どの建物で文例を用意しておくのかを見ます。
ガイドラインは建物の規模ではなく在館者の数で線を引いています。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊4 個別事項の解説 避難誘導 ○多数の在館者が収容される防火対象物においては、在館者によるパニックを防止するための的確な指示が必要となるため、あらかじめ様々な想定による放送文例を作成しておく。また、従業員による指示も必要となるため、熟知させておく。
消防法施行令第24条第3項 非常ベル及び放送設備又は自動式サイレン及び放送設備は、次に掲げる防火対象物に設置するものとする。(略) 二 別表第一に掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)で、地階を除く階数が十一以上のもの又は地階の階数が三以上のもの
対象は多数の在館者が集まる建物です
防災管理が必要になる建物は令第46条から令第4条の2の4へ進み、その第一号イは11階以上で延べ面積1万平方メートル以上のものを挙げています。
この規模の建物は令第24条第3項第二号にも当てはまるので、放送設備そのものは初めから備わっているのが普通です。
つまり足りないのは設備ではなく言葉のほうで、そこを埋めるのが放送文例だという整理になります。
自分の建物の階数と延べ面積を確かめて、放送設備があるのに文例が無い状態になっていないかを見てください。

設備は点検していますが文例は誰も作っていません。
まさにその状態でした。

よくあるかたちです。
点検の対象は機器なので、文例は消防計画の側で持つしかありません。

館内放送では何をどう伝えるのか

マイクの前で放送する担当者と同じ内容が二度届く様子とフロアで聞く在館者を並べたイラスト
ここが記事の中心です。
伝え方の留意点が具体的に並べられています。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊4 個別事項の解説 避難誘導 ○命令伝達時の留意点は次のとおり。 ①館内放送は、簡潔でわかりやすい内容とし、同じことを2度くり返す。 ②早口を避け、落ち着いた命令口調で放送する。 ③「こちらは防災センターです」「こちらは自衛消防組織の統括管理者です」等の一言を付して情報の発信者を明確にし、信頼性を高めます。 ④避難の指示、命令の内容には、「エレベーターを使用しないこと」を付け加える。 ⑤在館者への、安心情報等の提供を逐次行うことを伝え、パニック防止に努める。
同じことを2度繰り返します
揺れの直後は誰もが放送の頭を聞き逃すので、一回で伝わる前提を捨てるという考え方です。
次に効くのが発信者を名乗ることで、誰が言っているのか分かる声には人が従いやすくなります。
そして避難の指示には必ずエレベーターを使用しないことを付け加える、と名指しで書かれています。
文例を作るときは、この五つの留意点を型として全ての想定に入れ込んでおくと迷いません。

名乗るところまでは考えていませんでした。
ただ落ち着いてくださいと言うだけになりそうです。

その一言があるかどうかで従い方が変わります。
あわせて安心情報を逐次流すと伝えておくのも大切です。

音が届かない在館者にはどうやって伝えるのか

スピーカーだけの壁と表示板や光の点滅を備えた壁を並べて比べたイラスト
放送は音なので、届かない人がいます。
その人たちへの伝え方も記載する項目として挙げられています。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊4 個別事項の解説 避難誘導 ○聴覚障害者、外国人等への情報伝達方法等について記載する。 ○情報不足による在館者の不安を取り除くため、情報伝達系統を確立しておく。 同 別冊6 超大規模防火対象物等における課題及び課題解決に向けた先進的な事例 ・言語翻訳機能をもつ避難誘導機器の導入や、館内のデジタルサイネージに多言語での災害情報の表示を行っている。 ・聴覚障害者に対する火災情報伝達手段として、光警報装置を設置している。
音以外の手段まで書く項目です
消防法にも施行令にも施行規則にも聴覚障害という語と外国人という語は1件も出てきません。
それでもガイドラインは伝達方法の記載を求めているので、設備の義務が無いことと計画に書かなくてよいことは別だと分かります。
別冊6が挙げている光警報装置や多言語のデジタルサイネージは、設置が義務づけられたものではなく先進的な事例として紹介されたものです。
まずは掲示や筆談用のボード、案内表示の切替えなど、いま建物にある手段を書き出すところから始めてください。

光る装置を入れないと駄目なのかと身構えていました。
いまある手段を書いてよいのですね。

求められているのは方法の記載です。
誰がどの手段で伝えるかという情報伝達系統を先に決めてください。

明日からなにをすればよいのか

机に並べた放送文例を手に打ち合わせる二人の担当者とボードを並べたイラスト
書き足す先は防災管理に係る消防計画です。
自衛消防組織を置く建物では、教育と訓練まで同じ条文が求めています。
消防法施行規則第51条の10第1項 防災管理者は、(略)自衛消防組織の業務に関し、おおむね次の各号に掲げる事項について、防災管理に係る消防計画に定めなければならない。 一 関係機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災以外の災害の被害の軽減のために必要な業務として自衛消防組織が行う業務に係る活動要領に関すること。 二 自衛消防組織の要員に対する教育及び訓練に関すること。
文例は作って終わりではありません
まず、揺れの直後と避難の指示と安心情報の提供という想定ごとに文例を分けて書き起こします。
次に、どの文例にも発信者を名乗る一言とエレベーターを使用しない旨を入れて型をそろえます。
そのうえで、誰が放送し誰が各階へ伝えるのかという情報伝達系統を一枚の図にまとめ、聴覚障害者や外国人への手段も同じ紙に書き入れます。
最後に、規則第51条の8第3項が求める年1回以上の避難訓練で実際に読み上げ、聞き取れたかを在館者側から確かめてください。

訓練で読み上げるところまでやるのですね。
聞き取れるかどうかは実際に流さないと分かりません。

そこまでやって初めて使える文例になります。
従業員に熟知させておくことも同じ項目に書かれています。

よくある質問

Q放送文例の作成は法令で義務づけられているのですか?
A消防法にも施行令にも施行規則にも放送文例という語は出てきません。受け皿になるのは消防法施行規則第51条の8第1項第二号ホの通報連絡と避難誘導で、その中身を具体的に示しているのが消防庁のガイドラインです。ガイドラインは記載事項に○印と●印を付けており、放送文例は○印の標準的に盛り込まれる事項の側に置かれています。
Q文例は何種類そろえればよいのですか?
A数を定めた規定はありません。ガイドラインは様々な想定による放送文例としか示していないので、自分の建物で立てた災害想定の数だけ用意することになります。揺れの直後、避難させるとき、その場にとどまらせるとき、といった場面ごとに分けておくと使いやすくなります。
Q放送設備が届かない場所はどうすればよいですか?
Aガイドラインは各地区隊において携帯用拡声器等を活用するとしています。携帯用拡声器は消防法施行令第7条第3項第四号が警鐘や手動式サイレンと並べて非常警報器具として挙げているものです。どこに何台置くかまで消防計画に書いておくと、当日に探し回らずに済みます。
Q外国語での放送は誰が行うのですか?
A誰が行うかを定めた規定はありません。ガイドラインの別冊6は言語翻訳機能をもつ避難誘導機器や多言語のデジタルサイネージを事例として挙げていますが、いずれも設置が義務づけられたものではありません。従業員が読み上げる方法をとる場合は、別冊4が示すとおり文例を熟知させておいてください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

まとめ

館内放送の受け皿は消防法施行規則第51条の8第1項第二号ホの応急措置です
放送文例という語は消防法にも施行令にも施行規則にも出てきません
多数の在館者が収容される建物では様々な想定による文例を先に作ります
館内放送は簡潔にして同じことを2度くり返すよう示されています
発信者を名乗りエレベーターを使用しないことを必ず付け加えます
聴覚障害者や外国人への情報伝達方法も記載する項目に挙がっています
作った文例は避難訓練で読み上げて従業員に熟知させます

設備の点検ばかり気にしていたと気づきました。
まずは想定ごとの文例を書き起こしてみます。

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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第36条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条第3項第四号・第24条第3項・第4条の2の4・第45条・第46条・第48条・第49条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8第1項第二号ホ・同条第3項・第51条の10第1項
  • 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊4・別冊6
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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地震で揺れが収まったあと、館内へ最初に届くのは館内放送です。 その場で言葉を探しているうちに、在館者は勝手に動き出してしまいます。 ところが消防法にも施行令にも施行規則にも放送文例という言葉は出てきません。 消防庁のガイ...