防火管理者は、消防法第8条に基づき、建物の管理権原者から防火管理業務を行う担当者として選任された人のことを指します。
防火管理者は消防法に基づいて「消防計画の作成」や「消防訓練の実施」をする担当者です!
火災予防と安全管理に従事し、以下のような役割と責務を果たします。
目次
①消防計画の作成
消防計画は、防火対象物において火災をはじめとした災害の予防とその被害を最小限に抑えることを目的として作成する書類です。
実態に即した施設使用者の取り組みや災害発生時の対処方法を計画書として、まとめたものが消防計画です。
■消防計画の範囲と目的
消防計画は、防火対象物の位置、構造、設備の状況、使用状況に応じて防火管理者が作成します。
防火対象物の管理権限者から指示を受けて、消防計画を作成し、所轄の消防署長に対して届出を行う必要があります。
■消防計画に含まれる内容
各自治体によって求められる内容は異なりますが、一般的に以下の事項を盛り込むことがあります。
- 防火対象物の適用範囲
- 管理権原者と防火管理者の業務と権限
- 火災予防上の自主検査
- 防火上の構造の維持管理
- 消防用設備の点検・整備
- 火気の取扱い
- 放火防止対策
- 避難施設の維持管理
- 収容人員の適正管理
- 火気の取扱い
- 防火・防災教育
- 自衛消防の組織と活動
- 営業時間外の防火管理体制
- 震災対策
■届出と更新
防火管理者は、消防計画を作成し、所轄消防長(消防本部を置かない市町村の場合は市町村長)又は消防署長に届け出ます。
届出書には計画の詳細と必要な添付書類を記載します。
使用状況の変更やテナントの入れ替えに合わせ、消防計画の更新を行います。
②消火・通報および避難の訓練の実施
消火・通報および避難訓練は、消防法に基づき、防火管理者が選任されている防火対象物において定期的に実施される義務があります。
以下に詳細を説明します。
■訓練の目的
自衛消防訓練は、火災発生時に適切な対応を行うため、消火、通報、避難の訓練を定期的に行います。
■訓練の内容
- 消火訓練:消火器の使用方法や放水訓練など、火災を早期に鎮火するための訓練です。
- 通報訓練:火災発生時の119番通報の手順や適切な情報提供の方法を訓練します。
- 避難訓練:避難経路の確認や避難の手順を実施します。
■訓練の注意事項
消防用設備を活用した訓練を行う場合、消防機関や消防用設備業者を立ち会わせて実施してください。
安全管理担当者の配置や事故防止に努めてください。
訓練前に所轄の消防機関に自衛消防訓練通知書を提出してください。
■訓練の頻度
特定防火対象物(店舗、飲食店、病院など)は、次の回数以上の訓練を実施する必要があります。
- 消火訓練:年2回以上(模擬ではなく放水を行う場合も含む)
- 通報訓練:年1回以上
- 避難訓練:年2回以上
■未実施の場合
自衛消防訓練を行わなかった場合、消防法令違反として改善を求められる可能性があります。
また、防火対象物の点検及び報告の特例認定を受けている場合、特例を取り消す場合があります。
防火管理者として、これらの訓練を遵守し適切に実施することが求められます。
③消防用設備等の点検および整備
消防用設備等の点検および整備は、火災予防と安全確保を目的として、以下のように行われます。
■点検の義務と頻度
防火対象物の所有者や管理者は、消防用設備等を定期的に点検し、その結果を所轄の消防署に報告する義務があります。
消防用設備点検は年2回以上行う義務があります。
中でも特定防火対象物では、消防設備士免状を持つ者や資格を有する者によ点検が必要です。
■点検の内容
点検は、消火設備、警報設備、避難設備など、消防用設備等の機能と性能を確認するために行われます。
点検は、消防法施行令や消防庁の定める基準に従って実施されます。
■点検結果の報告
点検後は、消防長または消防署長に対して点検結果を報告します。
点検結果報告書には、点検の詳細と必要な添付書類を記載します。
■整備の重要性
点検で不具合が見つかった場合は、適切な修理や交換を行い、消防用設備等の正常な機能を維持します。
これらの点検および整備は、防火管理者の責務の一環として、火災の発生を未然に防ぎ、万が一の際に迅速かつ効果的な対応ができるようにするために不可欠です。
④火気の使用または取扱いに関する監督
火気の使用または取扱いに関する監督は、火災予防と安全確保のために非常に重要な役割を果たします。
■火気使用の許可制度
防火管理者は、火気を使用する際に事前に許可を得る制度を設け、火気使用の安全管理を徹底します。
■火気使用のルールと手順
火気の使用には、明確なルールと手順を設定し、それに従って作業を行います。
作業者への教育や指導を行い、安全な火気使用を徹底します。
■危険物の管理
可燃性の液体やガスなど、火災の原因となる危険物の管理を厳格に行います。
■火気使用時の監視
火気を使用する作業現場では、火気使用作業者を見張る位置に火気監視人を置き、常に監視体制を敷くとともに、異常があった場合には初期消火活動や避難呼び掛け等を迅速に対応できるようにします。
■火災予防の教育と訓練
定期的に火災予防の教育と訓練を実施し、作業者および火気監視人の意識を高めます。
■事故発生時の初期対応
火災が発生した場合の初期消火や避難誘導の手順を明確にし訓練を通じて、作業者および火気監視人に周知します。
これらの監督業務を通じて、防火管理者は火災のリスクを最小限に抑え、安全な環境を維持する責任を担います。
⑤避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理
避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理は、火災発生時に人々が安全に避難できるようにするために非常に重要です。
■避難経路の確保
避難経路は常に確保され、障害物がないことを徹底しなければなりません。
避難経路の標識は明確で、誰もが容易に理解できるように設置する必要があります。
■防火設備の維持
防火戸や防火シャッターなどの防火構造は、常に機能する状態に保つ必要があります。
定期的な点検と必要に応じた修理が行います。
■安全管理の徹底
これらの設備が適切に維持管理されていることを確認し、必要に応じて改善措置を講じる責任があります。
これらの維持管理業務を通じて、防火管理者は火災発生時の安全な避難を支援し、人命と財産の損失を最小限に抑えることを目的とします。
⑥収容人員の管理
防火管理業務における収容人員の管理は、防火対象物における安全性を確保するために非常に重要です。
以下にその詳細を説明します。
■収容人員の定義
収容人員とは、「防火対象物に出入りし、勤務し、または居住する者の数」とされています。
防火対象物の用途ごとに収容人員の算定方法が定められており、その人数によって防火管理の実施方法や設置しなければならない消防設備が変わってきます。
■収容人員の管理の目的
収容人員の管理は、人々の安全を確保するために欠かせない要素であり、防火管理者の責務の一部です。
適切な計画と管理によって、火災や緊急事態への対応力を高め、建物や施設の安全性を向上させることを目的とします。
■収容人員の管理の運用
防火管理者は、収容人員に基づいて消防計画を作成し、避難経路や消防設備の整備を行います。
収容人員が多い場合、火災発生時の避難誘導や消火活動が困難になるため、特に注意が必要です。
■収容人員の管理の問題点
収容人員の増減に応じた迅速な対応が求められるが、実際にはその変動に対応しきれていない場合があります。
特に無人店舗や小規模な施設では、収容人員の管理が疎かになりがちです。
収容人員の適切な管理が行われていないと、火災発生時に避難経路が混雑し、円滑な避難を妨げる原因となることは容易に想像できるでしょう。
防火管理者は、収容人員の管理を適切に行い、安全な防火対象物の維持に努める必要があります。
⑦その他防火管理上必要な業務
以下のような具体例があります。
■防火管理者の教育と訓練
防火管理者自身の知識と技能を常に更新し、最新の防火管理方法を学びこと。
新しい消防法規や技術に関する研修への参加すること。
■防火意識の啓発活動
従業員や入居者に対する防火意識の啓発を行う。
ポスターやリーフレットを用いた情報提供を実施する。
■防火対策の見直しと改善
定期的なリスクアセスメントを通じて防火対策を見直し、必要に応じて改善すること。
■防火管理体制の構築
防火管理に関わる人員の役割と責任を明確にし、体制を整えること。
防火管理者の従事する7大項目について解説しました。
防火管理業務がこんなにも範囲が広いと初めて知った方も多いのではないでしょうか?
- 防火管理業務は多岐にわたり、防火管理者一人だけで全てをカバーするのは困難であること。
- 防火意識の啓発活動が形式的になりがちで、実際の行動変容につながらないことがあること。
- 防火対策の見直しや改善が、日常業務に埋没して後回しにされがちであること。
- 防火管理に関する知識や技能が不足している場合、適切な防火管理が行えない可能性があること。
これらの問題点を踏まえ、防火管理業務を効果的に運用するためには、組織全体での防火意識の向上、適切な教育と訓練の実施、リスクアセスメントに基づく防火対策の定期的な見直しと改善が重要です。
また、防火管理者の負担を軽減するために、複数の担当者による役割分担やチームでの取り組みが推奨されます。
問題点に挙げられるように、防火管理業務が形骸化しがちで、本来の役割を果たせていないケースをよくお声にいただきます。
また上記のような防火管理業務を資格取得の講習2日間だけで学び、その役割を果たせるでしょうか?
㈱防災屋では
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まとめ
- 防火管理者は管理権原者から防火管理業務を担う担当者として選任される。
- 防火管理業務は多岐に渡り、専門的な知識が必要となる。
- 防火管理業務が形骸化している場合も多く、防火管理者を㈱防災屋に委託するという選択肢があった。