廊下のつきあたりに、ふだんは開いたままの大きな鉄の戸があります。
火事のときはこれが閉まって煙を止めるのだと聞いてはいても、誰が閉めるのかまで決めている建物は多くありません。
消火と通報と避難誘導のかげに隠れがちですが、区画を閉じる安全防護も火災のときの大事な仕事です。
この記事では火災のとき建物側が何を閉めるのかを条文から解説します。
廊下の防火戸を火事のとき誰が閉めるのか決めていません。
それを決めておくのが消防計画の役目です。
条文が名指しで求めている事項です。
うちの計画には消火と通報と避難誘導しか書いていませんでした。
それだけでは条文の求める中身に届きません。
まずは安全防護がなにを指すのかから押さえましょう。
この記事の結論
- 火災のとき区画を閉じて煙を止める活動も防火管理の業務です。(消防法第8条第1項)
- 防火戸の閉鎖の支障になる物件を置かせない義務は管理権原者にあります。(消防法第8条の2の4)
- 対象はアーケードと山林と舟車を除くほぼすべての防火対象物です。(消防法施行令第4条の2の3)
- 消防計画には安全区画と防煙区画の維持管理及びその案内を定めます。(消防法施行規則第3条第1項第1号ニ)
- 大規模な建物では自衛消防組織が設備の監視の業務を担います。(消防法施行規則第4条の2の11)
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目次
安全防護措置とは火災のとき何をすることなのか

条文はそこに区画を閉じて煙の広がりを抑える安全防護の活動も並べています。
消防法第八条第一項 (略)防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、(略)避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。/消防法施行規則第三条第一項第一号リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
消防法第8条第1項は防火管理者に行わせる業務として避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理を挙げています。
消防用設備等の点検とは別に、戸や壁といった建物そのものの部分が名指しされているところが要点です。
そして消防法施行規則第3条第1項第1号リは、災害が発生した場合の消火活動と通報連絡と避難誘導を消防計画に定めよと求めています。
火が出た瞬間に建物側がすることは、水をかけることと逃がすことだけではないということです。
設備を点検するだけでは足りないということですか。
そのとおりです。
次はその戸を閉める役目が誰にあるのかを見ましょう。
防火戸を閉める役目は誰が負うことになるのか

条文は組織として置くべき人数まで書いています。
消防法施行令第四条の二の七 自衛消防組織は、(略)火災の初期の段階における消火活動、消防機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災の被害の軽減のために必要な業務を行うものとする。/消防法施行規則第四条の二の十一 自衛消防組織には、次の各号に定める業務について、それぞれおおむね二人以上の要員を置かなければならない。/一 火災の初期の段階における消火活動に関する業務/二 情報の収集及び伝達並びに消防用設備等その他の設備の監視に関する業務/三 在館者が避難する際の誘導に関する業務/四 在館者の救出及び救護に関する業務
火災のときに実際に動く人は自衛消防の組織として消防計画に定めます(消防法施行規則第3条第1項第1号イ)。
消防法施行令第4条の2の4に当たる大規模な防火対象物であれば、管理権原者が自衛消防組織を置かなければなりません。
その場合は消防法施行規則第4条の2の11により、初期消火と設備の監視と避難誘導と救出救護の業務ごとにおおむね二人以上の要員を置きます。
規模が小さくてこの義務がかからない建物でも、誰が戸を閉めるのかを決めておかなければ火災の当日は動けません。
うちは自衛消防組織を置くほどの規模ではありません。
それでも役割は決められます。
次は計画にどこまで書くのかを見ていきます。
消防計画には安全防護についてどこまで定めるのか

条文が求めている事項はそれだけではありません。
消防法施行規則第四条の二の十 令第四条の二の四の防火対象物に係る防火管理者は、令第四条の二の六の規定により、自衛消防組織の業務に関し、おおむね次の各号に掲げる事項について、防火管理に係る消防計画に定めなければならない。/一 火災の初期の段階における消火活動、消防機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災の被害の軽減のために必要な業務として自衛消防組織が行う業務に係る活動要領に関すること。/二 自衛消防組織の要員に対する教育及び訓練に関すること。
消防法施行規則第4条の2の10第1項第1号は、自衛消防組織が行う業務の活動要領を消防計画に定めよと求めています。
活動要領とは誰がどの順番でなにをするかの手順なので、区画を閉じる担当と順序を書き込む場所はここになります。
あわせて消防法施行規則第3条第1項第1号ニは、避難通路や避難口と同じ並びに安全区画と防煙区画を挙げています。
どこを閉じればどこに安全な場所が残るのかを、平時に図面の上で決めておけということです。
つまり図面に区画を落としておけばよいのですね。
そこまで書ければ形になります。
ただし条文にはもう一つ気をつけたい言い回しがあります。
実務で見落としやすいのはどこか

どちらも書いていないことに自分では気づきにくい部分です。
消防法第八条の二の四 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
条文は物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならないと書いています。
見つけたら戻すという後始末ではなく、そもそも置かせない決めごとを作るところまでが求められているということです。
二つ目は義務者の違いで、この義務を負うのは防火管理者ではなく管理権原者です。
テナント側の防火管理者が共用廊下の荷物に気づいても自分の権原の外なので、誰へ上げるのかまで消防計画に書いておいてください。
共用部の荷物はいつも言いにくくて困っていました。
計画に筋道が書いてあれば言えるようになります。
最後に明日からの確認の順番をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

紙と現場を同じ日に見るのが早道です。
消防法第八条第四項 消防長又は消防署長は、(略)当該防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
はじめに消防計画を開いて、規則第3条第1項第1号のニとホに当たる欄が空欄のままになっていないかを見てください。
次に自衛消防の組織の表で、戸を閉める役目が係の名前まで決まっているかを確かめます。
そのうえで館内を回り、防火戸の足元とシャッターの下に物が置かれていないかを一枚ずつ見ます。
消防計画に書いてあるのに行われていないと認められれば、消防法第8条第4項により措置命令の対象になり得るので、書いたら必ずそのとおりに回してください。
計画を開くところから始めればよいのですね。
そこが出発点です。
空欄が見つかったらその日のうちに埋めましょう。
よくある質問
Q防火戸を閉めるのは消防隊が着いてからでよいですか?
A消防法施行令第4条の2の7は自衛消防組織の業務を火災の初期の段階における消火活動や消防機関への通報や在館者の避難誘導その他の被害の軽減のために必要な業務としており、消防隊の到着後を前提にしていません。自衛消防組織を置かない建物でも、消防法施行規則第3条第1項第1号リにより火災が発生した場合の活動を消防計画に定めます。何分後にという時間の定めは条文にないので、自分の建物でいつ誰が動くのかを消防計画で決めておいてください。
Q安全区画と防煙区画はどう違いますか?
A消防法施行規則第3条第1項第1号ニは両方を避難施設として並べています。防煙区画のほうは同規則第30条第1号イが排煙設備の基準の中で、防煙壁によって一定の床面積以下に区画された部分と定めています。これに対して安全区画には消防法令上の定義規定が置かれていないので、自分の建物のどこを安全区画とするのかは消防計画で明らかにしておく必要があります。
Q小さなテナントビルでも防火戸の前に物を置いてはいけませんか?
A置いてはいけません。消防法第8条の2の4の対象は消防法施行令第4条の2の3により令別表第一に掲げる防火対象物のうち(18)項から(20)項までを除いたものとされていて、面積や階数の条件がありません。義務を負うのは管理について権原を有する者なので、共用廊下に置かれた荷物であればビルの所有者や管理会社が対象になります。
Q自衛消防組織を置く建物では役割分担に決まりがありますか?
Aあります。消防法施行規則第4条の2の11は、初期消火と、情報の収集及び伝達並びに設備の監視と、在館者の避難誘導と、在館者の救出及び救護という業務について、それぞれおおむね二人以上の要員を置くことを求めています。あわせて消防法施行令第4条の2の8により自衛消防組織を統括する統括管理者を置き、消防法施行規則第4条の2の10第1項第1号により活動要領を消防計画に定めます。
まとめ
✔区画を閉じる安全防護も消火や避難誘導と並ぶ火災時の活動です。
✔根拠は防火管理者の業務を定めた消防法第8条第1項にあります。
✔防火戸の閉鎖をさまたげる物を置かせないのは管理権原者の義務です。
✔対象はアーケードと山林と舟車を除くほぼ全部の防火対象物です。
✔自衛消防組織を置く建物は活動要領まで消防計画に定めます。
✔大規模な建物には自衛消防組織と統括管理者が要ります。
✔計画どおりに行われていなければ措置命令の対象になり得ます。
まずは消防計画のニとホの欄を見てきます。
それだけで訓練の中身が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第8条第4項・第8条の2の4・第8条の2の5
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2・第4条の2の3・第4条の2の4・第4条の2の6・第4条の2の7・第4条の2の8
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号・第4条の2の10・第4条の2の11・第30条第1号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





