廊下の途中や階段の入口に、ふだんは意識しない重い戸が納まっています。
開けたままにしている戸もあれば、いつも閉まっていて押して通る戸もあり、扱いがそろっていません。
条文はこの戸を常時閉鎖式と随時閉鎖式に分けたうえで、どちらにも火災のときに閉じることを求めています。
この記事では防火戸がどこに設けられ現場でなにを守ればよいのかを解説します。
開けっぱなしの防火戸と閉まったままの防火戸が同じ建物にあります。
それは戸の作りが二通りあるからです。
開いていてよい戸は随時閉鎖式として作られています。
見た目でどちらか分かるものなのでしょうか。
戸まわりの金物を見れば見当がつきます。
まずはなにを止めるための戸なのかから押さえましょう。
- 防火戸は防火区画の開口部をふさいで炎と煙の通り道を断つ戸です。(建築基準法施行令第112条第1項)
- 面積で分ける区画には特定防火設備、階段や吹抜けの区画には防火設備が使われます。(同条第1項・第11項)
- 常時閉鎖式はふだんから閉まっていて随時閉鎖式は煙や熱で自動的に閉まります。(同条第19項第1号)
- 階段や吹抜けを囲む戸には煙を止める遮煙性能まで求められます。(同項第2号ロ)
- 管理権原者には防火戸の閉鎖の支障になる物件を放置させない義務があります。(消防法第8条の2の4)
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目次
防火戸はなにを止めるための戸なのか

壁や床でできた区画に、人が通るために開けた穴をふさぎ直すための部品です。
条文は区画を床若しくは壁又は特定防火設備で作れと書いていて、戸を壁と同じ列に並べています。
壁の一部を通行のために切り取った以上、そこだけ火が通ってしまっては区画になりません。
だから特定防火設備には、加熱が始まってから一時間は裏側に火炎を出さないという性能が求められています。
つまり防火戸が開いたままだと、その区画は壁に穴が空いた状態と同じになるということです。
戸というより壁の一部だと思えばよいのですね。
その理解で正しいです。
次はどの場所の戸がそれにあたるのかを見ましょう。
どこに設けられる戸が防火戸になるのか

区画をどう作れと命じられている場所かどうかで決まります。
一つは第1項の面積区画で、延べ面積が1,500平方メートルを超える建物を1,500平方メートル以内ごとに区切るものです。
もう一つがこの第11項の竪穴区画で、階段や吹抜けやエレベーターの昇降路など、上下に抜けている部分を周囲から切り離します。
面積区画に使うのは特定防火設備、竪穴区画に使うのは防火設備で、求められる性能の高さが違います。
自分の建物のどの戸がどちらなのかは、確認申請の図面で区画の線がどこに引かれているかを見れば追いかけられます。
階段の入口の戸が重いのはそのためだったのですね。
竪穴区画の戸である可能性が高いです。
次はその戸の閉まり方の違いを見ましょう。
常時閉鎖式と随時閉鎖式はどこが違うのか

どちらの作りでもよいが、満たすべき要件はそろえるという書き方になっています。
常時閉鎖式はふだんから閉まっているので、火災になっても閉める動作そのものが要りません。
これに対して随時閉鎖式は開いた状態が通常なので、イ号ニに書かれたとおり煙か温度を感知して自動的に閉じることが要件になります。
さらに第2号ロでは、竪穴区画などに使う戸について、避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、煙が発生した場合に自動的に閉鎖することまで求めています。
自分の建物の戸がどちらなのかは、戸の上のドアクローザーだけがあるのか、壁側に電気で保持する金物と天井の感知器がそろっているのかで見分けられます。
開いていてよい戸は感知器とつながっているということですね。
そうです。
だから感知器の下に高い物を置くと戸が閉じ遅れます。
実務で見落としやすいのはどこか

毎日の使い方の積み重ねで、閉まらない戸ができあがっていきます。
いちばん多いのが常時閉鎖式の戸をくさびやフックで開けたままにしてしまう扱いで、これは条文が禁じている閉鎖の支障そのものにあたります。
随時閉鎖式でも、戸が閉じる動きの通り道に台車や段ボールを置けば、感知器が働いても最後まで閉じきりません。
感知器の真下に背の高い棚を寄せると、煙がそこへ届くまでに遅れが出ます。
なおこの管理義務がかかるのは消防法施行令第4条の2の3により令別表第一に掲げる防火対象物で、あわせて防火対象物点検の点検基準にも避難上必要な施設および防火戸が適切に管理されていることが挙げられています。
荷物の一時置き場になっている戸の前が思い当たります。
そこを床のテープで囲って置かない場所にしてください。
最後に見回りの手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

自分の足で戸をたどって、閉じられる状態かどうかを見るだけです。
防火戸などの防火設備は建築基準法第12条第3項の定期検査の対象で、有資格者が検査して特定行政庁へ報告する仕組みが別に用意されています。
管理権原者の側に求められているのは、その検査までのあいだ戸が閉じられる状態を保つことです。
図面か検査報告書で防火戸の位置を書き出し、館内図に落として見回りの順路を決めてください。
そのうえで戸ごとに、くさびが噛んでいないか、戸が動く範囲に物が無いか、感知器の下がふさがれていないかの三点を見て、日付とともに記録に残せば消防計画の自主検査としても使えます。
館内図に戸を落とすところから始めれば手が付けられそうです。
そこまで作れば見回りは十分ほどで終わります。
まずは階段の入口の戸から見てください。
よくある質問
まとめ
戸の前の荷物を今日のうちにどかしてきます。
その一手間が区画を生かします。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2ロ・第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項・第11項・第19項
- 消防法(昭和23年法律第186号)第5条の3第1項・第8条の2の4
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の3
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の6第1項第4号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





