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防災管理の教育は従業員に何を教えればよいのか|訓練とは別に消防計画へ定める事項を解説

高層ビルの会議室で担当者がホワイトボードの前に立ち着席した従業員に説明している写真

防災管理の消防計画には避難訓練のことが必ず書いてあります。
ところが同じ号の並びには、訓練とは別に「教育」という記載事項がもう一つ置かれています。
訓練は体を動かして確かめる場、教育は知っておいてもらう場という切り分けです。
そして教育のほうは回数も対象者も条文に書かれていません

消防計画の雛形に「防災教育」という条があって、そのまま空欄で出しそうになりました。
ここには何を書けばいいんでしょうか。

そこは防災管理上必要な教育という記載事項で、消防法施行規則が定めている号です。
中身は建物ごとに自分で決める作りになっています。

自分で決めてよいなら、避難訓練の前に一言説明するだけでも足りますか。
点検でどこまで見られるのかが分かりません。

点検票には教育の欄があり、実施の状況を書いた書類は防災管理維持台帳に綴じます。
決め方と残し方をこの記事で順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 防災管理に係る消防計画には防災管理上必要な教育に関することを定めます
  • 根拠は消防法施行規則第51条の8第1項第1号ニで、訓練を定めるホとは別の号です
  • 教える中身の手がかりは防災管理新規講習の5科目と、計画に書いた被害想定です
  • 回数が法令で決まっているのは訓練だけで教育には定めがありません
  • 実施の状況を記載した書類は防災管理維持台帳に編冊し点検票でも確認されます

防災管理上必要な教育として被害想定を伝え役割を教え実施を記録して防災管理維持台帳に残すまでの流れと訓練とは別の号であることを示した図解

防災管理上必要な教育とは何を指すのか

建物の前で担当者が説明用の板を使い着席した従業員に話しているイラスト
防災管理者の仕事というと、消防計画の作成と避難訓練が思い浮かびます。
ところが記載事項の並びを読むと、訓練の手前に教育という号が独立して置かれています。
消防法施行令第48条第1項 防災管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防災管理対象物についての防災管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。 消防法施行規則第51条の8第1項第1号 防災管理に関する基本的な事項として次に掲げる事項 ニ 防災管理上必要な教育に関すること。
教育は消防計画に書かなければならない事項です
条文はニで防災管理上必要な教育と書くだけで、誰に何をどれだけ教えるかまでは指定していません。
同じ文言は防火管理側の施行規則第3条第1項第1号トにも置かれていますが、防災管理が相手にする災害は施行令第45条の地震と毒性物質の発散その他の特殊な災害です。
言葉は同じでも、火災を前提にした教育をそのまま持ってくれば足りるという話にはなりません。
まずは自分の建物の消防計画を開いて、ニに当たる条が置かれているかを確かめてください。

火災の教育と地震の教育は、内容が別ということですね。
同じ「教育」という言葉なので同じものだと思っていました。

根拠の条文が別なので、教える中身も別に組み立てます。
計画の目次に教育の条があるかどうかから見てください。

教える中身は何を手がかりに決めればよいのか

五つの箱を並べた棚から資料を取り出す担当者と演台を示したイラスト
自分で決めてよいと言われると、かえって手が止まります。
手がかりは2つあり、どちらも公表されている資料から読み取れます。
消防法施行規則第51条の7第2項 防災管理新規講習は、次に掲げる事項に係る知識及び技能の修得を目的として行うものとし、その講習時間はおおむね4時間30分とする。 一 防災管理の意義及び制度に関すること。 二 防災管理上必要な構造及び設備の維持管理に関すること。 三 避難の訓練その他防災管理上必要な訓練に関すること。 四 防災管理上必要な教育に関すること。 五 消防計画の作成に関すること。
防災管理者が講習で学ぶ柱がそのまま教える柱になります
新規講習の科目は5つで、制度の意義、構造と設備の維持管理、訓練、教育、消防計画の作成という並びです。
もう一つの手がかりは、施行規則第51条の8第1項第2号イで消防計画に書くことになっている被害想定で、自分の建物で地震が起きたら何が起こるかを従業員に伝えるところが教育の入口になります。
横須賀市消防局が公表している防火・防災管理に係る消防計画の例でも、被害想定に基づいて意識の向上と活動技術の向上のための教育を行うと書かれ、管理権原者・防火防災管理者・自衛消防組織の要員という階層ごとに条が分かれています。
自分の計画に書いた被害想定を印刷して、そこから説明する材料を組み立ててみてください。

講習で自分が習ったことを、そのまま従業員に伝え直せばいいわけですね。
教材をゼロから作る必要はないと分かって安心しました。

そこへ自分の建物の被害想定を足すと、他所の話ではなくなります。
講習のテキストと計画の別表を並べて置いてみてください。

教育と訓練はどこが違うのか

机で説明を受ける人と避難口へ歩く人を仕切りで分けたイラスト
教育と訓練をひとまとめに「防災教育訓練」と呼ぶ現場は多いです。
条文の上では別の号で、義務の重さも同じではありません。
消防法施行規則第51条の8第1項第1号 ニ 防災管理上必要な教育に関すること。 ホ 避難の訓練その他防災管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。 同条第3項 防災管理者は、令第48条第2項の避難訓練を年1回以上実施しなければならない。
回数が決められているのは訓練だけです
ホの訓練については施行規則第51条の8第3項が年1回以上という下限を置いていますが、ニの教育に回数の定めはありません。
定めが無いということは自由という意味ではなく、消防計画で時期と対象者を自分で決めて、そのとおりに実施する義務を負うという意味です。
実際、施行規則第51条の8第1項の柱書は建築物の位置・構造・設備の状況とその使用状況等に応じて定めよと書いており、建物ごとに答えが変わることを前提にしています。
年間予定表を開いて、訓練の日付とは別に教育の実施月を入れておくと運用が止まりません。

つまり回数を決めるのは条文ではなく、うちの消防計画なんですね。
書いた以上はそのとおりにやらないといけないわけだ。

そのとおりで、計画に書いた回数が自分の建物の基準になります。
守れない回数を書かないことがいちばんの近道です。

教育をしたのに点検で否とされるのはどんなときか

記録の綴られた書棚と空の書棚を並べたイラスト
教育は実施した瞬間に消えてしまう業務です。
だからこそ制度の側は、記録という形で残すことを別に求めています。
消防法施行規則第51条の12第1項第6号 防災管理に係る消防計画に基づき実施される次のイからチまでに掲げる状況を記載した書類 ハ 防災管理上必要な教育の状況 同規則第51条の14第3号 防災管理に係る消防計画に基づき、消防庁長官が定める事項が適切に行われていること。
記録が無ければ実施していないのと同じに見えます
防災管理点検の対象になる建物では、管理について権原を有する者が教育の状況を記載した書類を防災管理維持台帳に編冊して保存しなければなりません。
点検基準を受けた平成20年消防庁告示第22号も、消防計画に基づき適切に行われていることとされる事項として防災管理上必要な教育に関する事項を掲げています。
もう一つの落とし穴が欄の取り違えで、実際の点検票(平成20年消防庁告示第19号の別記様式第2)には教育に関する欄が3つ並んでいます。
基本的事項としての「防災管理上必要な教育」、自衛消防組織の「要員の教育及び訓練」、地震防災対策強化地域にある建物の「教育及び広報」で、要員向けの教育を書いただけではニをそろえたことにならない点に注意してください。

自衛消防組織の要員向けの教育は計画に書いてありました。
それとは別の欄があるとは気づいていませんでした。

要員向けは自衛消防組織の業務として別に定める事項です。
点検票の欄の並びを見ながら計画の条を突き合わせると抜けが見つかります。

明日からなにをすればよいのか

机の上の消防計画と点検表を持つ担当者と予定表を示したイラスト
ここまでで、書くべき場所と残すべき記録がはっきりしました。
あとは手を動かす順番を決めるだけです。
消防法施行規則第51条の8第1項 防災管理者は、令第48条第1項の規定により、建築物その他の工作物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況等に応じ、おおむね次に掲げる事項について、当該建築物その他の工作物の管理について権原を有する者の指示を受けて防災管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。防災管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。
計画に書き足したら届出まで進みます
最初にやることは消防計画のニに当たる条を開いて、対象者と内容と実施の時期という3点が書かれているかを確かめることです。
書かれていなければ管理権原者の指示を受けて書き足し、施行規則第51条の8第1項の柱書に従って変更の届出を所轄の消防長または消防署長に行います。
実施したら日時・対象者・内容・使った資料の4点を1枚に残し、防災管理維持台帳に綴じてください。
そこまで進めておけば、点検のときに教育の欄で説明に詰まることはなくなります。

実施記録の様式を作るところから始めればよさそうです。
今ある訓練の記録用紙を流用して作ってみます。

流用で十分です。
ただし訓練の記録とは別葉にして、台帳の教育のところへ綴じてください。

よくある質問

Q防災管理上必要な教育は年に何回行えばよいですか?
A回数を定めた規定はありません。施行規則第51条の8第3項が年1回以上と定めているのは避難訓練で、教育については消防計画で自分で決めた時期に実施することになります。
Q防火管理の教育と同じ場で一緒に実施してもよいですか?
A同じ場で行うことを禁じる規定はなく、消防本部が公表している記入例にも防火と防災を一体で書く様式があります。ただし根拠は施行規則第3条第1項第1号トと第51条の8第1項第1号ニで別の条文なので、地震等に関する内容を扱ったことが記録から分かるようにしてください。
Qパートやアルバイトの方も教育の対象に含めるべきですか?
A条文は対象者を限定していないので、消防計画で対象者を定めることになります。消防本部が公表している計画の例では管理権原者・防火防災管理者・自衛消防組織の要員という階層ごとに条を分けているので、そこを手がかりに自分の建物の勤務実態に合わせて決めてください。
Q教育を実施したら消防署への届出は必要ですか?
A実施したこと自体の届出を求める規定はありません。届出が必要になるのは消防計画を作成したときと変更したときで、施行規則第51条の8第1項の柱書が変更のときも同様と定めています。

まとめ

防災管理上必要な教育は消防計画に定める記載事項です
根拠は消防法施行規則第51条の8第1項第1号ニで、訓練を定めるホとは別の号です
同じ文言が防火管理側にもありますが対象の災害は地震と特殊な災害です
教える柱は防災管理新規講習の5科目と計画に書いた被害想定から組み立てます
回数が決まっているのは避難訓練だけで教育の回数は計画で自分で決めます
教育の状況を記載した書類は防災管理維持台帳に編冊して保存します
点検票には教育に関する欄が3つ並ぶので取り違えないようにします

空欄のままだった条に、やっと何を書けばいいか分かりました。
今期の予定表に教育の月を入れて、記録の様式も作ります。

そこまでできれば教育の欄は堂々と説明できます。
計画の書き方や台帳の整え方で迷ったら、㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第36条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第46条・第47条・第48条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号・第51条の7・第51条の8・第51条の12第1項・第51条の14
  • 総務省消防庁「消防法施行規則の一部を改正する省令の公布に伴う関係告示の公布について」(平成20年9月24日 消防予第238号)別添の防災管理点検票および消防庁告示第22号
  • 防災管理の点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成20年消防庁告示第19号)
  • 横須賀市消防局「防火・防災管理に係る消防計画(例)」

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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