神社の本殿や寺院の本堂が重要文化財に指定されると、消防法上は令別表第一(17)項の防火対象物になり、延べ面積を問わず自動火災報知設備が必要になります。
ところが文化財の建造物には、山の中に建つ小さな社や、壁のない門、電気の通っていない建物など、一般の建物とは条件が大きく違うものが少なくありません。
消防庁は昭和44年、こうした建造物に消防法令をどう当てはめるかという運用基準を通知で示しました。
この記事では、自動火災報知設備そのものを省ける場合と、設備は必要でも感知器などを省ける部分をわかりやすく解説します。
うちのお寺は本堂が重要文化財なんですが、境内の小さなお堂や門まで全部に火災報知設備が要るんでしょうか。
消防庁が昭和44年に運用基準を示しています。
設備を省ける場合が決められているので順番に見ていきましょう。
省けるかどうかは、こちらで判断してしまってよいのでしょうか。
いいえ、決めるのは消防長または消防署長です。
どんな基準で判断されるのかを知っておくと相談がしやすくなります。
- 重要文化財などに指定された建造物は令別表第一(17)項に当たり、延べ面積を問わず自動火災報知設備の設置対象になります。
- 消防庁は昭和44年10月、この設置について運用基準を通知で示しました。
- 自動火災報知設備そのものを設置しないことができるのは、耐火構造の建築物に収納されている場合など4つの場合です。
- 設備が必要な建造物でも、小屋裏や神社の内陣のように感知器を省ける部分があります。
- 省けるかどうかを決めるのは消防長または消防署長で、建物側が自分で判断することはできません。
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目次
文化財の建造物になぜ自動火災報知設備の運用基準が示されたのか

そこで消防庁は同じ年の10月、現場での運用が食い違わないように基準を通知で示しています。
消防法施行令第21条第1項第1号イは、令別表第一(17)項の防火対象物を延べ面積を問わず自動火災報知設備の設置対象としています。
つまり指定された建造物であれば、どれほど小さくても条文の上では設備が必要という扱いになります。
しかし文化財の建造物には、壁のない門や山中の小さな社のように、そのまま当てはめると意味のある設備にならないものが含まれます。
そこで通知は、特例基準という形で、設置しないことができる場合を具体的に示しました。
条文どおりだと門にも報知設備が要ることになってしまうんですね。
そのとおりです。
次はこの基準がどの建造物に向けたものかを確認しましょう。
特例基準はどの建造物を対象にしているのか

指定や認定を受けた建造物であることが出発点になります。
ここでいう重要な文化財には、都道府県や市町村が条例で指定したものも含まれます。
国宝は文化財保護法上、重要文化財のうち特に価値の高いものとして指定されるため、同じく(17)項に含まれます。
また特例そのものの根拠は、消防法施行令第32条という基準の特例の規定です。
同条は、位置や構造から判断して火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと消防長または消防署長が認めるときに、設備の基準を適用しないことができると定めています。
市の指定を受けたお堂も同じ扱いになるということですか。
重要な文化財として指定されていれば含まれます。
手元の指定書で、どの建物が指定されているかを確かめておいてください。
自動火災報知設備そのものを省けるのはどんな場合か

いずれも火災が起きにくいか、設備を付けても機能しない建造物です。
イ 外部の気流が流通し火災の発生を感知器により有効に感知できない開放式の構造の建造物には、自動火災報知設備を設置しないことができること。
ウ 一間社、茶室等延べ面積が7平方メートル以下の小規模な建造物であり、当該建造物が他の建築物等と独立していて火災の発生のおそれが少なく、かつ、火災の延焼のおそれが少ない場合は、当該建造物には自動火災報知設備を設置しないことができること。
エ 建造物の敷地内に管理者が常駐していないため火災の発生を有効に覚知できず、かつ、その敷地の周囲に民家等がない別表1の建造物には、自動火災報知設備を設置しないことができること。(前掲 消防予第237号 1(1))
アは、建造物が耐火構造の収蔵庫などに収められていて、その建築物の内部にも周囲にも火の元がない場合です。
イは、壁のない門や吹きさらしの建物のように、外の気流が通り抜けて感知器が熱や煙をとらえられない構造を指します。
ウは、一間社や茶室のような延べ面積が7平方メートル以下の小さな建造物が、他の建物から離れて建っている場合です。
エは管理者が常駐せず周囲に民家もない建造物についてのもので、通知の別表1に掲げられた建造物が対象とされています。
つまり火が出にくいか、付けても働かない建物が対象ということですね。
その理解で合っています。
次は設備が必要な建造物のなかで省ける部分を見ましょう。
設備は必要でも感知器や地区音響装置を省ける部分はどこか

見落としやすいのは、この部分ごとの扱いです。
イ 三重塔、五重塔その他これらに類する塔の小屋裏及び観覧者を入れない城郭等の建造物の階段には、煙感知器を設置しないことができること。(前掲 消防予第237号 1(2))
(地区音響装置について)常時人が居住せず、かつ、観覧者を入れない建造物には、地区音響装置を設置しないことができること。(同 1(3))
感知器を省けるのは小屋裏と神社内陣で、しかも電気設備も煙突を有する火気使用設備もないことが条件です。
つまり後から照明や電気配線を引き込めば、この前提が崩れて感知器が必要になる可能性があります。
地区音響装置についても、常時人が居住せず観覧者も入れない建造物に限られていて、拝観を再開すれば前提が変わります。
建物の使い方を変えるときは、特例の前提が崩れていないかを必ず確認してください。
照明を入れただけで扱いが変わることもあるんですね。
電気設備がないことが条件になっているためです。
工事の前に所轄消防署へ相談しておくと安心です。
明日からなにを確認すればよいのか

まずは手元の資料をそろえるところから始めます。
指定書を見て、境内のどの建物が指定を受けているかを一覧にしてください。
次に建物ごとに、耐火構造の建築物に収まっているか、開放式か、延べ面積が7平方メートル以下かを当てはめます。
そのうえで所轄消防署に相談し、特例を適用できるかどうかの判断を仰ぎます。
判断するのは消防長または消防署長なので、自分で省略を決めないことが最も大切です。
まずは指定書を見て、建物の一覧を作ってみます。
それが一番の近道です。
これでよくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
境内の建物ごとに条件が違うことがよく分かりました。
まず指定書を確認して所轄消防署に相談してみます。
はい。
文化財の防火や消防用設備でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 文化財関係建造物に対する自動火災報知設備の設置に関する消防法令の運用基準について(昭和44年10月20日 消防予第237号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令別表第一(17)項・第21条第1項第1号イ・第32条(昭和36年政令第37号)
- 消防法施行規則第23条第4項・第24条第5号(昭和36年自治省令第6号)
- 文化財保護法(昭和25年法律第214号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





