建物の敷地の隅にある防火水槽のふたや、外壁にはめ込まれた送水口を日ごろ気にすることはあまりありません。
これらは自分たちが使う設備ではなく、火災のときに消防隊が使うために置かれているものだからです。
ところが消防法は、その維持と点検を建物の関係者と防火管理者の仕事として書いています。
この記事では、消防用水と消火活動上必要な施設が消防法でどう位置づけられ、防火管理者が何をすればよいのかを解説します。
外壁に送水口という金具があるのですが、うちで面倒を見る対象なのかがわかりません。
使うのが消防隊であることと、管理するのが誰かは別の話です。
送水口の維持も点検も建物側の仕事とされています。
自分たちが使わない設備まで見なければいけないのですね。
消防法第8条第1項が防火管理者の業務として名指ししています。
どこまでが対象になるのかから順に見ていきましょう。
- 消防用設備等は消防の用に供する設備と消防用水と消火活動上必要な施設の三つでできています。(消防法第17条第1項)
- 消火活動上必要な施設とは排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備・無線通信補助設備の5つです。(消防法施行令第7条第6項)
- これらは関係者が設置し及び維持しなければならないものとされています。(消防法第17条第1項)
- 防火管理者に行わせる業務にも消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備が名指しされています。(消防法第8条第1項)
- 送水口や消防用水は消防ポンプ自動車が接近できることまでが設置及び維持の基準です。(消防法施行令第27条・第29条)
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目次
消防隊が使う設備とは消防法上どれを指すのか

条文はもっと広い三つのまとまりとして書いています。
一つ目の消防の用に供する設備は消火設備・警報設備・避難設備の総称で、消火器や自動火災報知設備や誘導灯がここに入ります。
二つ目の消防用水は、消防法施行令第7条第5項で防火水槽又はこれに代わる貯水池その他の用水と定められています。
三つ目の消火活動上必要な施設は同条第6項で、排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備・無線通信補助設備の5つと定められています。
自分の建物にどれが付いているかは、直近の点検結果報告書に並んでいる設備の欄を見ると一覧できます。
後ろの二つは消防隊が使うものばかりですね。
そのとおりで、建物の中の人が操作するものではありません。
それでも同じ消防用設備等として一括りにされています。
なぜ建物の側にその維持管理の義務があるのか

条文が義務を負う相手をはっきり書き分けているためです。
消防法第17条第1項が設置と維持の義務を課している相手は関係者で、所有者・管理者・占有者がこれに当たります。
そのうえで第8条第1項は、管理権原者が防火管理者に行わせる業務のひとつとして点検及び整備を挙げています。
ここで並んでいるのは消防の用に供する設備だけではなく、消防用水と消火活動上必要な施設まで同じ一文の中に入っています。
巡回が消火器と誘導灯を見るだけになっていないか、いちど自分の消防計画の記載と突き合わせてみてください。
条文の一文の中に全部入っているとは気づきませんでした。
長い一文なので読み飛ばされがちなところです。
次はこれを消防計画へどう落とすかを見ます。
消防計画と点検報告には何を書くことになるのか

書くべき項目は省令に列挙されています。
ここでいう消防用設備等は第17条第1項の定義そのままなので、消防用水と消火活動上必要な施設も当然に含まれます。
点検そのものは消防法第17条の3の3が別に定めており、その結果を消防長又は消防署長に報告するところまでが義務です。
報告の間隔は消防法施行規則第31条の6第3項が用途で分けていて、特定防火対象物などは1年に1回、それ以外の防火対象物は3年に1回とされています。
自分の建物がどちらの区分に当たるのかを消防計画に書き込んでおくと、担当者が代わっても間隔が崩れません。
つまり点検の対象は設備ごとに切り分けないということですね。
報告の間隔を分けているのは設備ではなく建物の用途です。
見積書の設備の並びを消防計画の記載と合わせておくと確実です。
実務で見落としやすいのはどこか

条文が求めているのは機器の性能だけではないためです。
この条文が掲げているのは設置だけの基準ではなく、設置及び維持に関する技術上の基準です。
消防用水にも同じ作りがあり、消防法施行令第27条第3項第4号は消防ポンプ自動車が2メートル以内に接近することができるように設けると定めています。
送水口の前に積まれた資材や、防火水槽のふたの上の駐車は、機器を壊していなくても接近できない状態を作ります。
なお排煙設備は建築基準法にも別に規定があるため、消防法の排煙設備と取り違えていないかも図面で確かめておくと安全です。
送水口の前は駐輪場のようになってしまっています。
いちばん多い相談がまさにそれです。
片づけたあとに置かれない仕組みまで作るのが要点になります。
明日からなにを確認すればよいのか

どれが自分の建物にあるかを確かめ、前を空けておくところから始めます。
直近の点検結果報告書を開き、消防用水と消火活動上必要な施設の欄に何が載っているかを書き出します。
次に現場へ出て、送水口・採水口・防火水槽のふたの前に物が置かれていないかを見ます。
置かれていたら片づけたうえで、同じ場所に戻らないように日常の巡回の項目へ加えます。
命令を受けてから動くのではなく、消防計画の中に手順として書いてしまうのが結局いちばん手間がかかりません。
報告書を開くところからならすぐにできそうです。
そこが出発点で十分です。
最後によくある質問を確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは送水口の前の自転車をどけるところからやってみます。
それが今日いちばん効く一手です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第17条第1項・第17条の3の3・第17条の4
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条・第27条・第29条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号・第31条の6
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第126条の2・第126条の3
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





