大きなビルの地下が、そのまま隣の地下街の通路につながっていることがあります。
火災や地震が起きたとき、その通路を通して人を隣側へ流してよいのかを決めていない建物は少なくありません。
消防法令は建物ごとに消防計画を作らせる仕組みなので、つながっている先の建物までは自分の計画では動かせません。
消防庁のガイドラインは、避難は原則として自分の建物の中で完結するように定めるべきだとしています。
うちのビルは地下2階が地下街の通路とつながっています。
火災のときはそのまま地下街のほうへ逃がしてよいのでしょうか。
原則は自分の建物の中で避難を完結させる形です。
接続部を使う経路は例外として別に定めておきます。
地下街のほうは別の会社が管理しています。
こちらの消防計画で相手の通路まで指示できるものなのでしょうか。
指示はできません。
計画の届く範囲と、接続部の扱いを順番に見ていきましょう。
- 地下街は令別表第一(16の2)項の防火対象物で、こちらのビルとは別に数える一つの建物です
- 地階が連続して地下道に面していれば、その地階と地下道を合わせた(16の3)項の準地下街になります
- 防災管理に係る消防計画は消防法施行令第48条第1項により自分の防災管理対象物についてだけ作ります
- 避難は原則として自分の建物の中で完結するように避難経路と誘導方策を定めます
- 接続部を通る避難は、自館だけで完結しない場合に備える例外の経路として別に書いておきます
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目次
地下街とつながった建物とはどんな建物なのか

地下街と準地下街は、消防法施行令の別表第一で別々の項に置かれています。
自分のビルとは別に数えるので、管理権原者も防災管理者も別に置かれます。
一方でビルの地階が連続して地下道に面している場合には、その地階と地下道を合わせた準地下街という枠が別に立ちます。
どちらにしても、接続している相手はこちらの建物の一部ではありません。
接続部の扉の向こうは別の建物だという前提に立って、そこから避難の話を組み立ててください。
つながっているのだから一体のものだと思っていました。
法令の上では別々なのですね。
別々です。
まずは接続部の扉を境に管理する人が変わると押さえてください。
接続がある建物の避難は誰が消防計画に定めるのか

誰が何について作るのかを、条文で確かめます。
条文が「当該防災管理対象物についての」と書いているとおり、隣の建物の中の経路までは書けません。
建物全体を一本にまとめる仕組みとして統括防災管理がありますが、これは一つの防火対象物の中で管理権原が分かれているときの仕組みです。
消防法第8条の2第1項を消防法第36条第1項で読み替えて使うもので、接続しているだけの別の防火対象物までは届きません。
接続部の向こう側の誘導はこちらの計画では動かせない、という前提で自館側を組んでください。
統括防災管理者を置けば地下街の分までまとめて書けると思っていました。
まとめられるのは同じ建物の中だけです。
地下街側の管理者とは計画の外で連絡の取り決めをしておきましょう。
なぜ避難は自分の建物の中で完結させるのが原則なのか

消防庁のガイドラインが、接続のある建物の避難の考え方をはっきり示しています。
在館者の避難が当該建築物等において完結するように、避難経路と誘導方策を定めるよう求められています。
理由までは書かれていませんが、建物をまたぐと指揮を執る人も放送の届く範囲も途中で変わります。
誘導方策という言葉が使われているとおり、経路を引くだけでなく誰がどう声を掛けるかまで含めて決める話です。
まずは自分の建物の中だけで地上まで出せる経路が何本あるかを数えてください。
つまり地下街へ逃がす前提の計画は作らないということですね。
原則はそのとおりです。
ただし接続部をまったく使わないと決めるわけではありません。
接続部を通る避難はどんなときのために備えておくのか

ガイドラインは、接続部を活用する経路も定めておくよう求めています。
災害の規模や態様によって自館だけでは避難が完結しないことがあり、そのときのための備えです。
原則を決めただけで終わると、地上へ出られないと分かった瞬間に現場が判断を迫られます。
地震発生時の避難誘導は消防法施行規則第51条の8第1項第2号ホで消防計画の記載事項とされているので、例外側もそこに書き込めます。
接続部を通すかどうかを誰が判断するのかまで決めておくと、当日に迷わずに済みます。
接続部の扉はふだん施錠されています。
いざというとき本当に開くのか自信がありません。
そこが例外の経路の要になります。
鍵を誰が持ち誰が開けるのかを地下街側と決めて書いておいてください。
明日からなにを確かめればよいのか

地下の平面図と消防計画を並べて置くところから始めてください。
地下の平面図を出し、隣の建物や地下道につながっている開口部と扉をすべて拾い出してください。
次に、その接続部を使わずに地上まで出られる経路が何本あるかを数えます。
そのうえで消防計画の避難誘導の項に、原則は自館内で完結させることと、接続部を使う場合の条件を書き分けます。
最後に避難の訓練で実際に歩いてみて、書いた経路が本当に通れるかを確かめてください。
地下街側の管理者とは名刺も交換していませんでした。
まずは連絡先からですね。
そこが出発点になります。
関係機関との連絡は消防計画の記載事項でもあるので、決めた内容はそのまま書き足せます。
よくある質問
まとめ
つながっている先まで書こうとして手が止まっていた理由が分かりました。
まずは自館の経路から整えます。
その順番なら計画は形になります。
接続部の書き分けで迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2第1項・第36条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4第三号・第46条・第48条第1項及び第2項・別表第一(16の2)項及び(16の3)項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第一号リ・第51条の8第1項第一号ヘ及び第2号ホ
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)本編第2 3⑴オ
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





