給湯室や厨房の壁に火元責任者と書かれた小さな札が貼ってあります。
名前を書いて貼ったところで終わりにしている建物は少なくありません。
けれども消防法施行令は、防火管理者に対して火元責任者へ必要な指示を与えることまで求めています。
札を貼るところまでが防火管理ではありません。
各フロアの火元責任者は消防計画に名前を書いて札も貼っています。
それ以上なにかする必要があるのでしょうか。
政令に必要な指示を与えなければならないという一項があります。
まず火元責任者という言葉がどこに書かれているのかから見ていきましょう。
消防法の本体を探しても火元責任者という語が見つかりませんでした。
出てくるのは消防法施行令第3条の2第4項のただ一か所です。
だからこそ中身は消防計画で自分の建物に合わせて決めることになります。
- 火元責任者という語が出てくるのは消防法施行令第3条の2第4項のただ一か所で消防法にも施行規則にも出てこない
- 同項は防火管理者に対し火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者へ必要な指示を与えなければならないと定めている
- 指示が求められる場面は点検及び整備と火気の使用又は取扱いに関する監督を行うときの2つに限って書かれている
- 消防法施行規則第3条第1項第1号トは防火管理上必要な教育に関することを消防計画に定めよと求めている
- 同令第3条の2第3項は防火管理者に管理権原者の指示を求め誠実に職務を遂行することも義務づけている
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目次
火元責任者とはどんな役割の人なのか

条文の上では、防火管理者が指示を与える相手として一度だけ名前が挙がる存在です。
防火管理者は一つの防火対象物に原則として一人ですが、建物の隅々まで一人で見て回ることはできません。
そこで各階や各区画に火元責任者を置き、日々の火の元の確認をその人に担ってもらう運用が広く行われています。
条文に選任の要件も届出も書かれていないのは、その分け方が建物の使い方によってまったく違うからです。
つまり誰を何人置くかは自由に決めてよい一方で、決めた相手に指示を与えることは政令上の義務として残ります。
資格が要る役職だと思い込んでいました。
資格ではなく役割分担です。
次はどんな場面で指示が求められるのかを見ます。
防火管理者はどんなときに指示を与えなければならないのか

条文は業務の種類を挙げたうえで、そのときはと限定して書いています。
第2項は防火管理者が行う業務を並べたうえでその他防火管理上必要な業務としていますが、第4項が指示の義務を結びつけているのは点検及び整備と火気の使用又は取扱いに関する監督の2つです。
訓練の実施や避難施設の維持管理や収容人員の管理は、第4項の文言には挙がっていません。
この2つが選ばれているのは、どちらも防火管理者が現場に張り付かずに他人の手を借りて行う業務だからだと読めます。
だから消火器の点検日や厨房の火の始末を担当者任せにする建物ほど、この一項が効いてくることになります。
点検と火気の監督のときだけ名指しされているのですね。
人に任せる業務だからこそ指示が要るという並びです。
次はその中身を消防計画のどこに書くのかを見ます。
火元責任者への教育は消防計画のどこに書くのか

消防法施行規則は消防計画に定める事項を号で並べており、その中に教育の号があります。
一 (略)ト 防火管理上必要な教育に関すること。
甲種の防火対象物では同項第1号トが、乙種側の防火対象物でも同項第2号ホが第1号トを引いており、規模にかかわらず教育は消防計画の記載事項になっています。
同じ第1号にはロの自主検査、ヌの消防機関との連絡、ルの工事中の立会いも並んでいるので、誰が何を見るのかをここで束ねて書けます。
消防計画は作成したときだけでなく変更するときも届け出なければならないと柱書が定めています。
火元責任者の区分を階ごとから部署ごとに組み替えたなら、それは届出の対象になると考えて所轄に相談してください。
つまり教育の欄を埋めておけば指示の根拠にもなるということですね。
そのとおりです。
次は落とし穴になりやすいところを見ます。
実務で見落としやすいのはどこか

もう一つは、建物の中で働いている人が自社の従業員だけではない場合の抜けです。
政令が求めているのは名簿を作ることではなく、点検整備と火気監督の場面で必要な指示を与えることです。
警備や清掃を外部に委託していると、現場で火の元に近い場所にいる人が自社の従業員でないことがあり、その場合は受託者の氏名住所と業務の範囲及び方法まで消防計画に書くよう規則第3条第2項が求めています。
防火管理上必要な業務が消防計画に従って行われていないと認められると、消防法第8条第4項により管理権原者へ措置命令が出されることがあります。
指示を出した相手と日付を記録に残しておくと、立入検査で説明できる材料になります。
清掃は委託していますが消防計画には社名しか書いていません。
業務の範囲及び方法まで書くのが規則の求めです。
最後に明日からの手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

すでに届け出てある消防計画を開いて、書いてある人と実際の人を突き合わせるところから始めます。
まず消防計画の第1号トに当たる欄を開き、教育の対象と時期がいまの体制と合っているかを確かめてください。
次に火元責任者の氏名と担当区域が異動後のものになっているかを見て、変わっていれば変更の届出を所轄消防長又は消防署長に出します。
そのうえで、消火器の点検を頼むときと厨房の火の始末を頼むときに、口頭でよいので何を見てほしいのかを具体的に伝えます。
自分だけで判断しきれないときは、令第3条の2第3項に沿って管理権原者の指示を求めてから動いてください。
まず消防計画を開いて名前を突き合わせるところからですね。
そこがずれていると他の欄も古いままのことが多いです。
気になったところから順に直していきましょう。
よくある質問
まとめ
明日いちばんに消防計画を開いて火元責任者の欄を見直します。
直したその日に何を伝えたかも一行書き足しておくと残ります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項
- 消防法施行規則第3条第2項
- 消防法施行規則第3条第10項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





