消防法施行令を開くと、耐火構造や不燃材料といった言葉が説明もなく出てきます。
探しても消防法令の中に定義が見当たらず、そこで手が止まってしまうことがあります。
実はこれらの言葉は、消防法令が建築基準法から意味ごと借りてきたものです。
この記事では消防法施行令が建築基準法から借りている用語と、その定義がどこにあるのかを解説します。
令の条文に耐火構造と書いてあるのですが、消防法のどこを探しても意味が書いていません。
探しても見つからないはずです。
その言葉の意味は建築基準法の側に置かれていて、消防法施行令は括弧書きでそこを指しています。
借りている言葉はほかにもあるのでしょうか。
本則を数えると13語あります。
どれも括弧書きの中に条項番号が書いてあるので、そこをたどれば意味にたどり着けます。
- 消防法施行令は建築に関する用語を自分で定義せず括弧書きで建築基準法令の条項を指しています。(消防法施行令第8条第1号ほか)
- 建築基準法という語が消防法施行令の本則に出てくるのは16か所で、そこで意味を借りている用語は13語です。
- 不燃材料と準不燃材料と難燃材料の違いは加熱に耐える時間の長さで切られています。(建築基準法施行令第1条第5号・第6号・第108条の2)
- 主要構造部からはひさしや屋外階段や最下階の床などが除かれています。(建築基準法第2条第5号)
- 防火設備だけは丸ごと借りずに総務省令で定めるものに限ると絞られています。(消防法施行令第8条第2号・第12条・第16条)
▼

目次
消防法施行令の条文に建築基準法の用語が出てくるのはなぜか

その言葉の意味は、条文のすぐ後ろの括弧書きが教えてくれます。
一 開口部のない耐火構造(建築基準法第2条第7号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
消防法施行令はここで耐火構造の中身をみずから書かず、建築基準法の条項番号を名指ししてそこに預けています。
条文を作るたびに同じ定義を書き直すと、建築基準法が改正されたときに食い違いが生まれるからです。
逆にいえば、消防法令だけをいくら読んでも耐火構造の意味には永久にたどり着けません。
括弧書きに条項番号が書いてあったら、それは別の法律を開けという指示だと思ってください。
括弧書きは読み飛ばしていました。
括弧書きこそ本体だと思って読んでください。
まずはお手元の令の条文で括弧の中に条項番号があるかを見てみましょう。
どの用語が建築基準法から借りられているのか

消防法施行令の本則を最初から最後まで見ると、次のように整理できます。
建築基準法という語そのものは消防法施行令の本則に16か所出てきますが、そこで意味を引いている用語をまとめると次の表になります。
借り先は建築基準法の本体だけでなく、建築基準法施行令のこともあります。
表の右の列がそのまま検索する条項番号になるので、この一覧を手元に置いておくと調べものが速く済みます。
| 消防法施行令の条 | 借りている用語 | 定義がある条文 |
|---|---|---|
| 第4条の2の2 | 避難階 | 建築基準法施行令第13条第1号 |
| 第4条の2の2 | 傾斜路 | 建築基準法施行令第26条 |
| 第5条の7 | 居室 | 建築基準法第2条第4号 |
| 第8条 | 耐火構造 | 建築基準法第2条第7号 |
| 第8条・第12条・第16条 | 防火設備 | 建築基準法第2条第9号の2ロ |
| 第11条 | 特定主要構造部 | 建築基準法第2条第9号の2イ |
| 第11条 | 難燃材料 | 建築基準法施行令第1条第6号 |
| 第12条 | 耐火建築物 | 建築基準法第2条第9号の2 |
| 第12条 | 延焼のおそれのある部分 | 建築基準法第2条第6号 |
| 第16条 | 不燃材料 | 建築基準法第2条第9号 |
| 第19条 | 準耐火建築物 | 建築基準法第2条第9号の3 |
| 第22条 | 準不燃材料 | 建築基準法施行令第1条第5号 |
| 第34条の3 | 主要構造部 | 建築基準法第2条第5号 |
建築基準法と建築基準法施行令の両方に散らばっているのですね。
材料の三つと避難階と傾斜路は施行令の側にあります。
法だけを開いて見つからないと諦めてしまう方が多いので気をつけてください。
不燃材料と準不燃材料と難燃材料はどこで線が引かれているのか

三つを分けている物差しは、条文を読むと一つしかありません。
同条第6号 難燃材料 建築材料のうち、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後5分間第108条の2各号(略)に掲げる要件を満たしているもの(略)をいう。
同令第108条の2 法第2条第9号の政令で定める性能及びその技術的基準は、建築材料に、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間次の各号(略)に掲げる要件を満たしていることとする。
満たすべき要件は三つとも同じで、燃焼しないこと、防火上有害な変形や溶融やき裂その他の損傷を生じないこと、避難上有害な煙又はガスを発生しないことの三点です。
その要件を保つ時間が、不燃材料は20分間、準不燃材料は10分間、難燃材料は5分間と定められています。
消防法施行令の側では、不燃材料が第16条の区画に、準不燃材料が第22条の漏電火災警報器に、難燃材料が第11条の内装の条件に出てきます。
仕様書に難燃と書いてあるからといって準不燃の欄に使えるわけではないので、材料の認定の区分は必ず現物の表示で確かめてください。
つまり不燃が一番長く耐えるということですね。
そのとおりです。
内装を張り替えるときは仕上材の認定番号を控えておくと後で困りません。
実務で見落としやすいのはどこか

とくに主要構造部は範囲を取り違えやすい用語です。
主要構造部は壁と柱と床とはりと屋根と階段の六つですが、条文の後半が除外するものを並べていて、ひさしや局部的な小階段や屋外階段や最下階の床はここから外れます。
もう一つの落とし穴が、消防法施行令が主要構造部と特定主要構造部を使い分けている点です。
第34条の3は主要構造部と書いていますが、第11条は特定主要構造部と書いており、後者は主要構造部のうち防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分を除いた部分を指します。
さらに防火設備だけは丸ごと借りておらず、消防法施行令は防火戸その他の総務省令で定めるものに限ると範囲を絞っているので、建築基準法上の防火設備がそのまま通るとは限りません。
同じ令の中で言葉が使い分けられているとは思いませんでした。
条ごとに言葉が違えば意味も違うと考えてください。
似た用語が出てきたら、その条の括弧書きをその都度読み直すのが確実です。
明日からなにを確認すればよいのか

その代表が避難階です。
条文が定めているのは直接地上へ通ずる出入口のある階という一点だけなので、傾斜地に建つ建物では複数の階が避難階になることがあります。
消防法施行令第4条の2の2はこの避難階を基準に階段の数を数えており、防火対象物点検の対象になるかどうかの判断にも効いてきます。
まずは自分の建物のどの階に地上へ直接出られる出入口があるかを図面と現地の両方で確かめ、消防計画の避難経路の記載と合っているかを見てください。
そのうえで、令の条文に出てきた用語は括弧書きの条項番号をたどって定義を確かめる習慣をつけると、指摘を受けたときの読み解きが速くなります。
うちは坂の途中なので二つの階から外に出られます。
その場合はどちらも避難階に当たり得ます。
階段の数え方が変わることがあるので所轄消防署に一度確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
括弧書きをたどれば意味にたどり着けるとわかりました。
さっそく手元の消防計画と図面を見比べてみます。
用語の借り先がわかれば条文はぐっと読みやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法施行令第4条の2の2(火災の予防上必要な事項等について点検を要する防火対象物)
- 消防法施行令第5条の7(住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準)
- 消防法施行令第8条(通則)
- 消防法施行令第11条(屋内消火栓設備に関する基準)
- 消防法施行令第12条(スプリンクラー設備に関する基準)
- 消防法施行令第16条(不活性ガス消火設備に関する基準)
- 消防法施行令第19条(屋外消火栓設備に関する基準)
- 消防法施行令第22条(漏電火災警報器に関する基準)
- 消防法施行令第34条の3(大規模の修繕及び模様替えの範囲)
- 建築基準法第2条第4号・第5号・第6号・第7号・第9号・第9号の2・第9号の3
- 建築基準法施行令第1条第5号及び第6号・第13条第1号・第26条・第108条の2
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





