廊下の壁にはめ込まれた赤い扉を開けると、中にはホースとノズルが収まっています。
同じ屋内消火栓という名前でも、ホースの長さも放水の勢いも、そして1台が守れる範囲も同じではありません。
どの型式を選べるかは建物の用途で決まっていて、後から自由に取り替えられるものでもありません。
この記事では、屋内消火栓の三つの基準がどこで分かれ防火管理者が何を確かめればよいのかを解説します。
訓練で消火栓を開けたら、隣のビルのものとホースの形が全然違いました。
屋内消火栓の基準は一つではなく三通り置かれています。
どれで造られているかで扱い方も変わります。
建物ごとに好きなものを選んでよいということでしょうか。
そこが分かれ目で、用途によっては一つしか選べません。
まずどこで線が引かれているかから見ていきましょう。
- 屋内消火栓の技術上の基準は建物の区分に応じて三通りが用意されています。(消防法施行令第11条第3項)
- 1号消火栓は各部分から水平距離25メートル以下で、放水量は130リットル毎分以上です。(同項第1号)
- 2号消火栓は水平距離15メートル以下と狭い代わりに、1人で操作できる構造が求められます。(同項第2号イ)
- 広範囲型2号消火栓は1人で操作できてなお水平距離25メートルを守る型式です。(同項第2号ロ)
- 工場と作業場と倉庫と指定可燃物を大量に扱う建物は1号消火栓の基準しか選べません。(同項第1号)
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目次
屋内消火栓に種類があるのはなぜか

ところが同じ名前の設備に、条文はいくつもの基準を並べています。
第1号に定める基準が一般に1号消火栓と呼ばれるもので、第2号イが2号消火栓、第2号ロが広範囲型2号消火栓にあたります。
条文が分けている理由は放水の力と操作のしやすさが両立しないからで、第2号イとロにだけ「1人で操作することができるもの」という要件が置かれています。
逆にいえば、その要件が書かれていない1号消火栓は1人で扱うことを前提にしていない設備ということになります。
自分の建物の消火栓がどれなのかを知らないまま訓練を組むと、想定した人数で放水できないことがあります。
ホースの形が違って見えたのは、条文の基準そのものが違ったからなのですね。
そのとおりで、見た目の違いは基準の違いの結果です。
次はどの建物がどれを選べるのかを見ましょう。
どの建物でどの種類を選べるのか

条文は先に「これだけは第1号の基準による」という区分を切り出しています。
第1号が名指ししているのは、別表第一(12)項イの工場又は作業場と、(14)項の倉庫、そして第1項第5号の指定可燃物を750倍以上貯蔵し又は取り扱うものです。
これらに当たる建物や部分では、第2号のイとロが適用されないので2号消火栓も広範囲型2号消火栓も選べません。
逆にそれ以外の建物では、第2号の柱書が「同号又は次のイ若しくはロ」と書いているので、1号消火栓を選ぶ道も残されています。
自分の建物がどちらの側にいるのかは、まず用途がどの項に当たるかを確かめるところから始まります。
倉庫を借りている区画があるのですが、そこも同じ扱いになるのでしょうか。
条文が防火対象物又はその部分と書いているところが要点です。
建物全体ではなくその部分で判断される場合があります。
種類によってなにが変わるのか

守れる範囲と放水の性能と水源の量が、まとめて動きます。
水平距離は1台が受け持てる範囲そのものなので、15メートルの型式は同じ階により多くの台数が必要になります。
水源の量も型式ごとに違い、設置個数が最も多い階の個数(2を超えるときは2)に乗じる数値が1号は2.6立方メートル、2号は1.2立方メートル、広範囲型2号は1.6立方メートルです。
ポンプの吐出量も消防法施行規則第12条で分かれていて、1号は150リットル毎分、2号は70リットル毎分、広範囲型2号は90リットル毎分を個数に乗じた量以上とされています。
| 区分 | 水平距離 | 放水量 | 水源に乗じる量 |
|---|---|---|---|
| 1号消火栓 | 25メートル以下 | 130リットル毎分以上 | 2.6立方メートル |
| 2号消火栓 | 15メートル以下 | 60リットル毎分以上 | 1.2立方メートル |
| 広範囲型2号消火栓 | 25メートル以下 | 80リットル毎分以上 | 1.6立方メートル |
つまり広範囲型2号は、1人で扱えて台数も増えない型式ということですね。
条文の数字を並べるとその位置づけが見えてきます。
ただし選べる用途が限られている点は変わりません。
実務で見落としやすいのはどこか

けれども維持の基準は毎日の使い方に直接かかってきます。
赤色の灯火は10メートル離れたところから容易に識別できることが求められているので、前に什器を置いて隠すのは維持の基準から外れます。
同条第1項第1号は開閉弁を床面から1.5メートル以下の位置に設けることとしているため、扉の前に物を積むと操作そのものができなくなります。
もう一つ見落としやすいのが、型式は建物側の都合で自由に入れ替えられないという点で、変えれば水源も加圧送水装置も配管の呼び径まで基準が変わります。
工事を伴う変更は消防法第17条の14の着工届と第17条の3の2の設置届の対象になるので、思い付きで進めず先に所轄と相談するのが確実です。
消火栓の前に置いた掲示板が、灯火をちょうど隠していた気がします。
それは今日のうちにどかしておきたいところです。
費用もかからずすぐ直せる種類の指摘です。
明日からなにを確認すればよいのか

条文は点検と整備を防火管理者の業務として名指ししているからです。
直近の消防用設備等点検結果報告書の屋内消火栓設備の欄には型式が記載されているので、そこで1号か2号か広範囲型2号かが分かります。
次に平面図に消火栓の位置を落とし、各部分から25メートルまたは15メートルの円が届かない場所がないかを目で追います。
そのうえで実際に廊下を歩き、扉の前が空いているか、赤色の灯火が離れた位置から見えるかを確かめます。
気付いた不具合は消防計画に定めた自主検査の記録に残し、直せない部分は次の法定点検で業者に伝えると流れが切れません。
点検結果報告書を見れば型式が書いてあるとは知りませんでした。
そこから始めるのがいちばん早い確認です。
最後によくある質問を見ておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず報告書で型式を調べて、廊下の掲示板をどけてきます。
その二つで今日の点検はほぼ足ります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第17条第1項・第17条の3の2・第17条の14
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第11条第1項・第3項・第4項・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項・第2項・第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





