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消火訓練と避難訓練はなぜ年2回以上必要なのか|対象になる防火対象物と事前通報の義務を解説

不特定多数が利用する建物の外観写真

消火訓練避難訓練を年2回以上実施しなければならない防火対象物があります。
しかも実施するときは、その都度あらかじめ消防機関へ通報する義務があります。
対象になるのは劇場や飲食店、病院、老人福祉施設、地下街など不特定多数や避難が難しい人が出入りする建物です。
消防法令が定めているのは回数と通報という2つの義務がセットになっている仕組みです。

今度、うちの店で消防訓練をしようと思っています。
消防署に事前に連絡しないといけないと聞いたのですが、本当ですか。

建物の用途によっては、その通りです。
年2回以上の訓練と事前の通報がセットで義務付けられている用途があります。

うちは飲食店なのですが、対象になるのでしょうか。

飲食店は対象になります。
どの用途が対象か、通報はどう行うかを、条文から順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 防火管理者は消防計画に基づき消火・通報・避難の訓練を実施する義務を負います(消防法施行令第3条の2第2項)
  • 令別表第一(1)項から(4)項まで・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イ・(16の2)項の防火対象物は、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施しなければなりません(消防法施行規則第3条第10項)
  • 対象になる防火対象物は、訓練を実施する都度あらかじめ消防機関に通報しなければなりません(消防法施行規則第3条第11項)
  • 共同住宅や事務所など対象外の防火対象物は、消防計画で定めた回数を実施すれば足ります
  • 複合用途の建物は、一部にでも対象用途を含めば(16)項イとして扱われ、通報義務が及びます

消火訓練と避難訓練の回数はどこで決まっているのか

防火管理者が消防計画の書類を持ち消火通報避難の訓練を示す3つのアイコンが並ぶイメージ
防火管理者には、消防計画に基づいて訓練を行う一般的な義務があります。
ただ、その中で「年2回以上」という具体的な回数が決まっているのは一部の建物だけです。
防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない(消防法施行令第3条の2第2項)。
訓練の実施は防火管理者の一般的な業務です。
消防法施行令第3条の2第2項は、消火・通報・避難の訓練を含めて防火管理上必要な業務を行うことを防火管理者に義務付けており、ここには回数の定めはありません。
一方、消防法施行規則第3条第10項は、特定の用途の建物についてだけ「年2回以上」という回数を明記しています。
つまり訓練を行う義務そのものはすべての防火対象物に共通し、回数の縛りだけが用途によって変わるという二段構えです。
自分の建物がどちらに当たるのか、次の章の用途の一覧で確認します。

うちの建物にも「年2回」の決まりがあるのか気になります。

建物の用途で変わります。
次の章で、対象になる用途を一つずつ確認しましょう。

どの防火対象物が年2回以上の対象になるのか

劇場や飲食店病院など対象になる建物群と共同住宅など対象外の建物を並べたイメージ
年2回以上の訓練が義務付けられる建物は、令別表第一の中で用途ごとに列挙されています。
不特定多数の人が出入りする用途や、自力での避難が難しい人が入所する用途が中心です。
令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ又は(16の2)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第3条の2第2項の消火訓練及び避難訓練を年2回以上実施しなければならない(消防法施行規則第3条第10項)。
不特定多数が使う建物と自力避難が難しい人がいる建物が対象です
具体的には、劇場・映画館・演芸場・観覧場、キャバレーや飲食店、百貨店やマーケットといった(1)項から(4)項までの用途、旅館・ホテル等の(5)項イ、病院や有床診療所・老人福祉施設等の(6)項、蒸気浴場等の(9)項イ、これらの用途を含む複合用途の(16)項イ、そして地下街の(16の2)項が挙げられます。
一方、同じ(5)項でも共同住宅((5)項ロ)や、事務所のように別表に個別の用途がある建物は、この年2回以上の対象には含まれません。
対象かどうかは、消防計画に記載した用途区分を確認すればわかります。
迷ったときは所轄消防署に確認するのが確実です。

飲食店は入っていましたが、うちの上の階の事務所はどうなるんでしょう。

事務所だけなら対象外です。
ただしビル全体に飲食店が入っていれば、建物全体が対象になることがあります。次の章で説明します。

年2回以上実施するとき何をしなければならないか

カレンダーに印を付ける様子と書類を消防署へ手渡す様子を示したイメージ
対象になる防火対象物は、訓練の回数だけでなく実施のたびに手続きも必要です。
消防法施行規則が定めているのは、事前に消防機関へ知らせるという通報の義務です。
前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない(消防法施行規則第3条第11項)。
訓練をしても通報を忘れれば規則違反になります
規則第3条第11項が求めているのは、訓練を実施したことの事後報告ではなく、実施前の通報です。
通報の方法は法令に様式の定めがなく、所轄の消防署ごとに運用が異なります。通報書の名称も「自衛消防訓練通報書」など消防本部によって異なり、書面の持参や郵送、ファクス、電子申請などで受け付けている消防局もあります。
年2回以上の訓練であれば、そのたびに通報が必要になるため、年間の訓練計画を立てる段階で提出先と方法を確認しておくと抜け漏れを防げます。
様式は所轄消防署が定めるものを使い、自己流の書式は避けます。

通報の書式は全国共通じゃないんですね。

はい、消防署ごとに違います。
年間計画を立てるときに、提出先の消防署へ先に聞いておくのが早いです。

実務で見落としやすいのはどこか

下層が飲食店上層が事務所の建物全体を一つの点線で囲んだイメージ
年2回以上の対象になるかどうかは、建物全体の用途構成で決まることがあります。
一部だけを見て対象外と判断すると、通報を忘れる原因になります。
複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているものは、令別表第一(16)項イの防火対象物とする。
建物の一部にでも対象用途が入れば全体が対象になります
たとえば1階が飲食店で上の階がすべて事務所というビルは、(16)項イの複合用途防火対象物にあたり、建物全体が年2回以上の訓練と事前通報の対象になります。
逆に、共同住宅と事務所だけで構成される複合用途ビルは(16)項ロとなり、この年2回以上の縛りは受けません。
管理権原が複数に分かれるテナントビルでは、統括防火管理者が建物全体の訓練を取りまとめ、各テナントの防火管理者と連携して実施と通報を行う必要があります。
自分のテナント区画だけで用途を判断せず、建物全体の用途構成を確認することが欠かせません。

うちのテナントは事務所だけなので関係ないと思っていました。

ビル全体に飲食店や店舗が入っていれば話は変わります。
管理組合や統括防火管理者に確認しておきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

用途確認から年間計画通報記録保存まで4つのアイコンが並ぶイメージ
ここまでの内容を、実際に行う順番で整理します。
特別な手続きではなく、確認と連絡を積み重ねるだけです。
防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない(消防法施行令第3条の2第1項)。
訓練の回数と通報先は消防計画に書き込んでおきます
まず自分の建物の用途を確認し、令別表第一(1)項から(16の2)項の対象に当たるかを消防計画の記載で確かめます。
対象であれば、年間の消防計画に消火訓練・避難訓練を2回以上組み込みます。
訓練を実施するたびに、あらかじめ所轄消防署へ定められた方法で通報します。
実施後は日時・参加人数・内容を記録に残し、次回の消防計画の見直しや立入検査の際にすぐ示せるようにしておきます。
対象外の建物でも、消防計画で定めた回数の訓練は必要なので、実施記録は同じように残しておくと安心です。

対象外でも記録は残しておいたほうがよさそうですね。

その通りです。
次に立入検査があったときにも説明しやすくなります。

よくある質問

Q訓練を年2回以上行わなければならないのはどんな建物ですか?
A令別表第一の(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ又は(16の2)項に掲げる防火対象物です。劇場や飲食店、百貨店、旅館・ホテル、病院や老人福祉施設、蒸気浴場等の公衆浴場、地下街などが該当します
Q共同住宅や事務所ビルでも年2回以上実施しなければなりませんか?
Aいいえ。共同住宅((5)項ロ)や事務所などは対象外で、消防計画に定めた回数で実施すれば足ります。
Q訓練の事前通報はどのように行いますか?
A所轄消防署が定める方法で行います。書面の持参や郵送、ファクス送信、電子申請など消防署によって受付方法が異なるため、事前の確認が必要です。
Q通報をせずに訓練を実施した場合どうなりますか?
A訓練自体を実施していても、あらかじめの通報を怠れば規則違反になります。消防計画に実施計画を定めたうえで、通報を忘れずに行う必要があります。

まとめ

訓練義務そのものは令第3条の2第2項の一般義務です
年2回以上の法定回数があるのは(1)項から(16の2)項までの一部の用途だけです
対象は劇場・飲食店・百貨店・旅館ホテル・病院や老人福祉施設・公衆浴場・地下街などの不特定多数や避難困難者が関わる用途です
対象になる防火対象物は訓練の都度あらかじめ消防機関へ通報する義務があります
共同住宅や事務所などの非特定防火対象物は消防計画で定めた回数で足ります
複合用途ビルは一部にでも対象用途を含めば(16)項イとして扱われます
通報の方法は書面・郵送・ファクス・電子申請等、所轄消防署が定める方法で行います

回数だけでなく、通報まで一緒に確認しないといけないんですね。
よくわかりました。

用途の確認、年間計画への組み込み、そして事前通報。
この3つを消防計画に落とし込めば大きく外しません
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法施行令第3条の2
  • 消防法施行規則第3条第10項・第11項
  • 消防法施行令別表第一
  • 堺市消防局「あらかじめの連絡って?」
  • 広島市「自衛消防訓練の疑問を解決します!!」

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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