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地下駐車場の燃料電池自動車はなぜ特別な消火設備が要らないのか|圧縮水素ガス容器の安全弁が作動しない理由を解説

地下駐車場に停まる燃料電池自動車と防火安全対策のイメージ

地下駐車場やビルの機械式駐車場に、燃料電池自動車(FCV)が駐車することが増えてきました。
FCVには水素を高圧で貯蔵する圧縮水素ガス容器が積まれており、火災になったときに容器が破裂しないか気になる方も多いはずです。
消防庁は専門家による検討会を設けて、地下駐車場でFCVが火災になった場合の危険性を実際に検証しました。
その結果、既存の泡消火設備や不活性ガス消火設備があれば、追加の対策をしなくても十分に対応できることが確認されました。

うちの地下駐車場、最近は燃料電池自動車も見かけるようになりました。
火事になったら水素タンクが爆発したりしませんか

水素タンクには安全弁が付いていて、高温になると自動でガスを逃がす仕組みです。
まずは、この通知がなぜ出されたのかを見てみましょう。

うちは機械式の二段駐車場なんです。
下の段が燃えたら、上の車のタンクが炙られそうで心配なんですが

実はいちばん危険なそのケースこそ重点的に検証されています。
既存の泡消火設備や不活性ガス消火設備があれば十分だという結果が出ていますよ。

この記事の結論
  • 燃料電池自動車の圧縮水素ガス容器には安全弁が付いており、約110℃になると水素ガスを放出する仕組みです。
  • 立体駐車場・平置き地下駐車場・二段式機械式駐車場のいずれでも、安全弁が作動する前に既存の自動消火設備で消火できることが実験で確認されました。
  • 最も危険とされる二段式機械式駐車場の下部火災でも、安全弁の近傍は110℃を下回り作動しないことが確認されています。
  • 地下駐車場等に燃料電池自動車が駐車する場合も、泡消火設備や不活性ガス消火設備を適切に設置・維持すれば足ります。
  • 消防活動では、安全弁が作動するまで概ね3分程度、火炎噴出の継続は約1分間とされ、隊員は火炎から約10m離れることが必要とされています。

燃料電池自動車の地下駐車場対策の要点をまとめた図解(安全弁の作動温度・最悪条件での検証結果・自動消火設備・消防活動時の距離)

燃料電池自動車の水素タンクはなぜ通知の対象になったのか

地下駐車場に停まる燃料電池自動車の床下に見える水素タンクと、天井のノズル設備
燃料電池自動車は環境対策の一環として実用化が進められてきましたが、水素を高圧で貯蔵するタンクを積んでいることから、火災時の安全性が課題になっていました。
この課題がどのように検討され、通知としてまとめられたのかを確認しましょう。
燃料電池の実用化に関する関係省庁連絡会議において、燃料電池実用化のために必要な検討項目について、平成16年度までに検討することとされました。このうち、消防庁においては、燃料電池自動車が地下駐車場等へ進入する際の制限について、地下駐車場等の消火設備の対応も含めて検討することとされ、平成15年度から「燃料電池自動車の地下駐車場等における防火安全対策検討会」を設置し、「燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策に関する調査研究報告書」を取りまとめました。(燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について 平成17年3月18日 消防予第48号 消防庁予防課長)
この通知は、燃料電池自動車の実用化が進む中で、地下駐車場等での火災の危険性を専門家が検証した結果をまとめたものです。
燃料電池自動車には、水素ガスを高圧で貯蔵する圧縮水素ガス容器が積まれており、火災で高温になると容器が破裂するおそれがあります。
そのため容器には、一定の温度になると自動でガスを放出して破裂を防ぐ安全弁が設けられています。
消防庁は、この安全弁が作動する条件と、地下駐車場等にある消火設備で対応できるのかを、検討会を通じて実際に検証しました。
次は、この検証がどんな駐車場や設備を対象にしているのかを見ていきましょう。

燃料電池自動車って、水素タンクが火であぶられたら本当に破裂するんじゃないかと思っていました

安全弁が先にガスを逃がす仕組みなので、単純な破裂とは違います。
次は対象になる駐車場を見てみましょう。

どんな駐車場のどんな設備が対象になるのか

下段の車が燃える二段式機械式駐車場と、その上段に停まる車の床下のタンク
検証の対象になったのは、立体駐車場、平置きの地下駐車場、そして車両を機械で上下に重ねて駐車させる二段式機械式駐車場です。
このうち最も危険とされたケースを確認しましょう。
実験の結果、立体駐車場、平置き地下駐車場、二段式機械地下駐車場のいずれの火災においても、容器安全弁が作動する前に、現行の泡消火設備又は不活性ガス(窒素)消火設備(以下「自動消火設備」という。)により消火できること。特に、二段式機械地下駐車場の下部に駐車した自動車が火災になり、燃料電池自動車の圧縮水素ガス容器の下部が火炎にさらされるという最も危険なケースにあっても、容器安全弁近傍は110℃よりも低い温度であり、容器安全弁は作動しないことが確認されたこと。(燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について 平成17年3月18日 消防予第48号)
別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、次に掲げるものには、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを設置するものとする。一 当該部分の存する階における床面積が、地階又は二階以上の階にあっては200平方メートル以上、一階にあっては500平方メートル以上、屋上部分にあっては300平方メートル以上のもの。二 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が10以上のもの。(消防法施行令第13条第1項)
検証の対象は、消防法施行令第13条が自動消火設備の設置を求める駐車場のうち、最も条件が厳しい二段式機械式駐車場です。
車両の収容台数が10以上の機械式駐車場などでは、もともと泡消火設備または不活性ガス消火設備の設置が義務付けられています。
検討会は、この中でも下段の車両が火災になり、上段の車両の圧縮水素ガス容器の底面が炎にさらされるという、最も危険な状況を想定して検証を行いました。
その結果、この最悪の条件でも安全弁の周囲は110℃を下回り、安全弁が作動しないことが確認されました。
次は、この検証結果から通知が何を求めているのかを見ていきましょう。

うちの駐車場は10台以上を機械式で駐車させるタイプなので、対象になりそうです

その場合はすでに泡消火設備や不活性ガス消火設備があるはずです。
次は、その設備に何が求められているのかを確認しましょう。

ガイドラインは何を求めているのか

天井のノズルから泡または不活性ガスを噴射して下段の燃える車を消火している様子
検証の結果を受けて、通知は駐車場の管理者に対して具体的に何を求めているのかを確認しましょう。
結論から言うと、新たな設備を追加する必要はありません。
これらのことから燃料電池自動車火災が地下駐車場等において発生した場合であっても、現行の自動消火設備により十分な消火又は冷却効果があると認められるので、地下駐車場等に燃料電池自動車が駐車する場合にも、自動消火設備を適切に設置・維持すれば足りること。(燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について 平成17年3月18日 消防予第48号)
通知が求めているのは、既存の自動消火設備を適切に設置・維持することだけです。
燃料電池自動車が駐車するからといって、追加の消火設備や特別な改修が必要になるわけではありません。
消防法施行令第13条に基づいて設置されている泡消火設備や不活性ガス消火設備が、定期点検を通じて正常に機能する状態であれば、それで足りるとされています。
逆に言えば、既存設備の設置や維持そのものがおろそかになっていれば、この結論の前提が崩れることになります。
次は、実務で見落としやすい点を確認しましょう。

特別な設備を増やさなくていいなら安心ですが、今ある設備の点検はちゃんとやらないといけませんね

そのとおりです。
次は、見落としやすい落とし穴を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

火災の車から離れた位置に立つ消防隊員と、近づきすぎた場合を示す禁止マーク
通知には、既存設備で足りるという結論だけでなく、消防活動の場面で気をつけるべき数値も示されています。
見落としやすいポイントを確認しましょう。
今後、燃料電池自動車が普及し、交通事故等によりこれらが火災になることも考えられるが、この場合の消防活動上の留意事項については、今回の検討により以下の知見が得られたこと。ア 火炎の状況や時間経過等様々な要因があるが、容器安全弁が作動するまで概ね3分程度の時間を有すること。イ 仮に容器安全弁が作動した場合でも火炎噴出状態が継続するのは約1分間程度であること。ウ 急激な火炎噴出を想定した場合の消防隊員の安全確保のためには、火炎から約10m程度離れることが必要であること。(燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について 平成17年3月18日 消防予第48号)
見落としやすいのは、この通知が駐車場の設備だけでなく交通事故時の消防活動も想定している点です。
駐車場火災に限らず、交通事故で燃料電池自動車が火災になった場合にも、安全弁が作動するまで概ね3分程度の時間があるとされています。
仮に安全弁が作動しても、火炎が噴き出す状態が続くのは約1分間程度とされ、その間は火炎から約10m程度離れることが安全確保の目安とされています。
この数値は消防隊員の活動を想定したものですが、駐車場の防火管理者としても、火災時に人を近づけない範囲の目安として知っておく価値があります。
また、通知の時点では燃料電池自動車そのものの設計基準等はまだ定められておらず、今後の技術動向を踏まえて見直される可能性がある分野だという点も押さえておきましょう。
次は、明日からなにを確認すればよいかを整理します。

10m離れるという数字、うちの防火管理者としても知っておいたほうがよさそうです

はい、初期消火や避難誘導の判断材料になります。
最後に、明日からの確認手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいか

クリップボードを持つ人物と壁の消火設備制御盤、背後にある地下駐車場の入口
最後に、燃料電池自動車が駐車する可能性のある駐車場で確認しておきたい手順を整理します。
順番に見ていきましょう。
燃料電池自動車にあっては、現段階では設計基準等の法令が定められておらず、また、新たな技術開発等も想定されることから、設計基準等の今後の動向については、必要に応じ情報提供を行う予定であるので留意されたいこと。(燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について 平成17年3月18日 消防予第48号)
まず、自分の駐車場が消防法施行令第13条の対象で、泡消火設備または不活性ガス消火設備が設置されているかを確認しましょう。
設置されている場合は、燃料電池自動車のために追加の工事をする必要はなく、既存設備の定期点検を怠らないことが最も重要です。
機械式の二段駐車場など収容台数が多い施設では、下段車両の火災を想定した設備の作動範囲や維持状態を点検業者と一緒に確認しておくと安心です。
通知の時点では燃料電池自動車の設計基準そのものはまだ整備されておらず、今後の技術動向によって取扱いが変わる可能性もあるため、最新の情報は所轄消防署に確認してください。
既存の設備を適切に維持することが、いま防火管理者にできるいちばん確実な備えです。

まずは点検業者に、うちの駐車場が施行令第13条の対象になっているかを確認してもらいます

それが確実な進め方です。
これでよくある質問を確認しましょう。

よくある質問

Q燃料電池自動車が駐車する場合、駐車場に新しい消火設備を追加する必要がありますか?
Aいいえ。通知は現行の泡消火設備又は不活性ガス消火設備により十分な消火又は冷却効果があると認められるので、自動消火設備を適切に設置・維持すれば足りるとしています。追加の設備は原則として必要ありません。
Q最も危険とされる二段式機械式駐車場でも、既存設備で対応できるのですか?
Aはい。下段の車両が火災になり圧縮水素ガス容器の下部が火炎にさらされる最も危険なケースでも、容器安全弁近傍は110℃よりも低い温度であり、安全弁は作動しないことが確認されています
Q圧縮水素ガス容器の安全弁は何度で作動しますか?
A通知によると、容器安全弁は約110℃になった場合に破裂防止のため弁を開放し、水素ガスを放出する仕組みとされています。
Q消防活動で燃料電池自動車の火災に近づくときの注意点はありますか?
A通知は、容器安全弁が作動するまで概ね3分程度の時間があり、作動後の火炎噴出も約1分間程度で、隊員は火炎から約10m程度離れることが安全確保に必要としています。防火管理者としても人を近づけない目安として参考になります。

まとめ

燃料電池自動車の圧縮水素ガス容器には安全弁があり、約110℃になると水素ガスを放出する仕組みです。
立体駐車場・平置き地下駐車場・二段式機械式駐車場のいずれでも、安全弁作動前に既存の自動消火設備で消火できることが実験で確認されました。
最も危険な二段式機械式駐車場の下部火災でも、安全弁近傍は110℃を下回り作動しません。
通知が求めるのは、泡消火設備又は不活性ガス消火設備の適切な設置・維持だけです。
燃料電池自動車のために追加の消火設備を新設する必要は、原則としてありません。
消防活動では、安全弁作動まで概ね3分程度、火炎噴出の継続は約1分間程度とされています。
火炎からの安全距離は約10m程度が目安とされ、燃料電池自動車の設計基準は今後の動向を注視する必要があります。

燃料電池自動車のために設備を増やさなくていいと分かって安心しました。
まずは既存の泡消火設備がちゃんと点検されているか確認してみます

はい。
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お問い合わせ

参考・出典

  • 燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について(平成17年3月18日 消防予第48号 消防庁予防課長)
  • 消防法施行令第13条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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