大規模な工場や高層マンションの敷地には、建物側が自前で備える消火用の水源が設けられていることがあります。
「消防用水」と呼ばれるこの設備は、道路上の消火栓のような公共の水利とは別の制度で、消防法施行令に設置基準が定められています。
敷地の広さや建物の高さによって、設置が必要かどうかが変わります。
自分の建物が対象になるかどうかは、条文の規模基準に当てはめて確認するしかありません。
うちの敷地に大きな水槽のようなものがあるのですが、これは何のためにあるのでしょうか。
それはおそらく消防用水です。
大規模な建物に自前の消火用水源として設置が義務付けられている設備です。
水道の消火栓とは違うものなんですね。
はい、根拠となる制度そのものが別です。
順番に見ていきましょう。
- 消防用水は消防法施行令第27条により大規模な建築物や高層建築物に自前の設置が義務付けられる消火用の水源です
- 設置対象は、敷地面積と床面積の基準を満たす建物か、高さ31メートルを超え延べ面積2万5千平方メートル以上の建物のいずれかです
- 有効水量は、建築物の区分に応じた面積で床面積等を割った商に20立方メートルを掛けた量以上を確保します
- 地盤面下に設ける消防用水は、地盤面から4.5メートル以内の部分しか有効水量に数えられません
- 同一敷地内に近接する複数の建築物がある場合は、床面積を合算して一の建築物とみなされることがあります
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目次
消防用水とはどんな施設を指すのか

防火水槽や貯水池、プールなどがこれに当たります。
消防法施行令第27条が、一定規模の建築物に対してこの設置を義務付けています。
防火水槽・貯水池・プールなど水をためておける設備であれば、消防用水として使うことができます。
道路に面した消火栓や、街中の防火水槽といった公共の水利とは、根拠となる制度そのものが異なります。
まずは自分の建物にこの設置義務があるかどうかを、次の基準で確認します。
敷地にある水槽が消防用水なのか、ただの雨水槽なのか気になっていました。
見た目だけでは分かりません。
設置根拠が令27条かどうかを図面や届出書類で確認しましょう。
設置義務を負うのはどんな建物なのか

どちらか一方に当たれば、設置の義務が生じます。
一 別表第一(略)に掲げる建築物で、その敷地の面積が二万平方メートル以上あり、かつ、その床面積が、耐火建築物にあつては一万五千平方メートル以上、準耐火建築物にあつては一万平方メートル以上、その他の建築物にあつては五千平方メートル以上のもの(略)
二 別表第一に掲げる建築物で、その高さが三十一メートルを超え、かつ、その延べ面積(略)が二万五千平方メートル以上のもの
第一号は、敷地面積が2万平方メートル以上あり、かつ建物の耐火性能に応じた床面積の基準(耐火建築物なら1万5千平方メートル以上など)を満たす建物が対象です。
第二号は、用途を問わず、高さ31メートルを超え、延べ面積が2万5千平方メートル以上の建物を対象にします。
さらに第27条第2項は、同一敷地内に近接する建物が複数ある場合、床面積を合算して一の建築物とみなす規定を置いています。
自分の建物の敷地面積・延べ面積・高さを確認し、どちらの号に当たるかをまず判定してください。
うちは単独の建物なので、延べ面積だけ見ればいいと思っていました。
同じ敷地に近い建物が複数あると、床面積を合算される場合があります。
隣接する建物の有無も確認してください。
設置基準の中身はどうなっているのか

条文は、水量・配置・構造の三点を定めています。
一 消防用水は、その有効水量の合計が、(略)建築物の区分に従い定める面積で除した商を二十立方メートルに乗じた量以上の量となるように設けること。(略)
二 消防用水は、建築物の各部分から一の消防用水までの水平距離が百メートル以下となるように設けるとともに、一個の消防用水の有効水量は、二十立方メートル未満のものであつてはならないものとすること。
四 消防用水は、消防ポンプ自動車が二メートル以内に接近することができるように設けること。
五 防火水槽には、適当の大きさの吸管投入孔を設けること。
水量は、建築物の区分に応じた面積で床面積や敷地面積を割った商に20立方メートルを掛けた量以上を確保します。
配置は、建物のどの部分からも水平距離100メートル以内に消防用水があり、かつ消防ポンプ自動車が2メートル以内に接近できることが条件です。
構造は、防火水槽であれば吸管を投入できる孔が必要で、吸管を入れる部分の水深も所要水量を吸い上げられる深さが求められます。
図面上の数字だけでなく、実際にポンプ車が2メートル以内まで寄れる通路が確保されているかも現地で確認してください。
水量さえ足りていれば大丈夫だと思っていました。
配置と構造も同時に満たす必要があります。
現地の通路幅まで見ておきましょう。
有効水量の計算で見落としやすいのはどこか

条文には、数えられる範囲についての定義があります。
地盤面下に設ける消防用水の有効水量は、設けられている地盤面の高さから4.5メートル以内の部分の水量に限られると条文で定義されています。
容量だけで基準を満たしていると判断すると、実際に数えられる水量が想定より少なく、基準を下回っていることがあります。
また、河川など流水を利用する消防用水は、0.8立方メートル毎分の流量を20立方メートルの水量に換算する特別な計算方法が定められています。
既存の消防用水を評価するときは、深さの制限と換算方法の両方を条文どおりに当てはめて計算し直してください。
深い貯水槽だから、水量は十分だと思っていました。
4.5メートルを超える部分は数えられません。
計算し直しておきましょう。
明日から何を確認すればよいのか

一度設置すれば終わりではなく、維持することも義務の一部です。
まず、自分の建物の敷地面積・延べ面積・高さを図面で確認し、第27条第1項第一号または第二号のどちらに当たるかを判定します。
次に、設置済みの消防用水について、有効水量の算定・水平距離100メートル以内の配置・消防ポンプ自動車の進入路の三点を照合します。
最後に、消防法第17条の3の3に基づく点検・報告のサイクルの中で、採水口や吸管投入孔がふさがれていないかを維持台帳とあわせて確認します。
設置基準を満たしていても、日々の維持管理を怠ると消火活動の場面で使えなくなるおそれがあるため、点検の記録を必ず残してください。
一度設置したら、それで終わりだと思っていました。
点検・報告のサイクルの中で維持まで確認してください。
よくある質問
まとめ
消防用水がどんな建物に必要で、何を確認すればよいか整理できました。
敷地面積と高さを確認し、有効水量と点検の記録を整えるところから始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法施行令第27条
- 消防法施行令第29条
- 消防法第17条第1項
- 消防法第17条の3の3
- 消防法施行規則第31条の6
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




