令和6年7月23日に特定小規模施設用自動火災報知設備(無線式の自動火災報知設備)の設置基準が緩和されたことに関して総務省消防庁より通知がありました。(※特定一階段等防火対象物にも設置可能に)
今般、火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和 56 年自治省令第 17 号。以下「感知器省令」という。)、特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成 20 年総務省令第 156 号。以下「特小省令」という。)及び特定小規模施設用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成20 年消防庁告示第 25 号)がそれぞれ改正されたことを踏まえ、下記のとおり運用上の留意事項をとりまとめましたので通知します。
火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令及び特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令の一部を改正する省令等の運用上の留意事項について(通知)そのままでは分かりにくい法改正の内容を、これまで特区民泊や福祉施設の消防用設備等の設計・施工および申請を実施し、おおよそ200件以上の消防検査クリア実績のあるプロ消防設備士が詳しく解説していきます。
特定小規模施設に該当するパターン3つ
そもそも特定小規模施設用自動火災報知設備は、主に以下3パターンの ❝特定小規模施設❞ に該当する防火対象物(消防用設備等の設置義務が生じる建物)をいいます。
今回の法改正で ❝特定小規模施設❞ に該当する建物用途も新たに追加されました。
⑴ 以下の建物用途かつ延べ面積300㎡未満のもの
- (2)項ニ カラオケボックス等
- (5)項イ 旅館・ホテル・宿泊所等(※民泊を含む)
- (6)項イ⑴~⑶ 病院・有床診療所
- (6)項ロ 特別養護老人ホーム等(有床の福祉施設)
- (6)項ハ デイサービス・保育所等
- (9)項イ 蒸気浴場(延べ面積が200㎡以上のもの)
- (13)項ロ 飛行機またはヘリコプターの格納庫
- (17)項 重要文化財
※消防署の方々も特定小規模施設用自動火災報知設備が設置できる建物(≒費用削減できる建物)について完全に把握して指導されているわけではないケースも多々あるため、もし消防用設備等にかかる費用を抑えたい場合は「事前に自分で徹底的に調べる」or「専門業者に一任して依頼する」ことをおすすめします。
⑵ 小規模特定用途複合防火対象物
☑ 消防法上で ❝(16)項イ 複合用途防火対象物(※雑居ビル等、複数の用途からなる建物)❞ に該当し、かつ上記⑴の用途部分がある延べ面積300㎡以上のもの。
☑ (2)項または(3)項に掲げる防火対象物の地階または無窓階で、当該用途に供される部分の床面積の合計が100㎡以上のもの
☑ 防火対象物の地階または二階以上の階のうち、駐車の用に供する部分の存する階(駐車する全ての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の床面積が200㎡以上300㎡未満のもの
⑶ 民泊を含む共同住宅で延べ面積が300m²以上500m²未満
(5)項イ 旅館・ホテル・宿泊所等(※民泊を含む)および(5)項ロ 共同住宅以外の用途に供される部分が存せず、かつ(5)項イ 旅館・ホテル・宿泊所等(※民泊を含む)部分の床面積が300m²未満のもののうち、延べ面積が300m²以上500m²未満のもの。
上記の ❝特定小規模施設❞ に該当する場合、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が可能です。
法改正ポイント2つ
結論、今回の法改正によって大きく以下の2点が変わりました。
- 特定一階段等防火対象物にも特定小規模施設用自動火災報知設備が設置可能に
- マンション等の民泊部分が10%を超えても特定小規模施設用自動火災報知設備が設置可能に
順番に解説していきます。
【改正点⑴】特定一階段等防火対象物
屋内階段1本しかない戸建てorマンションの3階から上の階に民泊をする部屋がある場合、消防法上では「特定一階段等防火対象物」に該当し、これまでは特定小規模施設用自動火災報知設備が設置できませんでした。
今回の法改正で「特定一階段等防火対象物」に該当する建物にも特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が認められることになりました。
【改正点⑵】 民泊部分が10%を超えたマンション等
マンション等の1室を民泊に用途変更する際、建物全体の面積が300m²以上500m²未満で民泊部分の面積がマンション全体の面積の10%以下でなければ、これまでは特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が認められていませんでした。
今回の法改正で民泊部分が10%を超えても特定小規模施設用自動火災報知設備が設置できるようになりましたが、いくつか注意点もあります。
🆕法改正後の注意点2つ
【注意点⑴】新感知器の設置
今回の改正で特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が認められた特定一階段等防火対象物および警戒区域が2以上の建物については、火災の発生した警戒区域を特定することができる連動型警報機能付感知器(※新感知器)を設置しなければなりません。
当ページ執筆時点ではPanasonic製の特定小規模施設用自動火災報知設備が新感知器の要件を満たしています。(※音声を1階や2階および階段等、個別に設定できる機能を有しているのが新感知器です。)
煙感知器(親器)
煙感知器(子器)
熱感知器(子器)
※消防協議の後、個数が分かった段階で新感知器を用意することをおすすめします。
特定小規模施設用自動火災報知設備の親器1台に対して、子器を最大14台まで連動させることができます。(※パナソニック製の場合)
※特定小規模施設用自動火災報知設備が設置可能な建物は増えましたが、現時点では新感知器の設置が必要な場所が15個以上(※16個は不可)なので注意しましょう。
【注意点⑵】感知器の設置場所
今回の改正で特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が認められた特定一階段等防火対象物および警戒区域が2以上の建物については、以下の赤文字の場所にも感知器の設置が追加で必要になりました。
・居室
・2㎡以上の収納・倉庫、機械室その他これらに類する室
・階段
・廊下
・EVシャフト
・パイプスペース・ダクトスペース
これまで赤文字の廊下やPS(パイプスペース)等には特定小規模施設用自動火災報知設備の感知器をつけなくてもよかったのですが、これからは設置しなければなりません。
※特小自火報は10m以下の廊下でも省略不可
通常の自動火災報知設備(有線式)の感知器であれば廊下・通路から階段までに至るまでの歩行距離が10m以下の場合は、その廊下・通路の部分は感知器の設置を省略できました。
しかし特定小規模施設用自動火災報知設備の感知器の場合は、その階の階段部分に感知器がついていなければ廊下にも感知器を設置しなければなりません。
つまり廊下の長さが10m以下でも感知器を設置しなければならない場合が生じるので、法改正前よりも感知器の個数が増える可能性が高くなりました。
新感知器の設置方法と費用・価格は?
特定小規模施設用自動火災報知設備は誰でも設置が可能です。(※消防設備士の免許不要)
ただし自分で特小自火報の感知器を設置する場合、以下のハードル3つが挙げられます。
- 設計届(工事着手10日前に消防署へ提出)および設計届(工事後4日以内に消防署へ提出)の作成・提出のハードル
- 新感知器の設定をするハードル(※特定一階段等防火対象物や警戒区域が2以上の場合は細かく設定する必要がある)
- 特定小規模施設用自動火災報知設備の新感知器を間違えずに購入し、かつ安い価格で費用削減して仕入れるハードル
民泊の消防設備関係に時間をかけたくない場合、自分で設置するのが面倒な場合は信用できる専門業者に一任することをおすすめします。
新感知器の費用・価格
新感知器に該当するパナソニック製の特定小規模施設用自動火災報知設備の価格は以下の通りです。
- 煙感知器(親器)‥‥‥16,500円(税抜)
- 煙感知器(子器)‥‥‥15,000円(税抜)
- 熱感知器(子器)‥‥‥14,500円(税抜)
※上記は定価なので、もし安値で大量仕入れをしている専門業者に施工を依頼すれば初期費用を削減できる可能性があります。
(株)防災屋では、特区民泊に必要な新感知器を含む消防用設備を設定・設置後、消防検査をクリアして「消防法令適合通知書」を取得するまでの消防関係業務だけでなく、その後の保健所や環境局への申請までも顧問行政書士と連携することで費用を安く抑えつつ全てセットで代行できる体制を整えております。
民泊申請でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。