消防検査とは、消防用設備等を設置した後の4日以内に提出する「設置届(どのように消防用設備等が設置されたかを記載した書類)」の内容が正しいかどうか、消防士が実際に現地を確認するものです。
※この消防検査に合格して「消防完了検査済証」を受領しないと、建築側の「建築確認検査済証」を受領できません。
よく消防検査は「立入検査」や「消防点検」と間違えられる場合があるので、下表にて違いを補足しておきます。
名称 | 費用 | 実施者 | 省略方法 | |
① | 消防検査 | 無料 | 消防士 | あり |
② | 立入検査 | 無料 | 消防士 | なし |
③ | 消防点検 | 有料 | 消防設備士 | なし |
この記事では「①消防検査」の流れを数多の消防検査をクリアしてきた管理人が、消防検査を初めて受ける方の不安を取り除くために徹底解説します。
消防検査に関することでお困りの方、お急ぎの方は弊社お問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。
◎ 消防検査の流れ
消防検査の流れは、大まかに以下の3ステップです。
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設置届の提出
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現地の確認
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済証の受け取り
順番に解説していきます。
1. 設置届の提出
消防用設備等の新設および改修工事がされた後、その4日以内に「設置届」を所轄消防署へ提出します。
この設置届を提出するタイミングで、消防士と消防検査の実施日程等を調整します。
【補足】設置届と同時に届け出する書類
設置届と同時に以下の書類を提出する場合があります。
- 使用開始届
- 消防法令適合通知書交付申請書(※ホテル・旅館および民泊の場合のみ)
※設置届提出のタイミングで消防用設備等の設置状況が分かる写真を提出すれば、以下の現地確認を省略できる場合があります。
2. 現地の確認(消防検査の流れ)
火災予防担当の消防士が実際に現地を確認します。
大阪市の予防課(消防用設備等を担当する部署)については午前中が書類関係で午後が検査等と決まっている為、消防検査は午後に実施されることが多いです。
【補足】駐車場を確保しておこう!
所轄消防署から距離のある建物の場合、移動手段が司令車になるので駐車場があるかどうか事前に確認されます。
消防検査が実施される当日の午後には、消防関係車両の駐車スペースを確保しておきましょう。(自転車で来られる場合もあります)
消防検査担当者の振り分けと立会い
小規模建物の場合は所轄消防署の予防担当者様が一人で確認されますが、そこそこの規模からは設備毎に班が分けられて消防検査が開始されます。
分けられた班ごとに、消防設備士が立ち会う(※詳しくは【料金】消防検査とは?立会い費用と省略する方法【設置完了後検査】をご覧ください。)ことが多いです。
例:自動火災報知設備の作動確認であれば受信機(大元の制御盤)に1人と、現地で試験をするのに1人の計2名の消防設備士が立会います。
提出された設置届に基づき、実際に設置されている消防用設備等を確認していきます。
以下に代表的な消防用設備等について、消防検査時に確認する事項の概要を解説していきます。
消火器具・誘導灯
設置届と同様の機器が設置されているか、図面と同じ設置場所にあるか等を確認します。
誘導灯については “専用回路” になっているかブレーカーを入り切りしたり、音声誘導・点滅機能付き誘導灯なら自火報連動できてるかも確認されます。
- 設置届と同様の機器が設置されているか
- 設置場所が図面通りか
- 電源は専用回路になっているか
- ブレーカーを落としたらバッテリー駆動に切り替わるか
自動火災報知設備・非常警報設備など
自動火災報知設備については現地で作動試験(自動試験機能付きを除く)を行い、音響ベルもしくは音声などが鳴動するかを確認します。
- 設置届と同様の機器が設置されているか
- 設置場所が図面通りか
- 作動するか
- 電源は専用回路になっているか
- ブレーカーを落としたらバッテリー駆動に切り替わるか
火災通報装置(119番直通の電話)
実際に火災通報装置を作動させて消防署の指令管制室へ119番通報がされるかを確認します。
- 設置届と同様の機器が設置されているか
- 設置場所が図面通りか
- 自動で119番されるか
- 自動音声の文言は正しいか
- 電源は専用回路になっているか
- ブレーカーを落としたらバッテリー駆動に切り替わるか
屋内消火栓・スプリンクラー設備および泡消火設備など
消火ポンプが起動するかどうかや、放水試験が実施されます。
- 設置届と同様の機器が設置されているか
- 消火ポンプや消火器ボックス等の設置場所が図面通りか
- スプリンクラーヘッドは散水障害が発生していないか
- 規定の放水圧以上で放水できるか(ピトーゲージ等で試験)
- 電源は専用回路になっているか
- ブレーカーを落としたらバッテリー駆動に切り替わるか
【補足】天井上配管の中間検査
建物が完成してから確認するのが難しい天井上の配管や地中の水槽等は、まだ建設途中の天井が貼られる前に中間検査で確認されます。
建物完成後の消防検査もプレッシャーありますが、建設途中の中間検査は全体の工程に影響します。
もし通らなかった場合、他の業者さんから冷ややかな目で見られます。
避難器具など
避難はしごや緩降機、救助袋については消防検査時に降下試験を行います。
- 設置届と同様の機器が設置されているか
- 適切に固定されているか
- 地上までの長さは適切か
- 降下障害が発生していないか
- 避難器具の標識類は掲げられているか
設備以外の消防検査確認事項
避難経路に障害物が無いか、避難経路図は設置されているか、火災発生時に電気錠が自動火災報知設備と連動して解錠(パニックオープン)されるか等が確認されます。
不特定多数の人が出入りする特定防火対象物と(12)項ロ テレビ・映画スタジオのみ、カーテンやじゅうたんに防炎物品が使用されているかを確認します。
防炎性能を有するものの指定表示には以下の2種類があります。
- 防炎物品の表示
- 防炎製品の表示
防炎物品は高層建築物・地下街または劇場・病院等の建築物(防炎防火対象物)に使用が消防法で義務付けられているもので、防炎製品は消防法に基づく防炎物品以外の防炎品で使用する人を火災から守るため火災予防上防炎性能を有することが望ましいとの考えから消防庁等の指導により普及が図られているものです。
せっかく結構な費用かけて用意しても『防炎物品じゃなかったから交換して下さい』と消防検査時に指摘される場合もあるので要注意です。
以前リフォームで床に貼るタイプのカーペットが防炎ではなかったことが消防検査で指摘されて、剥がして貼り直すという大変な話もありました。
防炎物品の使用が義務付けられている建物用途があります、不明な場合は所轄消防署か消防設備士にお問い合わせ下さい。
消防検査の総括
消防士と消防設備士の間で消防検査の結果が総括され、特に是正指導箇所が無ければ届出類の副本(2部提出したうちの1部)が返却されます。
もし消防検査時に不備箇所が見つかった場合、改善した後に「①写真提出」もしくは「②再び現地確認」どちらかの措置となります。
消防用設備等検査結果済証
消防検査をクリアできれば、だいたい数日~1週間後に「消防用設備等検査結果済証」が所轄消防署より発行されます。
参考消防検査済証とは?立入検査結果通知書や消防法令適合通知書との違い
【補足】消防検査済証が発行されない場合
消防法上では消防検査の実施義務が無い建物の場合、消防検査済証が発行される代わりに返却される副本に消防検査済の捺印がされます。
原則、以下の条件に該当する建物において消防用設備等を設置した際のみ、消防検査の実施義務が生じます。
- 延べ面積に関わらず自動火災報知設備の設置義務が生じる用途
- 特定防火対象物で、かつ延べ面積300㎡以上
- 非特定防火対象物で延べ面積300㎡以上かつ消防長または消防署長が指定したもの
- 特定一階段等防火対象物
よって上記に該当しない建物であれば消防法上は設置届の提出や消防検査を受けなくてもいいのですが、だいたいの場合は消防署の内部規定に基づいて消防検査が実施されています。
建物の営業許可を取得する際に消防検査結果済証が必要になった場合は、お気軽に(株)防災屋までお問い合わせ下さい。
まとめ
- 消防検査とは消防用設備等の設置完了検査のことで、延べ面積に関わらず自動火災報知設備の設置義務が生じる用途や非特定防火対象物で延べ面積300㎡以上かつ消防長または消防署長が指定したもの等と対象となるものが決まっていた。
- 消防検査は消防用設備等が設置された後、その届出(設置届)を所轄消防署へ提出した際に消防検査実施の日程調整をするのが一般的であり、設備の確認だけでなく避難経路や防炎物品の確認も行われた。
- 消防検査後、だいたい数日~1週間後に所轄消防署より発行される消防用設備等検査結果済証を行政や保健所に持って行かないと営業開始できない建物用途があった。