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雑居ビルの自動火災報知設備は延べ面積300平方メートルから必要なのか|令第32条で設置しないでよいとされる条件を解説

雑居ビルの自動火災報知設備は延べ面積300平方メートルから必要なのか

小さな雑居ビルなのに自動火災報知設備が要ると言われて驚いた方は多いはずです。
令別表第一(16)項イは、延べ面積300平方メートル以上で設置対象になります。
ただし消防庁は、同じ時期に設置しなくてよいと考えられる場合の目安も示していました。
条件をすべて満たす小さなビルなら消防法施行令第32条の特例を検討できます。

テナントが入れ替わっただけなのに自動火災報知設備が要ると言われました。

平成14年に設置対象の範囲そのものが広がっています。
まずは建物全体の延べ面積を確かめてください。

うちは本当に小さいので付けなくてよい気もします。

外せる場合の目安は消防庁の通知に書かれています。
ただし条件はすべてを満たさなければ意味がありません。

この記事の結論
  • 平成14年政令第274号により、令別表第一(16)項イの自動火災報知設備は延べ面積300平方メートル以上から設置対象になった
  • 避難階以外の階に特定用途があり直通する階段が2以上ない防火対象物も新たに設置対象に加えられた(現行の消防法施行令第21条第1項第7号)
  • 平成14年12月17日の消防予第595号は、それでも設置しなくてよいと考えられる場合を令第32条の適用の参考としてまとめた通知である
  • 目安は延べ面積500平方メートル未満で、特定用途の部分が避難階かつ無窓階以外にあり、床面積の合計が150平方メートル未満で、主要な避難口に容易に避難できることである
  • アからウのすべてに適合してはじめて検討できるもので、実際に判断するのは消防長又は消防署長である

自動火災報知設備を設置しないでよいとされる特例基準の条件を延べ面積と階と床面積と避難口の4つで示した図解

雑居ビルの自動火災報知設備はなぜ延べ面積300平方メートルから必要になったのか

看板の並ぶ雑居ビルの上階から炎が上がり役所の建物と書類を持った人が並んでいる様子
きっかけは、線引きそのものを引き直した政令の改正でした。
その改正を現場へ伝えるために出されたのが、この通知です。
複合用途防火対象物等における自動火災報知設備の取扱いについて(平成14年12月17日 消防予第595号) 平成14年8月2日に公布された「消防法施行令の一部を改正する政令」(平成14年政令第274号)により、消防法施行令(以下「令」という。)別表第一(16)項イに掲げる防火対象物に係る自動火災報知設備の設置対象範囲が、延べ面積が500平方メートル以上で、かつ、令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が300平方メートル以上のものから、延べ面積が300平方メートル以上のものに拡大されるとともに、(略)当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が2(当該階段が屋外に設けられている場合等にあつては、1)以上設けられていないものも、新たに自動火災報知設備を設置しなければならない防火対象物として追加されました
線引きが延べ面積だけになりました。
それまでは延べ面積500平方メートル以上で、かつ店舗や飲食店などの部分が300平方メートル以上という二段構えの条件でした。
政令の改正はこれを改め、令別表第一(16)項イなら延べ面積300平方メートル以上というひとつの物差しにしています。
あわせて、避難階以外の階に店舗等があって直通する階段が2以上ない建物も対象に加わりました。
同じ時期に出された平成15年6月24日 消防予第170号は、自動火災報知設備や避難器具の基準の細目の改正について、平成13年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災を契機に行われた消防審議会の答申を踏まえたものだと書いています。
まずは自分のビルの延べ面積が、この物差しのどちら側にあるかを確かめてください。

雑居ビルの火災のあとに基準が動いていたのですね。

そのとおりです。
次はこの目安がどの建物に向けられたものかを見ましょう。

この特例基準はどんな建物に向けられているのか

小さな雑居ビルと巻き尺と大きな雑居ビルが並んでいる様子
通知が示した目安は、どんな建物にも当てはまるものではありません。
入口は令第21条第1項のどの号に当たるかで分かれます。
複合用途防火対象物等における自動火災報知設備の取扱いについて(平成14年12月17日 消防予第595号) 記 第1 特例基準の適用範囲 1 令第21条第1項第3号に掲げる防火対象物のうち、令別表第一(16)項イに掲げる防火対象物で、次の(1)及び(2)に掲げる条件に該当する場合にあつては、既存、新築の別を問わず、令第32条の規定を適用し、自動火災報知設備を設置しないことができるものであること。
対象は小さな雑居ビルに絞られています。
令第21条第1項第3号は、令別表第一(16)項イを延べ面積300平方メートル以上で設置対象としている号です。
特例基準の1はそのうちの一部だけを取り出しており、あとで見る条件の(1)で延べ面積を500平方メートル未満に限っています。
つまりこの目安が働くのは、延べ面積が300平方メートル以上500平方メートル未満という狭い帯だけです。
「既存、新築の別を問わず」と書かれているので、古いビルでも新しいビルでも同じように扱われます。
自分のビルがこの帯から外れているなら、この目安を持ち出しても話は進みません。

帯から外れていたら読んでも意味がないのですね。

面積の確認が先になります。
次は帯の中で問われる条件です。

自動火災報知設備を設置しないでよいとされる条件はなにか

一階に店のある小さなビルに青いチェックが付き二階に店のある小さなビルに赤い禁止の印が付いている様子
条件は面積だけではありません。
店や飲食店がどの階にあるかまで見られます。
複合用途防火対象物等における自動火災報知設備の取扱いについて(平成14年12月17日 消防予第595号) 記 第1 1 (1) 防火対象物の延べ面積は、500平方メートル未満であること。 (2) 令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途(以下「特定用途」という。)に供される部分が、次のアからウに掲げる条件のすべてに適合すること。 ア 特定用途に供される部分の存する階は、避難階であり、かつ、無窓階以外の階であること。 イ 特定用途に供される部分の床面積の合計は、150平方メートル未満であること。 ウ すべての特定用途に供される部分から主要な避難口に容易に避難できること。
アからウのすべてに適合することが求められます。
条件の(1)は建物全体の延べ面積、(2)は特定用途に供される部分についての条件です。
アは、店舗や飲食店などが避難階にあり、しかもその階が無窓階でないことを求めています。
イは、その特定用途に供される部分の床面積を合計して150平方メートル未満であることです。
ウは主要な避難口に容易に避難できることで、ここだけは寸法ではなく実際の避難のしやすさを見ます。
図面を広げて、どの階のどの区画が特定用途に当たるのかを塗り分けるところから始めてください。

一階の店だけという形なら当てはまりそうです。

床面積と避難口の条件も同時に要ります。
次は思い違いの起きやすいところを見ましょう。

特例が使えると思い込みやすいのはどこか

箱の並ぶ倉庫とタンクのある機械室を切り取って見せた建物と図面を広げた人が並んでいる様子
通知にはもうひとつの適用範囲が書かれています。
そこには用途の見え方をめぐる落とし穴があります。
複合用途防火対象物等における自動火災報知設備の取扱いについて(平成14年12月17日 消防予第595号) 記 第1 2 令第21条第1項第6号の2に掲げる防火対象物のうち、避難階以外の階の部分のすべてが次の(1)から(3)に掲げる条件のいずれかに該当する場合は、既存、新築の別を問わず、令第32条の規定を適用し、自動火災報知設備を設置しないことができるものであること。 (1) 居室以外の部分(機械室、倉庫等)であつて、不特定多数の出入りがないもの。 (2) 実態上の用途が特定用途以外の用途に供される部分であつて、「令別表第一に掲げる防火対象物の取扱いについて」(昭和50年消防予第41号及び消防安第41号。以下「41号通知」という。)1(2)により、主たる用途に供される部分の従属的な部分を構成すると認められる部分とされたため、当該部分が特定用途に供される部分として取り扱われているもの。 (3) 一般住宅の用途に供される部分であつて、41号通知2(2)により、防火対象物全体が単独の特定用途に供される防火対象物として取り扱われることとされたため、当該一般住宅の用途に供される部分が特定用途に供される部分として取り扱われているもの。
号の番号は今では動いています。
通知が指す令第21条第1項第6号の2は、現行の第7号に当たります。
避難階以外の階に特定用途があり、そこから避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていない防火対象物という中身は変わっていません。
落とし穴になりやすいのは(2)と(3)です。
実態は事務所や住宅なのに、41号通知の従属の考え方によって特定用途として扱われている部分があり、その扱いだけを理由に対象になっている場合を通知は救っています。
逆にいえば、実態として店舗や飲食店が使われている階には、この救いは働きません。

番号が違うので条文を探しても見つからないところでした。

中身が同じ規定なので読み替えれば足ります。
最後に確かめる順番をまとめます。

自分のビルで明日なにを確かめればよいのか

記録板を持った人と手すりの付いた階段と机に広げた図面が並んでいる様子
条件はどれも図面と現場で確かめられるものです。
順番を決めておけば迷いません。
複合用途防火対象物等における自動火災報知設備の取扱いについて(平成14年12月17日 消防予第595号) 記 第2 住宅防火対策等に係る配慮 令第32条の規定を適用して自動火災報知設備を設置しないこととされた防火対象物であつても、一般住宅等の就寝の用に供される部分を有するものにあつては、火災の早期発見という観点から、当該部分に住戸用自動火災報知設備又は住宅用火災警報器等を設置することが望ましいこと。なお、住宅用火災警報器を設置する場合は、寝室、台所、階段室等に設置するよう配慮されたい。
確かめる順番は面積からです。
はじめに建物全体の延べ面積を出し、300平方メートル以上500平方メートル未満に入るかを見ます。
次に特定用途の部分がどの階にあるかを確かめ、避難階かどうかと無窓階かどうかを判定します。
そのうえで特定用途の部分の床面積を合計し、150平方メートル未満に収まるかを測ります。
最後に避難階以外の階から地上へ直通する階段の数を数え、上の階に人が寝る部屋があるなら住宅用火災警報器等の設置まで検討してください。
数字が揃ったら所轄消防署へ持ち込み、令第32条を適用してよいかを相談するのが確実です。

図面と巻き尺があればひととおり確かめられそうです。

そこまで揃えてから相談してください。
最後に判断するのは消防長又は消防署長です。

よくある質問

Q延べ面積が300平方メートルを超えたら必ず自動火災報知設備が要るのですか?
A令別表第一(16)項イは、令第21条第1項第3号により延べ面積300平方メートル以上で設置対象になります。ただし平成14年12月17日 消防予第595号は、延べ面積500平方メートル未満で条件をすべて満たす場合について、令第32条を適用する際の参考となる目安を示しています。
Q通知の条件を満たしていれば自動的に設置しなくてよくなるのですか?
Aそうはなりません。令第32条は消防長又は消防署長が防火対象物の位置・構造・設備の状況から判断して適用するものです。通知はその判断の参考としてまとめられたものなので、必ず所轄消防署に確認してください。
Q通知にある令第21条第1項第6号の2は今どこにあるのですか?
A現行の令第21条第1項第7号に当たります。避難階以外の階に特定用途があり、そこから避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていない防火対象物という中身は同じで、避難階以外の階の意味は令第4条の2の2第2号に置かれています。
Q特例で設置しないことになった建物では何もしなくてよいのですか?
A通知は第2で、一般住宅等の就寝の用に供される部分があるなら住戸用自動火災報知設備又は住宅用火災警報器等を設置することが望ましいとしています。設置するときは寝室・台所・階段室等に配慮するよう書かれています。

まとめ

平成14年政令第274号により、令別表第一(16)項イの自動火災報知設備は延べ面積300平方メートル以上から設置対象になった
避難階以外の階に特定用途があり直通する階段が2以上ない防火対象物も設置対象に加えられた
平成14年12月17日の消防予第595号は、令第32条を適用する場合の参考となる特例基準の適用範囲をまとめた通知である
特例基準の1が働くのは、延べ面積が300平方メートル以上500平方メートル未満という狭い帯の令別表第一(16)項イだけである
特定用途の部分は避難階かつ無窓階以外にあり、床面積の合計が150平方メートル未満で、主要な避難口に容易に避難できることが求められる
アからウのすべてに適合する必要があり、ひとつでも欠ければ検討の対象にならない
通知が指す令第21条第1項第6号の2は現行の第7号にあたり、規定の中身は変わっていない

面積を測るところから始めればよいと分かりました。

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参考・出典

  • 複合用途防火対象物等における自動火災報知設備の取扱いについて(平成14年12月17日 消防予第595号)
  • 消防法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う消防用設備等の技術上の基準の細目に係る運用について(平成15年6月24日 消防予第170号)
  • 令別表第一に掲げる防火対象物の取扱いについて(昭和50年 消防予第41号・消防安第41号)
  • 消防法施行令の一部を改正する政令(平成14年政令第274号)
  • 消防法施行令第21条第1項第3号・第7号
  • 消防法施行令第32条
  • 消防法施行令第4条の2の2第2号
  • 消防法施行令別表第一(16)項イ・(1)項から(4)項まで・(5)項イ・(6)項・(9)項イ

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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