廊下の天井に並ぶ緑色の誘導灯は、どの建物にも必ず付いているものだと思われがちです。
ところが消防法令は、一定の条件を満たす部屋については設置そのものを要しないと定めています。
条件は「部屋の広さ」や「見た目」ではなく、避難口までの歩行距離と見通しという数値と条文で決まります。
どこまでが免除で、どこからが対象外なのかを条文から順に確認します。
小さな部屋にまで誘導灯を付けろと言われて、正直納得がいっていません。
全部の部屋に必要なものなんでしょうか。
実は全部の部屋というわけではありません。
条文が定める条件を満たせば、誘導灯そのものを省略できます。
どんな条件なのか、順番に見ていきましょう。
数字が絡む話は苦手なんですが、大丈夫でしょうか。
大丈夫です。
歩行距離と見通しの2つだけ押さえれば読み切れます。
- 誘導灯は用途と階ごとに原則として設置義務がありますが、条文にただし書きがあります
- 免除の条件は総務省令(消防法施行規則)が定めており、歩行距離と見通しの両方で判断します
- 避難口誘導灯は歩行距離が避難階で20m以下・避難階以外で10m以下であることが条件です
- 通路誘導灯・誘導標識はそれぞれ別の歩行距離の基準が定められています
- 地階・無窓階は歩行距離の条件を満たしても免除の対象外です
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目次
誘導灯はすべての防火対象物に必要なのか

ただし、その条文自体にただし書きが付いています。
条文の本文は、令別表第一の用途区分ごとに避難口誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯・誘導標識の設置対象を定めるものです。
その直後に「避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない」という一文が続きます。
総務省令とは消防法施行規則のことで、免除の具体的な条件はそちらに委ねられています。
つまり誘導灯は「原則設置・条件付き免除」という構造で、免除は例外として個別に判定するものだと理解しておいてください。
ただし書きがあるとは知りませんでした。
具体的な条件は別の条文に書いてあるんですね。
そのとおりです。
次は消防法施行規則のほうを見ていきましょう。
どんな部屋なら誘導灯を省略できるのか

数字と条件がセットで決まっています。
一 (略)居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、当該避難口に至る歩行距離が避難階にあつては20メートル以下、避難階以外の階にあつては10メートル以下であるもの
まず居室のどこにいても主要な避難口を容易に見とおし、識別できることが前提です。物や間仕切りで死角ができていると、この時点で条件から外れます。
そのうえで、避難口までの歩行距離が避難階なら20m以下、避難階以外の階なら10m以下であることが求められます。同じ「歩行距離が短い」でも、避難階かどうかで基準の数字が変わる点に注意してください。
歩行距離は居室の入口や中心からではなく、居室の各部分、つまりいちばん奥や隅から測って判断します。
図面上の直線距離ではなく、実際に歩く経路で測ることも忘れないでください。
見通せることと歩行距離、両方をクリアしないといけないんですね。
はい。
片方だけ満たしても免除にはなりません。
誘導灯と誘導標識で歩行距離の基準はどう違うのか

それぞれ免除の歩行距離の基準が違います。
一 (略)居室の各部分から主要な避難口(略)を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、当該避難口に至る歩行距離が避難階にあつては40メートル以下、避難階以外の階にあつては30メートル以下であるもの
同条第3項 (略)誘導標識については、次の各号に定める部分とする。
一 (略)居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、当該避難口に至る歩行距離が30メートル以下であるもの
避難口誘導灯は10m・20m、通路誘導灯は30m・40m、誘導標識は避難階かどうかを問わず一律30mという基準です。
避難口誘導灯がいちばん厳しい数字になっているのは、避難口そのものの位置を示す最終段階の設備だからだと読み取れます。廊下の途中で方向を示す通路誘導灯や、電源を持たない誘導標識は、それより緩い基準になっています。
自分の建物でどの種類の免除を検討しているのかを取り違えると、当てはめる数字も変わってしまいます。
まずは検討しているのが避難口誘導灯なのか通路誘導灯なのか誘導標識なのかを、先に決めてから歩行距離を確認してください。
同じ「誘導灯」でも種類によって数字が全然違うんですね。
そうです。
どの種類の話をしているのか、まずそこを確認してください。
地階や無窓階では免除が使えないのはなぜか

条文は「避難階」と「避難階以外の階」という言葉の中に、あらかじめ除外を書き込んでいます。
条文の「避難階」という言葉自体が無窓階を除くという意味で定義され、「避難階以外の階」も地階及び無窓階を除くという意味で定義されています。歩行距離が10m以下でも、その部屋が地階や無窓階であれば、条文の対象そのものに当てはまりません。
窓のない部屋や地下の部屋は、火災時に煙がこもりやすく自然光による目印も得にくいため、歩行距離が短いという理由だけでは免除の土台に乗らない構造になっています。
もうひとつ混同しやすいのが、誘導灯と誘導標識の関係です。誘導灯を基準どおりに設置した部分は誘導標識を省略できますが、この関係は一方向で、誘導標識を置いただけで誘導灯の設置義務が消えるわけではありません。
自分の建物の免除を検討するときは、まず地階・無窓階に該当しないかを確認し、そのうえで歩行距離を測るという順番にしてください。
うちの倉庫、窓がない部屋なんですが、歩行距離が短くても免除されないということですか。
条文の定義上そうなります。
まずは無窓階に当たるかどうかを先に確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

数字だけを見ず、順番どおりに確かめてください。
- 対象の部屋が地階・無窓階に当たらないかを先に確認する
- 居室のいちばん奥から主要な避難口が容易に見とおせるかを確かめる
- 避難口までの歩行距離を実際の経路で測る(図面の直線距離では判断しない)
- 検討している設備が避難口誘導灯・通路誘導灯・誘導標識のどれに当たるかを確認し、対応する基準の数字に当てはめる
特に歩行距離は、間仕切りの変更や什器の配置替えで数字が動きます。模様替えのたびに測り直す前提で管理してください。
見とおしと識別のしやすさは数値化しにくい部分なので、写真を撮って記録に残しておくと、あとから判断根拠を説明しやすくなります。
条文の要件をすべて満たしていると考えても、最終的な判断は所轄消防署が個別に確認します。
まずは地階・無窓階かどうかの確認からですね。
そのとおりです。
判断に迷ったら所轄消防署にご相談ください。
よくある質問
まとめ
歩行距離と地階・無窓階の関係がよく分かりました。
まずは自分の建物を測ってみます。
地階・無窓階の確認、見通し、歩行距離の実測。
この順番で確認すれば判断を間違えません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法施行令第26条
- 消防法施行規則第28条の2
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





