高層ビルや大規模施設に防災管理者を置くとき、資格を持つ人がいれば必ず選べるとは限りません。
消防法施行令第47条は、防災管理者になれる人を管理的又は監督的な地位にある人に絞っていますが、遠隔地勤務などでそうした立場の人がいない建物も実際にあります。
そのときのために、消防法施行規則第51条の6が地位の要件を別の要件に置き換える特例を用意しています。
特例が使える建物の条件と、選ばれる人が満たすべき要件を条文に沿って確認します。
うちのビルは管理担当者が本社に常駐していて、現場に管理的な立場の人がいません。防災管理者は選べないのでしょうか。
建物の種類によっては、地位の要件を別の要件に置き換える特例があります。
まずは対象になる建物の条件から見ていきましょう。
特例を使えば、資格がなくても防災管理者になれるということですか。
いいえ、資格そのものは免除されません。
どこが置き換わり、どこが変わらないのかを条文で確認していきます。
- 遠隔地勤務などで管理的又は監督的な地位にある人がいない建物には、防災管理者の要件を一部置き換える特例があります
- 特例が使える対象は①同一人物が複数物件を管理②権原が分かれた小規模テナント部分③不動産の証券化に係る物件の3類型に限られます
- 対象に当てはまるだけでは使えず、消防長又は消防署長が「業務を適切に遂行することができない」と認めることが前提です
- 選ばれる人は権限の付与・業務内容の文書交付・建物状況の説明という3つの要件を満たす必要があります
- この特例で免除されるのは地位の要件だけで、講習修了などの資格ルート自体は変わりません
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目次
防災管理者になれる人がいない建物はどうすればよいか

条文はまず、選べる人の立場そのものに条件を置いています。
この条文の柱書きは、資格ルートを満たすだけでは足りず、その建物で防災管理上必要な業務を実際に担える立場にあることを求めています。
ところが、担当者が別の拠点に常駐していたり、支店が本社から離れていたりして、そうした管理的又は監督的な地位にある人がその建物に誰もいない場合があります。
条文はこの場合に備えて、括弧書きで別の要件に置き換える特例を用意しています。
まずは自分の建物に、管理的又は監督的な地位にある人が実際にいるかどうかを確認してください。
うちの建物にはそういう立場の人がいないのですが、あきらめるしかないのでしょうか。
いいえ、あきらめる前に確認することがあります。
次は特例が使える建物の条件を見ていきましょう。
どんな建物ならこの特例が使えるのか

対象になる建物は、規則が定める3つの類型に限られます。
規則第2条の2第1項が定める類型は、①同一人物が複数の建物の管理権原を持つ場合の当該建物、②権原が分かれた建物のうち収容人員が少ない小規模なテナント部分、③不動産の証券化や不動産特定共同事業に係る物件、の3つです。
この3類型に当てはまるだけでは足りず、管理的又は監督的な地位にある人が遠隔地勤務などでその業務を担えないと消防長又は消防署長が認めることが前提です。
つまり、建物の類型と消防機関の認定という2段構えの条件になっています。
自分の建物がこの3類型に当てはまるかどうかを、まず確認してください。
うちは単独所有の1棟のビルですが、それでも対象になりますか。
単独所有で管理権原が分かれていない建物は、この3類型のいずれにも当たりません。
対象かどうかは、まず建物の管理体制から確認してください。
特例で選ばれる人は何を満たせばよいのか

規則は、地位の代わりに3つの要件を求めています。
1つ目は、管理権原者から防災管理上必要な業務を行うための権限が付与されていることです。
2つ目は、業務の内容を明らかにした文書を交付され、その内容を十分に理解していることです。
3つ目は、建物の位置・構造・設備の状況について説明を受け、十分な知識を有していることです。
口頭の合意だけでなく、権限と説明の内容を書面で残しておくと、あとから消防署に説明しやすくなります。
権限が付与されているというのは、口約束でも大丈夫ですか。
条文上は書面の形式までは定めていませんが、文書での交付が要件になっている項目もあります。
記録を残す形で整えておくことをお勧めします。
資格そのものは免除されるのか

実は、免除されるのは地位の要件だけです。
選ばれる人は、講習修了・実務経験・消防職員経験・これらに準ずる者という4つの資格ルートのいずれかを、これまでと同じように満たす必要があります。
条文の構造を見ると、第47条第1項の柱書きにある括弧書きが動かすのは「管理的又は監督的な地位にあるもの」という部分だけで、各号の資格そのものには手を付けていません。
防火管理者側の外部委託(施行令第3条第2項・施行規則第2条の2)と根拠条文が異なる点にも注意してください。
資格を持たない人を「地位が無いから」という理由だけで選ぶことはできません。
防火管理者の外部委託と同じ制度だと思っていました。
似た仕組みですが、根拠となる条文は別です。
防災管理者側は令第47条と規則第51条の6で確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

建物の確認から届出まで、順番に進めます。
まず、自分の建物が規則第2条の2第1項の3類型のどれかに当てはまるかを確認します。
当てはまる場合は、管理的又は監督的な地位にある人が遠隔地勤務などでその業務を担えない事情を所轄消防署に説明し、特例が使えるかを相談します。
使える見込みが立ったら、選ばれる人への権限付与と業務内容の文書を整え、建物の状況を説明した記録も残します。
最後に、資格を証する書面を添えて選任の届出を提出してください。
相談する前に、こちらで準備しておいたほうがいいものはありますか。
建物の管理体制が分かる資料と、選任予定の人の経歴が分かるものがあると相談がスムーズです。
まずはその2点を手元に用意してみてください。
よくある質問
まとめ
資格が要らなくなるわけではなく、地位の要件だけが置き換わるという仕組みがよく分かりました。
まずは建物の類型を確認してみます。
建物の類型の確認、消防署への相談、そして書面の整備。
この順番で進めれば、特例が使えるかどうかがはっきりします。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第36条第1項
- 消防法施行令第47条第1項
- 消防法施行令第3条第2項
- 消防法施行規則第51条の6
- 消防法施行規則第2条の2
- 消防法施行規則第51条の9
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




