立入検査で「このフロアは無窓階です」と告げられると、多くの方はまず窓の数を数え直そうとします。
ところが無窓階の影響が及ぶのは開口部そのものより先に、屋内消火栓設備や自動火災報知設備といった別の設備の基準です。
条文は地階・無窓階・3階以上の階を同じ括りで扱い、通常よりずっと低い床面積で設備の設置を義務づけています。
無窓階への該当は一つの階だけの話ではなく、建物にかかる複数の設備基準を同時に動かすスイッチです。
立入検査で「このフロアは無窓階です」と言われました。
窓はあるのに、どうしてですか。
窓の数ではなく、避難や消火活動に実際に使える開口部かどうかで判定されます。
無窓階に当たると、ほかの設備の基準まで動き出します。
窓の話だけでは終わらないんですね。
そうです。
屋内消火栓設備と自動火災報知設備の基準がどう変わるかを、順番に見ていきましょう。
- 無窓階になると、避難や消火活動に使える開口部が基準に届かないという理由で、通常より厳しい消防用設備等の基準が適用されます
- 屋内消火栓設備は、無窓階なら床面積が100〜200平方メートルという低い基準で義務になります(消防法施行令第11条第1項第6号)
- 自動火災報知設備も、(2)項・(3)項・(16)項イの無窓階なら床面積100平方メートル以上で義務になります(消防法施行令第21条第1項第10号)
- 後付けの格子や増築による接続、開口部をふさぐ改装が、意図せず無窓階への該当を招くことがあります
- 各階の開口部の実測と図面への記録が、判定のずれを防ぐ第一歩です
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目次
無窓階になると消防用設備等の基準はどう変わるのか

まずは条文が置いている定義から確認します。
条文が並べているのは「地階」「無窓階」「三階以上の階」という三つの区分で、いずれも消防隊の進入や住民の避難が難しいという共通点でくくられています。
この第10条第1項第5号は消火器具の設置基準ですが、屋内消火栓設備や自動火災報知設備の条文にも、同じ「地階、無窓階又は○階以上の階」という括りが繰り返し登場します。
つまり無窓階の判定は一度で終わるものではなく、建物にかかる複数の設備基準を同時に動かす起点になります。
ここから、実際にどの設備の基準がどこまで変わるのかを具体的に見ていきます。
無窓階は開口部だけの話だと思っていましたが、設備の基準とセットなんですね。
そうです。
まずは自分の建物のどの階が無窓階に当たるかを確認するところから始めてください。
具体的にどの設備の基準が変わるのか

屋内消火栓設備と自動火災報知設備を例に、条文の基準面積を見てみます。
これは令第11条第1項第6号が定める基準で、(1)項なら100平方メートル、(2)項から(10)項・(12)項・(14)項なら150平方メートル、(11)項・(15)項なら200平方メートルという内訳です。
自動火災報知設備は、飲食店や物品販売店など(2)項・(3)項・(16)項イに当たる用途で、地階又は無窓階の床面積が100平方メートル以上になると義務になります(令第21条第1項第10号)。
どちらも無窓階だからといって一律の面積で決まるわけではなく、防火対象物の用途ごとに条文の号を当てはめて確認する必要があります。
自分の建物がどの号に当たるかは、用途区分を確認してから逆算すると分かりやすくなります。
屋内消火栓と自動火災報知設備は、同じ面積で必要になるわけではないんですね。
はい。
設備ごとに条文の号が違うので、用途区分を確認してから面積を当てはめてください。
なぜ無窓階だと基準がそこまで厳しくなるのか

条文を並べて比べると、その差がはっきり見えます。
第1号は同じ(1)項の防火対象物でも延べ面積500平方メートル以上という建物全体の広さを条件にしています。
これに対して第6号は、無窓階なら床面積100平方メートル以上という一つの階だけの狭さで義務になります。
建物全体では基準に届かない小さな建物でも、地階や無窓階が一つあるだけで屋内消火栓設備が必要になることがあるという理屈です。
これは、無窓階が消火活動や避難のうえで不利な条件を抱えているぶん、面積の入口を下げて早めに設備を求める組み立てだと読めます。
普通の階なら500平方メートル以上なのに、無窓階だと100平方メートルなんですね。
そのとおりです。
建物全体ではなく階ごとの面積で判定されるので、小さな建物でも対象になることがあります。
実務で無窓階になってしまう見落としはどこにあるのか

有効な開口部の条件を見ると、その理由が分かります。
一 床面から開口部の下端までの高さは、一・二メートル以内であること。
二 開口部は、道又は道に通ずる幅員一メートル以上の通路その他の空地に面したものであること。
三 開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
四 開口部は、開口のため常時良好な状態に維持されているものであること。
たとえば防犯のために開口部の外側へ格子を後付けすると、三号の「内部から容易に避難することを妨げる構造」に触れ、有効な開口部として数えられなくなることがあります。
増築で別の建物と接続して面積が増えた場合も、開口部の位置や幅員1メートル以上の通路が確保できているかを、増築後の形で数え直す必要があります。
日射や防犯フィルムのために開口部を内側から厚いカーテンや掲示物でふさいでしまうと、四号の「常時良好な状態に維持」が保てず、開口部として機能していないと判断されることがあります。
改装や増築の計画があるときは、図面変更の前に開口部の位置と大きさが変わらないかを確認してください。
後付けの格子や増築が、無窓階の判定を変えることがあるんですね。
あります。
改装のたびに、開口部が使える状態のままかを確認してください。
明日から何を確認すればよいのか

条文が置いている数字を、一つずつ当ててみてください。
まず自分の建物の階数が11階以上か10階以下かを確かめ、それぞれの円の大きさの基準を選びます。
開口部に直径50センチメートルまたは1メートルの円が内接できるか、実際に円形の型紙などを当てて測ってみてください。
床面から開口部の下端までの高さ、道路や通路に面しているか、格子やカーテンで塞がれていないかも合わせて確認します。
迷う階が見つかったら、実測した数字を持って所轄消防署に相談するのが最も確実です。
明日からできることは何でしょうか。
まずは各階の開口部の実測です。
数字を図面に書き込んでおくと、次の立入検査でもすぐに説明できます。
よくある質問
まとめ
無窓階が設備の基準全体に関わると分かって、見る場所が増えました。
まずは開口部の実測から始めます。
実測した数字を図面に残しておくと、
次の立入検査でもすぐに説明できます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法施行令第10条第1項第5号
- 消防法施行令第11条第1項第1号・第6号
- 消防法施行令第12条第1項第2号
- 消防法施行令第21条第1項第10号
- 消防法施行規則第5条の5
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





