防災管理対象物で地震などの災害が起きたとき、消防はいつもの火災と同じように現場で動けるのか、と考える方は少なくありません。
消防法の多くの規定は、条文の文言だけを見ると火災の場面を想定しているように見えます。
しかし消防法第36条第8項は、火災現場での対応を定めた規定を、水災を除く他の災害にも読み替えて準用すると定めています。
消防警戒区域の設定や消防作業への従事命令まで、火災と同じ仕組みが地震などの災害にも及ぶということです。
うちは防災管理者を選任していますが、地震が起きたときも消防の方はいつもの火災と同じように動いてくれるんでしょうか。
はい、火災向けの規定が地震などの災害にも読み替えて準用されます。
具体的にはどこまでのことができるようになるんですか。
5つのポイントで順番に見ていきましょう。
- 防災管理対象物で地震などの災害が起きても、消防法第36条第8項により火災向けの規定がそのまま読み替えて準用されます
- 準用されるのは第18条第2項・第22条・第24条から第29条まで・第30条の2で、水災は除かれます
- 消防吏員又は消防団員は消防警戒区域を設定し、退去や出入りの禁止・制限を命じることができます
- 消防作業への従事命令に応じてけがをした人は消防法第36条の3により補償の対象になります
- 防災管理者は消防計画に、警戒区域の設定や従事命令が発生し得ることを前提に応急対応の体制を組み込んでおく必要があります
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目次
地震などの災害でも火災の規定がなぜ使えるのか

では地震などの災害が起きたとき、これらの規定はどう扱われるのでしょうか。
消防法第36条第1項は、火災以外の災害で政令が定めるものについて、第8条から第8条の2の3までの規定を読み替えて準用すると定めています。
そして同条第8項は、消防警戒区域の設定や消防作業への従事命令のように火災現場での対応を定めた規定についても、水災を除く他の災害に準用すると重ねて定めています。
つまり地震などの災害が起きた場面でも、消防機関は火災のときと同じ枠組みで現場に対応できる仕組みになっています。
次の項で、実際にどの条文が準用されるのかを具体的に見ていきます。
地震のときも、火災の規定がそのまま使えるというのは意外でした。
はい、消防法第36条第8項が読み替えて準用すると定めています。
どの条文が地震にも及び水災は除かれるのか

具体的にどの条文が並ぶのか、条文どおりに確認します。
- 第18条第2項 消防信号のみだりな使用の禁止
- 第22条 気象状況の通報と市町村長による火災警報
- 第24条から第29条まで 発見者の通報義務・消火協力・消防車の優先通行・消防警戒区域の設定・消防対象物や土地の使用処分・従事命令
- 第30条の2で準用する第25条第3項・第28条第1項及び第2項・第29条第1項及び第5項 都道府県が市町村の消防を支援する場合の同種の規定
第30条の2は都道府県が市町村の消防を支援する場合の規定なので、単独の市町村消防でも同じ内容が第25条・第28条・第29条本体で及びます。
これらの規定は、水災を除く他の災害の現場でも同じように使えると条文がはっきり定めています。
洪水や高潮などの水災は、水防法など別の法体系で対応する災害なので、この準用からは外れています。
地震や毒性物質の発散その他の特殊な災害が起きた現場では、次の項で見る内容がそのまま使われます。
台風による洪水のときは、この規定は関係ないということですね。
はい、水災はこの第36条第8項の準用からは除かれています。
警戒区域の設定や従事命令にはどんな中身があるのか

条文の中身を具体的に見ていきます。
一つ目は消防警戒区域の設定で、区域内にいる者は退去を命じられ、区域外の者は出入りを禁止・制限されます。
二つ目は消防対象物や土地の使用・処分で、延焼防止のために消防吏員又は消防団員が現場の建物や土地を使うことがあります(第29条第1項から第3項)。
三つ目は従事命令で、緊急の必要があるときに現場附近にいる者へ消火や避難誘導などの消防作業への従事を求められます。
これらはいずれも消防吏員又は消防団員の判断で行われ、権原者や居住者の同意を前提にしていません。
地震のときに、うちの敷地が消防に使われることもあるんですか。
延焼防止などのために必要があれば使用や処分の対象になります。
従事命令でけがをした場合の補償はどうなるのか

このとき補償の対象になるのかどうかを確認します。
第36条第8項の準用リストそのものには第36条の3は含まれていませんが、第36条の3自身が「第36条第8項において準用する場合を含む」と条文に明記しています。
つまり地震などの災害で従事命令に応じた人がけがをしたときも、火災のときと同じ市町村の補償の対象になります。
準用リストの条文番号だけを数えると見落としそうになりますが、補償の網は別の条文からきちんと張られています。
条例で定める基準に従う仕組みなので、実際の補償額や手続きは所轄の市町村に確認するのが確実です。
第36条第8項の一覧に第36条の3が出てこないので、補償されないのかと思いました。
いいえ、第36条の3自身が読み替えを含むと定めています。
防災管理者は今日から何を確認すればよいか

すでに作成している消防計画とのつながりを確認するのが出発点です。
防災管理に係る消防計画には、地震発生時の通報連絡・避難誘導・救出・救護などの応急措置をすでに定めているはずです。
この記事で見た警戒区域の設定や従事命令は、その応急措置の実施中に消防機関側から加わってくる要素だと理解しておきます。
訓練の際に、区域からの退去を求められた場合の集合場所や、従事命令に応じる担当者の当たりを付けておくと現場で慌てません。
実際に災害が起きたときの細かい運用は、所轄の消防署に事前に相談しておくと安心です。
消防計画とは別物だと思っていましたが、つながっているんですね。
はい、応急措置の項目と現場の権限は一続きの話です。
よくある質問
まとめ
地震のときに消防がどこまで動けるのか、よく分かりました。
消防計画の応急措置の項目を見直して、訓練にも反映させてみます。
消防計画の見直しや訓練のご相談は、㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第5条・第5条の2
- 消防法第18条・第22条・第24条から第29条まで・第30条の2
- 消防法第36条・第36条の3
- 消防法施行令第45条
- 消防法施行規則第51条の8
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





