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避難上必要な施設の管理は誰の義務なのか|統括防災管理者と管理権原者本来の責任を解説

避難施設の管理義務は誰に残るのか

高層ビルや地下街のような防災管理対象物では、統括防災管理者が選任されると、廊下や階段の管理までまとめて引き受けてくれると考えてしまう管理権原者(オーナー)がいます。
実は避難上必要な施設の管理は、防災管理の制度が始まる前から、消防法第8条の2の4によって建物の管理権原者自身に課されている義務です。
統括防災管理者に消防計画づくりや日常点検を任せたからといって、この義務がそっくり入れ替わるわけではありません。
もともとの義務がどこにあり、統括防災管理者の業務とどう重なるのかを、条文で確認しておきましょう。

うちのビルは統括防災管理者を選任しているので、廊下や階段の管理はもうその人の仕事だと思っていました。

実はそれだけでは終わらないんです。
もともとの義務がどこにあるかを先に確認しましょう。

もともとの義務というと、統括防災管理者の業務とは別に、うちのビル側にも何かあるということですか。

はい、その通りです。
管理権原者ご自身に課された条文から、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 廊下・階段・避難口の管理義務は、防災管理の制度とは無関係に消防法第8条の2の4で管理権原者に課されている
  • 対象は令別表第一に掲げるほぼ全ての防火対象物で、防災管理対象物はその一部にすぎない
  • 防災管理対象物では、統括防災管理者が施行令第48条の3第2項に基づき同じ管理業務を担う
  • 統括防災管理者に業務を任せても、管理権原者本人の義務は消えない
  • 違反が見つかったとき、是正の対象になるのは今も管理権原者である

避難上必要な施設の管理義務が消防法第8条の2の4で管理権原者に課され統括防災管理者の業務と重なりながらも義務者は変わらない流れを示した図解

避難施設の管理義務はもともと誰が負っているのか

建物の入口に立つ管理権原者と廊下の奥に置かれた荷物、隣に立つビルの外観
統括防災管理者の話に入る前に、まずこの義務そのものの出どころを確認します。
実は防災管理の制度が生まれるより前から、条文に定めがあります。
消防法第8条の2の4 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
この義務の名宛人は、防災管理者でも統括防災管理者でもありません。
条文がはっきり指しているのは「管理について権原を有する者」、つまり建物のオーナーや管理会社そのものです。
廊下や階段に物が放置されていないか、防火戸の前がふさがれていないかという、日常のごく身近な管理が対象になります。
防災管理対象物かどうか、統括防災管理者がいるかどうかとは関係なく、この義務はすでに発生しています。
まずはこの出発点を押さえたうえで、防災管理対象物ではどう変わるのかを見ていきます。

防災管理者や統括防災管理者の話じゃなくて、最初からオーナー側の義務だったんですね。

そうです。
ここが出発点なので、防災管理対象物での扱いと混同しないようにしましょう。

この義務はどの建物まで及ぶのか

小さな店舗ビルと大きな高層ビルを並べ大きい方にだけ防災管理の腕章の人物が立つ様子
先ほどの義務が及ぶ範囲を確認すると、防災管理対象物との関係がはっきりします。
政令で対象になる防火対象物が定められています。
消防法施行令第4条の2の3 法第八条の二の四の政令で定める防火対象物は、別表第一に掲げる防火対象物(同表(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。)とする。
消防法施行令第46条 法第三十六条第一項の政令で定める建築物その他の工作物は、第四条の二の四の防火対象物とする。
第8条の2の4の対象は、別表第一に掲げるほぼ全ての防火対象物です。
除かれるのは(十八)項から(二十)項(工作物・地下工作物の一部)だけで、小さな店舗ビルであっても対象になります。
これに対して防災管理対象物は、令第46条が指す第4条の2の4の規模基準を満たす建物に限られる、いわばその中の一部です。
つまり防災管理対象物でない普通のビルにも、避難施設の管理義務そのものはすでに存在しています。
統括防災管理者が選任されるかどうかは、この土台となる義務の有無を左右しません。

じゃあ、防災管理対象物じゃないうちの取引先の小さいビルにも、この義務はあるんですか。

あります。
防災管理対象物かどうかとは別に、対象になる防火対象物ならもう義務が発生していますよ。

統括防災管理者が担う業務の中身はなにか

腕章を着けた統括防災管理者がクリップボードを手に廊下と階段を点検して回る様子
防災管理対象物では、この義務と重なる業務が統括防災管理者にも課されています。
消防計画のもとになる条文を確認します。
消防法施行令第48条の3第1項 統括防災管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防災管理対象物の全体についての防災管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
第2項 統括防災管理者は、前項の消防計画に基づいて、避難の訓練の実施、当該防災管理対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防災管理対象物の全体についての防災管理上必要な業務を行わなければならない。
統括防災管理者の業務には、廊下・階段・避難口の管理がそのまま含まれています。
第8条の2の4と同じ対象・同じ内容の管理が、今度は消防計画に基づく業務として書かれている形です。
建物全体を任される統括防災管理者は、消防計画に沿って日常の点検やチェックを実際に行う立場になります。
ここまで見ると、義務が統括防災管理者に丸ごと移ったように見えるかもしれません。
しかし条文の書きぶりをよく見ると、そう単純には言い切れない点があります。

これで統括防災管理者に管理業務がまるごと引き継がれた、ということでいいんですよね。

実務はそう見えるんですが、法律上の名宛人までは動いていません。
次の章で確認しましょう。

統括防災管理者に任せれば管理権原者の義務は消えるのか

是正命令の書類を受け取る管理権原者と隣で目をそらす統括防災管理者に付いた禁止マーク
ここが実務でいちばん誤解されやすいところです。
違反が見つかったときに命令が届く先を確認します。
消防法第5条の3第1項(抄) 消防長、消防署長その他の消防吏員は、防火対象物において(略)消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者(略)に対して、第三条第一項各号に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
是正命令の名宛人は、今も「権原を有する者」、つまり管理権原者本人です。
統括防災管理者が日常の点検を実際に担当していても、法律上の義務者が入れ替わるわけではありません
統括防災管理者の業務は、あくまで消防計画に基づいて実務を回す仕組みであって、第8条の2の4の義務そのものを肩代わりする制度ではありません。
「専門の担当者を置いたから安心」と考えて確認を怠ると、命令を受けるのは結局オーナー側という事態になりかねません。
統括防災管理者に任せている業務であっても、管理権原者として最終的な状態を確認しておく必要があります。

統括防災管理者を選任していても、うちが命令を受けることになるんですか。

そうなります。
だからこそ任せきりにせず、状態を確認する仕組みが必要なんです。

明日からなにを確認すればよいのか

消防計画のファイルと防火戸の点検チェックリストを机に並べる管理権原者と統括防災管理者
最後に、明日から確認する範囲を具体的にしておきます。
条文には廊下や階段のほかにもう一つ、見落としやすい対象があります。
消防法第8条の2の4(抄) (略)かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
点検の対象は廊下や階段だけでなく、防火戸の周りにも及びます。
物置代わりに使われがちな防火戸の前は、見落としが起きやすい場所です。
統括防災管理者に日常点検を担当させている場合でも、いつ・どこを・誰が確認したかを消防計画や点検記録に残しておきます。
記録が残っていれば、統括防災管理者との役割分担と、管理権原者としての最終確認の両方を説明できます。
まずは今の消防計画を開き、廊下・階段・避難口に加えて防火戸の点検項目が入っているかを確かめてください。

廊下や階段だけじゃなくて、防火戸の前もちゃんと点検項目に入れておかないといけないんですね。

そうです。
まずは今の消防計画を開いて、点検項目に防火戸が入っているか確かめてみてください。

よくある質問

Q統括防災管理者がいれば、管理権原者は避難施設の管理をしなくてよいのか?
Aいいえ。消防法第8条の2の4の義務者はあくまで管理権原者本人で、統括防災管理者に日常の管理を担当させても、この義務そのものは管理権原者に残ります。
Q第8条の2の4の対象になる建物と、防災管理対象物はどう違うのか?
A第8条の2の4は令別表第一に掲げるほぼ全ての防火対象物に及ぶ義務です。防災管理対象物は令第46条が定める規模基準を満たす建物に限られ、その中の一部にすぎません。
Q統括防災管理者が廊下の管理を怠った場合、誰が是正命令を受けるのか?
A消防法第5条の3に基づく命令の名宛人は、権原を有する者(管理権原者)です。統括防災管理者が実務を担当していても、命令は管理権原者に向けられます。
Q防災管理対象物でない普通のビルにも、この義務はあるのか?
Aあります。第8条の2の4は防災管理の制度と関係なく、令別表第一に掲げるほぼ全ての防火対象物の管理権原者に課される義務です。統括防災管理者の有無にかかわらず確認が必要です。

まとめ

廊下・階段・避難口・防火戸の管理義務は、消防法第8条の2の4により管理権原者に課されている
対象は令別表第一に掲げるほぼ全ての防火対象物で、(十八)項から(二十)項だけが除かれる
防災管理対象物は、その中でも令第46条の規模基準を満たす一部にすぎない
統括防災管理者は施行令第48条の3第2項に基づき同じ管理業務を消防計画の中で担う
統括防災管理者に任せても、第8条の2の4の義務者は管理権原者本人のまま
違反が見つかれば、消防法第5条の3の是正命令の相手は管理権原者になる
防火戸の周りも点検範囲に含め、点検記録を残すことが実務対応になる

義務がどこに残っているのかがわかって、統括防災管理者との役割分担を見直せそうです。

まずは今の消防計画と点検記録を見直すところから始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第8条の2の4
  • 消防法第5条の3第1項
  • 消防法第36条第1項
  • 消防法施行令第4条の2の3
  • 消防法施行令第46条
  • 消防法施行令第48条の3第1項・第2項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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