ホールや宴会場でいすを並べていて
こんなに詰めて置いてよいのだろうかと迷ったことはないでしょうか。
実は客席のいすの間隔や通路の幅は感覚で決めてよいものではなく市町村の条例に数字で書かれています。
客席の避難管理と定員の遵守は防火管理者の業務そのものです
うちの多目的ホールで講演会をやるんですが。
いすは何列まで並べていいのか誰も知らないんです
そこは火災予防条例が数字で決めています。
いす席の間隔も通路の幅も定員の出し方も条例の避難管理の章にあります
条例ですか。
消防法の本を見ても載っていないわけですね
消防法は収容人員の管理をせよと書くところまでで細目は市町村に任せています。
だから自分の市の条例を開く必要があります
- 収容人員の管理は消防法第8条第1項が防火管理者の業務として名指ししています
- いすの固定や間隔や通路の幅といった細目は市町村の火災予防条例の避難管理の章に書かれています
- 対象は劇場等の客席のほかキャバレー等と飲食店の客席と百貨店等の売場や展示場です
- 定員は固定式のいす席と立見席とその他の部分に分けて数えます
- 客席内の避難通路には客を収容できず定員に達したら満員札を掲げます
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目次
客席の避難管理は誰の仕事なのか

ところが法律は防火管理者の業務としてはっきり書いています。
消防法第8条第1項が防火管理者に行わせる業務を並べたなかに収容人員の管理があり施行令第3条の2第2項でも同じ言葉が繰り返されています。
さらに消防法施行規則第3条第1項第1号ヘは消防計画に定員の遵守その他収容人員の適正化に関することを定めよと求めています。
ただし何センチメートル空けるといった数字はこれらの法令には出てきません。
その細目は市町村の火災予防条例の避難管理の章に置かれているのでまずは自分の建物がある市町村の条例を開くところから始めます。
消防計画に定員の話を書けと言われた意味がやっとわかりました
書くだけでなく守らせるところまでが業務です。
まずは自分の市の火災予防条例で避難管理の章を探してみてください
どの建物のどの部分が対象になるのか

用途と部分と床面積で線が引かれています。
劇場や映画館や演芸場や観覧場や公会堂や集会場は劇場等としてまとめられ屋内の客席と屋外の客席で別の条文が置かれています。
キャバレー等と飲食店は階ごとに客席の床面積を合計して150平方メートル以上かどうかで判断し百貨店等は売場または展示場の床面積で判断します。
ここでいう客席とは入口ホールや事務室や売店や廊下や階段や便所や舞台部を除いた催物観覧用の部分を指し客席内の通路も客席の一部として扱われます。
床面積の集計単位を階で見るのか独立性の高い店舗ごとに見るのかは条例の解説で扱いが分かれるので所轄消防署に確かめておくと安全です。
うちは飲食店なので客席の床面積を階ごとに足せばよいのですね
そのとおりです。
まずは平面図に客席として数える範囲を色で塗ってから面積を出してください
屋内の客席にはどんな基準があるのか

いす一脚の置き方から通路の幅まで数字が並びます。
(1) いすは、床に固定すること。
(2) いす背(略)の間隔は、80センチメートル以上とし、いす席の間隔(前席の最後部と後席の最前部の水平距離をいう。略)は、35センチメートル以上とし、座席の幅は、40センチメートル以上とすること。
(3) 立見席の位置は、客席の後方とし、その奥行は、2.4メートル以下とすること。
(4) 客席(最下階にあるものを除く。)の最前部及び立見席を設ける部分とその他の部分との間には、高さ75センチメートル以上の手すりを設けること。
いすを床に固定するのは逃げるときに倒れたいすが通路をふさぐことを防ぐためです。
座席の幅40センチメートルは一脚の幅ではなく入場者一人当たりの占有幅を指すので長いすでは幅を40センチメートルで割った人数までしか座らせられません。
立見席を後方に限り奥行を2.4メートル以下とするのは座っている人の後ろに立ち止まる人があふれないようにするためです。
また客席の避難通路にはいす席の並びごとに縦通路と横通路を保有しそれらを避難口に直通させることまで求められています。
いすが移動式でどうしても固定できない場合は基準の特例の規定がありますが認めるのは消防機関であって関係者や興行主が自分で判断できるものではありません。
長いすだから何人でも座れるというわけではないのですね
幅を40センチメートルで割った人数までです。
2メートルの長いすなら5人が上限という数え方になります
定員はどう数えて何を掲げるのか

数え方も掲示の仕方も条文に書かれています。
(1) 客席の部分ごとに、次のアからウまでによって算定した数の合計数(以下「定員」という。)をこえて客を入場させないこと。
ア 固定式のいす席を設ける部分については、当該部分にあるいす席の数に対応する数。この場合において、長いす式のいす席にあっては、当該いす席の正面幅を40センチメートルで除して得た数(1未満のはしたの数は、切り捨てるものとする。)とする。
イ 立見席を設ける部分については、当該部分の床面積を0.2平方メートルで除して得た数
ウ その他の部分については、当該部分の床面積を0.5平方メートルで除して得た数
(2) 客席内の避難通路に客を収容しないこと。
(3) 1のます席には、屋内の客席にあっては7人以上、屋外の客席にあっては10人以上の客を収容しないこと。
(4) 出入口その他公衆の見やすい場所には、当該劇場等の定員を記載した表示板を設けるとともに、入場した客の数が定員に達したときは、直ちに満員札を掲げること。
固定式のいす席は席の数で立見席は床面積を0.2平方メートルで割った数でそれ以外の部分は床面積を0.5平方メートルで割った数を出して足し上げます。
ここで落とし穴になるのが第2号で客席内の通路には客を入れられません。
基準を上回る余裕のある幅で通路を取っていてもその余りの部分を立見席や補助いす席に流用することはできないという意味です。
そして定員を記載した表示板を出入口など公衆の見やすい場所に設け定員に達したら直ちに満員札を掲げることまでが条文の求めるところです。
講演会や発表会のたびに補助いすを通路に並べている運用があるならそこはすぐに見直す必要があります。
満席のときに通路へパイプいすを足すのは、うちでもよくやっていました
それは条文が名指しで禁じている部分です。
まずは定員を計算し直して当日の受付で止められる体制にしましょう
明日からなにを確認すればよいのか

手順にしておけば毎回迷わずに済みます。
- 自分の建物がある市町村の火災予防条例を開き避難管理の章の条番号を控える
- 平面図に客席または売場として数える範囲を塗り床面積を出す
- いす背の間隔といす席の間隔と座席の幅と通路の幅を実際に測る
- 部分ごとに定員を計算して合計し消防計画の収容人員の欄と突き合わせる
- 定員を記載した表示板と満員札を用意し受付の担当者に渡す
条例の条番号は市町村ごとに違うので控えておくと立入検査で聞かれたときにすぐ答えられます。
実測はメジャー一本でできる作業なので催物の前日に通路の幅を確かめる習慣をつけると当日の混乱が減ります。
なお防火管理上必要な業務が法令や消防計画のとおり行われていないと認められた場合は消防長または消防署長が管理権原者に対して必要な措置を講ずべきことを命ずることができます。
客席の避難管理は消防計画に書いて終わりではなく当日の運用まで含めて業務だと考えてください。
メジャーで測って表示板を作るところまでやってみます
それで十分です。
条番号と実測値を控えた紙を消防計画に添えておくと次の担当者も助かります
よくある質問
まとめ
条例を開いて実測するところから始めます
その一歩で十分です。
客席の避難管理でお困りのことがあれば㈱防災屋でもご相談を承っています
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第4項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2第2項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号ヘ
- 大分市火災予防条例第35条・第36条・第36条の2・第37条・第38条・第39条および同解説(大分市消防局)
- 札幌市火災予防条例第57条(劇場等の屋内の客席)
- 広島市火災予防条例第47条(劇場等の客席)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





