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自衛消防組織の本部隊はどう鍛えればよいのか|シナリオ非提示型図上訓練の進め方と消防計画への書き方を解説

自衛消防組織の本部隊を鍛えるシナリオ非提示型図上訓練を解説する記事のアイキャッチ

避難訓練は毎年きちんと実施している。
それでも本番になると本部隊が固まってしまう。
台本のとおりに動く訓練だけでは状況判断の力までは育ちにくいからです。
この記事では台本を配らないシナリオ非提示型図上訓練を消防計画にどう位置づけるのかを条文と消防庁のガイドラインから整理します

うちのビルは毎年、全館の避難訓練をやっています。
ただ放送を流して階段を下りるだけで終わってしまって。

その形だけだと指揮する側の力は伸びにくいです。
消防庁のガイドラインは机の上で状況を出し合う図上訓練をすすめています。

机の上でやるものが訓練になるのでしょうか。
実際に人を動かさないと意味がない気がします。

省令は訓練の種類までは縛っていません。
避難訓練とは別に、図上訓練を消防計画へ書き足すことができます。

この記事の結論
  • 訓練の受け皿は消防法施行規則第51条の8第1項第一号ホで種類までは限定されていません
  • ガイドラインは本部隊を対象にしたシナリオ非提示型図上訓練を記載することが特に望ましいとしています
  • 参加者をプレイヤーと進行役に分け、あらかじめ台本を見せずに状況を付与します
  • 実施場所は防災センターが望ましく時間は30分から1時間程度で1か月に1回程度とされています
  • 訓練のあとはプレイヤーと進行役で対応を検証し消防計画の見直しにつなげます

訓練の目標を決め状況を書いた札を作り防災センターで行い対応を検証して残す流れを並べた図解

シナリオ非提示型図上訓練とはどんな訓練なのか

机に広げた平面図を囲んで四人の隊員が立ち後ろに画面を並べた棚を置いたイラスト
まず、この訓練が何を指すのかを押さえます。
図上と聞くと机上の勉強会のように見えますが、狙いはまったく違うところにあります。
消防法施行規則第51条の8第1項第一号ホ 避難の訓練その他防災管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)第3 2(1)目的 実災害に近い場面を想定して、訓練参加者が与えられる役割で災害を模擬的に体験し、付与される災害状況に応じた状況判断を行うシナリオ非提示型による図上訓練を行い、自衛消防組織の本部隊の状況判断・指揮能力等を向上させることとする。
台本を配らない訓練です
省令が求めているのは避難の訓練その他防災管理上必要な訓練の定期的な実施で、種類をひとつに限っていません。
ガイドラインが図上訓練で伸ばそうとしているのは、決められた手順をなぞる速さではなく状況判断と指揮の力です。
参加者は自分の役割だけを与えられ、次に何が起きるかを知らされないまま対応を求められます。
毎年の避難訓練とは別のものだと考えると、消防計画のどこに足すかが見えてきます。

訓練といえば避難訓練しか思いつきませんでした。
ほかの形も入るのですね。

入ります。
省令の言葉はその他防災管理上必要な訓練なので、幅があります。

どんな建物でこの訓練が特に望まれるのか

高いタワーと低い建物を短い渡り廊下でつなぎ前の広場に六人が立っているイラスト
次に、どの規模の建物が名指しされているのかを見ます。
自衛消防組織そのものの設置基準とは別に、ガイドラインは独自の区分を置いています。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)第3 1 超大規模防火対象物等とは 超大規模防火対象物等とは、「超大規模防火対象物」及び「大規模、高層の建築物が地下部分や駅施設等を介して複雑に接続された超大規模な建築物群」のことをいい、「超大規模防火対象物」とは、自衛消防組織の設置義務対象のうち、以下の全てに該当する防火対象物とする。(略)(2) 防火対象物全体の収容人員が10,000人以上であること。(3) 高さ200m以上又は延べ面積200,000㎡以上の防火対象物であること。
三つの条件を全部満たす建物が名指しされています
用途は特定防火対象物と駅舎と空港のいずれかで、そこに収容人員10,000人以上と、高さ200メートル以上または延べ面積200,000平方メートル以上が重なります。
自衛消防組織を置くこと自体は消防法施行令第4条の2の4の規模で決まり、防災管理の側は同令第46条がこれを引いています。
ただしガイドラインは、その他の大規模防火対象物についても関係する部分を適宜記載することが望ましいとしています。
自分の建物が三つを満たさなくても、読み飛ばしてよい話ではないということです。

うちは高さも面積もそこまでではありません。
関係のない話でしょうか。

そうとは限りません。
ガイドラインはその他の大規模防火対象物にも適宜記載することが望ましいと書いています。

図上訓練は誰がどう進めるのか

札を掲げる進行役の机から矢印を引き平面図を囲む三人の隊員へつないだイラスト
ここからが実施要領です。
人の分け方と、場所と時間と回数まで具体的に書かれています。
消防法施行規則第51条の10第1項第二号 自衛消防組織の要員に対する教育及び訓練に関すること。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)第3 2(2)実施内容 ア 自衛消防組織の本部隊(プレイヤー)と進行を管理するコントローラーとに分かれ、予想される災害時の状況、事案等を記述した訓練シナリオ(状況付与)に沿って進行する。(略)オ 訓練実施後、自衛消防組織の本部隊(プレイヤー)とコントローラーの間で、プレイヤーの対応について検証を行う
役を二つに割るところから始まります
動く側がプレイヤーで、時間を追って仮想の被害状況を出していく側が進行管理者です。
プレイヤーは本部隊のうち本部隊隊員や地区隊隊員を指揮する立場の者で、地区隊の隊長を進行役として参加させることも望ましいとされています。
実施場所は実際の災害対応を思い浮かべやすい防災センターが望ましく、業務に支障が出るときは会議室等でよいとされています。
時間は30分から1時間程度、頻度は1か月に1回程度が目安なので、年に一度の大がかりな行事にしなくてよいということです。

本部隊だけで三十分なら回せそうです。
会議室でもよいというのは助かります。

そのとおりです。
まずは月に一度、短く回すほうが習熟度は上がります。

訓練の想定で見落としやすいのはどこか

表示灯が並ぶ壁の盤と机に置いた無線機を見る隊員を並べたイラスト
ここがいちばん外しやすいところです。
うまく収まる想定を作ってしまうと、訓練の意味がほとんど残りません。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)第3 2(7)訓練シナリオ また、プレイヤーの今までの訓練参加実績や災害対応経験等を考慮し、誰がプレイヤーになっても、その対応を考えるのに悩むことが予想される、以下の例のようなシビアな想定を複数盛り込むことが望ましい。(略)(例3)情報伝達機器が使用不能となり、代替の連絡手段を確保する必要がある。
悩まない想定は訓練になりません
ガイドラインが挙げている例は、火災の発生場所が特定できない、地区隊が命令どおり動けない、情報伝達機器が使えない、本部隊の隊員の到着が間に合わない、防災センターからの避難を迫られるという五つです。
いずれも手順書のどこにも答えが書かれていない場面で、だからこそ判断する練習になります。
想定そのものも、大規模地震に伴い複数の火災が発生し多数の避難者が生じるといった困難な対応が予想されるものを採ることとされています。
館内放送の使い方や各階地区隊の動かし方など、自分の建物の特徴的な事項を織り込むと訓練が現実に近づきます。

いつも段取りどおりに終わる訓練でした。
わざと詰まる場面を入れるという発想がありませんでした。

そこが図上訓練の値打ちです。
答えのない場面を出すために進行役を別に立てます。

明日からなにをすればよいのか

バインダーと書類を置いた机の左に記録係が立ち右に空欄の表を掲げた板を置いたイラスト
最後に、消防計画へ落とすところまで進めます。
書き足す先は訓練の号と、その結果を扱う号の二つです。
消防法施行規則第51条の8第1項第一号ト ホに掲げる訓練の結果を踏まえた防災管理に係る消防計画の内容の検証及び当該検証の結果に基づく当該消防計画の見直しに関すること。
訓練は実施して終わりではありません
第一号ホで種類と定期的な実施を、第一号トでその結果を踏まえた検証と見直しを書く決まりになっています。
明日からの一手としては、本部隊の名簿を開いて誰がプレイヤーで誰が進行役かを決め、月のどこで30分取るかを先に押さえます。
次に、自分の建物で答えの出ない場面を三つほど書き出して状況付与の札にしておくと、その日のうちに回せます。
実施したら気づいたことを記録に残し、消防計画の見直しが必要かどうかまで確かめて一巡です。

名簿と札から始めればよいのですね。
今月の予定に三十分だけ入れてみます。

十分な一歩です。
回してみて出た気づきを見直しまで結ぶと制度どおりになります。

よくある質問

Q図上訓練をすれば避難訓練は省けますか?
A省けません。消防法施行令第48条第2項が消防計画に基づく避難の訓練の実施を求めており、消防法施行規則第51条の8第3項は年1回以上と回数まで定めています。図上訓練はこれに代えるものではなく、避難訓練とは別に加えるものとして読むのが素直です。
Q超大規模防火対象物に当たらない建物でもやる意味はありますか?
Aガイドラインは、その他の大規模防火対象物についてもこの訓練の実施について関係する部分を適宜記載することが望ましいとしています。名指しの三つの条件を満たさない建物でも取り入れてよいという書き方です。どこまで消防計画へ書くかは所轄消防署にご確認ください。
Q図上訓練も消防機関へ事前に通報が必要ですか?
A消防法施行規則第51条の8第4項が準用しているのは、同条第3項の避難訓練を実施する場合についてです。図上訓練そのものについて通報を求める規定は置かれていません。実際の取扱いは所轄消防署にご確認ください。
Q進行役は誰が務めればよいですか?
Aガイドラインは、各施設の実情に応じて地区隊の隊長をコントローラーとして参加させることが望ましいとしたうえで、本部隊の隊員が代役することも可能としています。指揮を補佐する立場の者をプレイヤーとして加えることも挙げられています。

まとめ

訓練の受け皿は第51条の8第1項第一号ホで種類は限定されていません
ガイドラインは本部隊を対象にした図上訓練の記載が特に望ましいとしています
名指しされているのは超大規模防火対象物等で三つの条件を全部満たすものです
その他の大規模防火対象物も関係する部分を適宜記載することが望ましいとされます
参加者はプレイヤーと進行管理者に分かれ台本を見せずに状況を付与します
防災センターで30分から1時間程度を1か月に1回程度が目安です
実施後は対応を検証し消防計画の見直しまで結びます

避難訓練だけで満足していたのがよくわかりました。
まず本部隊で一度回してみます。

その一回が指揮の力になります。
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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の5・第36条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4・第4条の2の6・第45条・第46条・第48条・第49条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第11項・第51条の8第1項第一号ホ及びト・同条第3項及び第4項・第51条の10第1項
  • 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)第3
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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