建物の屋上に細い金属の棒が立っているのを見かけたことがあると思います。
あれは避雷設備と呼ばれ、落雷の電流を安全に地中へ流すために設けられています。
高さが一定を超える建物には設置が義務づけられていますが、その根拠は消防法ではなく建築基準法です。
この記事では避雷設備がどの建物から必要になるのかと点検の義務までを条文から解説します。
屋上の避雷針を誰が点検するのか考えたことがありませんでした。
設置を義務づけているのは建築基準法です。
点検の決まりのほうは火災予防条例が持っています。
うちの建物が対象なのかどうかも分かっていません。
条文には高さ20メートルという線が引かれています。
そこが今日いちばんお伝えしたいところです。
この記事の結論
- 高さ20メートルをこえる建築物には有効に避雷設備を設けなければなりません。(建築基準法第33条)
- 保護するのは建物全体ではなく20メートルをこえる部分です。(建築基準法施行令第129条の14)
- 構造は国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものか大臣の認定を受けたものにします。(同令第129条の15第1号)
- 位置と構造は消防長が指定する日本産業規格に適合させます。(火災予防条例(例)第16条第1項)
- 設置の届出は要りませんが点検の結果を記録し保存する義務があります。(同条第2項)
▼

目次
避雷設備はどんな設備として扱われるのか

入口は消防法第9条で、条文の言い回しをよく読むと理由が見えてきます。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
条文は「その使用に際し、火災の発生のおそれのある設備」という枠をもうひとつ持っており、火災予防条例(例)はこの枠を扱う節のなかに第16条として避雷設備を置いています。
同じ節には炉やふろがまやネオン管灯設備が並んでおり、位置と構造と管理の基準を並べるという条文の作りも共通しています。
落雷は建物の外から火災を起こす原因になるため、電流を安全に地中へ逃がす設備を条例が正面から見ているということになります。
ただし国の省令が挙げる対象火気設備等の21種類に避雷設備は入っておらず、この条文は条例そのものが持っている基準です。
火を使わないのに火を使う設備の節にあるのですね。
火災のおそれがある設備という枠に入っています。
次は対象になる建物を見ます。
どの建物から避雷設備が必要になるのか

条文は高さで線を引いており、守る範囲まで施行令が決めています。
建築基準法(昭和25年法律第201号)第33条(避雷設備) 高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の14(設置) 法第33条の規定による避雷設備は、建築物の高さ二十メートルをこえる部分を雷撃から保護するように設けなければならない。
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の14(設置) 法第33条の規定による避雷設備は、建築物の高さ二十メートルをこえる部分を雷撃から保護するように設けなければならない。
条文は「こえる」と書いているので、高さが20メートルちょうどの建築物はこの規定の対象になりません。
守る範囲についても令第129条の14が20メートルをこえる部分と限っており、建物のすべてを保護対象にしているわけではありません。
法第33条にはただし書があり、周囲の状況によつて安全上支障がない場合は設けなくてよいとされています。
自分の建物が対象かどうかは、まず建築時の図面や検査済証で高さと避雷設備の有無を確かめるところから始まります。
高さで決まるので図面を見れば分かりそうです。
建築時の書類に残っていることが多いです。
次は位置と構造の基準を見ます。
位置と構造にはなにが求められるのか

条例は規格への適合を求め、施行令は構造の中身を決めています。
火災予防条例(例)第16条(避雷設備) 避雷設備の位置及び構造は、消防長が指定する日本産業規格(産業標準化法(昭和24年法律第185号)第20条第1項の日本産業規格をいう。以下同じ。)に適合するものとしなければならない。
建築基準法施行令第129条の15(構造) 前条の避雷設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。 一 雷撃によつて生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。 二 避雷設備の雨水等により腐食のおそれのある部分にあつては、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置を講じたものであること。
建築基準法施行令第129条の15(構造) 前条の避雷設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。 一 雷撃によつて生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。 二 避雷設備の雨水等により腐食のおそれのある部分にあつては、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置を講じたものであること。
条例(例)第16条第1項が求めているのは消防長が指定する日本産業規格への適合で、どの規格を指定するかは市町村にゆだねられています。
建築の側も令第129条の15第1号で国土交通大臣が定めた構造方法か大臣の認定によるとしており、具体の仕様は条文の外にある告示や認定で決まる作りです。
第2号の腐食は雨水にさらされる部分についての基準で、屋上や外壁を通る部分がここに当たります。
突針だけを見て終わらせず、外壁を降りる導線と地中の接地の部分まで含めて一つの設備だと考えてください。
屋上の棒だけの話ではないのですね。
電流が地面へ抜けるまでが一つの設備です。
次は見落としやすいところを見ます。
実務で見落としやすいのはどこか

火災予防条例(例)第44条の各号に避雷設備は出てきません。
火災予防条例(例)第44条(火を使用する設備等の設置の届出)(抜粋) 火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備のうち、次の各号に掲げるものを設置しようとする者は、あらかじめ、その旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。(略) 十三 蓄電池設備(蓄電池容量が20キロワット時以下のものを除く。) 十四 設備容量2キロボルトアンペア以上のネオン管灯設備 十五 水素ガスを充填する気球
第44条が並べているのは炉から水素ガスを充填する気球までで、避雷設備はどの号にも出てきません。
同じ節にある変電設備や蓄電池設備やネオン管灯設備には届出の号があるのに、避雷設備にだけ届出の入口が無いという形です。
罰則の側も同じで、条例(例)第49条が罰金の対象として挙げるのは第30条・第31条・第33条・第34条・第42条の3第2項だけで第16条は入っていません。
届出も罰則も無いために存在ごと忘れられやすいのですが、次に見るとおり管理の義務そのものははっきり残っています。
届出が無いので今まで話題にも出ませんでした。
届出が無いことと基準がかからないことは別です。
次は残っている義務を見ます。
明日からなにを確認すればよいのか

条例(例)第16条第2項が変電設備の規定を準用しています。
火災予防条例(例)第16条第2項 避雷設備の管理については、第11条第1項第9号の規定を準用する。
同条例第11条第1項第9号 必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに必要に応じ設備の各部分の点検及び絶縁抵抗等の測定試験を行わせ、不良箇所を発見したときは、直ちに補修させるとともに、その結果を記録し、かつ、保存すること。
同条例第11条第1項第9号 必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに必要に応じ設備の各部分の点検及び絶縁抵抗等の測定試験を行わせ、不良箇所を発見したときは、直ちに補修させるとともに、その結果を記録し、かつ、保存すること。
準用される第9号が求めているのは点検と絶縁抵抗等の測定試験を行わせること、不良箇所を見つけたら直ちに補修させること、そして結果を記録して保存することの三つです。
行わせる相手は消防長が指定するものとされているので、誰でもよいわけではありません。
明日からの順番としては、建物の高さが20メートルをこえるかを図面で確かめ、次に自分の市町村の火災予防条例で避雷設備の条文の番号を開き、最後に直近の点検記録が手元に保存されているかを見るという三つになります。
条例(例)は消防庁が示した準則で実際に効力を持つのは自分の市町村の条例です。
まず点検記録が残っているかを探してみます。
そこが出発点になります。
記録が見当たらなければ管理の担当と契約先を先に確かめてください。
よくある質問
Q高さが20メートルちょうどの建物にも避雷設備は必要ですか?
A建築基準法第33条は高さ二十メートルをこえる建築物と書いています。こえるという言い方なので、高さが20メートルちょうどの建築物はこの条文の対象に入りません。増築や屋上への工作物の設置で高さが変わることがあるため、変更のたびに確かめてください。
Q避雷設備を設けるときに消防への届出は必要ですか?
A火災予防条例(例)第44条が届出の対象として挙げているのは炉から水素ガスを充填する気球までの各号で、避雷設備は挙げられていません。ただし届出が要らないことと基準がかからないことは別で、位置と構造と管理の基準は第16条がそのまま定めています。
Q点検は自社の担当者が行ってもよいのですか?
A準用される第11条第1項第9号は必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに行わせると定めています。どのような者が指定を受けているかは市町村ごとに異なるため、自分の市町村の条例と運用を確かめてください。
Q避雷設備の基準を守っていないと罰則はありますか?
A火災予防条例(例)第49条が罰金の対象として挙げているのは第30条・第31条・第33条・第34条・第42条の3第2項で、第16条は含まれていません。ただし設置そのものは建築基準法第33条の義務であり、消防法第4条の立入検査で管理の状況を確かめられる場面でもあります。
まとめ
✔高さ20メートルをこえる建築物には有効に避雷設備を設けなければなりません。
✔保護するのは建物全体ではなく20メートルをこえる部分です。
✔周囲の状況によつて安全上支障がない場合はこの限りでないとされています。
✔構造は国土交通大臣が定めた構造方法か大臣の認定によります。
✔位置と構造は消防長が指定する日本産業規格に適合させます。
✔火災予防条例(例)第44条の届出の各号に避雷設備は入っていません。
✔点検と測定試験を行わせ結果を記録し保存することまでが義務です。
屋上の設備まで手が回っていませんでした。
高さと記録の二つを押さえれば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第33条(避雷設備)
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の14(設置)・第129条の15(構造)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第4条・第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条(対象火気設備等の位置、構造及び管理に関する条例の基準)
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官)第11条第1項第9号・第16条・第44条・第49条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





