ガスの臭いがするという通報で消防が駆けつけたものの
まだ火は出ていないのに建物の周りに規制の線が引かれ
テナントの関係者まで中に入れないという場面があります。
消防法には火が出る前の段階で区域を設定できる仕組みが置かれています。
うちのビルの前でガス漏れがあったとき消防に止められたことがあります。
あれは何の権限だったのでしょうか。
消防法第23条の2の火災警戒区域ですね。
火事の現場に張られる線とは別の制度です。
火が出ていないのに区域が作れるのですか。
そんな仕組みがあるとは知りませんでした。
ガスや危険物が漏れて火災のおそれが著しく大きいときに設定できます。
設定するのは消防長か消防署長です。
- 火災警戒区域は火が出る前に設定される区域です。ガスや火薬や危険物の漏えいなどの事故で火災が発生するおそれが著しく大であることが要件になります。(消防法第23条の2第1項)
- 設定できるのは消防長又は消防署長です。火災の現場に消防警戒区域を設定する消防吏員や消防団員とは主体が違います。(消防法第28条第1項)
- 火災警戒区域では火気の使用そのものを禁止できます。退去の命令と出入りの禁止や制限に火気の使用の禁止が加わるのが特徴です。
- 区域に入れる人は消防法施行規則第45条第1項に6つ並んでいます。建物の関係者もそこに入っています。
- 現場の状況によっては関係者にも退去が命じられます。従わなければ30万円以下の罰金又は拘留の対象です。(消防法第44条第19号)
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目次
火災警戒区域とはどんなときに設定されるのか

火災警戒区域は火事が起きたあとの制度ではありません。
ガス、火薬又は危険物の漏えい、飛散、流出等の事故が発生した場合において、当該事故により火災が発生するおそれが著しく大であり、かつ、火災が発生したならば人命又は財産に著しい被害を与えるおそれがあると認められるときは、消防長又は消防署長は、火災警戒区域を設定して、その区域内における火気の使用を禁止し、又は総務省令で定める者以外の者に対してその区域からの退去を命じ、若しくはその区域への出入を禁止し、若しくは制限することができる。
ひとつは事故によって火災が発生するおそれが著しく大であること、もうひとつは火災になったときに人命又は財産へ著しい被害を与えるおそれがあることです。
片方だけでは足りず、両方がそろってはじめて区域を設定できると条文は書いています。
きっかけになる事故はガスに限られず、火薬や危険物の漏えい・飛散・流出なども並んでいます。
自分の建物でガスの臭いや危険物の漏れに気づいたら、区域が設定される場面が始まったと考えて動くのが実務です。
おそれが大きいというだけでは足りないのですね。
2つそろって初めてということですか。
そのとおりです。
判断するのは現場の消防長か消防署長なので建物側で線引きを争う場面ではありません。
火災の現場に設定される区域とはなにが違うのか

火災の現場に設定される消防警戒区域と並べると輪郭がはっきりします。
火災の現場においては、消防吏員又は消防団員は、消防警戒区域を設定して、総務省令で定める者以外の者に対してその区域からの退去を命じ、又はその区域への出入を禁止し若しくは制限することができる。
ひとつ目はタイミングで、消防警戒区域は火災の現場に設定されるのに対し、火災警戒区域は火が出る前の事故の段階で設定されます。
ふたつ目は設定する人で、消防警戒区域は消防吏員又は消防団員が設定しますが、火災警戒区域は消防長又は消防署長です。
みっつ目は中身で、消防警戒区域にあるのは退去の命令と出入りの禁止や制限だけですが、火災警戒区域にはそれに加えて火気の使用の禁止があります。
漏れたガスに着火源を近づけないという目的があるので、火気の使用の禁止という手が加わっていると読めます。
まだ燃えていないから火気を止める必要があるのですね。
言われてみれば当たり前でした。
はい。
区域の中では喫煙や火を使う作業そのものが禁止の対象になります。
区域の中に入れるのは誰と決まっているのか

総務省令で定める者という条文の受け皿は施行規則にあります。
法第二十三条の二第一項の命令で定める者は、次の各号に掲げる者とする。
一 火災警戒区域内にある消防対象物又は船舶の関係者
二 事故が発生した消防対象物又は船舶の勤務者で、当該事故に係る応急作業に関係があるもの
三 電気、ガス、水道等の業務に従事する者で、当該事故に係る応急作業に関係があるもの
四 医師、看護師等で、救護に従事しようとする者
五 法令の定めるところにより、消火、救護、応急作業等の業務に従事する者
六 消防長又は消防署長が特に必要と認める者
区域の中にある建物の関係者は第1号でまず挙げられています。
第2号から第5号までは応急作業や救護に関わる人で、事故が起きた建物の勤務者、電気やガスや水道の担当者、医師や看護師が並びます。
ここに並んでいない人は、第6号で消防長又は消防署長が特に必要と認めない限り中に入れません。
消防警戒区域の一覧を定めた施行規則第48条第1項には報道に関する業務に従事する者がありますが、火災警戒区域の一覧には無いのも読み取れる違いです。
関係者が入っているのでひとまず安心しました。
建物の鍵を開ける人が要りますからね。
ただしこの条文には続きがあります。
次の見出しで同じ条の第2項を見てください。
建物の関係者でも退去を命じられることがあるのか

一覧に載っているからといって必ず中に入れるわけではありません。
消防長又は消防署長は、現場の状況により必要があると認める場合は、前項第一号から第四号まで及び第六号に掲げる者の全部又は一部に対して、火災警戒区域からの退去を命じ、又はその区域への出入を禁止し、若しくは制限することができる。
消防法第四十四条
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。
十九 第二十三条の二の規定による火気の使用の禁止、退去の命令又は出入の禁止若しくは制限に従わなかつた者
第2項が挙げているのは第1号から第4号までと第6号なので、第1号の関係者も含まれています。
外れているのは第5号の、法令にもとづいて消火や救護や応急作業に従事する人だけです。
そして命令や制限に従わなかった人は、消防法第44条第19号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります。
両罰規定を定める消防法第45条第3号はこの第19号を挙げていないので、法人にまで罰金が科される仕組みにはなっていません。
関係者だから通してもらえると思い込んでいました。
現場でもめたら大変です。
そこが落とし穴です。
鍵や図面を渡す担当を先に決めておけば中に入らずに済ませられる場面が増えます。
ガス漏れの事故が起きたら建物側はなにをすればよいのか

区域が設定される前にやることが条文に置かれています。
製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、危険物の流出その他の事故が発生したときは、直ちに、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去その他災害の発生の防止のための応急の措置を講じなければならない。
同条第二項
前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を消防署、市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に通報しなければならない。
危険物の事故については、発見した人に直ちに通報する義務が置かれています。
そのうえで、区域が設定されたときに困らないよう建物側で決めておくとよいことが3つあります。
ひとつ目は鍵と図面を持ち出せる場所に置くこと、ふたつ目は応急作業に立ち会う担当者を決めておくこと、みっつ目はテナントへの連絡経路を一本にしておくことです。
区域が設定されている間は建物へ戻れない前提で、外側で回せる段取りを先に作っておくのが実務になります。
外で回せる段取りを先に作っておくということですね。
連絡経路までは決めていませんでした。
そこが最初の一歩です。
テナントの数が多い建物ほど連絡の一本化が効きます。
よくある質問
まとめ
ガス漏れのときの連絡経路を今日のうちに一本にまとめます!
区域が設定されても外側で動ける段取りが要ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法第23条の2第1項及び第2項
- 消防法第28条第1項
- 消防法第16条の3第1項及び第2項
- 消防法第44条第19号及び第21号
- 消防法第45条第3号
- 消防法施行規則第45条(火災警戒区域出入者)
- 消防法施行規則第48条(消防警戒区域出入者)
- e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





