大きな地震が起きると、エレベーターは安全装置が働いて自動で止まります。
止まった位置によっては、中にいた人がそのまま閉じ込められます。
ところが消防法にも施行令にも施行規則にも、エレベーターの閉じ込めを正面から定めた条文はありません。
それでも閉じ込めへの対応は防災管理の消防計画に書いておく事項です。
地震でエレベーターが止まったら保守会社を呼ぶ、としか決めていません。
それだけでは足りないのでしょうか。
呼ぶまでの間に建物側がやることが残っています。
地震では安全装置が働いて何台も同時に止まるからです。
同時にというのは考えていませんでした。
うちの建物は台数が多いので、どこから見に行くかも決まっていません。
その順番こそ計画に書くところです。
順番と担当を決めておけば、当日は迷わず動けます。
- 地震で止まったエレベーターの閉じ込めへの対応は消防計画に書く事項です
- 受け皿は消防法施行規則第51条の8第1項第二号ホの応急措置です
- 止まったら停止位置と中の人の有無を確かめ保守会社への連絡体制につなぎます
- 保守会社の技術員以外が救出できるのは三つの条件を満たしたときだけです
- 保守会社の安全確認が済むまでは使用停止にすることも計画に書きます
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目次
地震でエレベーターが止まると建物では何が起きるのか

問題は止まったあとに人が残るかどうかです。
(一定割合で発生する)エレベーター等における閉じ込め事案について速やかに状況の把握及び救出等の応急措置ができること。
エレベーター停止・閉じ込めは比較的低い震度でも同時に発生する場合があることに留意が必要である。
ガイドラインは閉じ込めを一定の割合で発生するものとして扱い、状況の把握と応急措置ができることを体制の目標に挙げています。
しかも大きく揺れた建物だけの話ではなく、比較的低い震度でも複数のかごが同時に止まることがあります。
台数のぶんだけ現場が同時に生まれるので、一台ずつ順に見に行く前提の計画では回りません。
まずは自分の建物に何台あるかと、どのかごから確認に向かうかを紙に書き出してみてください。
止まるのは大きな地震のときだけだと思っていました。
台数のぶん現場が増えるという見方は初めてです。
その見方ができれば人の割り振りが決まります。
救出に当たる班の数は、想定される要救出箇所の数から考えるのが早道です。
エレベーターの閉じ込めは消防計画のどの項目に書くのか

それでも書く場所は決まっています。
防災管理は消防法第36条第1項が第8条から第8条の2の2までを読み替えて準用する仕組みで、消防法施行令第45条第一号が対象となる災害として地震を挙げています。
その地震の欄が消防法施行規則第51条の8第1項第二号で、閉じ込めからの救出は同号ホの応急措置に収まります。
非常開錠キーや照明のような救出に使う道具は、同号ハの資機材の点検及び整備の側で管理します。
自分の計画の応急措置の欄を開いて、救出の対象に閉じ込めが入っているかを確かめてください。
救出と書いてあるのは倒れた棚の下から助ける話だと思っていました。
かごの中の人も同じ欄なのですね。
条文が名前を出さない項目なので見落とされがちです。
自衛消防組織の側にも在館者の救出及び救護に関する業務の要員を置く定めがあります。
閉じ込めが起きたら誰がどの順番で動くのか

ガイドラインは活動要領として順番まで示しています。
活動要領・エレベーターが停止した場合は、停止位置、閉じ込められた人の有無等を確認する。
エレベーターの管理会社に連絡する。エレベーター管理会社は、閉じ込められた人がいるところを優先した活動を行う。
エレベーター内部にインターホンで連絡し、エレベーター会社に連絡した旨などを説明し、落ち着かせる。
エレベーター管理会社又は消防機関が到着した場合は、エレベーターの停止位置等の情報提供を行い、現場へ誘導を行う。
最初にやるのは停止位置と中の人の有無の確認で、これが決まらないと保守会社も消防機関も優先順位を付けられません。
次が連絡で、そのあとにインターホンで中の人へ状況を伝えて落ち着いてもらいます。
到着した保守会社や消防隊には停止位置を渡し、現場まで誘導するところまでが建物側の役目です。
この四つを消防計画の応急措置の欄に並べ、それぞれ誰がやるかを名前ではなく役職と班で書いておいてください。
つまり確認と連絡と声かけと誘導の四つですね。
これなら訓練の項目にそのまま使えます。
そのまま使えます。
声かけを抜くと中の人が自力で出ようとするので、そこは省かないでください。
保守会社の技術員以外が救出してよいのはどんなときか

条件を満たさないまま扉を開けると、救出が事故に変わります。
以下の条件を満たした場合、閉じ込め救出の具体的手順について教育訓練を受けた専任技術者が閉じ込め救出作業を行える場合がある。
①エレベーターシャフト内に立ち入らず、乗場扉開錠により救出可能な位置に停止した場合
②防災センター等に技術者が常駐している場合
③保守会社の十分な定期訓練を受けた専任技術者が、救出手順に基づき行うこと
一つ目はかごの止まった位置の話で、昇降路の中に立ち入らずに乗場の扉を開けるだけで出られる位置に止まっていることが前提になります。
二つ目は人の話で、防災センター等に技術者が常駐していることを求めています。
三つ目は資格ではなく訓練の話で、保守会社の定期訓練を受けた専任技術者が手順に沿って行うことまでが条件です。
どれか一つでも欠ける建物は、扉に触れずに保守会社の到着を待つと決めて計画に書いてください。
うちは防災センターに技術者が常駐していません。
それなら待つと書いておけばよいということですね。
待つと決めるのも立派な取り決めです。
そのぶん声かけと情報提供を手厚く書いておけば計画としては十分に成り立ちます。
明日からなにを確認すればよいのか

どれも新しい設備を買わずに始められます。
エレベーター会社との連絡体制、復帰対応について記載する。
エレベーター会社の安全確認までは使用停止させることを記載する。
エレベーター会社の行うエレベーター閉じ込め時の救出講習等に参加し、救出能力の向上を図ることを記載する。
一つ目は保守会社の連絡先で、平日の日中だけでなく夜間と休日にかかる先まで一覧にして計画に付けます。
二つ目は使用停止の取り決めで、安全確認が済むまで使わせないことと、その判断を誰が出すかを書きます。
三つ目は保守会社が行う救出講習への参加で、これは消防法施行規則第51条の8第1項第一号ニの教育と同号ホの訓練に位置づけられます。
書き換えた内容は管理権原者の指示を受けて確定し、消防計画を変更したときは所轄消防長または消防署長へ届け出ます。
連絡先の一覧なら今日のうちに作れます。
夜間の窓口が違うことも確かめておきます。
そこが分かれ目になることは多いです。
一覧ができたら次の訓練に閉じ込めの想定を一つ足してみてください。
よくある質問
まとめ
待つと決めるのも取り決めだと分かって気が楽になりました。
まずは連絡先の一覧から取りかかります。
その一歩で計画はぐっと使えるものになります。
書き方や訓練の組み立てで迷われたら、㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第36条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第46条・第48条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の11・第51条の8
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





