テナントが何社も入っているビルで防火管理者が要るのかを聞かれることがあります。
判断の分かれ目になるのは収容人員という数字です。
複合用途の建物ではこの数字を用途ごとに出してから合算する決まりになっています。
この記事ではテナントビルの収容人員の数え方と防火管理者が必要になる人数を条文から解説します。
うちのビルは1階が店舗で上の階が事務所と住居です。
収容人員はどうやって数えればよいのでしょうか。
用途ごとに分けて数えてから足す決まりになっています。
建物をひとまとめにして床面積で割るわけではありません。
分けて数えると人数は少なくなるのでしょうか。
最後に合算しますので建物全体の人数が減るわけではありません。
分けるのは用途ごとに数え方の物差しが違うからです。
- 収容人員の算定方法は消防法施行規則第1条の3が定めています。
- 複合用途の建物は用途ごとに一の防火対象物とみなして算定した数を合算します。(消防法施行規則第1条の3第2項)
- 用途ごとに物差しが違うので同じ床面積でも出てくる人数は変わります。
- 事務所は従業者の数に来客部分の床面積を3平方メートルで割った数を足します。(同条第1項の表)
- 合算した収容人員が基準に届くと防火管理者を定める義務が生じます。(消防法施行令第1条の2第3項)
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目次
テナントビルの収容人員はどの条文で決まるのか

どこにその数え方が書かれているのかを先に押さえます。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(略)、複合用途防火対象物(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め(略)当該防火対象物について消防計画の作成(略)並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
消防法施行令第1条の2第4項
収容人員の算定方法は、総務省令で定める。
条文は政令で定めるものの管理権原者に防火管理者を定めさせると書いていて どの建物がそれに当たるのかは消防法施行令第1条の2に投げられています。
その令第1条の2は第3項で建物の区分ごとの人数を示し 第4項で数え方そのものを総務省令に投げています。
これを受けているのが消防法施行規則第1条の3です。
つまり収容人員は自分の感覚で決める数ではなく 規則の表に従って出す数だということになります。
自分の建物がどの用途に当たるのかを確かめてから表を読んでください。
数え方まで条文で決まっていたのですね。
規則第1条の3の表に用途ごとの物差しが並んでいます。
まずは自分の建物の用途を確かめてください。
用途ごとに分けて数えて合算するとはどういうことか

代わりに用途ごとに分けて数える決まりが別に置かれています。
令別表第一(16)項及び(16の2)項に掲げる防火対象物については、令第1条の2第4項の総務省令で定める収容人員の算定方法は、同表各項の用途と同一の用途に供されている当該防火対象物の部分をそれぞれ一の防火対象物とみなして前項の規定を適用した場合における収容人員を合算して算定する方法とする。
条文は同一の用途に供されている部分をそれぞれ一の防火対象物とみなすと書いています。
店舗の部分は店舗の数え方で 事務所の部分は事務所の数え方で人数を出し 最後にそれらを足すという順番です。
ここで分ける単位はテナントではなく用途である点に気をつけてください。
同じ事務所が三社に分かれて入っていても 事務所という一つのまとまりとして数えます。
テナント区画の図面を用途で塗り分けておくと そのまま計算表として使えます。
テナントの数ではなく用途の数で分けるのですね。
そのとおりです。
図面を用途で塗り分けるところから始めてください。
防火管理者が必要になるのは収容人員何人からなのか

建物の区分によって線の引かれる位置が違います。
別表第一に掲げる防火対象物(同表(16の3)項及び(18)項から(20)項までに掲げるものを除く。)のうち、次に掲げるもの
イ 別表第一(6)項ロ、(16)項イ及び(16の2)項に掲げる防火対象物(略)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が10人以上のもの
ロ 別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項イ、ハ及びニ、(9)項イ、(16)項イ並びに(16の2)項に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が30人以上のもの
ハ 別表第一(5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項から(15)項まで、(16)項ロ及び(17)項に掲げる防火対象物で、収容人員が50人以上のもの
店舗や飲食店のような特定用途が入っている複合用途の建物は(16)項イに当たり 合算した収容人員が30人以上で防火管理者が必要になります。
事務所と倉庫だけのように特定用途が入っていない建物は(16)項ロですから50人以上です。
そして(6)項ロの福祉施設の部分がある建物だけは10人以上まで線が下がります。
同じ延べ面積のビルでも 入っているテナントの顔ぶれで義務の発生する人数が変わるということです。
テナント募集の段階で用途を確かめておくと あとから慌てずに済みます。
つまり一階の店舗が入っているだけで30人の線になるのですね。
特定用途がひとつでもあれば建物全体が(16)項イです。
入居予定の業種を先に確かめておいてください。
実務で見落としやすいのはどこか

条文の文言をそのまま読むと落とし穴が見えてきます。
令別表第一(15)項に掲げる防火対象物
従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで除して得た数とを合算して算定する。
令別表第一(5)項ロに掲げる防火対象物
居住者の数により算定する。
事務所は従業者の数だけで足りると思われがちですが 条文は主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで割った数も足せと書いています。
来客用の応接室や受付の待合部分がこれに当たります。
共同住宅の部分は反対に床面積では割らず居住者の数だけで数えます。
そして(16)項イの中に(6)項ロの部分がひとつでもあると 前の見出しのとおり建物全体の基準が10人以上まで下がります。
テナントが入れ替わったときは 用途と人数の両方をその都度数え直してください。
事務所の来客部分まで数えるとは知りませんでした。
応接室や待合の面積を図面から拾ってみてください。
数人ぶん増えて基準を越えることがあります。
明日からなにを確かめればよいのか

用途の切り分けを先にやると計算は一本道になります。
(略)当該異なる二以上の用途のうちに、一の用途で、当該一の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該一の用途は、当該他の用途に含まれるものとする。
はじめに図面へテナントごとの用途を書き込み 同じ用途どうしをひとまとまりにします。
このとき他の用途の従属的な部分と認められるものは その他の用途に含めて扱う点に注意してください。
次にまとまりごとに規則第1条の3第1項の表を当てて人数を出し 最後にすべてを足します。
出た数を10人 30人 50人のどの線と比べるのかは 建物が(16)項イか(16)項ロかで決まります。
用途の切り分けに迷ったら図面を持って所轄消防署へ相談してください。
まず図面に用途を書き込むところからやってみます。
その図面は消防計画の付図としてもそのまま使えます。
用途と面積を書き添えておくと届出のときに楽になります。
よくある質問
まとめ
建物をまとめて割り算していました。
用途ごとに数え直してみます。
収容人員は防火管理者の要否を決める数字です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条(防火管理者)第1項
- 消防法施行令第1条の2(防火管理者を定めなければならない防火対象物等)第2項 第3項及び第4項
- 消防法施行規則第1条の3(収容人員の算定方法)第1項及び第2項
- 消防法施行令別表第一
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





