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地震で何か所も火が出たらどう動くのか|同時多発的出火への備えと消防計画の書き分けを解説

地震で何か所も火が出たらどう動くのかを解説する記事のアイキャッチ画像

大きな地震のあとに起きる火災は、ふだんの火災と同じようには進みません。
倒れた火気使用設備や傷んだ配線から、建物のいくつもの場所で同時に火が出ることがあるからです。
ところが消防計画を開くと、火災の項目がひとつの出火を前提にした書き方のまま残っていることがあります。
地震による出火防止への対応は消防計画に書いておく事項です

地震のときの消火のことを書こうとしたのですが、防災管理の消防計画のひな型に消火の欄がありません。
書く場所が見つからなくて止まっています。

欄が無いのは正しい姿で、消火は防火管理の側に置かれています。
防災管理の消防計画は火災以外の災害を扱うので、地震のときの消火活動は防火管理に係る消防計画へ書きます。

消防署からは、あちこちで同時に火が出たときのことまで書くように言われました。
そこまで来ると何を決めればよいのか見当がつきません。

決めるのは消火班の置き方と、手が足りないときにどの火災から消すのかという順番です。
総務省消防庁のガイドラインが、その考え方の目安を示しています。

この記事の結論
  • 地震のあとの出火への備えは、同時多発的出火への対応方法として消防計画に書いておく事項です
  • 消防法第36条第1項の読み替えで、防災管理者の業務からは消火と火気の使用の監督が外れています
  • 地震のときの消火活動は消防法施行規則第3条第1項第一号リにより防火管理に係る消防計画へ書きます
  • 初期消火班の班数は被害想定に基づく予想出火箇所数以上が目安として示されています
  • 手が足りないときは人命に影響を及ぼす場所の火災を優先すると示されています

地震のあとの同時多発的出火に備えて電源と燃料の遮断から消火班の配置までを示した図解

地震による出火防止への対応とはなにを指すのか

地震のあとに厨房の火気使用設備とボイラーを確かめる担当者のイラスト
地震のあとの火災は、揺れそのものが原因になります。
そのため備えは消すところからではなく、火を出さないところから始まります。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)本編第2 3⑶オ 地震による出火防止への対応 ・同時多発的出火への対応方法を明確化し記載する。 (例)大きな揺れがおさまった後、電源・燃料等の遮断を行う。 ・迅速な火災対応を記載する(通常火災への対応の準用)。
柱は遮断と準用の2つです
遮断は、大きな揺れがおさまった後に電源燃料を止めて、それ以上の出火をつくらないという手当てです。
準用は、火が出てしまったあとの動きをふだんの火災の手順に乗せるという意味で、消火の段取りを一から書き起こす必要はありません。
ただし乗せる先の手順が一か所の火災しか想定していなければ、そこで行き止まりになります。
まずは自分の建物で揺れたときに火の元になるものを書き出し、誰がどの順番でそれを止めに行くのかを決めてください。

揺れている最中ではなく、おさまった後に止めに行くのですね。
てっきり真っ先に走るものだと思っていました。

ガイドラインの例示も、大きな揺れがおさまった後という順番になっています。
身の安全が先で、遮断はそのあとだと計画に書き分けてください。

地震のときの消火はどちらの消防計画に書くのか

防火管理と防災管理の2冊の消防計画と消火器を並べたイラスト
同じ建物に消防計画が2つある建物では、書く場所で迷います。
迷いの元は、消防法第36条の読み替えにあります。
消防法第三十六条第一項 第八条から第八条の二の三までの規定は、火災以外の災害で政令で定めるものによる被害の軽減のため特に必要がある建築物その他の工作物として政令で定めるものについて準用する。(略) (読替表・第八条第一項)「消火、通報及び避難の訓練の実施、(略)火気の使用又は取扱いに関する監督、(略)その他防火管理上」は「避難の訓練の実施その他防災管理上」と読み替える。 消防法施行規則第三条第一項第一号リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
消火は防災管理の側から外されています
読み替えの結果、防災管理者の業務に残るのは避難の訓練その他防災管理上必要な業務で、消火と火気の使用の監督は文言ごと落ちています。
落ちているのは書き忘れではなく、防災管理が扱う災害を消防法施行令第45条第一号の地震などに限っているからです。
その代わり防火管理の側の消防法施行規則第3条第1項第一号リが、火災だけでなく地震その他の災害が発生した場合の消火活動まで受け止めています。
自分の建物の防火管理に係る消防計画を開いて、この号にあたる項目が地震でも読める文になっているかを確かめてください。

つまり防災管理の計画に消火が無いのは、抜けているのではなく分けてあるということですね。
探しても見つからないはずでした。

そのとおりです。
2冊のどちらを直すのかを先に決めておくと、改訂のたびに迷わずにすみます。

何か所も同時に火が出る前提でなにを決めておくのか

広いフロアに消火器を持った3つの組が離れて配置されているイラスト
同時多発という言葉は、人数の話に落として初めて計画になります。
ガイドラインは初期消火班の置き方に目安を示しています。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊 応急対策的事項のうち各班の任務 ・初期消火班(1班あたり2人以上が適当。目安:屋内消火栓使用可能人数以上) ・班数は被害想定に基づく予想出火箇所数以上。予防的取り組みによって予想出火箇所数を減じることが可能。 ・1班あたりの担当可能な面積の検討が必要。自動消火設備の寄与も考慮する。
班の数は想定した出火箇所の数から決まります
順番は逆にできず、先に被害想定で火の出そうな場所を数えてから、その数だけ班を置くという流れになります。
条文の側では消防法施行規則第4条の2の11第一号が、火災の初期の段階における消火活動の業務におおむね2人以上の要員を置くことを求めています。
班をいくつ置くかまでは条文が決めていないので、そこを埋めるのがガイドラインの目安と自分の建物の被害想定です。
厨房や機械室のように火の元が集まっている場所を数え、その数と手持ちの人数を並べてみてください。

数えてみると、うちは想定の箇所数のほうが班より多くなりそうです。
人を増やすしかないのでしょうか。

ガイドラインは、予防的な取り組みで予想出火箇所数を減らせるとも書いています。
転倒防止や燃料の遮断で元を減らすほうが、人を増やすより現実的なことが多いです。

実務で見落としやすいのはどこか

ガス栓とブレーカーが開いたままの壁と遮断された壁を並べたイラスト
見落としは、防災管理の消防計画だけを見ているときに起きます。
地震の項目に並ぶ言葉を確かめておきます。
消防法施行規則第五十一条の八第一項第二号ホ 地震発生時における通報連絡、避難誘導、救出、救護その他の地震による被害の軽減のための応急措置に関すること。 同項第二号ハ 地震による被害の軽減のために必要な設備及び資機材の点検並びに整備に関すること。
ここに消火という言葉はありません
並んでいるのは通報連絡と避難誘導と救出と救護で、消火は列挙から外れています。
防災管理の計画だけを点検していると、地震の出火対応がどこにも無いまま完成してしまう理由がここにあります。
もうひとつ落ちやすいのが、スプリンクラー設備が損壊した場合の想定で、ガイドラインは損壊を前提にした人的な初期消火や区画による拡大防止を書いておくよう示しています。
第二号ハの資機材の点検整備をたどって、消火器や屋内消火栓が地震のあとも使える状態かを確かめる担当を決めてください。

うちはスプリンクラー設備があるので、火が出ても自動で消えると思い込んでいました。
配管が傷んだらそこは効かないということですね。

効かない場合を想定して書いておくのがガイドラインの求めるところです。
効かなかったときに誰が消火器を持って向かうのかを、計画の中で名指ししておいてください。

明日からなにを確認すればよいのか

建物の平面図を前に消火器の配置を確かめる防火管理者のイラスト
最後に、書き足す場所と相談先を押さえておきます。
条文は誰が何をするのかまで示しています。
消防法施行規則第四条の二の十第一項第一号 火災の初期の段階における消火活動、消防機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災の被害の軽減のために必要な業務として自衛消防組織が行う業務に係る活動要領に関すること。 消防法施行令第四十八条第三項 防災管理者は、防災管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防災管理対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
書き足す先は活動要領です
まず防火管理に係る消防計画の活動要領を開き、初期消火のくだりが一か所の火災しか想定していないなら、同時に火が出た場合の一行を足します。
次に被害想定で火の元を数え、その数と初期消火班の数を並べて、足りない差を書き出します。
そのうえで手が足りないときにどの火災を先に消すのかという物差しを置き、人命に影響を及ぼす場所を優先すると決めておきます。
要員を増やす話や設備を直す話が出てきたら、消防法施行令第48条第3項にしたがって管理権原者の指示を求めてください。

活動要領を開いて、同時に火が出た場合の一行を足すところからですね。
今月の訓練の打ち合わせで出してみます。

その順番がいちばん早く形になります。
訓練では想定を2か所に増やして、班の動きが止まらないかを見てみてください。

よくある質問

Q防災管理の消防計画に消火のことを書いてはいけないのですか?
A禁じられてはいません。消防法施行規則第51条の8第1項第二号ヘが、イからホまでのほか地震による被害の軽減に必要な事項を置けるようにしているからです。ただし消火活動の根拠は防火管理の側にあるので、同じ内容を二か所に置くと改訂のときに食い違うおそれがあります。
Q初期消火班はいくつ置けばよいのですか?
A条文は班の数を定めていません。消防法施行規則第4条の2の11第一号が求めているのは、火災の初期の段階における消火活動の業務におおむね2人以上の要員を置くことです。班の数の目安は総務省消防庁のガイドラインが示しており、被害想定に基づく予想出火箇所数以上とされています。
Q自衛消防組織を置いていない建物でも同じ備えが要りますか?
A活動要領の条文は消防法施行令第4条の2の4の規模に届く建物に向けたものです。それより小さい建物でも、消防法施行規則第3条第1項第一号イの自衛消防の組織と同号リの消火活動は防火管理に係る消防計画の事項なので、地震のときの動きを書いておく必要は変わりません。
Q遮断は誰がどこまでやればよいのですか?
A条文は担当者や範囲を指定していません。ガイドラインの例示は大きな揺れがおさまった後に電源と燃料等の遮断を行うというもので、どの機器をどの順で止めるかは建物ごとに決めます。復電のときに火が出ることもあるので、止めたあと誰が戻すのかまで消防計画に書いておくと迷いません。

まとめ

地震による出火防止への対応は、遮断と通常火災への準用の2つで組み立てます
消防法第36条第1項の読み替えで、防災管理者の業務から消火は外れています
受け皿は消防法施行規則第3条第1項第一号リで、地震のときの消火活動まで含んでいます
初期消火班は被害想定で数えた予想出火箇所数以上を目安に置きます
消防法施行規則第4条の2の11第一号は消火活動の業務に2人以上の要員を求めています
手が足りないときは人命に影響を及ぼす場所の火災を優先すると示されています
要員や設備が足りない部分は管理権原者の指示を求めて決めます

2冊の書き分けがわかったので、どちらを直せばよいか迷わなくなりました。
明日、活動要領のところを開いてみます。

それで十分に前へ進みます。
書き方や訓練の組み立てで迷われたら、㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条・第36条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4・第4条の2の6・第45条・第48条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条・第4条の2の10・第4条の2の11・第51条の8
  • 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年3月)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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