発電機や変圧器を収めた電気室には、消防法施行令で水噴霧消火設備や不活性ガス消火設備等の設置が義務付けられていますが、すべての電気設備に同じ設備が必要というわけではありません。
昭和51年、消防庁は「電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて」という通達で、対象となる電気設備の範囲や床面積の算定方法、条件を満たせば大型消火器で済ませられる特例の中身を具体的に示しました。
通達が示した容量の線引きは、当時の「二酸化炭素消火設備」という呼び方こそ「不活性ガス消火設備」に変わったものの、現在の運用にもそのまま引き継がれています。
この記事では、対象になる電気設備の範囲、床面積の算定方法、そして大型消火器だけで済ませられる特例の条件を解説します。
うちのビルにも変圧器が入った電気室があるんですが、ボンベがずらっと並ぶような大掛かりな消火設備が必要なんでしょうか。
電気室の消火設備は、容量や造りによって大型消火器だけで済む場合があります。
まずは対象になる範囲を確認しましょう。
うちの電気室、そんなに広くないんですが、それでも対象になるんですか。
床面積の考え方も通達で具体的に決まっています。
順番に見ていきましょう。
この記事の結論
- 昭和51年7月20日消防予第37号は、発電機・変圧器等が設置され床面積200平方メートル以上の部分に不活性ガス消火設備等の設置を求める施行令第13条第1項の運用基準を示した通達です。
- 対象になる床面積は電気設備の周囲5メートルの範囲で算定しますが、配電盤・分電盤や容量20キロボルトアンペア未満の設備はそもそも対象に含まれません。
- 密封方式や容量が一定未満などの条件を満たす電気設備は、施行令第32条の特例により大型消火器の設置だけで不活性ガス消火設備等を省略できます。
- 容量は個々の電気機器ごとに算定するため、同じ場所に複数の設備があっても一つ一つの容量で特例の可否が決まります。
- 当時の「二酸化炭素消火設備」という呼び方は現在「不活性ガス消火設備」に変わっていますが、床面積や容量の基準そのものは今も引き継がれています。
▼
電気室に消火設備の基準が必要になったのはなぜか
発電機や変圧器のような電気設備は、絶縁劣化やアークによる出火のおそれがあります。
消防法施行令はこうした部分に特殊消火設備の設置を義務付けていますが、条文だけでは対象の線引きが定まりませんでした。
消防法施行令(以下「令」という。)第13条第1項は、水噴霧消火設備、泡消火設備、二酸化炭素消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備を設置しなければならない防火対象物又はその部分について定めているが、このうち電気設備が設置されている部分又は多量の火気を使用する部分における特殊消火設備(本通達においては、二酸化炭素消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備をいう。以下同じ。)の設置に関する基準を別紙のとおり定めたので、その運用に遺憾のないよう格段の配慮をされたい。(電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて 昭和51年7月20日 消防予第37号 消防庁予防救急課長)
この通達は、条文だけでは定まらない対象の範囲を線引きするために出されました。
令第13条第1項は電気設備が設置された部分への特殊消火設備の設置を義務付けていますが、
「その他これらに類する電気設備」にどこまで含まれるかは条文だけでは判断できません。
床面積の測り方や、小容量の設備まで一律に同じ基準を適用すべきかという運用も、条文だけでは決まらない部分でした。
そこで消防庁は
昭和51年7月20日に消防予第37号として、対象範囲と床面積の算定方法、そして特例で省略できる条件を通達で具体的に示しました。
条文には「発電機、変圧器その他これらに類する電気設備」としか書いていないんですね。
はい。
その具体的な範囲を示したのがこの通達です。
次に、対象になる電気設備の範囲を確認しましょう。
どの範囲の電気設備が対象になるのか
対象になるのは、令別表第1に掲げる防火対象物の電気設備が設置された部分のうち一定規模以上のものです。
何が含まれ、何が除かれるのかを確認しましょう。
令第13条第1項の規定により、発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分で、床面積が200平方メートル以上の防火対象物又はその部分には特殊消火設備を設置しなければならないこととされているが、この場合の「その他これらに類する電気設備」には、リアクトル、電圧調整器、油入開閉器、油入コンデンサー、油入しゃ断器、計器用変成器等が該当するものであること。ただし、次のいずれかに該当するものは、これに含まれないものとする。(1)配電盤又は分電盤(2)電気設備のうち、冷却又は絶縁のための油類を使用せず、かつ、水素ガス等可燃性ガスを発生するおそれのないもの(3)電気設備のうち容量が20kVA未満(同一の場所に2以上の電気設備が設置されている場合は、それぞれの電気設備の容量の合計をいう。)のもの(電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて 昭和51年7月20日 消防予第37号)
別表第一に掲げる防火対象物の発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分で、床面積が二百平方メートル以上のものには、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを設置するものとする。(消防法施行令第13条第1項)
対象は発電機・変圧器のほか、リアクトルや油入開閉器など電路に接続する周辺機器を含む部分で、床面積200平方メートル以上のものです。
一方で
配電盤・分電盤や、冷却・絶縁に油を使わず可燃性ガスを発生するおそれのない設備は、そもそも対象に含まれません。
容量が
20キロボルトアンペア未満の電気設備も除かれますが、同じ場所に2以上の設備があるときは容量を合計して判定します。
現行の施行令第13条第1項が定める「二百平方メートル以上」「発電機、変圧器その他これらに類する電気設備」という文言は、昭和51年当時から条番号も内容も変わっていません。
うちの電気室には分電盤しか無いので、対象外ということですね。
配電盤・分電盤だけであれば、この基準の対象には含まれません。
次は、対象になった場合に何を求められるかを見てみましょう。
通達は何を求めているのか
原則は不活性ガス消火設備等の設置ですが、通達は一定の条件を満たせば大型消火器で済ませられる特例も示しています。
どんな条件があるのかを確認しましょう。
次のいずれかに該当する電気設備が設置されている部分に大型消火器を設置した場合は、令第32条の規定を適用し、特殊消火設備を省略してさしつかえないものであること。(1)密封方式の電気設備(封じ切り方式又は窒素封入方式の電気設備であって、内部に開閉接点を有しない構造のものに限る。)で、絶縁劣化、アーク等による発火危険のおそれが少なく、かつ、当該電気設備の容量が15,000kVA未満のもの(2)1,000kVA未満の容量の電気設備(3)密封方式のOFケーブル油槽(4)昭和48年消防庁告示第1号、昭和48年消防庁告示第2号又は昭和50年消防庁告示第7号に適合する構造のキュービクルに収納されている電気設備(5)発電機、変圧器のうち、冷却又は絶縁のための油類を使用せず、かつ、水素ガス等可燃性ガスを発生するおそれのないもの(電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて 昭和51年7月20日 消防予第37号)
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。(消防法施行令第32条)
密封構造で内部に開閉接点を持たない電気設備や、容量が小さい電気設備であれば、大型消火器だけで済ませられます。
密封方式で容量
15,000kVA未満のもの、容量
1,000kVA未満の電気設備、密封方式のOFケーブル油槽、告示に適合する構造のキュービクルに収納された電気設備、冷却・絶縁に油を使わず可燃性ガスの発生おそれがない発電機・変圧器の5つのいずれかに該当すれば対象になります。
この特例は施行令第32条の「消防長又は消防署長が、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少ないと認めるとき」という一般規定を根拠にしており、通達はその判断基準を具体的な数値で示したものです。
発電所の電気設備部分に一定の基準を満たす水噴霧消火設備を設置した場合も、同じく令第32条の適用で不活性ガス消火設備等を省略できます。
密封型のキュービクルなら、ガスのボンベを並べなくてもいいということですね。
条件を満たせば、大型消火器の設置だけで済みます。
次は、実務で見落としやすい点を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか
床面積と容量の算定方法を取り違えると、判定そのものを誤ってしまいます。
見落としやすい点を確認しましょう。
発電機、変圧器その他これらに類する電気設備(以下「電気設備」という。)が設置されている部分の床面積とは、当該電気設備がすえ付けられた部分の周囲に水平距離5mの線で囲まれた部分の面積(同一の室内に電気設備が2箇所以上設置されている場合はその合計面積をいう。)をいうものであること。ただし、不燃材料の壁、天井、床又は甲種防火戸若しくは乙種防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付のもの又は随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖することができるものに限る。)で区画されている部分に設ける場合は、当該区画された部分の床面積とすることができる。(電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて 昭和51年7月20日 消防予第37号)
床面積は電気設備そのものの面積ではなく、周囲5メートルの線で囲んだ面積で算定します。
同じ室内に電気設備が
2箇所以上あるときは、それぞれの面積を合計して200平方メートルに達するかを判定するため、個々の設備が小さくても合算で対象になることがあります。
一方で不燃材料の壁・天井・床や、自動閉鎖装置付きの防火戸で区画されていれば、その区画内の面積だけで判定できます。
大型消火器の特例(前の見出しの15,000kVA・1,000kVA等の基準)も
個々の電気機器ごとに容量を見るため、合計すると大きな容量になる設備群でも、機器単位では特例の対象になることがあります。
変圧器が2台あるので、床面積は1台ずつ別々に計算していいと思っていました。
同じ室内であれば合計面積で判定します。
最後に、明日から確認すべき手順をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか
最後に、電気室の消火設備を確認するときの手順を整理します。
順番に見ていきましょう。
このうち電気設備が設置されている部分又は多量の火気を使用する部分における特殊消火設備の設置に関する基準を別紙のとおり定めたので、その運用に遺憾のないよう格段の配慮をされたい。なお、貴管下市町村に対してもその旨示達され、よろしく御指導願いたい。(電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて 昭和51年7月20日 消防予第37号)
まず電気設備の種類と容量、次に床面積、最後に特例の該当有無という順番で確認しましょう。
最初に、電気室にある設備が発電機・変圧器その他これらに類する電気設備にあたるか、配電盤・分電盤や
20キロボルトアンペア未満の設備として除外されないかを確認します。
次に、周囲
5メートルの線で囲んだ床面積を実測し、同一室内の複数設備は合算して200平方メートル以上になるかを確認します。
最後に、密封方式や容量の条件に該当すれば大型消火器で済む可能性があるため、該当しそうな場合は判断を自己流で済ませず
所轄消防署に相談してください。
まず設備の種類と容量、次に床面積、最後に特例の順番で確認すればいいんですね。
はい、その通りです。
次によくある質問を確認しましょう。
よくある質問
Q大型消火器の特例が使える場合、消火器の設置を消防用設備等の別の減免に使ってもよいですか?
A通達はこの点を明示していませんが、特例で設置した大型消火器は特殊消火設備の代替という特定の目的のためのものです。他の設備の設置義務を減免する目的に転用できるかどうかは、判断が分かれる可能性があるため所轄消防署に確認してください。
Q令別表第1に掲げる防火対象物以外の建物なら、この基準は関係ありませんか?
Aこの記事で扱う施行令第13条第1項は令別表第1に掲げる防火対象物が対象です。該当しない建物での取扱いは個別の判断が必要になるため、所轄消防署に確認してください。
Q「二酸化炭素消火設備」という表記を見かけたら、古い基準なのですか?
A現行の施行令第13条第1項では「不活性ガス消火設備」という呼び方に変わっています。二酸化炭素はこの不活性ガス消火設備の一種として扱われており、床面積や容量の基準そのものが変わったわけではありません。
Q床面積が200平方メートルに満たない電気室なら、何もしなくてよいですか?
Aこの記事で扱う施行令第13条第1項の対象からは外れますが、市町村の火災予防条例には別の出力基準による位置・構造基準が定められている場合があります。電気室の造りについては別途所轄消防署への確認が必要です。
まとめ
✔昭和51年7月20日消防予第37号は、発電機・変圧器等が設置され床面積200平方メートル以上の部分に不活性ガス消火設備等の設置を求める施行令第13条第1項の運用基準を示した通達です。
✔対象は発電機・変圧器その他これらに類する電気設備で、配電盤・分電盤や20キロボルトアンペア未満の設備は除かれます。
✔床面積は電気設備の周囲5メートルの範囲で算定し、同一室内に複数あれば合算します。
✔密封方式・容量15,000kVA未満・1,000kVA未満などの5つの条件のいずれかに該当すれば、施行令第32条の特例で大型消火器だけで済みます。
✔容量は個々の電気機器ごとに算定するため、複数の設備があっても一つ一つの容量で特例の可否が決まります。
✔当時の「二酸化炭素消火設備」という呼び方は、現在は他の不活性ガスも含む「不活性ガス消火設備」に変わっています。
✔設備の種類と容量、床面積、特例の該当有無の順に確認し、判断に迷う場合は所轄消防署に相談してください。
電気室ひとつでも、容量や造りでこんなに扱いが変わるとは知りませんでした。
はい。
床面積や容量の判断に迷ったときは、まずご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
防火管理はプロにお任せ下さい
まずはWebで無料お見積りを!
お問い合わせ
参考・出典
- 電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて(昭和51年7月20日 消防予第37号 消防庁予防救急課長)
- 消防法施行令第13条第1項・第32条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。