キッチンのレンジ用フードファンに、天ぷら油火災を感知して自動で消火する小さな装置が組み込まれていることがあります。
この装置は住宅用フードファン付レンジ用自動消火装置と呼ばれ、平成2年に消防庁が性能と設置の基準を通知で定めています。
設置すれば天ぷら油火災を自動で消し止められる一方、消火設備の緩和には誤解しやすい点があります。
この記事では、この装置の対象になるレンジの条件、基準が求める性能、そして消火設備の緩和にならない理由を解説します。
うちの物件のキッチンにもフードファンが付いたレンジがあるんですが、これも自動消火装置の対象になるんでしょうか。
住宅用フードファン付レンジ用自動消火装置のことですね。
平成2年の消防庁通知で、性能と設置の基準が定められています。
設置すれば消防用設備等を減らしてよくなるものなんですか。
そこがよく誤解される点です。
順番に確認していきましょう。
- 住宅用フードファン付レンジ用自動消火装置は、平成2年消防予第96号でレンジ用フードファンを有するレンジ部分の天ぷら油火災に対応する装置として基準が定められました。
- 対象になるのはレンジ用フードファンを有するレンジのみで、フードファンの無い普通のレンジは対象になりません。
- 基準は感知部の種別や電圧変動への耐性など細かい性能を求め、蓄圧式には指示圧力計を設けることも定めています。
- 装置を有効に設置しても、消防法施行令第32条の適用による消火設備等の緩和は認められないものとされています。
- 消火後は速やかに熱源を止める必要があり、ガスや電気の遮断と連動させる装置を組み合わせることが望ましいとされています。
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目次
天ぷら油火災はなぜ住宅用の自動消火装置が求められるようになったのか

消防庁はこの被害を防ぐため、どのような装置の普及を後押ししたのでしょうか。
発出は平成2年7月12日の消防予第96号で、消防庁予防課長名で各都道府県消防主管部長に宛てて出されています。
その後平成13年の消防予第103号・消防危第53号により一部が改正され、現在まで運用されています。
通知は装置そのものを義務付けるものではなく、性能基準を満たす装置の普及を後押しする位置づけである点も押さえておきましょう。
設置が義務ではなく普及を後押しする通知だったんですね。
はい、そのとおりです。
次に、どんなレンジが対象になるのかを見てみましょう。
どのレンジがこの自動消火装置の対象になるのか

自分の物件のレンジが当てはまるかどうかを確認しましょう。
装置はフードやダクト、またはその付近に設置し、感知部と放出口が一体または放出導管でつながった構造です。
逆に言えば、フードファンの無い一般的なコンロやIHクッキングヒーターは、この基準がそのまま想定する設置対象ではありません。
自分の物件のレンジにフードファンが付いているかどうかは、まず現地を確認するところから始めましょう。
うちはフードファンの無い普通のIHなんですが、関係ないということですね。
この基準が想定する設置対象ではありません。
次は基準が求める性能の中身を見てみましょう。
消防庁の基準はどのような性能を求めているのか

基準が求める性能の主な項目を確認しましょう。
感知部は火熱の感知方式によって感知器型感知部・易融性金属型感知部・温度センサー型感知部の3種類に分類されます。
電気を使用する装置は、電圧が±10%変動しても機能に異常を生じないことが求められます。
蓄圧式の装置には指示圧力計を設けることが基準で定められており、圧力計の表示が点検の手がかりになります。
感知の方式にも種類があるんですね。
蓄圧式かどうかも見ないといけないんですか。
蓄圧式なら圧力計の表示を確認します。
次は、見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。
この装置を付けても消火設備の緩和にならないのはなぜか

なぜ緩和が認められないのか、根拠から確認しましょう。
令第32条は、消防長又は消防署長が状況を判断して基準の適用を除外できる特例の規定です。
通知はこの特例を、住宅用フードファン付レンジ用自動消火装置を根拠にして使うことを認めないと明示しています。
また消火後は速やかにレンジの熱源を停止する必要があり、ガスレンジでは消火剤の放出でガスの火が消える場合があるため、ガスや電気を消火剤の放出と連動して遮断できる装置を組み合わせることが望ましいとされています。
じゃあこの装置を付けても、うちの消防用設備等はそのまま必要ということですか。
はい、この装置を理由に減らすことは認められません。
最後に、明日から確認すべき手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

基準に沿って、順番に見ていきましょう。
まず、放出口の位置がフードファンのフード下端高さからレンジ上面まで1m以下で、かつ製造者の指定する高さ以上の範囲にあるかを確認します。
次に、消火後にレンジの熱源を速やかに止める運用になっているか、ガスや電気を連動して遮断する装置の併用も検討します。
消火薬剤貯蔵容器の周囲の最高温度が、装置に表示された使用温度範囲内となる位置に設置されているかも確認しましょう。
蓄圧式であれば指示圧力計の表示を点検し、緩和を前提にせず消防用設備等は基準どおりに確保したうえで、判断に迷う場合は所轄消防署や専門業者に相談しましょう。
放出口の位置と熱源の停止、貯蔵容器の温度を順番に見ればいいんですね。
はい、その通りです。
次によくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
レンジのフードファンの装置にも、こんなに細かい基準があるんですね。
はい。
設置や緩和の判断に迷ったときは、まずご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 住宅用フードファン付レンジ用自動消火装置について(通知)(平成2年7月12日 消防予第96号、平成13年3月改正 消防予第103号・消防危第53号)
- 消防法施行令第32条(消防用設備等の基準の特例)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





