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避難階段と特別避難階段はなにが違うのか|付室やバルコニーが必要になる階と構造の基準を解説

耐火構造の壁で囲まれた階段室と防火設備の扉

図面をめくると同じ建物の階段でも避難階段と書かれたものと特別避難階段と書かれたものが出てきます。
どちらも避難に使う階段なのに、なぜ呼び名を分けているのか分かりにくいところです。
条文はこの二つを階段室の守り方で分けたうえで、必要になる階まで書き分けています。
この記事では避難階段と特別避難階段がどこで分かれていて現場でなにを守ればよいのかを解説します。

図面に避難階段と特別避難階段が混ざっていて違いが分かりません。

違いは階段室に入るまでに付室やバルコニーを挟むかどうかです。
挟むほうが特別避難階段になります。

防火管理をするうえでその違いを知る意味はあるのでしょうか。

あります。
付室や扉に物を置くと守りがそのまま失われるからです。

この記事の結論
  • 一定の階に通じる直通階段は避難階段か特別避難階段にしなければなりません。(建築基準法施行令第122条第1項)
  • 対象になるのは5階以上の階と地下2階以下の階に通じる直通階段です。(同項)
  • 15階以上の階と地下3階以下の階に通じるものは特別避難階段に限られます。(同項)
  • 避難階段は階段室を耐火構造の壁で囲み階段自体も耐火構造にします。(同令第123条第1項)
  • 特別避難階段は屋内と階段室をバルコニーか付室を通じて連絡させます。(同条第3項第1号)

直通階段と避難階段と特別避難階段の構造の違いと必要になる階をまとめた図解

ふつうの階段と避難階段はどこが違うのか

壁のない階段と耐火構造の壁で囲まれた階段室の対比
避難階段は階段の形や勾配が特別なわけではありません。
違いは階段そのものではなく、階段を包む部屋の作りにあります。
建築基準法施行令第百二十三条第一項(抜粋) 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。 一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。(略) 三 階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。(略) 六 階段に通ずる出入口には、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。 七 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること
階段を火と煙から切り離した部屋にしたものです。
避難階段の要件は、階段室を耐火構造の壁で囲むこと、出入口に防火設備を設けること、階段自体を耐火構造として避難階まで直通させることの三つが柱になっています。
壁のない吹き抜けの階段は上の階へ煙を運ぶ煙突になりますが、囲われた階段室ならその経路を断てるという考え方です。
採光上有効な開口部か予備電源を有する照明設備も求められていて、停電した建物の中でも足元が見える前提が置かれています。
つまり避難階段とは、階段そのものではなく階段を含む一区画を守りに変えた設備だと考えると読み違えません。

階段ではなく階段室のほうが決まりの中身だったのですね。

そのとおりです。
次はどの階でこの作りが求められるのかを見ましょう。

どの階に通じる階段が避難階段や特別避難階段になるのか

上層階と地下階に階段室が通る建物の断面と見上げる担当者
すべての階段が避難階段になるわけではありません。
条文は地上からの距離が遠い階を目安にして線を引いています。
建築基準法施行令第百二十二条第一項(抜粋) 建築物の五階以上の階(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物で五階以上の階の床面積の合計が百平方メートル以下である場合を除く。)又は地下二階以下の階(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物で地下二階以下の階の床面積の合計が百平方メートル以下である場合を除く。)に通ずる直通階段は次条の規定による避難階段又は特別避難階段とし、建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる直通階段は同条第三項の規定による特別避難階段としなければならない。(ただし書略)
地上から遠い階ほど守りが厚くなります。
まず5階以上の階と地下2階以下の階に通じる直通階段が、避難階段か特別避難階段のどちらかでなければなりません。
そのうえで15階以上の階と地下3階以下の階に通じるものは、選択の余地なく特別避難階段に限られます。
物品販売業を営む店舗については別の定めがあり、同条第2項は3階以上の階を店舗に使う建築物に各階の売場と屋上広場へ通じる二以上の直通階段を求め、これを避難階段か特別避難階段とすることとしています。
自分の建物が何階建てかを思い浮かべながら、階段の図面にどちらの名前が書かれているかを先に確かめておくと話が早くなります。

うちは地下も含めると対象になりそうです。

地下は煙がたまりやすいので線が厳しく引かれています。
次は特別避難階段だけに付いてくる作りを見ましょう。

特別避難階段にはなぜ付室やバルコニーが要るのか

居室と階段室の間に置かれた付室とバルコニーを通る経路
特別避難階段は避難階段の要件をさらに重ねたものです。
その中心にあるのが屋内と階段室のあいだに挟む小部屋です。
建築基準法施行令第百二十三条第三項(抜粋) 特別避難階段は、次に定める構造としなければならない。 一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。 二 屋内と階段室とが付室を通じて連絡する場合においては、階段室又は付室の構造が、通常の火災時に生ずる煙が付室を通じて階段室に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。(略) 九 バルコニー及び付室には、階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けないこと。 十 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第一項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること
扉を二重にして煙が階段室へ入るのを防ぐためです。
特別避難階段では屋内からいきなり階段室へは入れず、バルコニーか付室を通ってから階段室に入る形が求められます。
屋内から付室に入る出入口には特定防火設備を、付室から階段室に入る出入口には防火設備を設けることとされていて、扉が二枚重ねになる仕組みです。
さらに第2号は、付室を通じて煙が階段室へ流れ込むことを有効に防止できる構造方法か国土交通大臣の認定を受けたものであることを求めています。
バルコニーは外気に開かれているぶん煙がたまりませんが、付室のほうはこの煙を止める仕掛けがあってはじめて成り立つ点が違いになります。

階段の前にある小部屋は物置ではなかったのですね。

その小部屋こそが煙を止める仕掛けの本体です。
次は現場で見落としやすいところを見ておきましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

くさびで開いたままの階段室の扉と付室に置かれた段ボール
階段の種別は建てたときに決まったまま図面に残ります。
落としやすいのは、その前提が日々の使い方で崩れていくところです。
建築基準法施行令第百二十二条第一項ただし書 ただし、特定主要構造部が耐火構造である建築物(階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)及び廊下その他の避難の用に供する部分で耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたものを除く。)で床面積の合計百平方メートル(共同住宅の住戸にあつては、二百平方メートル)以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(直接外気に開放されている階段室に面する換気のための窓で開口面積が〇・二平方メートル以下のものに設けられる法第二条第九号の二ロに規定する防火設備を含む。)で区画されている場合においては、この限りでない
同じ階数でも要否が分かれます。
第122条第1項にはただし書があり、特定主要構造部が耐火構造の建築物で100平方メートル(共同住宅の住戸は200平方メートル)以内ごとに区画されている場合は避難階段としなくてよいとされています。
つまり階数だけを見て判断すると外れることがあるので、自分の建物の図面と検査済証の記載で種別を確かめてください。
もうひとつ多いのが扉の扱いで、第123条第1項第6号は階段に通ずる出入口に防火設備を設けることとし、直接手で開けて自動的に閉まる戸は避難の方向に開くものとすることまで求めています。
くさびや消火器で扉を開いたままにしたり、付室を段ボールの置き場にしたりすると、構造として作られた守りがその時点で働かなくなります。

荷物の一時置き場になっている付室に心当たりがあります。

そこは真っ先に片づけたい場所です。
最後に明日からの手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

扉の閉鎖装置を確かめる担当者と記録用の台帳
構造そのものを直せるのは工事のときだけです。
防火管理者ができるのは、その構造を働く状態のまま保つ確認になります。
消防法第八条の二の四 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
図面と現場を一度突き合わせてください。
はじめに設計図書や検査済証で階段ごとの種別を拾い、避難階段か特別避難階段かを一覧に書き出します。
次に階段室と付室を実際に歩き、置かれている物と扉の状態を見ます。消防法第8条の2の4は管理について権原を有する者に避難上必要な施設の管理を求めているので、片づけの依頼先はテナントではなく管理権原者になります。
扉については閉じたときに枠まで届くか、くさびやフックで開放されたままになっていないかを見て、閉まらないものは工事の依頼に回します。
最後にこの確認を消防計画の自主検査の項目に入れておくと、担当者が代わっても同じ場所を見続けられます。

自主検査の項目に階段室と付室を足しておきます。

それが続けば構造の守りは保てます。
最後によくある質問を見ておきましょう。

よくある質問

Qうちの階段が避難階段かどうかはどこを見れば分かりますか?
A建築確認の図面に階段の種別が示されているのがふつうです。条文の側から見るときは、建築基準法施行令第123条第1項が求める耐火構造の壁で階段室が囲まれているか、階段に通ずる出入口に防火設備が設けられているかを確かめます。
Q5階建てなら必ず避難階段が要るのですか?
A必ずとは限りません。建築基準法施行令第122条第1項ただし書は、特定主要構造部が耐火構造の建築物で床面積の合計100平方メートル(共同住宅の住戸は200平方メートル)以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されている場合は、この限りでないとしています。
Q避難階段があると避難器具は減らせますか?
A消防法施行規則第26条第1項に減免の定めがあります。建築基準法施行令第123条及び第124条に規定する避難階段(屋外に設けるもの及び屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限る)又は特別避難階段としたものが設けられている場合は、その階に設置する避難器具の個数をその階段の数を引いた数以上とすることができるとされています。
Q付室にロッカーや台車を置いてはいけませんか?
A付室は階段室へ入るための通り道なので、避難の支障になる物件を置けば消防法第8条の2の4の管理義務に触れることになります。扉の前をふさぐ置き方は防火戸の閉鎖の支障にもあたるため、恒久的な置き場としては使わないでください。

まとめ

避難階段は階段室ごと耐火構造の壁で囲んだ階段です。
階段に通ずる出入口には防火設備を設け階段自体も耐火構造とします。
5階以上の階と地下2階以下の階に通じる直通階段が対象です。
15階以上の階と地下3階以下の階に通じるものは特別避難階段に限られます。
特別避難階段は屋内と階段室をバルコニーか付室で結びます。
耐火建築物で100平方メートル以内ごとに区画されていれば要しない場合があります。
階段室や付室に物を置くと消防法第8条の2の4の管理義務に触れます。

階段室の扉と付室から見回りを始めてみます。

そこが守れていれば上の階の安全は大きく変わります。
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参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第122条第1項・第2項・第123条第1項・第3項
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第26条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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