BLOG

階段が1つしかない建物はどこまで規制が強化されるのか|特定一階段等防火対象物の該当条件と設備義務を解説

階段が1つしかない建物は規制が変わることを示したアイキャッチ画像

建物の階段が1つしかないというだけで、消防用設備等の義務が大きく変わることがあります。
面積が小さくても自動火災報知設備の設置を免除されず、点検や検査の対象にもなり得ます。
根っこにあるのは、平成13年の新宿区歌舞伎町ビル火災を教訓にした規制強化です。
条文をたどると、階段の数がそのまま義務の重さを決めていることが見えてきます

うちのビルは3階建てで、階段は1つしかありません。
これって何か問題があるのでしょうか。

大きな問題です。
その条件だと特定一階段等防火対象物に当たり、設備の義務が大きく変わります

面積は小さいのですが、それでも関係がありますか。

関係します。
面積を問わず義務が生じる仕組みです。
条文から順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 避難階以外の階に特定の用途があり、直通階段が2未満なら特定一階段等防火対象物にあたります
  • 該当すると面積を問わず自動火災報知設備の設置が義務になります
  • 消防機関による使用開始前検査の対象にもなります
  • 点検は消防設備士等の資格者によるものが必要です
  • 収容人員300人以上や防火管理義務があれば防火対象物点検報告の対象にもなり得ます

特定一階段等防火対象物は対象用途と避難階以外の階と階段の数がそろうと該当し面積を問わず自動火災報知設備等の義務が生じることを示した図解

特定一階段等防火対象物とは何を指すのか

多層階の建物の内部に階段が1つしかない構造を虫眼鏡で強調したイメージ
平成13年に新宿区歌舞伎町のビルで火災が起き、44人が亡くなりました。
直通階段が屋内に1つしかなく、避難経路を確保できなかったことが被害を広げました。
消防法施行令第四条の二の二第二号 (前略)別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階(略)に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
この火災を教訓に、平成14年の消防法改正で規制が強化されました
条文が指すのは、避難階まで届く階段が実質的に1つしかない建物です。
建築基準法上は複数の経路があるように見えても、消防法上は避難階まで安全に届く階段だけを数えます。
略して「トクイチ」と呼ばれることもありますが、正式名称は特定一階段等防火対象物です。
まずは自分の建物がこの条文の対象になり得るかどうかを、次の章で具体的に見ていきます。

「トクイチ」という略称は聞いたことがありますが、正式な条文の内容までは知りませんでした。

歌舞伎町ビル火災を教訓に条文化された制度です。
まずは対象になる用途と階段の条件を押さえましょう。

どんな建物が特定一階段等防火対象物に当てはまるのか

階段が2つある建物は対象外で階段が1つしかない建物は対象になることを示したイメージ
用途と階段の数、この2つの条件が同時にそろって初めて対象になります。
どちらか一方だけでは当たりません。
消防法施行規則第四条の二の三 令第四条の二の二第二号、令第二十一条第一項第七号、令第三十五条第一項第四号及び令第三十六条第二項第三号の総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合は、建築基準法施行令第百二十三条及び第百二十四条に規定する避難階段(屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限る。)又は特別避難階段である場合とする。
対象になる用途は(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イに限られます。
劇場や飲食店、病院、旅館、老人福祉施設、公衆浴場などが該当し、事務所や倉庫はそもそも含まれません。
その用途の部分が3階以上の階または地階にあることも条件で、条文上1階と2階は「避難階以外の階」から除かれています。
階段は屋外階段か、屋内の避難階段・特別避難階段でなければ安全な1本と数えられません
ふつうの屋内階段が1つだけという建物は、この条件にそのまま当てはまります。

うちは階段が2つありますが、両方ふつうの屋内階段です。

それなら2以上として数えられるので対象外です。
屋外階段や特別避難階段でなければ、屋内階段は複数あることが前提になります。

該当すると消防用設備等の義務はどう変わるのか

火災報知設備の管理盤と小さな建物に検査員のクリップボードが添えられたイメージ
特定一階段等防火対象物になると、複数の条文が同時に動き出します。
面積による免除がきかなくなる場面が多いのが特徴です。
消防法施行令第二十一条第一項第七号 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる防火対象物のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(略)以上設けられていないもの
自動火災報知設備は面積を問わず設置が義務になります
通常であれば延べ面積が一定以上でなければ設置義務が生じない用途でも、この号に当たれば免除がありません。
さらに消防法施行令第35条第1項第4号により、消防用設備等を設置したあとに受ける消防機関の検査(使用開始前検査)の対象にもなります。
点検の担い手にも条件が付きます。消防法施行令第36条第2項第3号で、消防設備士など資格者による点検が義務付けられます。
自分で点検して済ませる、という選択肢が取れなくなる点は覚えておいてください。

面積が小さいから設備は要らないと思っていました。

それが通らないのが特定一階段等の特徴です。
資格者による点検も必要になります。

実務で見落としやすいのはどこか

店舗の看板が入れ替わる様子と建物の中の階だけ用途が変わることを示したイメージ
新築時に対象外だった建物が、あとから対象に変わることがあります。
入居しているテナントの入れ替わりだけでも条件が動きます。
消防法施行令第四条の二の二第二号(括弧書) (略)避難階以外の階(一階及び二階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分とする。(略))に存する防火対象物で(略)
テナントの用途が変わっただけで対象になることがあります
事務所だった区画に飲食店や診療所が入ると、その階の用途が対象用途に変わります。
逆に避難上有効な開口部のない壁で区画されている部分は、その区画だけを切り離して階段の数を判定できる場合があります。
この判定は建物全体ではなく区画ごとに行われる点を見落とすと、対象外だと思い込んだまま設備が不足する事態になります。
テナントの入れ替えや用途変更のたびに、この条文に当てはまらないかを確認する習慣が必要です。

空いたテナントに飲食店が入る予定です。

それだけで対象が変わる可能性があります。
契約前に一度、所轄消防署に確認しておくと安心です。

明日からなにを確認すればよいか

図面を広げた台と電話とチェックリストを示したイメージ
対象になるかどうかは、自分の建物の図面と用途表を見比べれば分かります。
判断に迷ったら、所轄消防署に相談するのが確実です。
消防法第八条の二の二第一項 第八条第一項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、(略)防火対象物点検資格者に、(略)点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
まず確認するのは避難階以外の階にある用途と、そこから避難階まで届く階段の本数です
屋内の普通の階段が1つしかなければ、その時点で対象を疑ってください。
対象になりそうであれば、自動火災報知設備の設置状況直近の点検が資格者によるものかを確認します。
収容人員が300人以上、または防火管理者の選任義務があるなら、防火対象物点検報告の対象にもなり得ます。
自分だけで判断しきれない場合は、図面を持って所轄消防署の予防課に相談してください。

図面を見ただけでは階段の種類まで分かりません。

その場合は所轄消防署か専門業者に確認してもらうのが確実です。

よくある質問

Q特定一階段等防火対象物に該当すると必ず改修が必要になりますか?
A該当そのものが既存の建物に改修を強制する規定ではありません。ただし自動火災報知設備が未設置であれば設置が必要になり、既存不遡及の扱いが及ばない場合もあります。具体的な取り扱いは所轄消防署にご確認ください。
Q事務所だけが入っているビルでも対象になりますか?
A対象用途は(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イに限られます。別表第一(15)項の事務所はこの用途に含まれないため、事務所だけのビルはこの号の対象にはなりません。ただし他の設置基準が別途かかることがあります。
Q屋外階段が1つあれば、それだけで対象外になりますか?
A屋外に設けられた階段、または総務省令で定める避難上有効な構造(屋内の特別避難階段など)を有する階段であれば、1つでも対象外になります。ただし階段が屋内の普通の階段であれば、この扱いは受けられません。
Q既存の建物が対象になった場合、いつまでに対応すればよいですか?
A自動火災報知設備など設置義務が生じている設備について、統一的な猶予期間が条文で定められているわけではありません。該当が判明した時点で早めに所轄消防署に相談し、指導に従って対応時期を確認することをおすすめします。

まとめ

避難階以外の階に特定の用途があり、直通階段が2未満なら特定一階段等防火対象物です
対象用途は(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イに限られます
1階と2階は対象の階から除かれます
該当すると面積を問わず自動火災報知設備の設置が義務になります
消防機関の使用開始前検査の対象にもなります
点検は消防設備士等の資格者によるものが必要です
テナントの用途変更でも対象が変わるため、入れ替えのたびに条件を見直してください

うちの建物が対象かどうか、まず階段の数と用途を確認してみます。
資格者による点検も見直します。

それが一番確実な一歩です。
面積の大小に関わらず、階段の条件だけで義務が決まることを忘れずにいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 消防法第8条の2の2
  • 消防法施行令第4条の2の2
  • 消防法施行令第21条第1項第7号
  • 消防法施行令第35条第1項第4号
  • 消防法施行令第36条第2項第3号
  • 消防法施行規則第4条の2の3
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
階段が1つしかない建物は規制が変わることを示したアイキャッチ画像
建物の階段が1つしかないというだけで、消防用設備等の義務が大きく変わることがあります。 面積が小さくても自動火災報知設備の設置を免除されず、点検や検査の対象にもなり得ます。 根っこにあるのは、平成13年の新宿区歌舞伎町ビ...